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人生100年時代とは
「人生100年時代」とは、英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が長寿時代の生き方について述べた著書「ライフシフト」で提唱した概念です。グラットン死は寿命が延びて100歳を超えるようになれば、これまでの生き方は覆されると考えており、その後の対策が必要であると述べています。
これまでは60歳で定年になり、その後の余生を過ごすというライフプランが一般的でした。しかしいま長寿化が進み、70歳や80歳になっても働き続ける「人生100年時代」が訪れようとしています。これまでよりも自律的なキャリアプランニングが求められるでしょう。
アクサ生命が実施した「人生100年時代に関する意識調査」によると、人生100年時代をポジティブに捉えているのは20代と60代で、ネガティブに捉えがちなのは30代〜40代でした。また、人生100年時代における老後の生活についても、悲観的なのは30代〜40代です。
働き盛りのミドル層ほど、人生100年時代への抵抗感が強いことが伺えますが、避けては通れそうにない人生100年時代に向けてどのような準備をするべきなのでしょうか。具体的な対策について詳しく解説します。
日本は世界で先駆けて「人生100年時代」に突入する
日本でもライフシフト日本発売と時期同じくして2016年10月、小泉進次郎氏はじめ自民党若手議員らが立ち上げた2020年以降の経済財政構想小委員会から、「人生100年時代の社会保障へ」という提言が発表されました。
この提言では、雇用形態に関わらず企業で働く人全員が入れる社会保険制度、ライフスタイルにあった柔軟な年金制度、健康に対する自助努力を促す医療介護制度、3つのポイントを明示。若手政治家だからこそ「人生100年時代」をリアルに感じたのかもしれません。
一方、日本政府も、2017年9月には「人生100年時代構想会議」を開催し、有識者議員としてグラットン氏を招いています。日本は、世界のどの国よりも急速に高齢化社会を迎えるといわれています。人生100年時代を迎える日本がどのように舵取りをして行くのか、働き方改革などの施策にも注目が集まっています。
加速する日本社会の長寿化
日本の長寿化は加速しており、2065年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になるといわれています。将来の平均寿命についても2065年には、男性84.95年、女性91.35年となり、女性は90年を超えると考えられています。
日本は世界一の長寿社会?
こうしたデータに加え、「日本では2007年に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きる」という推測もあり、日本は健康寿命が世界一の長寿社会になっていくと考えられているのです。
このような長寿社会においては教育を受け、働き、定年を迎えた後余生を送るといった単線的な3ステージ型のライフプランは通用せず、マルチステージで人生を考えていく必要があると指摘されるようになりました。
人生100年時代に向けた日本社会の変化
人生100年時代構想会議とは人生100年時代を見据えた政策を検討するために設置された政府主催の会議のことです。平成29年9月から9回にわたって行われており、大きな注目が集まっている会議でもあります。
厚生労働省における対応
この人生100年時代構想会議の中間報告(平成29年12月)では、厚生労働省の6つの対応が発表されました。
幼児教育の無償化
まず一つ目は幼児教育の無償化です。2019年10月から全面実施されることが決定しました。所得制限があるものの0歳~2歳(未満児)の場合、認可施設は無償化される見通しです。3歳~5歳も認可施設は保育所・幼稚園・こども園のいずれも無償化されます。
待機児童の解消
女性の就業率を上昇させるために重要になる待機児童の解消。その目標として約32万人分の保育の受け皿を整備し、25 歳から 44歳までの女性就業率を80%にまで高まると想定しています。
高等教育の無償化
最終学歴によって平均賃金に差があること、低所得者層の進学を支援し、所得の増加を図り、格差の固定化を解消することが少子化対策につながるとの視点から、低所得者層の大学などの授業料免除や私立高等学校授業料の実質無償化が検討されています。
介護人材の処遇改善
また介護人材の処遇改善についても、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める方針が固められました。
「介護職員処遇改善加算」や「福祉・介護職員処遇改善加算」など具体的な動きも見られます。
リカレント教育
リカレント教育とは労働者が何歳になっても必要な能力やスキルを身に付けられるようにするための教育制度のことを指します。「大人の学びなおし」ともいえる教育方法であり、テクノロジーの進化が激しく継続的にスキルをアップデートすることが必要となる人生100年時代に必要とされる教育です。
高齢者雇用の促進
日本では健康寿命が高齢化していることから、高齢者がどのように働き続けるかが重要なポイントになってきます。高齢者雇用促進対策では
- 65歳超雇用推進助成金の支給
- 高齢・障害・求職者雇用支援機構による事業主に対する相談、援助
を行い高齢者が年齢に関わりなく働ける企業の拡大を目指しています。
人生100年時代を生き抜くための対策まとめ
これまでのライフプランが通用しなくなる人生100年時代。そんな人生100年時代を生き抜くにあたって、今からどのような対策を行う必要があるのでしょうか。
人生100年時代におけるキャリア形成
今後は転職や副業が一般化、定年が70歳以上になる可能性も十分にあり得ます。ひとつの職業で定年まで働き続けるのではなく、どんどんキャリアチェンジするのを前提にキャリア形成を考える必要があります。
また夫婦であればダブルインカムとなり、リスク分散が可能になります。厚生年金のパート拡大など、制度改革の流れもありますから、女性も積極的に就業することが求められるようになるでしょう。
人生100年時代における資産運用
また人生100年時代においてはお金に働いてもらう、つまり資産運用も重要になってきます。「低リスク型ファンド」は価格変動リスクが小さいため、資金が流入する傾向にあり、金融機関も低リスクファンドをあらためて評価し、販売に力を入れています。
今後も人生100年時代を見据え、長期間低リスクで行う資産運用に注目が集まると推測できます。
人生100年時代の救世主、ヘルステックの可能性
ヘルステックとは人工知能やIoT、VRなどの新しいテクノロジーを活用した新しい健康サービスのことです。ヘルステック市場は最近大きな伸びを見せており、今後2021年までに年平均20%以上の成長率を見せるとの見通しもあります。
ヘルステックの具体例
ヘルステックの具体例としてはウェアラブル機器を活用した健康管理や、オンライン診療、介護ロボットといったサービスがあげられます。こうしたテクノロジーを利用した健康サービスを利用することで、長寿社会を安定して生きていける社会になっていくのでは、と考えられています。
人生100年時代はもう来ている
政府が人生100年時代を見据えて政策を論じ始めたように、人生100年時代はもうすぐそこまで来ています。国が行う政策だけではなく、個人でも積極的に人生100年時代における自分の人生を考え、できることを少しずつ行っていく必要があるといえるでしょう。