障害の種別と特性(障害者雇用における配慮事項)
では、障害の種別ごとにどんな仕事に就いてもらうことが考えられるのでしょうか? ひとくちに障害の種別といっても、実際は個々に適性は異なりますが、ここではあえて端的に触れていきます。
身体障害者
肢体不自由(手・足が無い、機能しないなど)のように、投薬等の継続的な治療の必要がなく、症状が変化する可能性が低いケースもあれば、内臓の機能障害のように、継続的な治療が必要で、将来的に症状が変化する可能性があるケースもあります。
ひとくくりに身体障害者として考えるのは非常に難しく、それぞれの障害の身体的特性と仕事内容にあわせた物理的配慮が求められます。
たとえば、視覚障害者がデスクワークに就く場合には、視覚障害の程度にあわせて、パソコンの画面を大きく表示する拡大読書器やパソコンの画面に表示された情報を音声で読み上げる音声読み上げソフトが必要になります。
障害の内容によっては、医療的処置を行うための休憩時間や平日の定期的な通院が必要になることもあります。募集にあたって、障害の内容や配慮事項を制限することはできないので、応募いただいた方と配慮を求めたい事項や会社ができることについてしっかり確認しあうことが大切です。
精神障害者
躁鬱病などの気分障害や統合失調症などのこころの病気が精神障害に該当します。身体障害の場合と異なり、服薬と通院による継続的な体調のコントロールは必須となります。また精神的な負担に配慮する必要もあるので、仕事の量や難易度によるストレス、職場の人間関係によるストレスなどにもこまめに意識を向けることが大切です。処方される薬の変更が体調に大きな影響を及ぼすこともあります。通院や服薬の状況は共有してもらうことが望ましいでしょう。
こうした状況を身体障害の場合と比較すると、どこまでの配慮が求められるかイメージしにくく、採用に二の足を踏んでしまうという会社が多いようです。
私は、面接を通じて、その方にとって精神的負担になりやすいことや、体調維持のコツ、気分が落ち込んだ時の対処方法などを確認することをおすすめしています。すると、思いのほか客観的にご自身の障害を説明でき、障害の特性を理解されている方が多いことに気がつくはずです。
これを「障害の自己理解」と呼んでいます。自己理解が進んでいる方は、体調を崩しそうなタイミングでアラートを発したり、自主的に休憩をとったりして、体調の維持・早期回復に努めやすく、会社としても配慮の負担軽減につながると思います。
知的障害者
精神障害と混同されることが多いのですが、知的障害は知能指数レベル(IQ)によって認定される障害です。多くの場合は若くして障害が認定され、継続的な治療や通院の必要はないものの、継続的に日常生活への援助が必要であることが特徴です。
個々に得意・不得意があり、得意なことについては根気強く継続的にやり抜ける傾向があり、単調な作業でも飽きずに長く続けられるという方もいます。逆に、不得意なことについては無理強いすることは負担が大きいので、業務内容の調整が必要になります。
特定のことに強いこだわりを持つ方もいます。ルーティンで行うことの順序、座る席、固有の考え方、同じ発言の繰り返しなどは、否定せず受け入れる体制が必要です。得意・不得意やこだわりに合わせて、口頭ではなく図を用いて伝える、指差し確認を用いるなど、教え方や進め方も考慮する必要があるでしょう。
必要な日常生活への支援も人それぞれですが、体調不良や疲労感を伝えることを苦手とする方もいますので、仕事に就いてもらう上では常に健常者の方が傍にいると安心です。
なお、障害者の雇用数のカウントは同じ1人でも、重度障害の場合は2カウント、短時間労働者の場合は0.5カウントと、必ずしも1人1カウントではない点に注意してください。