介護施設で職員の離職率を低下させる「働き方改革」の極意

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介護といえばキツそうなイメージを持つ人が多い。しかし働き方改革を断行し離職率が低下、いまでは「ここで働きたい」と入職待機者が続出する介護施設がある。滋賀県にあるエーデル土山だ。職員の奉仕の精神依存しない、現実を見据えた「働き方改革」を断行した背景について語っていただいた。

職員の奉仕精神を利用した「悪しき労働実態」

よく介護職員への研修で「ご利用者への奉仕、充実した生活こそが福祉である」というような内容が持てはやされるが、報酬上評価されないサービスを行うことは見方を変えれば(言い方は悪いが)、「過剰サービス」と言えるのではないだろうか。

例をあげよう。
・オムツは絶対にせずにトイレ限定
・毎日、夜間に入浴する
・利用者の話を際限なく聞く

介護事業所を実際に経営する立場からいうと、これらのサービスを職員の犠牲のうえに成立させて良いのかと強い疑問を感じざるを得ない。

確かに福祉は崇高な理念のもと提供されることが理想であり、そのことを全否定するわけではない。

しかし厳しい現場で日々、介護に従事するスタッフはできもしない理想論を聞かされることで、自分達の不甲斐なさを責め、非現実な幻想を追い求めることで、さらに過剰サービスに走っていくのである。

早出、遅出、夜勤という身体的にけっして楽ではないシフト勤務もさることながら、慢性的な人手不足のうえに理想論を押し付けられて、バーニングアウトする職員は後を絶たない。これが、いわば職員のボランティア精神を利用した介護業界の悪しき労働実態でもある。

職員の「働き方見直し」こそ、持続可能なサービスへの近道

労働人口の減少が深刻な今、真に介護業界で必要なアナウンスは美学や理想追及ではないのだ。

介護の質をあげるための知識や技術は勿論必要だが、職員を労働資源と捉え如何にして持続可能なサービスが継続できるかという「現実に注力していくこと」こそが遥かに重要なことなのだ

業務改善をせず過剰にどんどんと業務を積み上げていけば、それは介護というマラソンを全力疾走しているようなもので、たちまち職員は疲弊、退職してしまう。

これだけ求職者の売り手市場の今、過酷で働きにくい介護職を一体だれが選ぶというのだろうか。

職員が疲弊している状態で介護を優しく行うことは非常に難しく虐待発生の温床であるとも言われている。職員の働き方を見直し、大切することこそが、安心した介護を受けられる大前提である。

介護施設の働き方改革で「労働条件などの悩み・不安・不満」解消へ

介護労働者の悩みは「人出が足りない」「仕事内容の割に低賃金」「休みにくい」「心身負担が大きい」という順になっている。これらはまさに「3k職場」であるという現実をあらわしている。

よく福祉関連の求人広告に多いキーワードに「遣り甲斐・働き甲斐」といったものが散見されるが、実際に働くものが感じているのは、慢性的に続く人材不足や低賃金であり、休みを取りにくく心身の負担が大きいといった極めて厳しい現実である。

「打開策は?」

働き方改革を断行しいまでは入職待機者が多数存在している当施設(エーデル土山)では、このような質問をお受けする機会が増えてきた。

お答えしているのは限られた人員で持続可能なサービスを提供していくためには、とにかくスタッフを労働資源として捉え、辞めさせない取組が必要だという一点に尽きる。

業務削減、労働時間短縮、WLB(ワーク・ライフ・バランス)を高める、心身の負担軽減、収益性を上げ、少しでも給与をアップするなどの取り組みが急務である。早く手を打たないと、介護業界からはどんどん人が離れ、日本は取返しのつかない事態に陥る。

介護業界は他業界よりもネガティブなイメージが強く、すでに人材確保についてハンデを背負っていると言ってよい。そういう意味でも、他業界よりインパクトの強い、思い切った働き方改革を実践することが求められる。

また、当社の取り組みを振り返ってみると、サービス提供側が「奉仕の精神」を重んじているところ「過剰サービス」などと断じれば、心身がすり減ってもなお笑顔で介護に従じる現場スタッフからは拒絶反応もあり、すんなりと事が運んだわけではなかった。

後編では、働き方改革の進め方の具体的手法について、当社の実践を詳しく説明していく。

介護業界のみならずサービス業全般においておもてなし精神による過剰サービスが蔓延しているいま、この取り組みが介護業界に限らず、人手不足に頭を抱えるすべての業界や企業の一助となれれば幸いである。