外国人就労拡大「3業種」で単純労働OKに、外国人労働者の推移・雇用における問題点とは

公開日:

記事の情報は2018-12-20時点のものです。

2018年12月、「特定技能」という新しい在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法(入管法)の改正が成立した。同年6月には2025年までに50万人超の外国人労働者の受け入れを目指すと政府発表されてから半年、迅速に実現へと踏み切った外国人就労拡大問題。本記事では、外国人労働者の推移・雇用における問題点をまとめた。
外国人就労拡大「3業種」で単純労働OKに、外国人労働者の推移・雇用における問題点とは

外国人就労は拡大の一途

2018年6月、安倍晋三首相は経済財政諮問会議で「2025年までに50万人超の外国人労働者の受け入れを目指す」と発表しました。現在の外国人労働者数は、ここ数年で右肩上がりに上昇し続けています。増加トレンドを維持したままさらに50万人増えれば、200万人到達も現実味を帯びてきます。

外国人就労拡大の背景にあるのは、人手不足です。日本の人口は2060年までに32.3%減ると予測されています。しかし主に労働力として期待される生産年齢人口は同年までに45.9%減。どんどん人手不足が深刻化することが予測されているいま、外国人就労拡大によって労働力不足を解消したい狙いです。

特に人手不足が問題となっているのは「5業種」とも呼ばれる、建設、農業、宿泊、介護、造船業。他にもビルクリーニング、食品・飲料製造、電気機器、車の整備などを含む「14業種」においても積極的に外国人就労を拡大していく方針です。

新たな在留資格「特定技能」、3業種で単純労働OK

こうした流れを受けて、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入国管理法が2018年12月成立しました。新しい在留資格「特定技能」の対象となる「14業種」で受け入れが可能となり、2019年4月から施行されます。2019年4月から特定技能1号の試験を実施するのは介護、宿泊、外食の「3業種」になる見込みで、外国人労働者の単純労働が許可されることになると話題になっています。

専門知識や高いコミュニケーション能力を求められる介護や、おもてなしや臨機応変な対応が必要となる宿泊・外食を一概に「単純労働」と呼べるのか?と疑問視する声も上がっています。しかし、単純労働を禁じてきた外国人労働者受け入れの方針が、大きく変わる転機となることは間違いないでしょう。

外国人労働者数の推移と内訳

日本における外国人労働者は、2017年10月末現在約128万人(前年同期比18%増)です。2012年は、前年の東日本大震災の影響から外国人労働者の数が減りましたが、その他は年々増加の一途を辿り、2017年には届け出を義務化して以来、過去最高数となりました。

また過去5年間で外国人労働者は60万人増加していますが、そのうち約半数は技能実習や留学生アルバイトなどの資格外活動の方々です。

外国人労働者数の内訳

前出の「我が国における外国人労働者数の推移」を見ると、日系2世・3世や在日の永住者たちの「身分に基づく在留資格」の割合が一番多く占めています。いわゆるホワイトカラー的な仕事の「専門的・技術的分野の在留資格」、人手不足を背景として推し進められてきた「技能実習」、留学生がアルバイトとして働く「資格外活動」の割合も軒並み増加しています。今後は新たな制度「特定技能」の外国人労働者が増加していくと想定されます。

国籍別では中国からの労働者が一番多く、全体の29.1%を占めています。中国は国内が好景気なので、近年は減少傾向にあります。次いでベトナムが18.8%を占め、前年対比の増加率39.7%ともっとも増えている国です。次にネパールも31%増え、ベトナムとネパールからの労働者が急激に増えていることがわかります。

在留資格別の就労制限

在留資格 該当例 就労制限
専門的・技術的分野 医療従事者・教育関係者・グローバル企業転勤者・弁護士など 在留資格に定められた範囲でしか就労できない
身分に基づき在留する者 日系2世などの定住者・日本人の配偶者・永住者 就労活動に制限なし
技能実習 製造業、漁業、農業などの分野での技術習得者 最長5年、実習修了後には帰国しなければならない
特定活動 EPA看護師・介護福祉士候補・ワーキングホリデー、アマチュアスポーツ選手など 3年以内に国家資格に合格しなければ帰国
資格外活動 留学生などのアルバイト 週28時間以内・長期休暇中は1日8時間以内の労働時間制限あり