育児休業取得率(育休取得率)男女別の推移と現状、計算方法、世界各国との比較

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記事の情報は2018-08-30時点のものです。

育児休業取得率(育休取得率)とは、出産した本人または配偶者が育児休業を取得した場合の割合のことです。本記事では、育児休業取得率(育休取得率)の計算方法、育児休業取得率(育休取得率)の男女別推移、性差による育休取得の現状と課題、特に男性の育児休業取得の難しさにも焦点をあて、世界各国との比較から育児休業取得率向上に向けていま必要なこととは何かを探ります。
育児休業取得率(育休取得率)男女別の推移と現状、計算方法、世界各国との比較

育児休業取得率(育休取得率)とは

育児休業取得率(育休取得率)とは出産した本人または配偶者が育児休業を取得した場合の割合のことを指します。例えば女性の育児休業取得率(育休取得率)を算出するには、育児休業取得者の数を出産した社員数で割ります。男女ともに育児休業取得率(育休取得率)は上昇傾向ですが、男性の取得率は依然低くより一層の働き方改革が求められています。

育児休業取得率(育休取得率)の計算方法

育休取得率の計算方法は男女で異なっており、次の計算式で求められます。

【男性】育児休業取得者数 ÷ 配偶者が出産した社員数 ×100
【女性】 育児休業取得者数 ÷ 出産した社員数 ×100

育休取得率の対象となるのは無作為に抽出された正規、非正規を含む5人以上の従業員がいる民間事業所で、厚生労働省の雇用均等基本調査で報告されます。

育児休業取得率(育休取得率)の男女別推移

厚生労働省の調査によると2016年の育児休業取得率は2015年に比べて、女性で約1.1倍、男性で約6.4倍と男女ともに上昇しています。しかし厚生労働省「平成 29年度雇用均等基本調査」によると女性の取得率は83.2%であるのに対し、男性は5.14%とかなりの開きがあります。

父親が育児に参加しやすいように2010年6月から育児・介護休業法の改正が行われ、2011年度は男性の育休取得率はやや上昇を見せたものの、翌年には再び下降し、その後は徐々に上昇傾向を見せています。

女性の育児休業取得率(育休取得率)の現状と課題

日本における女性の育休取得率は、どのようになっているのでしょうか。正規雇用のほうが非正規雇用よりも、また規模が大きい企業のほうが小さな企業よりも、育児休業を取得しやすい傾向があることや、出産後の離職、その後の働き方について現状と課題を説明します。

育休を取得しやすい環境

厚生労働省の中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアルによると、全体的な傾向として正規雇用は非正規雇用より、規模が大きい企業は小規模な企業より育休が取得しやすい傾向にあります。

育休取得後の職場復帰

また、働いている女性の約6割が第1子出産後に離職しており、この状況は20年余り変わっていません。これは育友取得後の職場復帰がまだ難しい状況にあるという現実を示していると考えられます。

その一方で短時間勤務など柔軟な働き方が取り入れ始められており、こうした仕組みが取り入れられる大企業などは出産後の離職が減少し始めているようです。

男性の育児休業取得率(育休取得率)の現状と課題

従来は、男性は大黒柱として外で働き、育休とは女性がとるものと考えがちでした。しかし昨今は、育児休業を取得したい男性も増えてきており、男性の育児休業取得率(育休取得率)は過去最高を記録しています。とはいえ、5.14%と女性に比べるとかなり低く、また業界により育児休業(育休)取得の難易度は異なるようです。

UZUZの調査によると、20代の第二新卒・既卒・フリーターとして就職活動中の方の4割が「働き方改革が実現していれば前職にとどまっていた」と回答しており、若手を中心に育休・産休制度を求める男性は増えています。

育休取得は2年連続過去最高

男性の育休取得率は2016年度が3.16%、2017年度が5.14%となっており、2年連続過去最高記録を達成しています。取得しやすい業種としては金融・保険業(15.76%)、情報通信業(12.78%)の育休取得率が高く、サービス業や娯楽業は1.19%。とかなり低い数字になっています。

高まる男性育休の希望

平成27年度の政府の調査では実際に育休を取得した男性より育児休業を希望した方が多く、またユーキャンの希望調査では男性の育休取得者の83.9%が育児休暇を「もう一度取得したい」と希望しています。これらの調査からも多くの男性が育休に対して積極的であることが伺えます。

企業側も、男性の育児休暇取得を「マネジメント能力向上研修が、プログラム作成も講師招聘もなしで実現できる機会」だととらえ、促進する動きがあるようだ。

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男性が育児休業を取れない理由

育休に対して積極的な男性が増えているのにもかかわらず、育休を取る男性が少ないのはどうしてなのでしょうか。

具体的な理由としては会社に育休制度が普及していない、仕事が多忙で育児休業をとれる環境にない、金銭的な問題など男性が育休を取る際にはさまざまな問題があるようです。男性の育休取得率を上昇させるためには、こうした問題を解決する必要があるとともに、法律で定められている"権利"としての育児休業制度についての周知も重要なのではないでしょうか。

世界と日本の育休取得率

全体的に取得率は高まっているものの、男性の取得率が低く、かつ女性も職場復帰が難しい現状にある日本の育休制度。世界各国ではどのようになっているのでしょうか。

世界の育休制度

厚生労働省の諸外国における育児休業制度等についてによると、日本の育休制度は子供が満1歳になるまで取得できるのに対し、イギリスは5歳未満、フランスは満3歳まで取得できます。

それに対しイギリスでは男女ともに12%が取得しており、スウェーデンではほぼすべての女性が取得しています。

育児に優しいスウェーデン

北欧は特に教育に力を入れていることで有名ですが、スウェーデンにおいてほぼすべての女性が育休を取得できる背景にはどのような環境があるのでしょうか。

スウェーデンの育休制度では両親合わせて合計480日間有給育休を取得でき、父親の90%近くが育休を取得しています。そもそも父親は最低でも2か月の育児休暇を取らなければ休暇手当てがもらえないという仕組みになっており、こうした制度も父親の育休取得を推進しているものと思われます。

育休を取得できる環境であるか

世界の育休制度に比べて日本の育休制度は職場復帰の環境はもちろん、男性の取得環境の整備などまだまだ問題が山積みといえるでしょう。こうした点から企業がどれだけ育休を取得できる環境か把握しておくのは、社員のモチベーションをあげるきっかけにもなるはずです。

平成「男女共同参画白書」によると、日本では平成28年における6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連に費やす時間(1日当たり)は83分と他の先進国と比べてかなりの低水準にとどまっています。こうした調査からも男性の育休取得を促進し、家事育児時間を延ばすのは急務といえます。

また職場復帰に関してもマタハラやパタハラ、マミートラックなどの問題が報告されており、出産後も女性が継続して働き続けられる環境を実現できるよう社会全体で取り組んでいく必要があります。

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