カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いや定義を解説
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カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、直訳すると「顧客の成功」といった意味で、能動的に顧客に働きかけ成功体験へつなげていくビジネス方法です。英語の頭文字を取ってCSとも略されます。既存顧客に働きかけ、解約率の低下や顧客満足度の向上を目指します。
カスタマーサクセスは、とくにスタートアップや、サブスクリプション型(継続課金)ビジネスの企業で重要視されている方法です。しかしカスタマーサポートとの違いや、求められている役割について、理解できていない方も多いのではないでしょうか。
カスタマーサクセスが注目される背景や、カスタマーサクセスの役割、考え方について成功事例を交えてわかりやすく解説します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスに関する求人媒体には、問い合わせ対応やユーザーサポート、顧客満足度、既存顧客のフォローといった記載が見られます。ここからは、既存営業なのか、それともカスタマーサポートなのか判断しにくいかもしれません。
本質的な役割を理解するためにも、まずは両者の目的や顧客に対する姿勢などを比較しましょう。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
---|---|---|
目的 | 顧客の成功体験 | クレーム処理・不満解決 |
姿勢 | 能動的 | 受動的 |
指標 | 売り上げ・解約率 | 対応件数・満足度 |
ゴール | 顧客の成功 | 問題の収束 |
能動的なカスタマーサクセス
カスタマーサクセスの場合は、積極的に顧客に働きかけ、顧客を成功に導くことが目的であるため、アクション起点は顧客ではなくサービス提供側です。
またBtoB業界で月額課金型のサービスを提供している企業の場合、カスタマーサクセスにとって、契約開始はゴールではなくスタートです。契約後にフォローができていないと満足度は低下し、解約になることも想定できます。
そのため、提供サービスによって課題を解決できているかが、重要なポイントです。顧客に寄り添い、伴走することで成功体験のプランニングを実施します。
受動的なカスタマーサポート
カスタマーサクセスに対して、カスタマーサポートは受動的です。
コールセンターをイメージするとわかるとおり、カスタマーサポートは問い合わせ・クレームなどがあって、はじめてアクションが開始されます。
またカスタマーサポート(コールセンター)は、クレームといった問題を迅速に処理することで、顧客満足度を維持することが目的です。解決までのスピードも顧客満足度につながるため、指標やKPIのメインとなるのはオペレーターの対応件数である点も、カスタマーサクセスと異なります。
「The Model」に見るマーケティングや営業との違い
結論からいうと、カスタマーサクセスとマーケティングは、どちらも営業プロセスの一種です。また、カスタマーサクセスとマーケティングの関係性は、「The Model」で説明できます。
「The Model」とは、近年日本で普及した新たな営業手法のことです。新規開拓から受注後までの全営業プロセスを、「マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス」にわけ、それぞれの部門が連携して営業効率や成果を高めます。これらの部門は上から順番に、次のような役割・流れで営業を行います。
- マーケティング…広告宣伝や販促、顧客との接点づくりでリード(見込み客)を獲得
- インサイドセールス…リードに対し、メールや電話による関係性の構築でアポイントを獲得
- フィールドセールス…実際に商談を行い、商品・サービスの提案やクロージングを実施
- カスタマーサクセス…受注後の顧客をサポートし、契約のリテンション(維持)や顧客満足度の向上を目指す
このようにカスタマーサクセスとマーケティングは、大きく括れば同じ営業ではありますが、役割や実際に行う業務は大きく違います。
カスタマーサクセスが注目される理由
カスタマーサクセスが注目を集める背景には、4つの変化があります。
ビジネスモデルの変化
近年ではSaaS業界を中心に、サブスクリプション型のビジネスモデルが普及しています。サブスクリプションモデルとは、利用者が「モノを買う」のではなく「利用期間に応じて費用を支払う」方式です。
サブスクリプションモデルの詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
BtoB業界でもこれまでは、パッケージ型商材のように初期に大きな費用を払うことでサービスを利用するモデルでした。しかし、現在ではDropboxやSalesforceなどのSaaSベンダーに代表されるように、インターネット上でサービスを提供する月額課金が浸透しています。
2022年に発表された調査資料(※)によると、SaaS市場規模は2026年度には約1兆7,000億円の規模になると予測されています。
※出典:富士キメラ総研「プレスリリース:『ソフトウェアビジネス新市場 2022年版』まとまる(2022/8/16発表 第22087号)」(2023年12月4日閲覧)
またBtoBだけでなく、BtoC業界でもサブスクリプションモデルに移行しており、たとえば「Pley」では月額でおもちゃの貸出しを行っています。今後も月額課金方式のビジネスモデルは、広がり続けることでしょう。
カスタマーサクセスは、SaaSには必要不可欠な存在です。実際カスタマーサクセスの市場規模も、SaaS市場と同様大幅に拡大を続けています。ではなぜSaaSにカスタマーサクセスが必要なのでしょうか。
営業スタイルの変化
SaaSにカスタマーサクセスが必要なのは、サブスクリプションモデルが浸透したことによる営業スタイルの変化が原因です。営業スタイルの違いを、売り切り型・サブスクリプション型で比較しましょう。
売り切り型商品の営業:契約がゴール
以前までのITツールやシステムは、ほとんどが売り切り型であり、契約締結がゴールでした。契約数を取ることがもっとも重要であるため、話し方を工夫し、提案力を付けるよう努力します。営業に関する職種の経験者であれば、書籍を読みながらこのような勉強もされてきたのではないでしょうか。
この形の営業では、販売後顧客に不満があったとしてもさほど問題はなく、カスタマーサポートも重視されていませんでした。
サブスクリプション型の営業:契約がスタート
月額型の場合は契約が顧客との関係スタートです。期待値の調整や、顧客とのゴール設定ができていなければ継続してもらうことは望めません。1回に支払う金額も少なく、解約リスクも低いため、他社への乗り換えも簡単です。
そのため、営業においてもどれだけ継続利用してもらえるかが、重要なポイントとなりました。一方で、カスタマーサクセスはツールの力を引き出して、ユーザーの事業を成功させることが目的です。つまり、顧客満足度の向上による契約の維持に直結する部門であるため、SaaSで重要なポジションとなったのです。
またSaaS型のサービスの場合、リリース当初は改善が必要な部分も多くありますが、徐々に機能がアップデートされ、顧客や市場とともにプロダクトが成長します。
SaaS業界のようなサブスクリプション型ビジネスの営業では、顧客の声をプロダクトにフィードバックし、製品力を高めていくモチベーションが必要といえます。
CXの浸透と重要性の高まり
CXとは、Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略で、日本語に直訳すると「顧客体験」です。商品の性能や価格といった「モノ」の価値ではなく、購入までの過程や、購入後の体験といった「コト」の価値を重視する、近年浸透してきた考え方です。
カスタマーサクセスも、このCXに大きく関わっています。なぜならカスタマーサクセスでどのような受け答えをし、どのような成功体験を与えたかが直接「顧客体験」として評価されるからです。つまり、カスタマーサクセスはCXを向上させるためにも、重要な役割を担っています。
商品・サービスを差別化する必要性が増加
現代の日本では、情報網が発達したことで商品・サービスはさまざまな面で簡単に比較できるようになりました。このとき、数多くの商品と比べられて選ばれるには、特出した魅力がなければなりません。
もっとも簡単な差別化の要素は価格ですが、他社も同様にコストダウンを図るため、価格を下げるのにも限界があります。また機能面で差別化を図っても、情報がすぐに広がるため模倣や上位互換のものがすぐに登場するのが現状です。しかし上質なカスタマーサクセスが提供できれば、それが差別化となり、顧客の獲得や維持にもつながります。
デジタルトランスフォーメーションの重要性が増加
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データやAI、IoTといったデジタル技術を活用し、業務プロセスやサービス、ビジネスモデルを改善することです。
デジタル化が進む中で、企業は新しいテクノロジーを取り入れる必要に迫られています。しかし、いきなりデジタル化を推進しようとしても、思うようにいかない場合も多いのが現状です。
カスタマーサクセスは、顧客がこれらの新技術をスムーズに導入し、活用するための支援を提供しています。顧客が直面する技術的な課題を解決し、デジタルトランスフォーメーションの成功をサポートすることが、カスタマーサクセスの重要な役割です。
カスタマーサクセスで重要なKPI
カスタマーサクセスにおいてKPIとして設定される、いくつかの重要な指標について解説します。カスタマーサクセスで大切なことは何か?を考えながらチェックしてください。まずKPIのカスタマーサクセスにおける意味を把握することで、次章のカスタマーサクセスの機能・役割へ進むと理解が深まります。
解約率(チャーンレート)
解約率はどれだけ解約されずにいられるかを把握する指標です。別名、チャーンレートと呼ばれます。「チャーン(churn)」は解約、「レート(Rate)」は率や歩合を意味し、チャーン自体もよく使われる言葉です。とくにSaaSは長く契約を続けてもらうことで収益を上げられるため、チャーンレートをKPIとし、目標設定するケースも少なくないでしょう。
たとえば、キャンペーンで顧客を大量に獲得したとしても、既存顧客に対するフォローを何も行わないと、チャーンレートの上昇が止まらなくなるかもしれません。
解約率は次の計算式で求められます。
解約率(%)=解約した顧客数÷契約した顧客数×100
カスタマーサクセスが機能して、顧客に成功体験をもたらせば、顧客はサービスを継続します。そして結果として解約率が下がる、これがカスタマーサクセスの考え方です。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)も、カスタマーサクセスの重要な指標です。LTVの数値が大きくなるほど、企業に対して継続的に利益を与えてくれるリピーターになっていることを示します。
もし、LTVが少ない顧客の割合が多い場合は、本当に顧客の求めている商品やサービスを提供できているかどうか、見直す必要があるでしょう。
LTVは次の計算式で求められます。
LTV(顧客生涯価値)=年間取引額×収益率×契約年数
LTVを上昇させるには、商品やサービスを継続して利用してもらえるよう、施策を行う必要があります。解約率を下げつつ、より長く金額の高いサービスを使ってもらことが重要です。
顧客ロイヤリティ・NPS(ネット・プロモータースコア)
顧客ロイヤリティとは、顧客が商品やサービスに対する信頼や愛着の度合いを指します。NPS(NetPromoterScore)とは、顧客ロイヤリティを計測する指標です。
顧客ロイヤリティの「ロイヤリティ」はもともと英語で忠誠心を意味し、ロイヤリティが高い顧客は解約率の低下や、顧客単価のアップ、口コミといった宣伝が期待できます。
とくにサブスクリプションサービスでは、「楽しい」「おもしろい」「好き」などポジティブな気持ちがサービスの継続にダイレクトに影響します。そのため、サービスを提供する側は、ある程度ロイヤリティを数値化して、顧客の気持ちを把握する必要があるでしょう。ここで利用するのがNPSです。
NPSは、商品やサービスのおすすめ度を0~10点の11段階でアンケート評価してもらい、顧客を分類します。点数が高いほどおすすめしたい内容であり、顧客満足度も高いことがわかります。NPSは顧客ロイヤリティを数値化する有益な方法です。
アップセル率・クロスセル率
アップセルとは、今契約している商品・サービスよりも、高額なモデル・料金プランに変更することを指します。またクロスセルは、今契約している商品・サービスにくわえ、同じ企業の別商品・サービスの契約・購入を行うことです。
サブスクリプションサービスの場合、基本的に毎月支払う金額は一定になるため、既存顧客での売り上げ向上を図り、LTVを増やすために重要な指標です。ただし、カスタマーサクセスは顧客の成功を第一としているため、必ずしもアップセル率やクロスセル率の向上が必要とはいえないでしょう。
顧客満足度(CSAT)
顧客満足度(Customer Satisfaction、CSAT)は、顧客が提供されたサービスや製品にどれだけ満足しているかを示す指標です。通常、アンケートやフィードバックを通じて測定され、カスタマーサクセスの効果を反映します。
顧客満足度が高いほど、文字どおり製品やサービスに対する満足度が高いことを示し、顧客の継続利用や口コミの拡散につながるでしょう。
上述した顧客ロイヤリティにも似ていますが、顧客満足度は顧客が満足したかどうかを測り、顧客ロイヤリティは顧客が愛着をもってリピーターになるかの度合いなので、このふたつの指標は異なります。
サービス利用度(エンゲージメント)
サービス利用度、または顧客エンゲージメントは、顧客がどの程度積極的にサービスを使用しているかを測定する指標です。ログイン頻度、機能の使用状況、活動レベルなどを分析し、顧客がサービスをどのように利用しているかを把握します。
高いエンゲージメントは顧客の製品やサービスに対する関心の高さを示し、長期的な関係構築に貢献するでしょう。
既存顧客維持率(リテンションレート)
既存顧客維持率、またはリテンションレートは、顧客がサービスをどれだけ長期間利用しているかを示す指標です。この率が高いほど、顧客が長期間にわたって製品やサービスに満足し続けていることを意味し、ビジネスの健全性と持続可能性を示しています。
カスタマーサクセスで使われるその他の言葉
カスタマーサクセスでは、上記の指標のほかにも、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチや、オンボーディングなどの言葉がよく使われます。次に、これらの言葉について解説します。
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチは、それぞれ顧客の分類を表す言葉です。カスタマーサクセスにおいて、それぞれ顧客は次のように分類されます。
- ハイタッチ…利益の総額見込み(LTV)が大きい顧客
- ロータッチ…利益の総額見込み(LTV)がやや大きい顧客
- テックタッチ…利益の総額見込み(LTV)が小さい顧客
カスタマーサクセスでは効率的にアプローチを行うため、誰にどの程度注力するかを見極める必要があります。そのため上記のように分類を行い、分類ごとに対応もわけて行うのが一般的です。
たとえばハイタッチは個別対応、ロータッチはセミナー・勉強会といった集団での対応、テックタッチはメール対応といった非対面で対応します。
オンボーディング
オンボーディングは、乗り物に乗った状態を表す「on-board」から来た言葉で、サービスの導入時に正しく利用し、定着をうながすためのプロセスのことです。カスタマーサクセスにおいては、導入支援全般を指す言葉といえます。
システムやITツールは多機能なものも多く、とくに機械に慣れていない方や導入直後は操作方法や活用方法でつまづきがちです。そこでカスタマーサクセスが正しくシステムを活用できるよう、直接企業を訪問して導入をサポートしたり、セミナーを開催したりします。
顧客ライフサイクル(カスタマーライフサイクル)
顧客ライフサイクル(カスタマーライフサイクル)は、顧客が商品やサービスを「認知」し、「検討」から「購入」、そして「利用」から「再び購入」といった、製品やサービスと関わる全体的なプロセスを指す言葉のことで、主に6つの段階に分解されます。
カスタマーサクセスでは、顧客ライフサイクルを理解し、各段階における顧客のニーズに合わせたサポートの提供が重要です。
カスタマーサクセスの機能・役割
ここからは、カスタマーサクセスの機能・役割やメリットについて詳しく解説していきます。
成功体験で解約率を引き下げる
KPIの項目でも解説したとおり、サブスクリプションモデルの場合、いかに顧客の継続率を維持できるかが鍵です。役割の1つは既存顧客の成功体験をプランニングし、解約率を下げることです。解約率に関わる指標は、主に2種類あります。
- カスタマーチャーン
カスタマーチャーンは、顧客数にフォーカスをした指標で、全体の顧客数に対しての解約率を見る指標です。
カスタマーチャーン= 計測期間での解約数 ÷ 一定期間内での契約顧客数
- レベニューチャーン
レベニューチャーンは収益にフォーカスをした指標で、売り上げに対して解約によるインパクトがどれだけあるのかを見る指標です。
サブスクリプション型の場合は単純な解約数ではなく、売り上げインパクトを図るレベニューチャーンのモニタリングが必要になります。
レベニューチャーン= (計測期間でのサービス単価 × 解約数) ÷ 計測期間内での合計売り上げ
LTV(ライフタイムバリュー)を最大化させる
2つ目は上記のチャーンレートと重なる部分も一部ありますが、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を最大化させることです。既存企業へのアップセル・クロスセルを実施することで顧客単価の引き上げを行います。
営業経験のある方はご存じのとおり、新規開拓よりも既存顧客から売り上げを上げる方が比較的容易にできるものです。解約率を低水準で維持しながら、課題に合わせた提案を行うことで、収益を最大化できます。
顧客ニーズを吸い上げ、プロダクトを改善する
顧客のニーズを拾いながらプロダクトを育てるのも、カスタマーサクセスの重要な役割です。SaaSは顧客離れを防ぐため、常に顧客と市場の変化に対応していく必要があります。カスタマーサクセスは直接顧客とやりとりを行い、課題のヒアリングを行うため、これらの声を集め分析することでプロダクトの改善に役立てられます。
カスタマーサクセスの具体的な仕事内容や活用方法
カスタマーサクセスは、カスタマーサポートほどではありませんが、幅広いシーンで活躍します。カスタマーサクセスの役割は、顧客が製品やサービスを最大限に活用し、結果として「成功を収めること」を支援することです。そこで次に、具体的な仕事内容や活用方法を紹介します。
システムの活用・導入支援
カスタマーサクセスでもっともよく利用されるシーンが、システムの活用・導入支援です。前述したオンボーディングもこれに該当します。システムは使い方がわからないと放置されてしまい、解約につながるため、これをカスタマーサクセスでフォローします。
オンボーディング後の活用支援も重要です。前述したようにSaaSは機能の追加や修正が頻繁に行われるため、ユーザーが新機能をうまく活用できるよう支援します。また、オンボーディング後も活用支援を行えば、アップセルやクロスセルにつなげやすくなるでしょう。
顧客が抱える課題に関するウェビナーの開催
製品の効果的な使用方法や、顧客が抱えているであろう課題に関するウェビナーを開催するのも、カスタマーサクセスの仕事といえます。
これにより、顧客は課題に合わせた製品の活用法を学び、知識を実務に活かせるようになるでしょう。
情報共有や意見交換できるコミュニティの運営
SaaSには、システムのユーザー同士で交流できるコミュニティサイトがあり、カスタマーサクセスが運営していることもあります。システムの使い方や、活用方法で疑問があった場合質問を投げかけると、別のユーザーが回答してくれるため、自己解決をうながせます。
また活用の成功事例や感想を共有できるため、システムの理解度を深められ、コミュニティ形成による解約率の低下や顧客満足度の向上が期待できるでしょう。カスタマーサクセスとしても業務負担を軽減でき、商品・機能開発のためのヒントが得られます。
「コミュニティに属する」ことは、いわば顧客がファン化している状態であり、一種のファンマーケティングともいえます。
システム利用状況の確認
顧客満足度や解約率は、前述した指標のほか、システムの利用状況からも予測できます。カスタマーサクセスでは、主にログイン頻度や利用時間の長さ、機能の活用頻度などをモニタリングします。
これらを計測し、収集・分析できればシステムを使いこなせているか、またシステムに満足しているかも推察できるでしょう。特定の機能が使えていない場合は、活用支援の提案にもつなげられます。
定期的なフォローアップとフィードバックの収集
定期的なフォローアップを通じて顧客の状況を確認し、製品やサービスに関するフィードバックを収集します。これにより、顧客の成功をサポートするだけでなく、製品の改善点を発見にもつながるでしょう。
製品アップデートや新機能の案内
新しい製品アップデートや機能に関する情報を顧客に提供し、活用方法を案内するのもカスタマーサクセスの役目です。顧客が最新の機能を知り、それをビジネスに活かせるよう支援します。
解約抑止のためのサポート
解約を検討している顧客に対し、検討理由を深く理解し、解決策を提案します。製品やサービスの価値を再認識させ、長期的な顧客関係を維持するための努力をするのも、カスタマーサクセスの仕事です。
カスタマーサクセスストーリーの作成
成功事例やカスタマーサクセスストーリーを作成し、他の顧客や見込み顧客に製品の価値と効果を示します。製品の信頼性を高め、新規顧客の獲得に貢献するといった仕事も、カスタマーサクセスがもつ役割です。
カスタマーサクセスに求められるスキル
カスタマーサクセスの職務を効果的に遂行するためには、次のようなスキルセットが必要です。
コミュニケーション能力
カスタマーサクセスの業務は、顧客とのコミュニケーションが中心です。効果的にコミュニケートするためには、聞き上手であること、適切にフィードバックを提供する能力が必要です。顧客のニーズや問題を理解し、それに応じた解決策を提案できる能力が求められるでしょう。
問題解決能力
カスタマーサクセスは顧客が直面する問題を解決するために、柔軟な思考と創造的なアプローチが求められます。問題の根本的な原因を特定し、効果的かつ実行可能な解決策を提案する能力が必要です。
製品知識
顧客が製品やサービスを最大限活用できるようにするには、製品やサービスに関する深い知識が不可欠です。製品の機能や利点、最適な使用方法を理解し、顧客にわかりやすく伝えることが求められます。
データ分析能力
カスタマーサクセスは顧客のデータを分析し、結果をビジネス戦略に活かす必要があります。データを読み解き、有益な情報を抽出する能力が必要となるでしょう。もちろん、単なるデータ分析能力だけでなく、基本的なデータ分析ツールの使用能力も求められます。
リーダーシップとチームワーク
カスタマーサクセスはチームで働くことが一般的です。チーム内でリーダーシップを発揮し、他のメンバーと協力して目標を達成する能力が求められるでしょう。また、他部署との連携も重要であり、社内の異なるチームと協力することが頻繁に発生します。
カスタマーサクセス成功へのポイント
カスタマーサクセスの考え方や姿勢について紹介してきました。しかし、目の前の顧客だけを見ていては会社としてのグロースは望めません。
これは私見ですが、いいプロダクトに育てるためには「正しい顧客への提案」、「顧客ごとの最適な対応」「組織全体としての意識」などが重要といえます。
正しく売れる顧客か見極める
プロダクトリリース直後はまずは利用企業を増やすため、さまざまな企業にセールスをかけ1社でも契約を取るためにひた走ります。しかし、本当にサービスで課題を解決できる顧客であるかは見極めるべきです。
プロダクト改善を前提にした提案であれば問題ありませんが、ミスマッチが発生するとわかっている場合は会社の悪評にもつながります。パワーをかけた結果、互いに不幸になる可能性もあるでしょう。
ミスマッチを防ぐためには、顧客データの収集や分析といった、顧客管理をしっかり行うことが重要です。CRM(顧客管理システム)の活用や、プラットフォームから提供されている顧客データを活用し、本当に自社のサービスが必要か見極めましょう。
また、目先の売り上げのために行う無理なイレギュラー契約も避けるべきです。イレギュラーな場合は顧客の課題解決に直接寄与しないことが多いはずです。満足度が低下した先にあるのは解約であり、誰も得をしません。
顧客の要望を受けることが正しくない場合も
SaaSビジネスは、顧客の要望を吸い上げ、プロダクトを改善することでユーザー数を伸ばします。
しかし、機能開発をする際は「どの程度利用されるのか」を判断する必要があり、マイノリティ意見を取り入れると全体としての利便性を損ねる可能性もあります。プロダクトチームと連携し、本当に追加すべき機能なのかを、慎重に判断することも重要なポイントです。
顧客ごとに最適な対応を行う
人的なリソースは限りがあるため、顧客が必要とする対応を見極め、効率よくアプローチを行うことが重要です。顧客の見極め方としては、前述したハイタッチ・ロータッチ・テックタッチといったタッチモデルを使いましょう。
収益やニーズに合わせて顧客を区分し、対応をわけることで限られたリソースの配分も最適化できます。またヘルススコアの活用もおすすめです。ヘルススコアとは、顧客が継続的にサービスを利用してくれるかどうかを測る指標です。
点数が高い顧客は健康で寿命が長い、つまり継続利用が見込まれ、点数が低いと寿命が短く解約の可能性が高いと判断できます。SaaSであれば、ログイン頻度やイベント参加率、NPSなどを項目にして点数化します。
点数が高い顧客へは、セルアップやクロスアップを提案し、点数が低い顧客へは課題のヒアリングと対策を講じましょう。
組織全体でカスタマーサクセスに取り組む
カスタマーサクセスは、担当部門だけでなく組織全体と連携して取り組むことが重要です。前述したように、カスタマーサクセスは営業プロセスの一部であり、カスタマーサクセス部門だけで活動してもうまくいきません。
また前述したようにカスタマーサクセスはユーザーニーズを拾い上げ、フィードバックする役割もあるため、エンジニアといった開発系部門や経営陣との連携も必要です。そのため、カスタマーサクセスは組織全体がチームである意識をもち、スムーズに連携できる体制を整えましょう。
カスタマーサクセス事例「Sansan」
名刺管理システム「Sansan」で知られるSansan株式会社は、2012年に日本初となるカスタマーサクセス部門を立ち上げています。早い段階でカスタマーサクセスの重要性に気づいたSansanは、オンボーディングを中心として活動してきました。
結果現在でもBtoBにおける名刺管理システムのシェア率は約83%※と圧倒的で、解約率も0.59%※と低水準を維持しています。
なお下記の記事では、Sansan株式会社のプロダクトアライアンスマネジャーが、Sansanの事例も交えて、カスタマーサクセスの果たすべき役割やアクションについて紹介しています。気になる方は、ぜひ参考にしてください。
※出典:Sansan株式会社「2023年5月期 第1四半期 決算説明資料」(2023年8月27日閲覧)
カスタマーサクセス立上げ・運用におすすめのサービス・ツール比較
カスタマーサクセス立上げや、運用におすすめのクラウドサービスやITツールを紹介します。各サービスの料金や機能、特徴を詳しく比較したい方は、無料でダウンロードできる資料がおすすめです。
- カスタマーサクセスに必須級の機能を網羅
- 顧客情報の効果的な管理運用を実現
- サービス改善のループを回し、解約率を軽減
Growwwing(グローウィング)は、サブスプリクションビジネスの成長を加速し、収益を最大化するカスタマーサクセス管理ツールです。
利用状況や行動履歴などの顧客情報収集やヘルスコアチェック、プレイバック管理、顧客Q&A対応、改善要望の蓄積といったカスタマーサクセスに必要な機能を網羅しています。顧客情報を効果的に管理し、サービス改善のOODAループ(ウーダ・ループ)を回すことで、解約率を抑えます。
クアルトリクス カスタマーエクスペリエンス(CX)|Qualtrics - クアルトリクス合同会社
- アンケートをもとに顧客体験を改善
- チャネルやデバイスを問わないアンケート
- データ分析で顧客体験価値を向上
クアルトリクス カスタマーエクスペリエンス(CX)は、顧客体験を改善するためにアンケート配信やデータ分析のできるシステムです。
回答するチャネルやデバイスが自由なアンケートを作成し、回答率を向上させます。またより多くのデータから顧客のインサイトを発見し、対処できます。ほかツールと連携し、顧客へよりよい体験を提供できるよう設計しましょう。
セールスプロセスアウトソーシング - 株式会社Surpass
- 戦略策定から実行まで一気通貫のサポート
- 営業の一括代行も部分代行も対応
- 営業経験者が現場目線で戦略策定
セールスプロセスアウトソーシング は、マーケティングから営業活動の実施までトータルサポートするサービスです。業務を請け負う担当者は全員が営業経験者で、現場目線での戦略を策定し、効果的に営業プロセスを進められます。
新規顧客獲得から見込み客へのアプローチ、マーケット調査まで売り上げを拡大する施策の実行が可能です。Web広告運用やSNS運用、コンテンツ制作などデジタル面での販促活動支援、施策の効果測定と改善提案まで幅広く対応します。
Adobe Marketo Engage - アドビ株式会社
- 休眠顧客の掘り起しから育成までワンストップで提供
- イベント名刺の迅速なMA活用
- 精度の高いターゲティングを実現
Adobe Marketo Engageは、業界では米国で唯一のマーケティング専業ベンダーであり、Marketo製品はこれまで全世界で多くの導入実績があります。
使いやすいインターフェースと、マーケターの立場で考えられた豊富な機能が特徴です。LeadVisca(リードビスカ)では名刺を取込むと、スピーディーにマーケティングオートメーションのデータベースに格納されるため、すぐにマーケティング活動に名刺情報を利用できます。
- カスタマーサクセスの代行からコンサルティングまで総合支援
- フェーズにあった支援が受けられる
- 英語、中国語、韓国語、欧州言語など多言語に対応可能
CS STUDIO(シーエススタジオ)は、スタートアップを中心とした新規事業向け総合支援サービスです。カスタマーサクセス戦略や成果指標の設計、リソース提供、施策代行など、ワンストップでサポート可能です。
顧客への直接インタビューや市場調査などをもとにした、顧客が考える成功体験を軸にサポートを行っています。実行施策の振り返りをもとにオペレーションを調整してくれるため、事業やプロダクトなどのフェーズにあった支援を受けられます
- 企業規模やニーズに応じてシステムをカスタマイズできる
- 自動応答や振りわけ機能で顧客を待たせない
- 顧客ロイヤルティの向上が可能
Zendeskは、電話やボイスメール、テキストメッセージによるカスタマーサービスを簡単に構築できるサービスです。
IVRや自動割り当て機能で、顧客からの問い合わせに迅速に対応します。分析機能も豊富で、電話サポートだけでなくメールやチャットと合わせて改善点を分析可能です。パーソナライズされた顧客体験が実現でき、顧客ロイヤルティを高められます。
SALES PARTNERS(カスタマーサクセス代行) - 株式会社スタジアム
- 営業支援からコンサルティングまで営業活動を軸に事業をサポート
- ツール作成や組織づくりの支援まで可能
- 若手中心のメンバーで対応
SALES PARTNERSは、リテール営業や法人営業、業界特化型SaaSなど業界や規模を問わず対応可能な営業支援サービスです。カスタマーサクセスやアップセル営業など、フェーズに合わせた人材を提案してくれます。
営業活動のレポーティングや営業戦略戦術の提案、ツールの作成までを料金に含み、月額固定費で利用できます。アウトソーシングのほか、カスタマーサクセスチームの立ち上げや、営業活動の分業化など、組織づくりも支援可能です。
- 大量に散らばる顧客データを集約して分析
- AIが解約リスクを自動算出
- 顧客をステージで管理し、顧客全体の動きを可視化
KiZUKAI(キヅカイ)は、サブスクリプションサービスを提供する企業向けの顧客ロイヤリティー改善ツールです。顧客データをデータ連携やトラッキングコードで手軽に収集し、分析することで顧客の状態を把握できます。
分析結果から解約率やLTVを自動で割り出し、フォローが必要な顧客リストを抽出可能です。最適なタイミングで適切なアクションをとれるため、顧客ロイヤリティー向上をサポートできます。
カスタマーサクセスは「これからの営業」に欠かせない役割
サブスクリプション型ビジネスは、現在もSaaS業界を中心に広がりをみせています。セールスの延長での顧客フォローをカスタマーサクセスと呼ぶ企業や、新規セールスの受注後既存担当に顧客を引き継ぐといった、明確にチーム区分けをしていない場合もあるかもしれません。
しかし、サブスクリプション型のビジネスでスケールするには組織体制がどうであれ、これまでとは違った、プロダクト改善を意識したセールスモデルが理想です。解約率が気になる、プロダクトの方向性が変化しそうといった場合は、顧客の声を拾い改善につなげられる、カスタマーサクセス部門を検討するとよいでしょう。
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