時候の挨拶(じこうのあいさつ)とは?
時候の挨拶とは、手紙やハガキの冒頭で頭語の後に続く、書き出しの言葉のことです。季節にちなんだ挨拶をするのは、四季の豊かな日本ならではの伝統的な習慣です。
俳句で使われる季語と同様、時候の挨拶にもルールがあります。基本的な時候の挨拶のルールを踏まえ、うまく工夫して使いこなすことで、ビジネスでもプライベートでも通用する手紙やハガキを書けるのです。
時候の挨拶のルール
日本の伝統的な習慣である時候の挨拶には、守らなければならないルールが存在します。まずは、そのルールを具体的に解説しましょう。
頭語と結語の使い方
頭語とは、手紙の最初に書く「拝啓」を指し、頭語を使った場合は、手紙の最後に必ず「敬具」などの結語を使います。本文の書き出しにあたる時候の挨拶は、「拝啓」などの頭語の後に書くというのが基本ルールです。
しかし、頭語・結語を使うと堅苦しい表現になってしまい、親しい間柄では手紙がよそよそしくなってしまうかもしれません。こうした場合は、頭語・結語を省いて、時候の挨拶から手紙を書き始めることもあります。
前略の使い方
手紙の頭語に「前略」を使う場合、時候の挨拶は書きません。前略は「前文を略す」という意味のため、時候の挨拶を略するという意味。時候の挨拶を書くときは「前略」を頭語にするのは避けましょう。
お詫び・お見舞いの場合は使わない
お詫びの手紙では申し訳ないという気持ちを、お見舞いの手紙では相手の体調を気遣う気持ちの方を、季節のご挨拶よりも優先したいものですね。
お詫びやお見舞いの手紙の場合は、時候の挨拶を書略して、単刀直入に本題に入ります。本文の結びの挨拶で、「青田にそよぐ風が心地よい季節」「山々が紅く色づく頃には…」など、季節について触れてみてはいかがでしょうか。
二十四節気にちなんだ書き出しを
二十四節気とは、冬至を中心として1年間を24等分したものであり、季節を表す目安として考案されました。春分や秋分も二十四節気のひとつであり、時候の挨拶で季節感を表す場合は、この二十四節気に沿った季節の挨拶語を使うのが基本です。
二十四節気の日付けは毎年1日〜2日前後しますので、以下で紹介する日付は目安としてください。
時候の挨拶の文例
それでは、時候の挨拶で使われる季節の挨拶語にはどのような言葉があるのか、月別に紹介します。これらを参考にしながら、旧暦の月の呼称や由来、二十四節気のそれぞれが持つ意味などからアレンジを加えて、気候にあったごあいさつを考案してみてはいかがでしょうか。
1月(睦月)
1月上旬(1月4日頃まで)冬至(とうじ)
- 時候の挨拶(ビジネス):新春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。(初春の候、迎春の候)
- 時候の挨拶(プライベート):初春を迎え、ますますご壮健のことと拝察いたします。
1月中旬(1月19日頃まで)小寒(しょうかん)
- 時候の挨拶(ビジネス):小寒の候、貴社にはいよいよご盛栄の由、お喜び申し上げます。(厳寒の候、寒風の候、寒冷の候)
- 時候の挨拶(プライベート):松の内のにぎわいも過ぎて、ようやく平生の暮らしがもどってまいりました。
1月下旬(1月20日以降)大寒(だいかん)
- 時候の挨拶(ビジネス):大寒の候、貴社には益々ご隆昌の段、拝察いたします。(酷寒の候、降雪の候、大寒のみぎり)
- 時候の挨拶(プライベート):酷寒のみぎり、吹きすさぶ北風がいっそう身にこたえます。
2月(如月)
2月上旬(2月3日頃まで)大寒(だいかん)
- 時候の挨拶(ビジネス):晩冬の候、貴社におかれましてはますますご隆盛の段、大慶に存じます。(酷寒の候、大寒の候)
- 時候の挨拶(プライベート):寒明けとは申しますが、まだまだ骨身にしみる寒さが続いております。
2月中旬(2月18日頃まで)立春(りっしゅん)
- 時候の挨拶(ビジネス):春寒の候、貴殿におかれましてはいよいよご健勝のこととお喜び申し上げます。(立春の候、残寒の候、余寒の候、残雪の候)
- 時候の挨拶(プライベート):春風待ち望む今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
2月下旬(2月19日以降)雨水(うすい)
- 時候の挨拶(ビジネス):向春の候、貴社いよいよご隆盛の趣、慶賀の至りに存じます。(三寒四温の候、解氷の候、梅花の候、早春の候)
- 時候の挨拶(プライベート):窓外より聞こえてくるうぐいすの初音に、春の到来を感じております。
3月(弥生)
3月上旬(3月5日頃まで)雨水(うすい)
- 時候の挨拶(ビジネス):三寒四温の候、貴社におかれましてはますますご繁栄のことと、お喜び申し上げます。(向春の候、解氷の候、梅花の候、早春の候)
- 時候の挨拶(プライベート):浅春のみぎり、皆様にはご健勝にてお過ごしのことと存じます。
3月中旬(3月20日頃まで)啓蟄(けいちつ)
- 時候の挨拶(ビジネス):向春の候、貴社いよいよご隆盛の趣、慶賀の至りに存じます。(軽暖の候、啓蟄の候)
- 時候の挨拶(プライベート):春寒も緩みはじめ、ようやく過ごしやすい気候となってまいりました。
3月下旬(3月21日以降)春分(しゅんぶん)
- 時候の挨拶(ビジネス):春暖の候、貴社におかれましてはますますご隆盛の由、拝察いたします。(春分の候、春陽の候、仲春の候)
- 時候の挨拶(プライベート):淡雪も消え、道の辺の草にも春の色が感じられます。
4月(卯月)
4月上旬(4月4日頃まで)春分(しゅんぶん)
- 時候の挨拶(ビジネス):春分の候、貴社にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。(春暖の候、春陽の候、春暖の候、仲春の候)
- 時候の挨拶(プライベート):桜花満開の好季節がやってまいりました。
4月中旬(4月19日頃まで)清明(せいめい)
- 時候の挨拶(ビジネス):麗春の候、貴殿いよいよご健勝のこととお喜び申し上げます。(清和の候、桜花の候、春爛漫の候、春風駘蕩の候、春粧の候)
- 時候の挨拶(プライベート):春の夜のおぼろ月に風情を感じる季節となりました。
4月下旬(4月20日以降)穀雨(こくう)
- 時候の挨拶(ビジネス):晩春の候、貴社にはいよいよご盛栄の段、お慶び申し上げます。(惜春の候、穀雨の候)
- 時候の挨拶(プライベート):花の盛りもあわただしく去り、いよいよ春も深まってまいりました。
5月(皐月)
5月上旬(5月5日頃まで)穀雨(こくう)
- 時候の挨拶(ビジネス):晩春の候、貴社におかれましてはいよいよご繁栄の由、お慶び申し上げます。(惜春の候、残春の候、穀雨の候)
- 時候の挨拶(プライベート):風薫る五月となり、ご壮健にてお過ごしのことと存じます。
5月中旬(5月20日頃まで)立夏(りっか)
- 時候の挨拶(ビジネス):新緑の候、貴社にはいよいよご隆盛の段、大慶に存じます。(若葉の候、青葉の候、薫風の候)
- 時候の挨拶(プライベート):五月晴れの好天が続く毎日、お元気にてお過ごしのことと存じます。
5月下旬(5月21日以降)小満(しょうまん)
- 時候の挨拶(ビジネス):初夏の候、貴殿にはますますご健勝のことと、お喜び申し上げます。(万緑の候、向暑の候、薄暑の候)
- 時候の挨拶(プライベート):春から夏へとうつろいゆく季節、お変わりございませんでしょうか。
6月(水無月)
6月上旬(6月5日頃まで)小満(しょうまん)
- 時候の挨拶(ビジネス):万緑の候、貴社にはますますご隆盛の段、お慶び申し上げます。(向暑の候、薄暑の候、初夏の候)
- 時候の挨拶(プライベート):初夏のさわやかな風が木々の緑とたわむれる頃となりました。
6月中旬(6月20日頃まで)芒種(ぼうしゅ)
- 時候の挨拶(ビジネス):長雨の候、貴社にはますますご隆盛の由、慶賀の至りに存じます。(入梅の候、紫陽花の候、芒種の候)
- 時候の挨拶(プライベート):長雨のみぎり、お変わりはございませんでしょうか。
6月下旬(6月21日以降)夏至(げし)
- 時候の挨拶(ビジネス):夏至の候、貴殿いよいよご健勝の段、何よりと存じます。(短夜の候、梅雨晴れの候、霖雨の候)
- 時候の挨拶(プライベート):雨後の新緑がひときわ濃く感じられる今日この頃です。
7月(文月)
7月上旬(7月6日頃まで)夏至(げし)
- 時候の挨拶(ビジネス):短夜の候、貴殿ますますご清祥の由、何よりと存じます。(夏至の候、仲夏の候、梅雨晴れの候、霖雨の候)
- 時候の挨拶(プライベート):白南風が、ようやく梅雨明けの知らせを届けにやってまいりました。
7月中旬(7月22日頃まで)小暑(しょうしょ)
- 時候の挨拶(ビジネス):猛暑の候、貴社にはますますご隆盛の段、慶賀の至りに存じます。(盛夏の候、酷暑の候、冷夏の候)
- 時候の挨拶(プライベート):夏の日盛りに木陰の恋しい季節となりました。
7月下旬(7月23日以降)大暑(たいしょ)
- 時候の挨拶(ビジネス):酷暑の候、貴殿におかれましてはますますご健勝の段、何よりと存じます。(大暑の候、炎暑の候、三伏の候)
- 時候の挨拶(プライベート):蝉時雨が賑やかに降り注ぐ季節となりました。
8月(葉月)
8月上旬(8月7日頃まで)大暑(たいしょ)
- 時候の挨拶(ビジネス):大暑の候、貴社にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。(炎暑の候、酷暑の候、三伏の候)
- 時候の挨拶(プライベート):残暑がいっそう身にこたえる毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。
8月中旬(8月22日頃まで)立秋(りっしゅう)
- 時候の挨拶(ビジネス):残暑の候貴殿におかれましてはいよいよご健勝の趣、何よりと存じます。(納涼の候、晩夏の候、暮夏の候、季夏の候)
- 時候の挨拶(プライベート):残暑もようやく衰えを見せる頃となりました。
8月下旬(8月23日以降)処暑(しょしょ)
- 時候の挨拶(ビジネス):秋暑の候、貴社におかれましてはいよいよご盛栄のことと拝察いたします。(納涼の候、早涼の候、初秋の候)
- 時候の挨拶(プライベート):窓外より聞こえくる虫の音に、しだいに秋の気配を感じる頃となりました。
9月(長月)
9月上旬(9月7日頃まで)処暑(しょしょ)
- 時候の挨拶(ビジネス):早涼の候、貴社にはいよいよご隆盛のこととお慶び申し上げます。(秋暑の候、納涼の候、新秋の候、孟秋の候、新涼の候、初秋の候)
- 時候の挨拶(プライベート):野分け立つ日、秋の訪れを感じております。
9月中旬(9月22日頃まで)白露(はくろ)
- 時候の挨拶(ビジネス):秋涼の候、貴社にはますますご隆盛の段、慶賀の至りに存じます。(爽秋の候、涼風の候、白露の候、秋晴の候)
- 時候の挨拶(プライベート):爽涼の秋となり、朝夕はしのぎやすくなってまいりました。
9月下旬(9月23日以降)秋分(しゅうぶん)
- 時候の挨拶(ビジネス):秋分の候、貴殿にはますますご健勝の段、お喜び申し上げます。(秋冷の候、秋晴の候)
- 時候の挨拶(プライベート):稲穂がしだいにこうべを垂れ、実りの秋もいよいよでございます。
10月(神無月)
10月上旬(10月7日頃まで)秋分(しゅうぶん)
- 時候の挨拶(ビジネス):秋冷の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。(紅葉の候、秋雨の候、秋分の候、秋晴の候)
- 時候の挨拶(プライベート):灯火親しむ秋の夜長、いかがお過ごしでしょうか。
10月中旬(10月22日頃まで)寒露(かんろ)
- 時候の挨拶(ビジネス):夜長の候、貴殿ますますご健勝の段、何よりと存じます。(秋冷の候、錦秋の候、紅葉の候、寒露の候、秋麗の候)
- 時候の挨拶(プライベート):稲田は黄金に波打ち、まさに収穫の秋となりました。
10月下旬(10月23日以降)霜降(そうこう)
- 時候の挨拶(ビジネス):紅葉の候、貴社にはいよいよご盛栄のことと拝察いたします。(錦秋の候、霜降の候)
- 時候の挨拶(プライベート):暦の上でははや霜降となり、朝夕はことに肌寒くなってまいりました。
11月(霜月)
11月上旬(11月6日頃まで)霜降(そうこう)
- 時候の挨拶(ビジネス):霜降の候、貴殿におかれましてはいよいよご清祥のこととお喜び申し上げます。(晩秋の候、錦秋の候、深秋の候、暮秋の候)
- 時候の挨拶(プライベート):菊の香り漂う霜月を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか。
11月中旬(11月21日頃まで)立冬(りっとう)
- 時候の挨拶(ビジネス):菊花の候、貴社におかれましてはますますご隆盛の段、慶賀の至りに存じます。(向寒の候、初霜の候、冷雨の候、時雨の候)
- 時候の挨拶(プライベート):枯葉舞い散り、いよいよ冬の到来となりました。
11月下旬(11月22日以降)小雪(しょうせつ)
- 時候の挨拶(ビジネス):向寒の候、貴社にはいよいよご盛栄のことと拝察いたします。(露寒の候、霜秋の候)
- 時候の挨拶(プライベート):霜枯れの季節となり、冬の到来をいっそう間近に感じております。
12月(師走)
12月上旬(12月6日頃まで)小雪(しょうせつ)
- 時候の挨拶(ビジネス):初冬の候、貴社ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。(師走の候、初雪の候、孟冬の候、季冬の候)
- 時候の挨拶(プライベート):朝夕の凍てつくような北風が肌身にしみるこの頃です。
12月中旬(12月21日頃まで)大雪(だいせつ)
- 時候の挨拶(ビジネス):師走の候、貴行益々ご発展のことと大慶に存じます。(大雪の候、霜寒の候)
- 時候の挨拶(プライベート):師走のみぎり、お忙しくご活躍のことと拝察いたします。
12月下旬(12月22日以降)冬至(とうじ)
- 時候の挨拶(ビジネス):冬至の候、貴社におかれましてはますますご清栄のことと慶賀の至りに存じます。(歳晩の候、歳末の候、歳末のみぎり)
- 時候の挨拶(プライベート):迎春のお支度にあわただしくお過ごしのことと拝察いたします。
時候の挨拶のまとめ
頭語の後から書き出す時候の挨拶(じこうのあいさつ)には、伝統的な使い方があり、季節の挨拶語を取り入れて相手に失礼のないように書かなければなりません。二十四節気にあわせた季節の挨拶語を慣例句として使う際にも、現代では少し気候のずれもありますから、そのときの気候にもあわせた季節のご挨拶を考えられるよう、工夫したいものですね。