組織活性化とは? 組織活性化に役立つフレームワークと取り組み方法
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組織活性化とは
組織活性化とは、組織に所属する各個人が共通の目標に向かって自律的に行動し、高い成果を上げられるようになることです。
企業の目的は「顧客の創造」であると、経営学者のピーター・ドラッカー氏は述べています。顧客を創造するためには、市場の変化を迅速に捉えニーズを予測し、適応した価値を提供する必要があります。
そのためには、組織間に壁がある(サイロ化)、不都合な情報が上がってこない、業務のムダが多い、といった組織の硬直性や非合理を解消し、組織そのものが生き物のように考え・予測し・自律的に動けるように、組織が活性化していることが必要です。
組織活性化のメリット
組織活性化によって、従業員が共通の目標に向かって自律的に働くようになると、業務効率化と生産性向上が進み、会社全体の目標も迅速に達成されやすくなります。企業は、市場の変化に敏感に反応し、顧客のニーズにあった商品やサービスを、スピーディーに開発・提供できるようになります。
企業内では、業務改善や部門を超えたコラボレーションが積極的に進められ、業務効率化や経費削減、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進していきます。
また、各従業員の目標達成によって、自己実現が図られ、従業員エンゲージメントや従業員満足度の向上も実現できます。このような成果は、さらに組織を活性化させるので、企業の競争力のある成長サイクルが生まれていきます。
組織が活性化している状態とは
組織が活性化することで、次のような状態になると考えられます。
- 従業員一人ひとりが、組織の目標と自分の業務目的を的確に捉えており、自律的に行動している
- 問題が起これば直ちに部署を越えて関係者が集まり、協働して問題解決に当たっている
- 無駄な作業が少なく残業が少ない
- 開発や事務などの間接部門では職場の各所で議論が行われている
- 会議では批判的な意見ではなく肯定的で前向きな意見が大勢を占めている
- 製造などの直接部門では活発に改善提案がされている
- 整理整頓が行き届き明るい雰囲気に満ちている
- 失敗事例が共有化されている
- 離職率が低下して従業員が定着している
組織活性化と企業理念
組織の活性化と企業理念について説明します。
ミッション、ビジョン、バリュー
企業の組織活性化のためには、前提として共通の価値観となる企業理念の定義が必要です。これを表すのが、経営学者のピーター・ドラッカー氏により提唱された、ミッション、ビジョン、バリューの3つのステートメントです。
- ミッション:企業の存在意義や使命
- ビジョン:中長期的に目指す目標
- バリュー:大切にする価値観や行動指針
ミッションで、自社の存在意義を明確に示すことで、従業員は自分の仕事に意味とやりがいを感じ、組織への帰属意識が強くなります。
ビジョンで、ミッションに沿った目指すべき目標を提示し、従業員全員が共有して目標達成の意欲を向上させます。ビジョンは、目標が達成した場合や、環境やビジネスモデルの変化により、新たなものに変更されることもあります。
バリューで、組織として大切にする価値観や行動指針を示し、従業員は同じ企業文化(カルチャー)のもとで協力して行動します。
具体的に人事評価の際に「バリュー評価」を使って、従業員がどの程度自社のバリューや行動規範に沿って活動を行えているか評価するのもおすすめです。
また、バリューを「顧客への提供価値」と定義して、従業員一人ひとりが守るべき行動指針は、「クレド」「スピリット」として、より具体的な条項や文言に落とし込んでいる企業もあります。
パーパス
パーパス(Purpose)とは、企業や組織の「存在意義」のことを意味します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや、地球温暖化による気候変動という人類全体の危機に面して、企業は自社の社会的存在意義であるパーパスについて考える動きが活発化しました。
パーパスとミッションの違いは、パーパスはミッションよりも社会性を意識したもので、サステナビリティやSDGsのための使命などを含んだものがよく見られます。企業がパーパスを定義することで、従業員一人ひとりが自分の仕事や活動に社会的意義を感じることができ、エンゲージメントが高まります。また、自律的に利他的な行動規範を取るようになるため、コンプライアンスの遵守も促進されます。
パーパスには、社会に良い価値を提供することが含まれているので、消費者の共感が得られ、ブランディング効果もあります。
組織活性化のためのフレームワーク
組織活性化のためのフレームワークについて、OKRやマッキンゼーの7Sなどを説明します。
OKR
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、達成すべき目標(Objectives)を、主要な成果(Key Results)に落とし込む目標の設定管理方法です。米インテル社で誕生し、GoogleやFacebookといった大手テック企業が取り入れていることで注目を集めました。
OKRは、組織やチームおよび個人に、O(定性的な目標)とKR(定量的な成果指標)を設定し、目標達成の進捗管理や評価を行います。OKRは1つのOに複数のKRが付随する形で構成されます。
OKRの特徴は、従来の目標管理方法に比べて高い頻度で設定・追跡・評価できることです。OKRを活用することで、組織のすべての従業員が同じ方向を見ながら、組織全体で優先順位をもって目標達成を目指すことができます。OKRは、目標設定をロジカルに行えるため、従業員の納得感が増し、エンゲージメントの向上が期待できます。
OKRについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事も参考にしてください。
マッキンゼーの7S
マッキンゼーの7Sとは、組織にとって重要な7つの要素とその関係を示したフレームワークです。世界的コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱しました。
ハード面の3S(組織構造に関する3要素)
- 戦略(Strategy):自社の目標を達成するための具体的な取り組み
- 組織構造(Structure):組織の形態や構造
- システム(System):人事評価制度や会計制度など組織の仕組みやルール
ソフト面の4S(人材に関する4要素)
- スキル(Skill):営業力や技術力、マーケティング力など組織の能力
- 人材(Staff):従業員や経営者など個々の人材の能力や育成プロセス
- スタイル(Style):社風や企業文化
- 共通の価値観(Shared Value):ミッション・ビジョン・バリュー
マッキンゼーの7Sを活用することで、自社の現状を把握でき、課題を分析することができます。
ハード面の3Sから、目標達成に向けてどのような組織構造とシステムで取り組んでいるのかを把握し、ソフト面の4Sから、従業員の能力やスキルのレベル、人材育成の状況、価値観の共有の状況を把握します。
ハード面とソフト面の両面の要素から、組織の目標達成における課題を明確化します。優先順位をもって課題に対する施策を策定し、組織活性化の成果が得られそうであれば実行します。
組織マネジメントや7Sフレームワークについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事も参考にしてください。
組織活性化のための5つの取り組み
組織活性化のための5つの取り組み方法を紹介します。
経営理念の共有、パーパスの策定
時代や社会環境の変化に合わせて、企業理念であるミッション、ビジョン、バリューを策定したり更新したりします。従業員の意見を聞きつつこれを行うことで、より共感を得られる経営理念が創造できます。一人ひとりが自分の仕事の意義を感じ、共通の目標のためにエンゲージメントを高めて働けるようになり、組織活性化につながります。
企業活動の社会的意義を強調して社内外にも伝えたい場合は、別途「パーパス」を策定するのもよいでしょう。
1on1ミーティングとコーチング
上司と部下の間で定期的に1on1ミーティングを行うのも、組織活性化に役立ちます。目標達成やパフォーマンスについての話だけでなく、従業員の悩みや不満に感じていることをざっくばらんに聞くようにしましょう。組織が自分の存在を大切に思ってくれていると感じられれば、従業員エンゲージメントが高まり、仕事のパフォーマンスに好影響を与えます。
目標期間の終わりや従業員に何か異変を感じたタイミングで、コーチングを行うことも、モチベーション維持に役立ちます。1on1ミーティングとコーチングを積極的に実施することで、組織が活性化し、離職率の低下にもつながります。
人材開発
効果的な人材開発のスキームを策定して、従業員のスキルアップや能力開発を積極的に行うことで、中長期的な組織活性化につながります。一般的な社員研修のほかに、eラーニングを利用したセルフトレーニングを活用して人事評価と連動させれば、自主的な学びやスキル習得を持続的に促進できます。
人材開発スキームを、継続的に効果的なものにブラッシュアップしていくことで、人材の資本としての価値が高まり、企業の競争力強化に貢献します。
人事評価制度の更新
自社の人事評価制度が、従業員の成果や活動を正当に評価できる仕組みや運用方法になっているかを点検します。
上司のほかにメンバーなどの複数の評価者がいる360度評価(多面評価)や、OKRの目標管理指標などを導入して、公正で納得感のある人事評価制度を目指しましょう。
「バリュー評価」を活用して、従業員が自社の経営理念や行動規範に沿って活動しているかを評価するのも組織活性化につがります。
時代の変化や顧客ニーズの多様化に対応できるように、人事評価の期間をより短く設定することも検討してみましょう。
コラボレーションツールの導入
社内のコミュニケーションとコラボレーションを促進するために、グループウェアや情報共有ツール、プロジェクト管理ツールなどを導入するのも、組織活性化に役立ちます。
コラボレーションツールにより、有用なナレッジの共有や情報伝達のスピードアップ、プロジェクトのタスクやスケジュールが可視化されることで、チームが効率的に目標達成に向けて動けるようになります。また、コラボレーションツールは、組織の課題の発見や、テレワークにおける生産性向上にも寄与します。
ウェルビーイング経営
経営理念や従業員の行動指針を共有して、組織活性化を実現するためには、従業員が持続的な幸福感のある、健やかな心の状態のウェルビーイングであるように取り組むことが重要です。
「ウェルビーイング経営」は、従業員エクスペリエンスや柔軟な働き方を重視した、人的資本の経営コンセプトといえます。従業員が体調やメンタルヘルスを良好に保ち、ポジティブなマインドで業務に集中できるように、ウェルビーイングな組織の実現に取り組んでみましょう。ウェルビーイング経営は、離職率の低下のほか、人材採用の面でも有利に働きます。
組織活性化の事例
実際に組織の活性化を成功させた事例をいくつか紹介します。
組織活性化を成功させた事例:ヤフー「1on1ミーティング」
ヤフー株式会社では、組織活性化や社内コミュニケーションの円滑化のために、1週間に1度上司と部下の間で30分間の1on1ミーティングを行っています。
コーチングで上司に1on1での話の聞き方を学ばせたり、1on1の効果を部下から上司にフィードバックしたりするほか、第三者のファシリテートの下で、部下が上司に対するフィードバックを伝える「ななめ会議」も取り入れています。
ヤフーでは、従業員が従業員満足度調査の結果をもとに職場改善に取り組むことや、部署の問題解決を組織活性チームがサポートする取り組みなどを、最終的に利益に結びつく目標を念頭に実施しています。
組織活性化を成功させた事例:「サンクスカード」
ある企業では、チーム活性化のために「サンクスカード」を導入したそうです。サンクスカードとは、「日ごろの些細なことにも仲間に感謝の気持ちを持ち、それをカードに記入して相手に渡す」といったもので、メンバー同士で組織を活性化させる取り組みです。
普段一緒に働いているメンバーに感謝をしていても、なかなか照れくさくて言葉には出しづらいものです。感謝の気持ちをカードに記入して渡されると、率直にうれしく感じられ、メンバー同士の絆も深まります。サンクスカードを見返すことで、従業員のモチベーション維持にもつながります。
組織活性化を成功させた事例:スノーピーク「キャンピングオフィス」
名古屋市にあるリスティング広告会社では、オフィス移転を機にスノーピークのキャンピングオフィスを導入しました。従業員がリラックスしてリフレッシュできたり、気軽なコミュニケーションが取れる空間がほしいと考えたからです。
以前は、チーム単位で閉鎖した空間でのコミュニケーションが多かったのが、キャンピングオフィスを導入してからは、チームを横断したコミュニケーションが増えたとのことです。キャンピングオフィスを通して、いろいろな人と話す機会が生まれることで、コラボレーションして何かを生み出そうとする機会が生まれているそうです。
組織活性化を実現するために
組織活性化のメリットと5つの取り組み方法、活用できるフレームワーク、成功事例を紹介しました。
組織活性化は、従業員エンゲージメントの向上や顧客への迅速な価値提供を可能にし、企業の競争力を強化します。経営理念の共有やウェルビーイング経営、コラボレーションツールの導入で、組織活性化を実現させましょう。
また、組織の活性化には従業員満足度も重要です。定期的な社内アンケートや従業員満足度調査を行い、組織の課題を洗い出し、改善していくことで組織全体の活性化につながります。
社内アンケートや従業員満足度調査はツールを利用することで、簡単かつ正確に行えるので、ぜひ次の記事を参考に導入検討してみてください。
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