人材育成の手法や課題は?研修を計画する7ステップ

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人材育成の目的
人材育成は、長期的かつコストをかけて取り組む業務です。人材育成に取り組んだ結果、主に次のような効果が期待できます。
- 社員のパフォーマンスの向上
- 離職率の低下
- 企業の長期的な成長
社員のパフォーマンスの向上
社員のパフォーマンス向上は、人材育成の大きな目的です。
人材育成により現状の仕事内容が改善され、生産性が向上すれば企業の業績アップへ直結します。人材育成に触発されて社員がみずから学ぶようになれば、より期待を持てるでしょう。
離職率の低下
人材育成を進めると、離職率を抑えられる効果も期待できます。
自らの市場価値を高めたい社員にとって、企業が人材育成を促進してくれることは継続して勤務するモチベーションになります。そのため、成長意欲をもったモチベーションの高い社員に対して人材育成を行うと、離職率を低下に一定の効果を持つと考えられます。
企業の長期的な成長
人材育成は、企業の長期的な成長に寄与します。
消耗品費や広告費のように一度投資したら効果がなくなるものと比べ、社員は離職するまでバリューを発揮します。長い目で見るのであれば、社員の育成が企業の成長に大きく貢献するといえるでしょう。
人材育成の手法

人材育成の方法としては、OJT・Off-JT・SD・eラーニングの4つの方法があります。
OJT
OJTは、On the Job Trainingの略称で、実際に職場で業務を行いながら、仕事に必要なスキルや知識を習得していく方法です。一般的には、入社時や新しい部署に配置されたときに行われることが多く、配置された職場の先輩や上司が指導を行います。
指導方法はOJTでついた人のスキルに依存しますが、臨機応変に育成できるメリットもあります。また、後輩を育成することで、OJT担当になった人自身が成長する、人材育成効果もあります。
Off-JT
Off-JTは、Off the Job Trainingの略称で、社内の集合研修・外部講師を招いてのセミナーや講座などで知識や技術を習得していく方法です。期間や回数は人材育成の目的によってさまざまで、専門的な技術習得から接遇研修、マネージメント研修、経営研修などがあります。
職場から離れて行うので、日々の業務を見直せる機会にもつながります。また、普段顔を合わせる機会の少ない他部署や支社同士が合同で行うことで、交流を図れるメリットもあります。現場と管理職が合同でOff-JTを行うことで、日ごろのギャップを埋め、課題解決をしていくケースもあります。
SD(自己啓発)
SDは、Self Developmentの略称で、自己啓発の一環として自らセミナーに参加したり、書籍で学びの機会を得たりすることです。企業は、業務に関係ある資格取得やスキル習得の金銭的援助することで、人材育成を促します。
eラーニング
eラーニングは、インターネットを利用した学習方法です。時間や場所の拘束がないため、それぞれ空いた時間に受講できるのがメリットと言えます。企業側も対面講座よりもコストが少なく済み、集計やチェックの手間が省けます。
【関連記事】
・eラーニングとは
・eラーニングの導入事例
・eラーニングシステムの比較
ただし、「効果が可視化しにくい」、「社員のモチベーションをどのように調整して助成していくか」と課題があります。eラーニングを導入する場合は、このような課題に対応しているシステムを選ぶとよいでしょう。
人材育成で考えるべき7つのステップ
目的と方法を確認したところで、効果のある人材育成行うには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。7つのステップで解説します。
1. 企業のビジョンを明確化する
最初に企業全体の事業戦略、すなわち企業としてのビジョンを明確化しましょう。企業として、進んでいる方向はどちらなのか、事業をどのように展開していきたいのかという、一本の大きな柱です。
ビジョンが定まっていなければ、どんな研修を企画してもうまく運営できません。そのため、経営者と研修部門がよく対話することが大切です。企業のビジョンはしばしば長期的な目線で考えられますが、研修を考える際には時宜に応じたポイントから検討していくとよいでしょう。
2. 人材育成の目的を考える
企業のビジョンから、人材育成によって、どのような目的を達成したいのか考えます。具体的には、企業のどのようなビジョンから、社員にどのようなスキルや知識をもってほしいのか明確化しましょう。
3. 課題を分析する
人材育成の目的が明確化したら、次に課題を洗い出します。具体的にどのような課題があるのか、社員の長所を伸ばす・弱点を補強するにはどうしたらいいのか掘り下げていきましょう。
現状を正しく把握するためには、具体的な事実に落とし込む必要があります。事例をあげる、データ化するなどして、分析していきましょう。
4. 育成目標を立てる
次に、研修によって達成したい目標を立てます。強味を強化する場合も、弱みを補強する場合も、目指す目標値を明確にすることが重要です。これにより、到達地点が明らかになります。
また、出発点を明確にしておくことも大切です。スタートからゴールまでの開きが把握しやすくなれば、研修に参加する社員のモチベーション向上にもつながります。数値化が難しい内容であれば、言葉・写真・動画などさまざまなメディアを用いて誰もが共通にイメージできるようにすることが重要です。
5. 成功の状態を考える
人材育成の目標を達成した状態を想定してみましょう。「社員が目標値に到達したとしたら、何ができるようになるのか」、「100人中、何人がそこまで達して、その相乗効果でどういうことが企業としてできるようになるのか」と想定してみることです。
これを想定することで「目標値が充分か」、もしくは、まだまだ足りないものなのか、簡単にいうと「変われるのか?」という大切な落としどころの判断を想定できます。この想定は難しいものではありますが、まずは仮説として想定することが重要です。
6. 育成方法を考える
効果的な教育研修方法はどのようなものなのかを考えます。「いつ」「誰を対象に」「どこで」「どのような内容」といったものを、「誰が」「どのような手法を使って教えるのか」などのポイントで内容を具体化していきましょう。
目指す目標によっては、短期集中型がよいのか、中期的に分散して回数を稼いで細かく教えていくのかなどを、実態に応じて使い分けていきます。
7. 効果測定を行う
研修を行ったら、その効果を把握しましょう。研修を行って放置することが一番よくありません。実施した研修は、「社員の意識をどのように変化させられたか」、そして「どのような行動変容をもたらしたのか」など、研修後の変化をさまざまな手法を使って評価します。
変化を検証することで次に打つ手が見えてきます。この各段階もできるだけ数値化し、統計的に具体性をもって分析する必要があります。
人材育成がうまくいかないときのチェックポイント
人が育ちにくい企業風土
いくら人材育成をおこなっても、企業風土によっては思ったような効果が得られないこともあります。人が育たない企業風土の代表例としては次のものがあります。
- 組織の一体感が減退している
- 言われたことしかやらず、考えない癖がついている
- 人事評価制度に問題がある。その評価に対して納得のいく説明がない
- 管理者になりたがる人が少ない
こういった企業でよく聞かれる声が、「マネージャーを育成したい」や「全体的なマネジメントの強化をしたい」というものです。もしあなたの会社でこのような声が聞こえている場合は、個人の問題で人が育たないのではなく、会社全体の問題で人が育たないと考えるべきでしょう。
課題解決ポイント:経営陣が事実と向き合う
企業風土は、一朝一夕に解決できる問題ではありません。まずは経営者や人事部といったリーダーシップを持った人材が各部署と直接会話し、事実と向き合うことから始めましょう。
実は現場の実情を上の人間が知らないことが多いのです。それが人が育たない企業風土の発端になります。リーダーシップのある人間が事実を知り、少し力技でも現状を打破する姿勢を出すことが必要でしょう。
【関連記事】
・チームビルディングとは
・組織活性化とは
・モチベーション管理システムの比較
・社内アンケートツールの比較
人材育成目標が定まっていない
「どのような人材に育てればいいのか、あるべき人物像がない」 これもよく聞く課題の1つです。人材像のイメージが具体化できていなかったり、理念に近く形骸化していたりします。
課題解決ポイント:会社が進むべき方向の明確化
このような場合、会社が進むべき方向を明確化してみましょう。ビジョンが明らかになると課題も把握できるようになり、社員一人ひとりの目標が見えてきます。
具体的には、部署・年代・地位などで必要な知識やスキルを明確にし、何を伸ばした方がいいのか数値化していきましょう。そのため、研修部門には横断的に物事を見れる人材をまず確保する必要があるでしょう。
研修方法が適切でない
研修方法が会社・社員に合っていないこともあります。
次のような声が社内で聞かれるようになった場合、研修に関する課題が発生していると考えたほうがよいでしょう。
- 現場ですぐ活かせる研修をした方が良い
- 社会人としての基本的な力をつける研修をしたい
- 経営者という視点での研修をしたい
- 研修のプログラムやコンテンツが少ない
課題解決ポイント:学び方を学ばせる
上記の課題を解決するポイントは、研修を受けただけでは社員はすぐにできるようにならないということです。
研修だけでは人材は育成できません。その後につなげなければならないのです。そこで、先輩や同期の人とのフィードバックや話し合いを通じ、「学び方」を学ばせることが必要です。このことでフィードバックする側、される側両者ともに成長できます。
人材育成で重要なポイント
人材育成において重要なことは何なのか、外してはいけない2つのポイントについて説明します。
採用+育成を合わせて考える
採用と育成を合わせて考えましょう。採用前にどのようなスキルと関心がある人材なのかチェックし、入社後どのような人材育成が必要になるか洗い出しておくのです。
たとえば、大学院出身で専門的な知識はあるけども、対人関係が苦手だという人材にテレアポや飛び込み営業の部署に入れてしまえば、辞めてしまうかもしれません。初めは顧客を知るために営業に配属することも良いかもしれませんが、長期的には研究開発の部署で人材育成した方が良いでしょう。
このように、人材育成ではただ優秀そうな人材を採用しよう、とにかくOJTやOff-JTで必要な知識を身につけさせようというのは、効果的とは言えません。
このような人材を採用して育成すれば自社で活躍するのではないか、この人材はゆくゆくこの部署で人材育成すれば活躍してくれるのではないかなど、人材と育成を連動させて考えてフォローアップするのが大事です。
【関連記事】
・採用管理システムとは
・採用管理システムの導入事例
・採用管理システムの比較
個人にあわせて育成する
人材育成はどの社員に対しても一律に行えばよいわけではありません。各社員の強み弱みやスキルに合わせて、育て方を調整する必要があります。
新入社員
新入社員には、働き方の基本やビジネスマナーといった業務一般で役立つ内容を教えるとよいでしょう。
新入社員が今後どのような職種で働いても問題がないよう、ベースとなるスキルを学んでもらいその後に個別のスキルを習得するよう育成を進めます。
中堅社員
中堅社員は、部下をマネジメントするのに必要なスキルが要求されます。自分が成果を上げるためにはという思考から、部下が効果を最大限発揮するためにはという思考へスイッチできるよう促しましょう。
リーダー・管理職
リーダーや管理職の方は、育成される側より育成する側に回ることが多いでしょう。社員を育てる人を育てるためにはどうすればよいかというさらに一つ上の次元から社員や会社を見つめられるよう勉強すべきです。
社員の自発性を高める
社員の自発性を高めることも人材育成について重要です。
社員の自発性を高めるためには、自己啓発の研修なども必要ですが、さらに重要なのは社員が自発的に学びやすい環境と、それを公平に評価する制度を整備することです。
社員の資格取得やセミナー参加を会社として補助するといったことを紹介しました。加えて、人事評価の中に挑戦や勉強を評価する項目を設定したりして、自発的に行動する人間が評価される、報われる環境を構築する必要があります。
人材育成に役立つサービス
現代のビジネスシーンに役立つ、人材育成サービスを紹介します。
7つの習慣®︎SIGNATURE EDITION4.0 - フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社
- 書籍「7つの習慣®️︎」をベースにした研修プログラム
- 定着と実践に焦点をあてた研修構成
- 知識やスキルだけでなく、受講者の人格を磨く
7つの習慣®️︎SIGNATURE EDITION4.0は、現代のライフスタイルやビジネスシーンをイメージしやすい内容を盛り込んだ研修プログラムです。課題や日々の生活を通して応用できる内容です。知識やスキルだけでなく、受講者の人格を磨くことを重視したプログラムなので、受講者の高い満足度も期待できます。
クアルトリクス 従業員エクスペリエンス(EX)|Qualtrics - クアルトリクス合同会社
- アンケートをもとに、従業員の現状を把握
- アンケートや多角的な評価を自動で実施
- 従業員一人ひとりに合った能力開発を目指せる
クアルトリクス 従業員エクスペリエンス(EX)は、従業員の企業に対する意見や感情を把握し、人材育成に役立てるシステムです。従業員アンケートを任意のタイミングあるいは一定の期間ごとに実施しデータを収集。集めたデータをもとにそれぞれの従業員の考えを把握したり、改善につなげたりできます。従業員への研修を最適化し、効果的にスキルアップさせましょう。
mentor - 株式会社サイダス
- 新入社員が抱える課題や体調の変化を把握
- 体調やメンタルまで把握し、離職を防止
- メンター制度、OJTを仕組み化し新入社員の成長を支援
mentorは、新入社員の状態や課題を見える化し、人材の育成を支援するサービスです。OJTの後に実施するアンケートで新入社員の課題や弱点を可視化。メンターにもアンケートを実施することで、新入社員とのギャップを把握し、マネジメントの改善につなげます。
また、健康状態を週次で見える化できるので、テレワーク下でも新入社員の悩みや体調の変化に早く気づけます。適切な対応をすることで新入社員の早期離職を防止できます。
自立的に働く女性にアシストした研修サービス
働く女性に特化した、仕事とプライベートを通して成長し続けるための研修サービスを紹介します。
ビジョナリー・ウーマン - フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社
- 書籍「7つの習慣®️︎」をベースにした女性向け研修プログラム
- 働く女性の自立とやりがいをアシスト
- 実際のビジネスシーンをイメージしやすい実践形式の研修
ビジョナリー・ウーマンは、働く女性がやりがいを持って自立的に仕事へ取り組むための研修プログラムです。スキルや知識を身に付ける研修とは異なり、人格を磨き、主体性をもってさまざまなことに取り組む姿勢が身につきます。ビジネスシーンで遭遇しやすい課題を元にした研修構成なので、内容が定着しやすく研修後すぐ実務に活かせます。仕事とプライベートの両立を目指すことで、業務のパフォーマンスアップにもつながります。
人材育成で企業を長期的に育てる
人材が育つことは、会社が成長することにつながります。しかし実際は昔から人材育成は難しいといわれてきました。特に歴史のある会社は、固定観念ができ上がっている場合もあります。今、人材育成に課題を抱えている会社は、その固定観念を壊すつもりで取り掛かる必要があるでしょう。ぜひこの記事を参考に、強い意志を持って人材育成に取り組んでください。
人材育成に役立つサービスとして、社員一人ひとりの能力やスキル、成果を確認できるツールがあります。次の記事ではそんな社員の特性を把握する考え方やシステムを紹介します。


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