中小企業にピッタリな人事評価制度の作り方は?導入方法と評価項目、手法も

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中小企業における人事評価制度の実態
中小企業は人材不足という大きな問題を抱えています。原因の一つは人事評価制度が有効に運用されていないことです。中小企業の人事評価制度は、どのような実態なのでしょうか。
人事評価制度の導入状況
中小企業診断士協会による「中小企業における人事評価制度の現状」によれば、企業規模の小さい中小企業ほど人事評価制度の整備が進んでいません。
少し古いデータですが、厚生労働省の平成14年雇用管理調査によると、人事評価制度がある企業の割合は51.0%。企業規模が大きいほど割合は高く、5,000人以上では98.3%であるのに対し、30~99人では39.4%です。
また、100人以上では73.7%であり、一定規模以上の企業では導入が進んでいますが、規模の小さい企業では半数以上が導入に至っていません。
人事評価制度の運用状況
同論文によると、運用の中でも従業員の納得性を高めるための取り組みについて、否定的な回答が肯定的な回答を上回っており、十分とは言えない状況であることが指摘されています。社員の多くが人事評価に対して公平感や納得感を得づらく感じているのです。
原因は、そもそも人事評価制度の重要性を理解していない、制度自体は導入しているものの形骸化してしまっているなどのケースが考えられます。公正な人事評価制度が定着していなければ、生産性が低下するだけでなく、離職率も高まってしまいます。
つまり、中小企業こそ人事評価制度の整備が必要不可欠なのです。これまで評価制度を導入していなかった企業はもちろん、社員の定着率が悪い企業は早急に人事評価制度の整備が必要でしょう。
人事評価の不満を解消する方法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

中小企業が人事評価制度を整備することで解決できる課題
中小企業をはじめ規模の小さい企業でも、人事評価制度を整備すれば、社員の仕事へのモチベーションを高められ、生産性も向上させられます。社員個人の生産性向上は経営にも大きく寄与し、働き方改革の実現へのステップになります。
BOXILに寄せられた口コミの中にも、人事評価システムを活用した制度の整備により、これまでExcelで進めていた評価プロセスが効率化し、より公平な評価が可能になったと感じる企業が多いようです。さらに人事評価のコストパフォーマンスも改善した企業も少なくありません。
より具体的には、人事評価制度の整備によって次のような課題を解決できます。
人員に関する課題
慢性的な人手不足と離職率の高さに悩んでいる中小企業にとっては、人事評価制度を整備することで優秀な人材に長く勤めてもらえるようになるでしょう。離職率が低下すれば、常に新しい人材を雇い入れる必要がなくなるため、採用の手間やコストが低減します。
もともと適切な人事評価がされていなかったり、それによって社員から不満が出ていたりする場合は、公正な評価制度にすることで社員の仕事への満足感が高まり、企業へのエンゲージメントも増大するでしょう。昇格基準が明確になることで、モチベーションアップにもつながります。
業務に関する課題
管理者が部下を公正に評価できるようになれば、各々の社員の強みや能力が明確になります。結果として生産性の向上につながったり適切な場所に人材を配置できたりするため、生産性の向上につながります。
加えて、評価制度の整備によって人事考課を素早く行えるメリットもあります。これまで評価にかかっていた時間を、より重要な仕事に充てられるようになるため、企業全体の生産性の向上も期待できます。
コミュニケーションに関する課題
人事評価制度の整備によって、社員は管理者から適切な評価やフィードバックを得られるため、上司と部下の信頼関係が築かれるようになります。それゆえおのずとコミュニケーションが活性化していきます。さらに、社内に社員の情報が蓄積されていくので、チームや各々の社員の抱える課題を早期に発見し解決できるようになるメリットもあります。
近年、テレワークの導入により、社員同士のコミュニケーションに悩んでいる企業は増えています。社員も働きが正当に評価されているか不安を感じている人は多いようです。そこで新しいワーキングスタイルも含めて人事評価を見直すことで、社員同士はもちろん上司と部下とのコミュニケーションを活性化し、社員の企業への帰属意識も高まる効果も期待できます。
人事評価制度を導入する方法
中小企業が人事評価制度を導入あるいは整備する場合、コンサルティングを依頼する方法と自社で評価制度を作る方法の2つがあります。
人事評価制度のコンサルティングを依頼する
近年、政府の働き方改革の推進や公正に社員を評価する仕組みづくりに関するニーズは高まりを見せています。人事のプロフェッショナルによるコンサルティングサービスを提供する業者も増えており、コンサルティングを依頼する企業も増えているようです。自社に人事領域の専門家がいないなら、こういったコンサルティングを利用するのも効率的な手段のひとつといえるでしょう。
コンサルティングにかかる費用は業者によって変わります。コンサルティング業者を選ぶうえで重要なのは、できるだけ実績やノウハウの多いコンサルタントを選択することです。また、ひとくちに人事コンサルティングといっても分野は多岐にわたるため、人事評価制度の改善したい部分を明確化し、その領域に強みをもつ業者に依頼するのがよいでしょう。
自社で人事評価制度を作る
自社でも人事評価制度は整備できます。ビジネス環境に応じて柔軟に制度を変更したい場合や、最初に制度を作ったあとで、運用しながら改善を重ねたい場合は、自社で評価制度を作成するとよいでしょう。
中小企業で人事評価制度を作成するにあたっては、まず社員の評価基準と評価手法を明確にし、十分な猶予をもって導入スケジュールを決めておく必要があります。必要に応じて社員側と相談しながら、自社に合ったものにブラッシュアップすることが重要です。
人事評価制度を作成するにあたって知識や経験に不安がある場合は、セミナーを受講するのもおすすめです。中小企業庁や経済産業省など官庁から民間コンサルティング企業にいたるまで、人事評価制度についてさまざまなセミナーが行われています。
1日で完結するものもあり、実践的な内容を教えてもらえるので、すぐに評価制度に反映できます。わからないことがあれば質問できますし、コンサルティング業者や人事評価システムを導入するにあたってのヒントになることもあります。
人事評価制度の作り方はこちらの記事でも詳しく解説しています。

動画でも人事評価制度について解説しています。あわせてご覧ください。
中小企業が気をつけるべき人事評価制度の運用方法
では、中小企業の人事評価制度を作成・運用する方法を具体的に見ていきましょう。大きく分けて紙やExcelによる従来型の手法と、人事評価システムによる運用があります。
紙やExcelなどの評価シート
紙やExcel、スプレッドシートなどの人事評価シートを作成する方法は、多くの企業で運用されています。メリットとしては、導入コストがかからず特別な知識が不要な点が挙げられます。一方で、データの共有や確認にどうしても時間がとられてしまい、情報の蓄積・共有がしづらいのがデメリットです。
特に大量の人事データを扱わなければならない大企業の場合、紙やExcelでのデータ管理は難しいところがあります。過去のデータの確認がしづらかったり、人事評価の進捗が把握できなかったりする弊害も出てきてしまい、評価の集計にも手間がかかるでしょう。そのため中小企業のようにある程度データが管理しやすい規模の企業におすすめです。
人事評価システムの導入
もう一つの方法として、人事評価システムを導入して評価を行うやり方があります。多くの企業が上記の紙やExcelでの管理から人事評価システムを活用した評価にシフトしており、シェアも高まってきています。導入コストはかかるものの、人事評価の作業量を軽減でき、業務の効率化を図れます。
特に人事担当者は必要な情報を効率的に収集および閲覧でき、評価の進捗状況も把握しやすいので、全体の生産性が大きく向上します。さらに、情報を一元管理できることで各々の社員の強みを見出しやすく、適材適所の人材配置を可能にするメリットもあるでしょう。正当な評価をしてもらえるため、社員の仕事へのモチベーションアップにも寄与します。
人事評価システムはさまざまな評価基準から設定されており、システムによってさまざまです。システムの人気ランキングや知名度などではなく、どのような評価基準によって作られたシステムなのか、自社に合ったシステムなのかをチェックすることが大切です。システムによってはデモや無料プランを提供しているところもあるので、システムや使い勝手を試してみてから導入を検討するとよいでしょう。
中には中小企業向けの人事評価システムもあるため、あわせてチェックするとよいでしょう。

中小企業における人事評価制度の作り方
それでは、中小企業における具体的な人事評価制度の作り方を見ていきましょう。次の順番で評価制度を構築するのが一般的です。
1. 制度導入の目標設定を行う
やみくもに評価制度を導入するのではなく、まずは自社の賃金形態や企業理念などに基づき、導入後に評価制度がどのような状態で運用されるべきか、目的と目標を明確化し、そこに向かって具体的な運用を考えなければ一貫性のある制度設計はできません。
人事評価制度導入後の目標設定の例を挙げるとすると、次のとおりです。
- 人事評価を通じていかに自社のビジョンを社員に浸透させるか
- 最適な人材配置にするために必要な事柄
- 社員の満足度が上がるような施策を制度に盛り込むこと
それぞれの項目について、達成すべき具体的な目標を設定しましょう。
2. 評価基準を決める
人事評価制度の運用目的や設定した目標に合わせ、能力評価・成果評価・情意評価を組み合わせて評価基準を決めます。
- 能力評価:社員の職務遂行能力を評価するもの。日々の業務や問題が発生した場合の対応能力の評価
- 成果評価:任意の期間における社員の目標達成の度合いや、過程の評価
- 情意評価:仕事への向き合い方や姿勢の評価
たとえば営業担当者の場合、成果評価は個人の売り上げ目標をどの程度達成できたかが評価項目となるでしょう。そして、情意評価は日々の業務態度や遅刻・欠勤の状況を評価しますが、上記2つの項目に比べて評価者の主観が入りやすいため、さまざまな角度から可能な限り客観的に評価しなければいけません。
これらのうち、どの評価項目を重視するかは企業によって違います。企業理念や経営目標に沿った組み合わせを考えましょう。
3. 評価手法を決める
評価基準を決めたら、実際に社員の評価をする方法を選択します。多くの企業では管理者が部下の評価を行っていますが、最近では管理者に加えて同僚や部下からの評価も査定に含める、360度評価やMBOといった手法を取り入れる企業も増えているようです。代表的な評価手法は次のとおりです。
MBO(目標管理制度)
MBO(目標管理制度)はかつてピーター・F・ドラッカーが提唱した制度で、社員が自ら達成すべき目標を設定し、達成度合いを人事評価に加える方法です。社員が自ら目標へ向かって行動できるように促す効果があるといわれており、達成度合いを人事評価に加えることにより、各社員の能力開発やモチベーションの向上が期待できます。
ただし、職種や部門によっては明確な目標設定が難しい場合があるので、できる限り公平・公正な評価ができるように工夫しなければいけません。他の制度と組み合わせて運用し、評価の公平性を担保するのもよいでしょう。
MBOとは何か次の記事で解説しています。

360度評価
360度評価は管理者のみならず、評価対象となる社員の同僚や部下など、さまざまな関係者の意見を人事評価に加える手法です。
360度評価は社員を多角的に評価する方法であり、管理者側は評価にかかる時間を削減できるのに加え、社員側も多面的なフィードバックを得られるので、新たな気づきを得られるメリットがあります。
さまざまな人の評価や意見が加味されるため、個人の主観によらない客観的な評価が得られるのが特徴です。最近では多くの企業が360度評価を採用しており、一定の成果を挙げています。中小企業では、評価する人員が少なかったり制度が整っていなかったりすることで人事への負担も偏りがちなため、360度評価を併用することで公平な成果が得られるでしょう。
360度評価について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、社内で高いパフォーマンスを発揮している人の行動特性を分析し、それを基準として社員一人ひとりの評価を行う手法です。優秀な成績をあげている社員や、一定の成果を継続してあげている社員をベンチマークとして、実際の行動ベースで評価します。
実際の社員を評価基準とするケースが多いですが、自社の理想の人物像を設定することもあります。
実際に成果を出している社員の行動を評価基準とする場合、他の社員も評価されるポイントをつかみやすいので行動方針を決めやすく、企業側も効率的な人材育成が可能になるのがメリットです。
コンピテンシー評価とは何か、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

4. 実際に評価を行いアップデートを続ける
評価手法を定めたら、実際に評価を行いましょう。導入したばかりの制度は不具合が起こる場合が多く、運用上の課題が明らかになることもあるはずです。常にブラッシュアップを行って評価制度をアップデートし続けなければいけません。
また、評価者の育成や社員へのフィードバックも必要となります。評価基準や評価内容についても社員に開示し、意見を求めるようにしましょう。
評価の方法についてはこちらの動画でも紹介しています。
人事評価制度を定着させるために役立つシステム
担当者も少なく運用が大変な中小企業での人事評価。評価制度の定着や運営に役立つ代表的な人事評価システムを紹介します。
カオナビは人事評価ワークフローを効率化してくれるタレントマネジメントシステムです。人材情報の見える化・一元化をすることによって人事業務にかかる手間を削減し、社員が自らの強みを活かせる人材配置を実現するとともに、採用のミスマッチを防げます。さらに、社員のモチベーション分析や離職分析などもできるため、採用コストの削減に役立つでしょう。
HRBrainは人事データの活用からタレントマネジメントまで幅広く活用できるシステムです。人事評価管理から人事制度の構築、タレントマネジメントなど、さまざまな企業の課題に対応できるクラウドサービスで、スタートアップ企業から大企業まで業界・業種を問わず導入されています。あらゆるデータを自由に掛け合わせて分析できるので、論理的でデータドリブンな人事の実現に寄与します。
HRMOSタレントマネジメント - 株式会社ビズリーチ
HRMOSタレントマネジメントは社員の入社から活躍まで、さまざまな人事データを連携させて評価を行える人材活用プラットフォームです。データに基づいた客観的な人事判断が可能になるため、組織の継続的な成長に役立ちます。従業員管理・人事評価に活用できる「人材管理クラウド」と人材採用のための「採用管理クラウド」の2つが利用でき、どちらも使いやすいUIなので、どんな業種でもスムーズに導入・運用できるのが特徴です。
あしたのクラウドHR - 株式会社あしたのチーム
あしたのクラウドHRは、社員のデータベースから目標設定・人事評価・給与管理まで一元的に行えるクラウドシステムです。すでに4,000社以上※の導入実績があり、人事ワークフローの改善を中心に、人事評価と給与の適切な調整やビッグデータを活用した人事課題の解決に活用できます。現状の評価制度を効率化して再現するのはもちろん、新しい人事評価制度の導入にも役立ちます。
※出典:あしたのチーム「あしたのクラウドHR」(2022年4月26日閲覧)
あしたのチームは12か月間で評価制度を自社運用できるように支援するクラウド型の人事評価制度運用サポートサービスです。社員数に基づいたリーズナブルな価格設定で利用でき、飲食や人材・製造、卸売・小売、住宅業界まで幅広く導入されています。新しい人事評価制度を導入したい企業におすすめです。
CYDAS PEOPLE - 株式会社サイダス
CYDAS PEOPLEは社員のパーソナルプロファイルの管理や人材情報収集機能など、人材管理に必要なアプリケーションを選択して利用できるクラウドサービスです。GoogleドライブやSlackなど、さまざまなアプリケーションとのAPI連携も可能で、自社の既存の人材管理システムに組み込むことで人事領域の業務を効率化できます。導入から活用まで丁寧なサポートも受けられます。
タレントパレット - 株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレットは、データを活用した人事戦略を可能にするクラウド型タレントマネジメントシステムです。あらゆる人材データを一元化・蓄積することで、配置から育成、採用、社員満足度向上など、分析に基づいた科学的人事戦略を豊富な機能で実現します。
スキルナビはデータの入力負担が少なく、長期的に使いやすいタレントマネジメントシステムです。マネジメント層と社員側のそれぞれの立場に向けたマネジメント機能が揃っているので、全社的に人材の適正化・効率化を実現できます。360度評価やBSCベースの評価などにも対応可能。数あるタレントマネジメントシステムの中でも導入費用が安く、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。
本記事で紹介した人事評価システムも含め、こちらの記事ではおすすめの人事評価システムを比較しています。

人事評価制度の整備で適切な評価を実施しよう
人事評価制度は企業の規模に関わらず必ず導入すべきもので、社員の公正な評価には欠かせません。
自社で人事評価制度を作る場合には、まず制度がどのように運用されるべきか、理念や目標をもとに設定する必要があります。その後に評価基準を決め、自社に合った評価方法を選択しましょう。評価制度の定着には人事評価システムの導入がおすすめです。うまくシステムを活用することで、人事部門の手間を削減し、効率的かつ正確な人事評価が可能になるでしょう。
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