アセスメントとは | 業界ごとの意味の違い・使用例
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- アセスメントとは
- アセスメントの流れ・やり方
- 情報収集
- 分析・仮説立て
- 計画の策定
- 計画への評価
- アセスメントの種類
- 人材アセスメント
- 医療・看護アセスメント
- 環境アセスメント
- 製品アセスメント
- リスクアセスメント
- テクノロジーアセスメント
- 人材アセスメントの目的
- 人材アセスメントのメリット
- 適正な採用・人材配置が行える
- 管理職候補者の選出・育成
- おすすめのアセスメント・ツールやアセスメントの方法
- アセスメント研修
- 360度評価
- 適性検査
- 人材アセスメントを行う際の注意点
- アセスメントの結果はフィードバックする
- 継続的に学習と効果測定を行う
- アセスメントで適正な評価や人材育成を実現
- BOXILとは
アセスメントとは
アセスメントとは、評価や査定を指す言葉です。語源となる英語のアセスメント(assessment)には課税や査定、査定額、税額、判断などの意味があります。これらが転じて、現在はビジネスにおいて、人物・環境などの対象物や事象を客観的に評価・査定し、事前に対策を打つ意味で使用されるのがほとんどです。
日本では、1980年代中頃からさまざまな場面で「アセスメント」が使われるようになりました。ただし言葉の意味は業界によって若干の違いが見られ、「環境アセスメント」「製品アセスメント」のように、熟語で使われるのが特徴です。
アセスメントの流れ・やり方
アセスメントは、次のようなプロセスで行われます。
- 情報収集
- 分析・仮説立て
- 計画の策定
- 計画への評価
それぞれ詳しく解説します。
情報収集
まずは対象となる人物・ものごとに関する情報を、ヒアリングや周辺調査などによって集めます。この時幅広い角度から情報を集めるのが重要であるため、現在の時間軸だけでなく、過去にも焦点を当てましょう。集めるべき情報は次のとおりです。
- 現在対象が置かれている状況
- 対象が置かれている環境(関係者や所属する組織といった社会環境)
- 過去に対象や対象の周辺で起こったできごと
具体例として、道で立ち尽くす子どもを発見した場合、まず「どうしたの?迷子になった?」といったように、現在置かれている状況をヒアリングします。また周囲に親はいないか、子どもが何をもっているか(手ぶらかリュックを背負っているかなど)といった、環境情報を確認します。
くわえて近くにいた人物に、「この子がなぜ1人でここにいるか知っていますか?」とヒアリングし、過去の情報を確認するのもおすすめです。このように、周辺の調査やヒアリングを行っていくことで、対象に対する解像度を高めましょう。
分析・仮説立て
次に収集した情報から分析し、仮説を立てます。先ほど例であれば、集まった情報から次のように分析し、仮説を立てます。またこの時、対象の環境や心理状態も含めて分析するのが重要です。これにより、分析や仮説の精度を高められます。
【集まった情報】
- 手にはお菓子をもっており、荷物は何ももっていない
- 本人は「ママと一緒に来た」と話している
- 泣いてはいないものの、あたりを見回していて落ち着かない
- 周囲に母親は見当たらない
- 近くにいた人から「そこのスーパーから1人で飛び出してきたのを見た」と証言を得た
【仮説】
- スーパーマーケットへ、母親と一緒に買い物に来ていた可能性が高い
- 「飛び出してきた」との証言から、母親の手を離れ勝手に外へ出てきたと予想される
- 勢い余って飛び出してきたものの、母親と離れて不安がっているかもしれない
- 母親は近くに見当たらないため、まだスーパーの中にいる可能性がある
計画の策定
仮説が立てられたら、次にこの仮説をもとに計画を立て、実施します。先ほどの例であれば、次のように計画・実施します。ビジネスの場合は目標を立て、それをどのように達成するかを考えるのもおすすめです。
- 子どもを連れてスーパーの中に入り、一緒に母親を探す
- 見つけ出せないようであれば、店員に事情を説明し店内アナウンスで呼び出しをしてもらう
- 待っている間は子どもに話しかけ、不安を軽減させる
計画への評価
最後に、実施した計画に対し評価・情報共有を行い、これを次のアセスメントへと生かします。先ほどの例では次のように評価を行います。
- スーパーの中で無事に母親を見つけ出せた(評価)
- 母親に、子どもが1人で出てきたたため、スーパーへ連れてきたと説明(申し送り)
企業がビジネスでアセスメントを行う場合は、アセスメントは継続的に行い改善を続けましょう。
アセスメントの種類
アセスメントには、人材アセスメントや看護アセスメントといったさまざまな種類があり、前述したように、それぞれ若干の違いがあります。アセスメントの種類と詳しい内容について、いくつかまとめて紹介します。
人材アセスメント
組織や企業において、適切な人材配置・育成を行うための客観的な人材評価を、「人材アセスメント(Human Assassment)」といいます。従来の人材評価では、主観による感覚的な評価を行っていましたが、人材アセスメントは、客観的に設定された判断基準を満たしているかで判断するのが特徴です。
演習や心理テスト、適性検査などを行い客観的に能力を数値化して評価するため、公平な評価が行えます。記事の後半では、主に人材アセスメントを中心に解説します。
医療・看護アセスメント
看護アセスメントとは、医療・看護の現場において対象となる患者の情報を収集し、問題を把握することです。客観的情報の他に、主観的情報を組み合わせた評価であるのが、人材アセスメントとの違いといえます。
これは患者を評価するにあたり、体温や血圧といった客観的情報の他に、患者が感じる苦痛や不安といった、主観的情報が必要だからです。
環境アセスメント
環境アセスメントとは、開発事業の内容を事前に予測・評価し、環境に与える影響を最小限にとどめる代替え案を検討することです。世界的な環境破壊や資源枯渇が懸念される現代では、人間が健康的に生活のできる豊かな環境・自然を守る必要があるため、環境アセスメントの注目度も高まっています。
具体的には、羽田空港D滑走路建設時に、滑走路の一部を桟橋構造とすることによって、多摩川河口部からの流れを極力変えないよう配慮した事例があります。なお、単にアセスメントと呼ばれる場合は、環境アセスメントを指している場合が多いようです。
製品アセスメント
製品アセスメントとは、環境アセスメント同様環境保全や資源保護の観点から、製品の有用性や利便性と同時に、製品廃棄時の処理の容易さや資源再利用を事前評価する手法です。
これは、1989年にクリーン・ジャパン・センターが開催した研究会による記述、「製品アセスメントおよび再資源化技術に関する調査研究」をもとにしています。狭義には製品の処理・処分を容易にするもの、再資源化を容易にするものであり、広義には資源保全、地球環境保全に配慮したものとされています。
リスクアセスメント
施設や食品などが健康に影響を与える危険度や安全度、労働環境における潜在的な危険度や有害度を事前に評価し、除去もしくは低減する手法を「リスクアセスメント」といいます。
労働安全衛生マネジメントシステムでは、「危険性または有害性等の調査に関する指針」が明記されており、2006年に努力義務化されました。
従来対症療法が中心であった職場でのリスクマネジメントを、的確な対策を事前に講じることで、より高い安全性の確保を目的としています。
テクノロジーアセスメント
テクノロジーアセスメントとは科学技術、すなわちテクノロジーが自然環境や社会に与える影響を事前に予測・評価する手法です。1970年代に注目されたあと1度衰退しましたが、近年再び注目されています。
再度注目されている理由には、ヨーロッパでの欧州議会テクノロジーアセスメント設立が考えられます。また遺伝子組み換え技術やナノテクノロジーなど、安全性や倫理面で懸念点のあるテクノロジーが発達し、あらためて技術面で事前予測・評価が必要になったことも、理由として挙げられるでしょう。
人材アセスメントの目的
人材アセスメントを行う目的は、客観的に人材評価を行うことです。客観的な情報だけで評価を行えば正確な評価を下しやすく、採用や人材配置において、最適な結果が得やすくなります。また客観的な情報にもとづく評価は公平性があるため従業員も納得しやすく、仕事に対するモチベーションの向上にもつなげられます。
人材アセスメントのメリット
人材アセスメントのメリットとしては、適正な人材配置や管理職候補者の選出・育成ができる点にあります。それぞれ詳しく紹介します。
適正な採用・人材配置が行える
人材アセスメントを行うと、適正な採用・人材配置を行えるのが大きなメリットです。採用の場面や人事評価において主観や感情が入ると、バイアスがかかって適正な評価を下せない可能性があります。
適正ではない評価が下されると、自社の求める人材像に一致していないのに採用されたり、部署の業務内容にスキルや志向が合っていないのに配属されたりする可能性があります。こういった人材のミスマッチは、従業員のモチベーションを下げ、生産性低下や早期離職を引き起こすでしょう。
しかしアセスメントでは主観を排除し、客観的な情報だけで評価ができるため、採用や人材配置も最適化できます。
管理職候補者の選出・育成
アセスメントの実施は、管理職やリーダー候補の選出・育成にも役立ちます。一般的にリーダー・管理職は実務能力や判断力で選出されるケースが多くあります。しかし本来リーダー・管理職に必要なのはリーダーシップやマネジメント能力で、実務能力や判断力に優れた人物が、これらの能力にも優れているとは限りません。
一方でアセスメントを行えば、客観的情報にもとづいて、リーダーや管理職にふさわしい人物を探し出せます。またリーダーとしての弱みや強みも正確に可視化できるため、育成プログラムもより最適なものを用意できるでしょう。
おすすめのアセスメント・ツールやアセスメントの方法
実際に人材アセスメントを実施する際には、アセスメント・ツールや、基準が明確で公正性のある評価手法を活用するのがおすすめです。アセスメント・ツールとは、客観的な基準をもとに、対象者を評価できるツールのことです。主なツールや評価手法について、詳しく紹介します。
なお、次の記事でもアセスメント・ツールを解説しているため、気になる方はこちらも参考にしてください。
アセスメント研修
アセスメント研修とは、実際の業務と同じ状況を設定し、対象者がどのように行動するかを観察する評価手法です。グループディスカッションやプレゼントいった状況下における行動を、アセッサーと呼ばれる特別な訓練を受けた人物が、判定項目に従って評価を行います。
評価の基準は一律ではなく、企業が求める人物像から設定されます。より実践的なスキルや考え方、姿勢を見極められるのが魅力です。似たものとして人事研修もありますが、人事研修はスキルアップを目的としているのに対し、アセスメント研修は第三者による公平な評価を目的としているのが、大きな違いです。
360度評価
360度評価とは、上司以外にも同僚や部下といった関係者複数人で、対象者を評価する手法のことで、多面評価とも呼ばれています。上司だけの評価では偏りがちですが、さまざまな人から評価されることで、公平で納得感のある結果になります。
また自己評価と360度評価を比較することで、これまで気づけなかった自身の強みや課題を発見可能です。ただし、関係性の近い人物が評価を行うため、評価者の主観や好みを反映しやすいのがデメリットです。くわえて、部下が上司を評価するため、上司が評価を気にして部下に厳しい指示・指導ができなくなる可能性もあります。
適性検査
適性検査とは、対象者の知的能力や性格、興味関心などを測定するテストのことです。例としては、リクルートマネジメントソリューションズの「NMAT(管理者適性検査)」や、「JMAT(中堅社員適性検査)」などが挙げられるでしょう。テストは、「はい・いいえ」で回答できるものや、複数の選択肢から最適なものを選ぶタイプなどがあります。
テストの昇進試験や採用試験に利用され、昇進や人材配置の判断に利用されます。また従業員の結果データを分析すれば、早期離職の原因を突き止めるのにも役立つでしょう。
人材アセスメントを行う際の注意点
人材アセスメントを実際に行う際には、次の点に注意が必要です。それぞれ詳しく解説します。
アセスメントの結果はフィードバックする
アセスメントを実施した結果については、対象者にしっかりフィードバックしましょう。アセスメントの結果は、対象者の課題や改善点も明らかにするため、これを生かせば次の目標設定につなげられます。できれば、上司が対象者それぞれと面談を行い、アセスメントの結果を伝えるのが理想です。
またこの時、結果の伝え方についても注意が必要です。結果を「いい」「悪い」といった主観を入れず、あくまで調査データであることを強調して、対象者が間違ったとらえ方をしないよう配慮してください。
継続的に学習と効果測定を行う
アセスメントは1度の実施では本来のメリットや効果が得られないため、継続的に学習と効果測定を行うのも重要です。結果の振り返り、課題に対する施策を繰り返すことで、人材の育成につながります。
もし可能であれば事前にアセスメントの結果を予想し、実際の結果と比較するのもおすすめです。比較で差が出た部分を検証、改善につなげることで、さらなる人材の成長が期待できるでしょう。
アセスメントで適正な評価や人材育成を実現
アセスメントは、評価や査定を指す言葉であり、客観的な観点から分析することで、のちの行動を最適化できます。また人材アセスメントに関しては、適正な人事評価ができるようになるため、人材のミスマッチを防ぎ、人材の選出や育成も最適化できるでしょう。
ぜひ人事評価に悩んでいる企業は、この記事を参考にアセスメントや、アセスメント・ツールの導入を検討してください。
BOXILとは
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