ERPとは? 基幹システムとの違いや基礎知識、メリット・デメリットを解説
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ERPとはなにか、どのような機能があるのかについては下記の動画でも解説しているため、あわせてチェックしてみてください。
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ERPとは
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「企業資源計画」となります。わかりやすくいうと、企業の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理し、経営を効率化するためのシステムのことです。
ERPは、会計や人事労務、販売管理、生産管理といった多数のシステムを統合していることから、「統合基幹業務システム」とも称されます。もともと製造業で使用されていた、MRP(Material Resource Planning:資材所要量計画)を汎用的にしたのがERPの成り立ちです。
1990年代に海外でMRP(Material Resource Planning)から発展したERPは、1990年代後半から2000年代前半にかけて日本でも導入されるようになりました。そのころ日本企業によく導入されたSAPのERPパッケージは、2027年にサポートが終了することから「SAP2027年問題」として注目されています。
ERPの機能
ERPは、さまざまな業界や業種に対応できるように設計されており、基本的な機能が網羅されていることが多いです。ただし、ERPによって搭載されている機能は異なります。
代表的なERPの機能は次のとおりです。
- 販売・購買管理
- 生産管理
- 会計管理
- 人事労務管理
生産管理機能は、製品の生産に必要な原材料の量や生産スケジュールを管理します。また、原価管理、検収、検品なども生産管理の一部です。販売管理では、受注、出荷、請求など、商品の販売に関する金銭の流れを管理します。
会計管理は、財務処理全般を行うためのシステムであり、会計監査などの際に自社の財務状態を正確に伝えるために重要です。さらに、管理会計も会計管理に含まれます。管理会計とは、外部への発表ではなく、自社内で経営に活かすために作成する会計データのことです。
在庫管理機能は、販売・購買管理の一部であり、在庫は資産でもあるため、資産管理や債権管理、会計とも関連します。
資産管理では、自社が所有するソフトウェア、ハードウェア、ライセンス、機器類などを管理可能です。債権管理では、未回収の売掛金の期限管理や残高確認などを行います。
このように、ERPは豊富な機能を持ち相互に関連しながら、企業の業務を効率的に管理を行えます。
ERPの機能一覧はこちらの記事にて紹介しています。
ERPと基幹システムとの違い
基幹システムとは、企業の活動を支えるシステムで、ERPに含まれるそれぞれの業務系システムを指します。具体的には、次のようなシステムが基幹システムに該当します。
- 会計管理システム
- 販売管理システム
- 在庫購買管理システム
- 生産管理システム
- 人事給与管理システム
一方、メール配信システムやスケジュール管理システムといった、主にコミュニケーションとかかわるシステムは情報系システムと呼ばれます。
基幹システムと情報系システムについては、次の記事で詳しく解説しています。
ERPパッケージとは
ERPパッケージとは、基幹システムをひとまとめにして提供しているソフトウェアのことです。システムとしての「ERP」とほぼ同義で使われるほか、「ERPシステム」「ERPソフト」などとも呼ばれます。
ERPパッケージは、企業ごとにカスタマイズする部分が少ないため、導入にかかる工数や初期費用が小さくなりやすいのが特長です。対極にあるのは企業に合わせてスクラッチ開発されたERPシステムです。
ERPの種類
ERPには、外部のサーバーを利用するクラウド型ERPと、自社のサーバーにインストールするオンプレミス型ERPがあります。また、オンプレミス型ERPには、構築済みのシステムを利用するERPパッケージと、企業に合わせてスクラッチ開発するERPシステムの2種類があります。
クラウド型ERP
クラウド型ERPは、外部のサーバーにインストールされたソフトウェアを操作することで利用するERPです。クラウド型ERPの提供企業からサーバーを借りて利用するSaaS(Software as a Service)と、第三者からサーバーを借りてERPをインストールするIaaS(Infrastructure as a Service)などがあります。
クラウド型ERPのメリットは、自社でサーバーや運用のためのリソースを確保する必要がなく、初期費用や運用コストを抑えられることから、近年導入する企業が増えています。
一方でデメリットとしては、インターネットを経由する以上情報流出の不安がぬぐえないことです。近年クラウド型ERPのセキュリティ対策は高度なものになりつつありますが、各サービスがどのような対策を施しているかは確認しておいた方がよいでしょう。
オンプレミス型ERP
オンプレミス型ERPとは、サーバーを自社内に設置し、運用するタイプのERPです。
メリットとしては、自由にカスタマイズしやすい、外部ネットワークに依存しないのでセキュリティに優れていることがあげられます。そのため、独自のシステムを構築したい・セキュリティ対策を万全にしたいといった希望がある場合は、オンプレミス型が優れているといえるでしょう。
一方でオンプレミス型のデメリットはコストがかかることです。一般的にクラウド型ERPよりも初期費用・メンテナンスコストの両方が高くなりがちです。運用していくなかで、メリットが上回るかどうかは確認しておくべき点となります。
ERPパッケージ
ERPパッケージとは、既存のシステムをそのまま利用する、あるいは既存システムの一部をカスタマイズして利用する方法です。
すでに販売されているパッケージソフトウェアをそのまま導入するため、オンプレミス型に比べると初期費用がかなり抑えられるうえ、導入にかかる手間もさほどかかりません。また、導入している企業が多いERPパッケージなら品質に信頼性がもてます。
デメリットとしては、カスタマイズが限られる点が挙げられます。自社システムに合わせていろいろと機能を追加したい場合は、他のタイプを検討した方がよいでしょう。くわえてライセンス費用・サポート代など、ランニングコストがかかる点もデメリットといえます。
スクラッチ開発
スクラッチ開発のERPは、各企業に合わせて独自にシステム構築する方法です。自社もしくは開発会社によってオーダーメイドにて開発するのが一般的です。
スクラッチ開発では、オンプレミス以上にカスタマイズがしやすい点がメリットでしょう。必要な機能を搭載できるので、自社に合った使いやすいERPにできます。また、ERPパッケージと違いランニングコストがかからない点もメリットといえるでしょう。
一方で、スクラッチ開発には膨大なコストと時間がかかります。すべての要素を一から作っていくため、数百万円から数千万円の費用が掛かることもあります。開発期間も数年単位になる場合もあり、費用と時間に余裕のある大企業向けといえるでしょう。
【関連記事】
・ERPの導入事例
・ERPのシェア・市場規模
・ERPの比較【クラウド】
・ERPの比較【中小企業向け】
・ERPの比較【OSS(オープンソース)】
ERPのメリット
1. 統合データベースによる一元管理
ERPのメリットの1つは、統合データベースでデータを一元管理できることです。
ERP導入により、基幹システムのデータを一元管理できるので、統一された情報を同一のシステムで処理できるようになります。たとえば、在庫管理システムや生産管理システムごとに個別にデータ入力する手間を解消できます。
2. 業務効率アップ
基幹システムのデータを一元管理するので、業務の効率化が期待できます。
従来は勤怠データを給与計算へ転記し、給与の数値を会計へ反映する流れが主流でした。ERPなら転記が不要になるため、早さと正確性を担保できます。
3. リアルタイム経営でスピード強化
ERPの各システムに入れたデータが他の機能へ即座に連携されるため、分析結果をスピーディーに経営へ反映させられます。
これまでは経営者が各部門で使用しているツールやファイルを都度確認していたのが、ERPを使えば経営者がすぐにデータや状況を把握でき、戦略的な経営判断が迅速に行えるようになります。
4. ベストプラクティスの実践
ERP提供企業が積み重ねてきた、成功企業における業務管理のベストプラクティスを取り入れられる点もメリットです。とくにクラウドERPを利用する場合は、ナレッジが溜まっていなくても効率的な業務管理を始めやすいのがメリットです。
5. セキュリティ・内部統制の強化
ERPを利用することで、管理する業務系ツールを削減できるため、セキュリティや内部統制を強化しやすくなります。
複数のツールごとに対策を施していると、注意すべきポイントが多くなり漏れが発生しやすくなります。近年ではSaaSであっても、SOC認定書を発行することで内部統制を担保しているERPも出てきているため、あわせてチェックするとよいでしょう。
ERPのメリット・デメリットの詳細については、次の記事にて解説しています。
ERPのデメリット
企業活動にERPを取り入れることには上述のようにさまざまなメリットがあるものの、考慮しなければならない問題点もあります。とくにオンプレミスやスクラッチ開発によるERPは、ビジネス環境の変化による対応の限界が指摘されています。
1. 既存システムからERPに置き換える手間がかかる
部署ごとに既存システムがあるなかで、新規にERPを導入し統合環境を構築する場合、コストと手間がかかります。主に次の3つのポイントを考慮する必要があるでしょう。
- 既存データをERPへ統合
- ERPへの作業フロー変更
- 既存帳票・データのサポート
データの一括変換ができないマスターデータ/個別データは、手作業で移し替えを行う必要があります。対応要否の決定が迫られるほか、データベース共有を行っている場合は、先方への変更依頼も必要です。
当然、作業フローの変更が生じるため、作業習熟にも一定の時間がかかります。
2. 初めて導入する場合も社内に浸透するまで時間がかかる
一方、ERP導入によって初めて業務システムを構築する場合、次の3点を考慮する必要があります。
- 業務システムを一から学習する必要がある
- 業務にERPを最適化させる必要がある
- データを整理して準備する
業務システム導入にあたり、どのようにERPを活用していくか、最適化するにはどのようにすればよいのか、十分に検討する必要があります。さらに、ERP向けのデータベースのためにデータを整理して準備することが必須です。
また、ERPに携わるすべての関係者が、業務システムを一から学習する必要があり、習熟にかかる時間を考慮する必要もあるでしょう。
ERP導入の流れ
ERPの導入を検討するにあたり、ERP導入の基本的な流れを押さえておきましょう。
1. ERP導入の目的を明確にする
ERPを導入することで、企業あるいは部署として達成すべき目的を明確にしておきましょう。
導入目的が明確でないと、適切なERPパッケージが選定できなかったり、要件定義ができなかったり、社員にERPの導入目的を説明できなかったりと、プロジェクトの根幹にかかわる部分が十分に行えません。
そのため、ゴールを具体化することが大切です。システムを導入することで○○作業にかかっている工数を○%削減する、月次処理にかかる時間を○日削減するなど、数値目標を明確にしましょう。
2. プロジェクトメンバーを選定し各部署担当者と打ち合わせる
導入プロジェクトメンバーを選定し、プロジェクトを進めていきます。
ERPは社内の業務全般にかかわるため、広い範囲をカバーできるよう必要な人数を選定しましょう。部署間をまたいで発言できる経営層に近い役職者を推進者として、そして、各部署でプロジェクトの責任を負う担当者を選び、打ち合わせを進めていきます。
3. 業務プロセスを棚卸し、新しい業務フローを構築する
ERPで管理する業務について、現在はどのようなツールで管理しているのか確認しておきます。
業務プロセスは各企業に固有のものなので、基本的には自社で棚卸を進める必要があります。棚卸した内容をもとに、ERPでどの範囲をカバーするのかを決め、新しい業務フローを構築しましょう。
4. 試験運用を行う
従来のシステムと併用しながら、問題なくERPが運用できるかどうかを確認します。
5. 本格運用を行う
社内全体に向けてマニュアルを作成し、状況に応じて機能を調整しながら運用を行います。
ERPの選び方
ERP導入にはさまざまなメリットがありますが、適切なシステムを選ばないと余計な手間がかかることもあります。選定の際には次のポイントを確認するとよいでしょう。
必要な機能が揃っているか
ERPにはさまざまな機能がありますが、ベンダーによって提供される機能は異なります。自社の業務に必要な機能を備えているか、また将来的な拡張性や柔軟性があるかを確認しましょう。機能の使いやすさも重要な選定ポイントです。
ERPの運用には専門的な知識が必要なため、自社で管理することが難しい場合は、ベンダーやシステムベンダーに運用保守を依頼することをおすすめします。導入サポートや障害時の24時間体制でのサポートなど、自社のニーズに合ったサポート体制があるかを確認しましょう。
適切なタイプか
クラウド型・オンプレミス型のどちらが適切かシミュレーションしましょう。
上記でも述べたとおり、クラウド型ERPは安価で導入しやすいもののカスタマイズは不得手、オンプレミス型ERPはクラウド型より高価になりやすいもののカスタマイズしやすいメリットがあります。自社の環境や要件にあったシステムを選びましょう。
セキュリティ対策は万全か
セキュリティレベルの高いERPを選びましょう。
ERPには顧客情報をはじめとした機密情報を格納します。セキュリティレベルが低いと、情報漏えいやデータ破損につながる恐れがあるため、各社どのようなセキュリティ対策がなされているか確認し、万全なシステムを選びましょう。
ERPの種類は適切か
ERPを導入する際には、自社のニーズに合ったERPの種類を選択することが重要です。上記でも述べたとおり、クラウド型ERPは、SaaS、IaaS、PaaSに分類され、それぞれ長所と短所があります。
SaaSはカスタマイズが難しい一方、IaaSやPaaSはインフラ部分のコストに加えてERPの費用がかかるため、コスト削減につながらない場合があります。
オンプレ型ERPは、クラウドより高価になりがちですが、柔軟なカスタマイズが可能です。自社の用途や運用方針、予算等を考慮し、最適なインフラ形式を選択しましょう。
予算内に導入コストがおさまるか
ERPの導入コストは、ベンダーや導入形式によって大きく異なります。自社の業務との適合性やERP導入の目的を明確にし、必要なサービスやサポート内容がコストの予算内で収まるかを確認することが大切です。
オプションやアドオン開発が必要な場合は、追加料金が発生する可能性があるため注意が必要です。また、導入コストだけでなく、長期的な運用コストも考慮しましょう。
導入実績は豊富か
最後に、導入を検討しているERPの導入実績や評判を確認することも重要です。長期間使用することを前提に、自社の業務に合ったERPを選定し、ニーズを満たすERP提供企業を選びましょう。導入や移行の提案を受けることで、ERP導入の失敗等のリスクを減らせます。
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ERPの導入で経営を効率化しよう
ERPを導入する目的には、「販売数・利益向上」「業務コストの削減、経営効率化」「経営判断の迅速化」などが挙げられ、今後は中小企業にもERP導入の波が訪れると見られています。
しかしERPは、あくまでも経営を効率化して判断を支援するシステムです。ERPを導入する目的を明確にし、最適化を図ったうえで、最大限の活用を検討する必要があるでしょう。
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