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ワーケーションとは
ワーケーションとは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語であり、休暇中に旅先といった場所で仕事をする新しい働き方として、アメリカなどを中心に広まりつつあるスタイルです。当初はフリーランサーなど比較的自由に働く時間を設定できる職種で注目を集めていました。
しかし、最近では日本航空(JAL)など、大手企業でも新しいテレワークの仕組みとしてワーケーションの実践に舵を切っており、働き方改革・休み方改革の新しい方法として注目を集めています。
「ワーケーション」が生まれた背景
ワーケーションが注目されるようになった背景としては、働く人々の休暇の質低下が社会問題化している点が挙げられます。
日本人の有給取得率は、世界30か国中最下位。業務量が多すぎて休みが取れない、周りも休暇を取得していないので休みづらい、他の人に迷惑をかけると思うと休めないなど、休暇を取りたくても取りづらいと感じる人が数多くいます。
また、労働生産性の低さも問題視されています。欧米のように長期休暇でしっかりリフレッシュするという休み方が難しいなど休暇の質が低く、結果として生産性も上がらないという問題が浮き彫りとなってきました。
そこで休めない、休みづらいことを逆手にとって、思い切って仕事と休暇を合体させてしまおうという発想から誕生したのがワーケーションです。休暇中に何日か稼働する日を設けることで、休暇の期間そのものを長くしようというものや、緊急度の高い仕事のみ対応するなどルールを決めて休みやすくするなど、いくつか種類があります。
ワーケーションの3つのメリット
ワーケーションにはどのようなメリットがあるのでしょうか?本記事ではワーケーションのメリットを3つ紹介します。1つめは、業務への活力アップ。2つめは、家族や友人との時間の確保。3つめは、仕事中にリフレッシュをしやすいという点です。詳しくみてみましょう。
業務への活力アップ
基本的に旅行先で仕事をするスタイルのため、仕事時間以外の早朝や夕方以降の時間を自由にバケーションスポットで過ごせます。そのため業務へのモチベーションの上昇や生産性の向上が期待できます。
変化のない日常によってマンネリ化してしまった業務にメリハリをつけ、終業後を早くエンジョイしたいという欲求が生産性向上のモチベーションとなり、仕事のパフォーマンスも向上します。また、自分の好きなロケーションで仕事ができるため日々の活力につながるでしょう。
仕事をしながらでも家族との時間が確保できる
家族と一緒に休暇を過ごしながらわーケーションを行った場合、仕事のスケジュールが埋まっていても仕事以外の時間に家族とのコミュニケーションをとれます。
多くのビジネスパーソンが日々の業務に忙殺されて家族とゆっくり過ごす時間がとれていません。そこで家族とともに旅行先で仕事をするスタイルをとることで、空いた時間に家族と特別な時間を過ごす機会を増やせます。ワークライフバランスの点からもメリットがあります。
すぐリフレッシュできる
旅先で仕事ができるので、その土地のリフレッシュスポットがすぐに活用できるのも魅力です。仕事場の環境がまったく変わるため、仕事のオンとオフの切り替えがしっかりでき、クリエイティビティや生産性の維持向上にも役立ちます。
旅行会社を中心にワーケーションが広がっているのは、そういったリフレッシュスポットの利用者の増加が狙いのひとつになっているためでしょう。
ワーケションの3つのデメリット
ワーケーションにはデメリットもあります。本記事では、デメリットについても3つ紹介します。1つめは、コミュニケーションコストの問題。2つめは、労働時間の把握が難しい点。3つめは、情報管理の観点です。自宅とバケーション地の滞在費と、生活コストが二重にかかることや社外の取引先の方々からの理解が得られないために業務がスムーズに行かないというリスクもあるようです。
コミュニケーションコストがかかる
最大のデメリットは、テレワークやリモートワークとも同じだが、対面コミュニケーションよりもコストがかかる・不自由があるという点でしょう。テレビ会議をつなぎっぱなしにしたとしても、リアルに集まる多数派で会話が盛り上がってしまうと、遠隔からは参加しづらいものです。
労働時間の把握が難しい
ワーケーションは旅行先・休暇先で仕事をするスタイルのため、上司などが勤務時間の過ごし方を実際に目で見て確認ができません。また、タイムカードがないため、労働時間の把握が難しいという側面があります。就業時間の長短が人事評価の影響するような人事評価制度や社風を持つ企業では、適切な人事評価を行えないと二の足を踏むケースが少なくないでしょう。
完全に裁量労働の場合は仕事の結果を評価します。しかし、それ以外の場合、労働時間はワーケーションをしているスタッフの自己申告となるので、本当に申告どおりに就業しているかを確認するのが困難です。しかしこれは、テレワークや直行直帰などオフィスを離れる場合でも同じこと。勤怠管理システム
導入などICTの活用と就業規則の整備を進めることで克服できるのではないでしょうか。
情報管理面が不安定になる可能性
休暇先でオフィスのような勤務環境が整っていることは極めて稀でしょう。場所によってはそういった環境がまったく整っていない可能性があるため、情報管理面で不安を感じる企業も多いです。
カフェや図書館で仕事をしていた人がパソコンから重要な情報を盗まれてしまったというケースもあるため、旅行先で同じような被害に遭うことを懸念する企業が多いのも頷けます。
情報管理を徹底することはもちろん、パソコンをうっかり置き忘れたり盗難にあったりしないよう注意喚起するとともに、万が一パソコンを紛失した際のエスカレーションルールも明文化しておくべきでしょう。たとえば、ワーケーション制度の導入の段階で同時にパソコンのパスワード設定を行う、社外に持ち出す資料を最低限にするといった情報漏えいのリスクを抑える工夫が重要となります。
和歌山県白浜町・JALなどワーケーションの導入事例を紹介
旅行サイトエクスペディアの2018年の調査によると、日本人の有休消化率は世界で最下位となっており、休暇の取得そのものに罪悪感を感じる人も少なくないそうです。
そこで企業や地域が積極的にワーケーションの導入を推奨することで、少しでも休暇を有意義に使うビジネスパーソンを増やし、企業全体の生産性を向上と地域活性を両立させようとする試みが各地で見られます。
和歌山県の取り組み
たとえば和歌山県の自治体では、地元をPRするための活動としてワーケーションを応用した活動を行っています。
県内にインターネット環境を整えた大規模商業施設をつくり、ワーケーションに取り組む企業や個人を呼び込んで自由に仕事と観光ができる環境を整えています。また、世界遺産である熊野古道を修復するボランティア企画など、さまざまな地域活性化の試みとワーケーションをリンクさせる工夫もしています。
政府の掲げた「働き方改革」の実現の一環として、行政も積極的にワーケーションを推奨しており、複数のIT企業を県内に誘致するなどして仕事と休暇を両立させるインフラも整いつつあるようです。
次の記事は働き方改革に関して詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
日本航空(JAL)
冒頭でも紹介したように、日本航空(JAL)では2017年7月から、新しいテレワークのシステムとしてワーケーションを本格的に導入しています。
同社はこれまでも在宅勤務型のテレワークを導入していましたが、仕事できる場所が指定されており質の高い休暇には不十分なところもあったようです。しかし、2017年7月からパイロットや客室乗務員を除き、7~8月のうちに最大5日間のワーケーションが認められるようになりました。
現状では、職場を離れられない職種には適応できないなどの問題点もありますが、大企業における新しい働き方の先駆者として期待されています。
ワーケーションと新しい働き方
最近では「働き方改革」という言葉が広まりつつあり、このワーケーションをきっかけにさまざまな新しい働き方を模索し始める人が増えています。ワーケーションが実現することによって、「自分らしい働き方」や「自分の生活に合わせた働き方」を考える機会が増えました。
「ブリージャー」の増加
現在では、ワーケーションと似たワークスタイルとして認知され始めている「ブリージャー」という言葉があります。
この「ブリージャー」とは、「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」の二つが組み合わせて造られた言葉で、出張先で業務を終えた後に会社に戻らず、そのまま休暇の取得を認めるという制度です。
vanlifeとは何か
欧米ではすでに認知されており、最近日本にも増えている働き方が「vanlife」です。このvanlifeは、キャンピングカーで旅をしながら仕事をする働き方のことです。
このように生活の仕方と働き方を自分の好きなように実現する人は年々増えています。今後このような新しい働き方が増えていき、これまでの毎日必ずオフィスへ出社しなかればいけないというスタイルは変化していくでしょう。
ワーケーションで、一歩先の新しい働き方を
近年、日本でも注目され始めた新しい働き方「ワーケーション」について、具体的なメリットや注意点、そして日本国内での導入事例を紹介してきました。
仕事と休暇のメリハリをつけるうえで、ワーケーションが逆効果になってしまうのではないかという懸念があるのも事実で。しかし、今のところ、多くのビジネスパーソンが仕事の生産性が向上したと報告しています。自己管理ができている人にとっては、多くのメリットを享受できる制度のようです。
これからワーケーションを取り入る場合は、自分の仕事のスタイルや生活がどのように変化していくかをしっかりと予測するとともに、まず仕事に対する固定観念を取り払うことからはじめてみましょう。