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[PR]ベンチャーとの協業でペーパーレス化を加速、AI-OCRのトップシェアへ挑戦する|NTT東日本インタビュー

最終更新日:(記事の情報は現在から1768日前のものです)
今後、日本のクラウド・SaaS市場は本格的な成長期へと突入するだろう。さまざまな業種・業界のサービスが登場し混沌とする今、市場を勝ち抜くために企業はどのような戦略で臨むべきなのだろうか。連載第1回は、AI-OCRサービス「AIよみと~る」を提供するNTT東日本の営業・マーケ戦略やベンチャーとの協業に迫る。

Sansan、freeeなど、SaaS企業の大型上場が相次いだ2019年。日経新聞はSaaS元年と表現した。そして2020年以降、日本のクラウド・SaaS市場はいよいよ本格的な成長期へと突入するだろう。勤怠、会計、営業支援、MAなど、さまざまなサービスが登場し混沌とする今、市場を勝ち抜くために各企業はどのような戦略で臨むべきなのだろうか。

本連載では、注目のクラウド・SaaSサービスを提供する企業のマーケ戦略・組織づくりを取材し、「クラウド時代を突き抜ける」ためのヒントを探っていく。

連載第1回は、AI-OCRサービス「AIよみと~る」を提供するNTT東日本にフォーカス。ベンチャーとの技術提携という新しい挑戦、これまで培った販路やカスタマーサポート体制を武器に、リリースから1年でAI-OCR市場で急成長している。

NTT東日本 庄司哲也さんビジネス開発本部 第二部門 ビジネス企画担当 担当課長
ベンチャーが持つ技術に早くから注目し、これまで150社以上に足を運び、意見交換を行ってきた。現在は同社の中でも新しい顧客向けの商材やビジネスを企画するビジネス開発本部で、「AIよみと~る」のマーケ戦略立案やチーム作りを行う。

文字認識率96%超「AIよみと~る」が紙帳票処理を高速化

「AIよみと~る with AI inside(以下、AIよみと~る)」は、手書き文字の紙帳票を読み取り、データ化するサービスだ。ディープラーニングの学習アルゴリズムにより、これまでのOCRでは難しかった手書き文字の高い読み取り精度を実現。2018年に同社が行った20,000文字を超えるトライアルでは、読取精度96.71%を記録したという。

また2019年6月にMM総研が行った「国内法人のAI-OCR導入実態調査」によれば、競合他社との比較で「AIよみと~る」がトップの文字認識率であることが確認された。

出典:MM総研「国内法人のAI-OCR導入実態調査」2019年6月発表

「AIよみと~る」はどんな顧客の課題を解決し、どんな未来を描くサービスなのか。NTT東日本の庄司さんに聞いた。

【顧客課題】大量の注文書処理に時間が奪われる

編集部:「AIよみと~る」は顧客のどんな課題を解決するサービスですか。

庄司:最近、ペーパーレス化が推進されているとはいえ、ビジネスの現場に紙はまだまだ残っています。なかでも典型的なのは、大量の注文書に時間を奪われるケースです。取引先が多い中小企業では、お客さんからどんどんFAXで注文書が来て、それをひたすら打ち込むという作業が発生します。1日4時間以上も打ち込みをしているという会社もありました。

また手入力だとミスが発生することもあり、受発注業務を効率化したいという声が多く聞かれました。顧客の業種としては必然的に、受発注業務が多い流通・卸・製造業が多くなっています。

【課題解決へのアプローチ】RPAとの組み合わせで効率化

編集部:「AIよみと~る」は「おまかせRPA」をセット利用するのがおすすめと伺いました。「AIよみと~る」だけでは、効率化は難しいのでしょうか。

庄司:もちろん「AIよみと~る」だけでも、打ち込み作業の時間は大きく短縮されます。しかし大抵の企業では、紙の帳票をデータ化した後、自社システムに入力する作業があります。そこで「おまかせRPA」でデータを社内システムに入力するところまでを自動化すれば、一連の処理を圧倒的に効率化できます。トライアルに参加した企業の中には、両サービスをセット導入し、83%の作業時間短縮ができたというケースもありました。

「サービスは1点ものの飴細工ではなく、金太郎飴」

NTT東日本 庄司哲也さん

「AIよみと~る」リリースから1年。現在導入社数はPOC(Proof of Concept:検証やデモンストレーションの段階)を含めて150を超え、順調に成長を続けている。続いて、営業体制やサポート、そしてマーケティング戦略について伺った。

【営業体制】対面営業とインサイドセールス

編集部:営業体制はどのようになっていますか。

庄司:対面営業とインサイドセールスの2つのアプローチを行っています。対面営業は、これまで長くお付き合いさせていただいているお客様の中から提案していく形です。

また、新しい試みがインサイドセールスです。自社サイトのチャットで連絡すると、専門のオペレータによる遠隔デモが体験できるようにしています。複数のAI-OCRを比較しているユーザー、いわゆるホットリードの流入があるので、高い文字認識率を実感いただくことで、そこをしっかりとキャッチできるようにしています。

そして営業まわりのオペレーションは、NTT東日本の強いところだと思います。たとえばSIがお客様からご注文いただいて1点ものの飴細工を作っていくとすれば、サービスにするというのは金太郎飴を作るようなものです。IDの発行のような受注から利用開始までのプロセスでミスが起きないように徹底的にサービスを磨き上げています。再現性の高いオペレーションを構築することは、安定したサービスを数多くのお客さまに提供するためには重要なことですね。

編集部:これまで紙が当たり前だった企業の中には、IT化自体に消極的でアレルギーをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

庄司:やはりあります。そもそもAI-OCRはまだ若いプロダクトで、国内で導入している企業も少ない。経営者は「本当に使えるのか」「効果が出るのか」と懐疑的になります。また、経営者の理解が得られても、現場の協力がないと定着までは至りません。作業効率化や業務効率化という言葉を使うと、現場の方は自分の仕事が無くなってしまうんじゃないか、と思う方もいるんです。

ですから営業は言葉選びも大事です。マイナスイメージではなく、生産性向上や働き方改革という言葉を使い、業務がどう変わるのか具体的にメリットを理解してもらうことが必要です。

【マーケティング】いかに「デモ」までの導線をつくるか

編集部:マーケティングではどのような施策に注力していますか。

庄司:今はオンライン施策に注力しています。Webを閲覧してくれた人の属性をもとにプッシュしていく仕組みの自動化に取り組んでいます。「AIよみと~る」では、問い合わせが来て、デモを使っていただくと、文字認識率の高さやUIのよさを理解していただけるので、受注率が非常に高いです。まずは1回見てもらうというところが重要ですね。

コンテンツを見た人がどうコンバージョンするかは常に検討していて、ヒートマップもよく見ています。訪問者の動きを見ていると面白くて、何もないところをクリックしているとか。じゃあそこに情報が欲しいんだとか、順番を変えようとか、いろいろ試しながらやっています。

編集部:それでは、Webページに訪問してもらうためには、どのような施策を行っていますか。

庄司:いろいろ取り組んできましたが、やはりSEOが重要です。オーガニックからの流入はコンバージョン率が高く、良質なリードです。ドメインパワーが強いので、自社ホームページで記事を作っています。今はAI-OCRの製品を探しているホットリード、ホット層しかターゲットできていないので、これから「業務効率化」というニーズをもつ潜在層にアプロ―チができればいいなと思っています。

【カスタマーサポート】既存サポートにアドオンしていく

編集部:導入後は、具体的にどのようなサポートをされていますか。

庄司:もともとサポートセンターがあり、既存サービスにアドオンするため、コストをかけずにしっかりとしたサポート体制を作れるのが弊社の強みです。導入後は年中無休で朝9時から夜9時まで電話で問い合わせに対応しています。必要に応じてお客様のパソコンに遠隔でアクセスして作業し、使いこなせるようになるまでとにかく伴走しています。

また、いくつかフェーズを分けていますが最初の2か月間は、何もせずに断念されるお客様が出ることが多いです。そうならないよう、利用開始直後に訪問してしっかりとサポートしています。

「ベンチャーの技術」×「大手のリソース」で価値を最大化

「AIよみと~る」は、AI insideというベンチャーとの技術提携によって生まれた製品である。大手のNTT東日本が、なぜベンチャーと組むことを選択したのか。

編集部:AI inside社と組むことになったのは、どのような経緯ですか。

庄司:「WinActor」というRPAは、もともとはNTTグループ内の業務効率化のために開発されたものです。我々は、これを外向けに売り出したかった。しかしRPAはさまざまな使い方がある分、どう使ってよいかわからない、使いこなせないというお客様が多かった。そこでAI‐OCRと組合せて、「単純に紙の入力を自動化できる」というメッセージングを打ち出すことを考えたんです。

自社開発ではなくベンチャーから技術を入れるというのは、内製化するよりもスピードが早かったです。ベンチャーには素晴らしい技術があるものの、販路の拡大や導入後のサポートが課題です。大きな販路と人的リソースを持つ我々が一緒に組むことで、世に広く売り出せるわけです。

編集部:AI inside社さんと提携するまでに、他にもいろいろなベンチャーを見てこられたのでしょうか。

庄司:そうですね。検索して、アポをとり、話を聞きにいくというスタイルでこれまで150社以上を訪問しました。技術的なことを知りたいというのはもちろんですが、お互いに同じ方向を向いてやっていけるのか、心が合うのかが重要です。時間はかかりますが、これが一番楽しいときでもあります。

編集部:AIの技術は難しく、業界としてエンジニア不足も指摘されています。今後安定してお客様に提供していくためには、どのようなことが必要でしょうか。

庄司:我々の立場でやるべきことは、「目利きをする力」を養うことだと思います。他社と組むにしても、自社で開発するにしても、ゼロからの開発ということはなかなか難しい。他社の技術を入れて自社で構築するみたいな感じだと思うんですね。

ですから、最初に組む相手をどう目利きするかは重要です。最近社内では、データサイエンティストのチームを作り、専門職の育成も進めています。自分たちで手を動かし、ベンチャーや他社のエンジニアともきちんと意見交換できるレベルがないと、目利きは難しいですね。

組織が変わる、働き方も変わる

東京五輪が開催される2020年。政府はリモートワークを推進しており、クラウド・SaaS業界には追い風となる。先日、NTTデータと自治体のスマート化に向けた取り組みを発表するなど、多方面で業務改善を支援するNTT東日本は大手のクラウドサービスベンダーとして、どのような役割を感じているのか。庄司さんに伺った。

編集部:NTT東日本は組織内の連携も強みのひとつでしょうか。

庄司:いえ、実はこれまでは横の連携は弱かったんです。社内でそれぞれ専門スキルを持っていても、横展開に時間がかかることもありました。しかし、最近は組織も変わりつつあります。トップダウンで柔軟に変えていく空気があるので、組織間の風通しはだいぶ変わってきましたね。

編集部:オリンピックが開催される2020年、リモートワークも推奨され、働き方改革の機運も再び高まることが予想されます。求められる役割について、どう考えていらっしゃいますか。

庄司:ここ1年、弊社でもリモートワークやフレックスなど柔軟な働き方が増えてきました。私自身、顧客理解を大事にしているので、サービスを作るときには現場に入り浸り会社にいないことも多いです。働き方や生産性の向上は、まず自分たちが実践していく。大手の企業にはそういう役割があると思います。

また、最近はVDI(バーチャルデスクトップインフラストラクチャー)や、会社の環境を簡単にシンクライアント化できるようなツール、データベースPCなど、安心してテレワークができるプロダクトもたくさんあるので、そういう製品を知っていただき、後押しをしていきたいですね。

ベンチャーや他社とのコラボレーションという点では、弊社の価値「デリバリーの仕組み」を提供していけたらと考えています。2018年にアースアイズというベンチャーと組んで、「AIガードマン」という商品を販売しました。また、バカンという会社と空席検知のシステムで提携しています。ワンストップのサービス提供を仕組み化するにあたり、販売だけでなく、全国均質に施工できる力ってなかなかないんですよね。サポート体制も含め、足腰の強さが弊社の価値であり、ベンチャーにはない強みです。どんどんオープンイノベーションをすすめ、一緒に業界を盛り上げていきたいですね。

(撮影:新井勇祐 取材・文:安住久美子)

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