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MVP(Minimum Viable Product)とは?リーン・スタートアップの基本とMVPの実践

最終更新日:(記事の情報は現在から2559日前のものです)
現在、多くの起業家や経営者が注目しているMVP(Minimum Viable Product)と、これを活かしたリーンスタートアップについて、基本的な解説から注意すべき実践ポイントについて解説します。

多くのビジネスにおいて、顧客の望む製品を素早く開発・提供することで長期的な利益構造を築くことが重要となります。

市場の進化スピードが早い分野では、いかに早く顧客ニーズを掴んだ製品を世に出すかが成功の鍵となります。

そこで今回は、特にシリコンバレーをはじめとしたハイテク分野で注目されているMVP(Minimum Viable Product)および、これを活かしたリーンスタートアップについて解説していきます。

MVP(Minimum Viable Product)とは

MVP(Minimum Viable Product)とは、簡単にいえば、顧客に価値を提供できる最小限の製品や、それを使ったアプローチのことをいいます。

MVPを利用することによって、限られた時間で顧客のニーズに基づく商品・サービスを構築することができるため、無駄なコストの削減にもつながる手法として注目されています。

主に事業における仮説の検証をするために、市場に投入される製品バージョンとして用いられることが多いです。

Steve BlankとEric Ries

本来、MVP(Minimum Viable Product)という概念は起業家のSteve Blankとその門弟Eric Riesによって提唱されたものです。

Eric Riesは「リーンスタートアップ(Lean Startup)」というビジネス書を執筆しており、スタートアップ企業が無駄のないビジネス展開のために必要なことを紹介した内容となっています。そのなかでMVP(Minimum Viable Product)が重要な要素として扱われています。

リーン・スタートアップとは

「リーンスタートアップ(Lean Startup)」は主にシリコンバレーにおける成功する企業の条件を分析したものです。

シリコンバレーでは、毎年実に多くのベンチャー企業が誕生しますが、そのうち大企業と呼ばれるまでビジネスを成長させられるのはほんの一握りにすぎません。
一説には1,000社あるうち3~4社あれば多いとされています。

そのような低い成功率を少しでも引き上げることが長年の課題であり、これまで多くの起業論が提案されてきたわけです。
Eric Riesの「リーンスタートアップ」もそのなかの企業マネジメント論のひとつであり、その有用性から2011年に出版されたもののなかでも、特に優れたビジネス書として認識されています。

リーン・スタートアップとMVP

リーン・スタートアップでは、実用に足る最小限の製品(MVP)を活用してビジネスを成長させることが重要だと述べられています。

特にシリコンバレーのような技術や製品ニーズの変化が激しい世界では、自らのアイデアが本当に市場に受け入れられる優れたものかどうかを判断するのはほとんど不可能であり、実際に製品を市場に投入するまではわかりません。

市場に出せる「そこそこ」の製品をまず市場に投入し、顧客に実際に使用してもらいます。
そして、そこから得たフィードバックを製品の改良に役立てることで、確実に顧客に受け入れられる製品に改良していくというアプローチをとるわけです。

MVPを活用するメリット

それでは、主にスタートアップ企業がMVPを活用するメリットについて説明します。

製品の必要性調査が可能

一般的に、完全な製品にまで開発を続けることは、非常に多くの時間やコストがかかってしまうものです。
さらに、それを市場に投入しても成功するかどうかはわからないため、かけた時間やコストが無駄になるという結果になることも考えられます。

しかしMVPを活用することによって、無駄なコストをかけずにその製品が市場に受け入れられるかどうか調査することができます。

ニーズとウォンツの把握

MVPの提供を繰り返すことによって、開発側が正確な顧客ニーズを素早く把握することができます。
それによって改善を繰り返し、より多くの顧客が満足する製品を市場に投入できる時期を早めることが可能になります。

技術の進歩や顧客ニーズの変化が早い市場では、まず市場の反応を確認しながら製品の改良をしていくアプローチが有効となります。

無駄な時間を最小限に

MVPの公開の時点では、顧客ニーズをもっとも満たすと思われる機能に開発を集中することができますから、開発側が費やす時間を最小限に抑えることが可能になります。

逆に顧客の受けを狙ってさまざまな機能を含めようとするアプローチでは、時間的にも労力的にも限界がありますし、顧客の反応が今ひとつだった場合に、何が原因なのかが特定しづらくなってしまいます。

MVPの場合は、顧客の反応による改善点を特定しやすいため、長期的にみて正規商品のリリースを早めることが可能になります。

素早い収益化の実現

MVPのアプローチによって、比較的早く製品を市場に出すことができるため、当然販売による収益化の時期も早めることができます。

それをさらに製品の改良に使うことができるようになりますから、市場の成長が早い分野では特に有利になります。

競争優位の獲得

どんな分野のビジネスにおいても、素早く顧客ニーズの受け皿となって先行者利益を掴んだ企業が圧倒的に有利になることはいうまでもないでしょう。

これがそのまま競争優位となりますから、後から市場に競合が参入しようとしても、市場の認知度と開発スピードで差をつけることができます。

MVPのプロセス

次にMVPによるアプローチを従来のプロセスと違いを比較してみましょう。

従来のプロセス

コンセプトの形成と計画

従来型のアプローチでは、まず自社担当者の開発アイデアや市場調査による製品コンセプトの形成と計画が必要となります。
アイデア自体が綿密な調査によって決定されることも多いですが、そうではないケースもあるでしょう。

社内ですり合わせが行われてコンセプトが決定すると、自社のリソースと照らし合わせて開発計画が練られることになります。

計画の実行

予算内かつ期限どおりに収めることを目標として、開発チームが組織され、策定した計画が実行されていきます。

プロジェクトの範囲が肥大化したり、予期せぬ予算オーバーなどがあったりする場合は、その都度修正がかけられることになります。
場合によっては、開発計画そのものの見直しがされる場合もあるでしょう。

成果の公開・フィードバック

製品が完成すると、いよいよ市場に投入されます。もっとも重要な問題は、果たして当該製品が市場に受け入れられるかどうかということです。

顧客が製品を気に入るのか、彼らのニーズを満たしているのかが重要となりますが、残念ながら、顧客からのフィードバックは製品が開発され市場に投入されるまで得ることができません。

万が一製品の反応がよくない場合は、開発し直しという可能性も皆無ではありません。

MVPプロセス

まず市場に出す

従来型のアプローチに対して、MVPを利用したアプローチでは、まず顧客のニーズをもっとも反映しているであろう特徴を反映させることが多いです。限られた機能のみを実装するので安価なコストで済みます。

それに加えて、まず市場に出してみて反応を伺うことになるので、いつでも製品に改善を加えることが可能となります。

市場からフィードバックを得る

早い段階で市場からフィードバックを得ることができますから、反映したり、機能そのものの見直しを行ったりすることで、実際の顧客ニーズに沿った製品開発を進めることができます。

初期段階で分析に分析を重ね、さまざまな仮説を検証していくアプローチも考えられますが、MVPアプローチの方が開発スピードの面で圧倒的な差をつけることができます。

必要な機能実装の検討

顧客の生の声をヒアリングや、アンケートなどによって、市場からのフィードバックを機能の改善に活かします。場合によっては新しい機能の付加や、余計な機能の排除も必要でしょう。

上記のプロセスを繰り返す

顧客のニーズを知るためのもっとも確実な方法は顧客自身に聞くことです。
製品の改善と顧客からのフィードバックのプロセスを繰り返すことにより、より多くの顧客のニーズを満たす良質な製品へと進化させていくことができます。

顧客にとってもより望ましい製品につながり、本当に必要なものを提供してもらえるようになるため、顧客満足度も向上しやすくなりますし、よい口コミにもつながります。

MVPのポイント

MVP(Minimum Viable Product)を用いたアプローチについて一通り解説してきました。最後に、MVPを実践するためのポイントについて簡単に解説しておきましょう。

ユーザーが理解できる製品の投入

市場から適切なフィードバックを得るためには、顧客自身が理解できる製品を投入する必要があります。
MVPはいわば市場への試金石として投入されることになるわけですから、市場における、特に流行に敏感で新サービスの導入が早いアーリーアダプターのニーズを汲み取ることに専念するのが重要です。

開発の初期段階から、さまざまなニーズに対応する製品やサービスの提供を目指してはいけません。


アーリーアダプターについては以下の記事において解説をしているのでぜひご覧ください。

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製品ではなく手段として考える

市場の反応を伺いながら製品をブラッシュアップさせていくアプローチですから、MVPは製品そのものよりも、最終的に提供する製品・サービスに進化させるための手段として捉える必要があります。

検証から得られるデータの分析

MVPによって市場の声をダイレクトに得ることができるようになりますから、それを忠実に製品に反映させていくことが重要です。

そのためには、なるべく開発側の主観を排除し、科学的な検証によって客観的な市場データを収集し、そこから学びを得る必要があるでしょう。

完璧志向からの脱却

はじめから完璧な製品を開発しようと思わないことも重要だといえるでしょう。
失敗する製品の多くは、必要な機能が足りないというよりは、むしろ顧客にとって必要のない機能が多すぎることが多いようです。

製品のポジショニングが不明確なために顧客に強みが認識されづらいのです。

そうならないためにも、完璧志向から脱却し、市場の反応を見ながら本当に必要な機能だけを提供していくことが重要となります。

MVPの本質を理解し、リーンスタートアップを実践する

MVP(Minimum Viable Product)について、リーンスタートアップの説明とともに解説をしてきました。

どんなビジネスにおいても仮説と検証の繰り返しは重要となりますが、MVPを用いたリーンスタートアップでは、製品開発の初期段階で市場に試金石となる製品を投入し、顧客の直接的なフィードバックを反映しながら製品を完成させていきます。

本文中でも触れましたが、これは製品の開発スピードが要求される分野のビジネスでは特に有効な手法となりますが、どんなビジネスにも適用できる非常に有効なアプローチです。
ぜひ、自社の製品開発プロセスに導入し、顧客のニーズを正確に反映した製品開発を目指しましょう。

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