声紋認証とは?メリット・デメリットや活用されるシーン

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声紋認証とは
声紋認証とは、声に含まれる固有の特徴を利用した生体認証技術です。人それぞれ異なる声の特徴をデータ化し、次のようなパターンを検知して個人を識別を行います。
- 声の高さ
- 周波数
- 発音速度
- アクセント など
声紋認証は、指紋認証や顔認証などのほかの生体認証と比べ、非接触で認証できる点が大きな特徴です。また、特別な機器を必要としない導入のしやすさも魅力といえるでしょう。
声紋認証では音声を電気信号に変換し、周波数分析を行うことで「声紋」と呼ばれるパターンを抽出します。このパターンをあらかじめ登録されたデータと照合することで、本人確認を行います。声帯の形状や声道、発声方法など、個人の身体的特徴や習慣に起因する声の違いを利用しているため、他人による模倣は困難です。
近年、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティリスクが増大しており、強固な本人確認手段が求められています。声紋認証はパスワードやIDに頼る認証方法に比べて安全性が高く、利便性も兼ね備えているため、注目を集めています。とくに、非接触での認証が求められる昨今では、その有用性はますます高まっているといえるでしょう。

声紋認証の5つのメリット
声紋認証は、その技術的な特徴からさまざまなメリットを有しています。セキュリティの向上はもちろんのこと、利便性の高さや導入のしやすさなど、ほかの生体認証と比べてもメリットは多いです。
- セキュリティ性が高い
- 利便性が高くストレスフリー
- 非接触で認証できる
- 導入しやすい
- 場所を選ばず認証できる
声紋認証の5つのメリットを解説します。
メリット1. セキュリティ性が高い
声紋認証は、声という身体的な特徴を用いるため、IDやパスワードなどに比べて不正利用のリスクを低減できる点が大きなメリットです。声は個々人で異なり、複製が難しいため高いセキュリティ性を実現します。
録音された音声データを使用しようとしても、発話の内容が不自然になるだけではなく、生の声とは周波数特性が異なるなどの理由から認証を突破するのは困難です。これにより、なりすましや不正アクセスを防止し、情報漏えいをはじめとするリスクを軽減できます。
メリット2. 利便性が高くストレスフリー
声を発するだけで認証が完了するため、認証が簡単なためユーザーにストレスを与えません。日常的な動作で認証が行えるため、特別な操作を覚える必要もありません。
声紋認証は、マイクに向かって話すだけで認証が完了します。指紋認証のように特定の場所に触れる必要がなく、顔認証のようにカメラの前に立つ必要もありません。両手が塞がっている場合や暗い場所など、さまざまな状況でスムーズに認証を行えます。
メリット3. 非接触で認証できる
声紋認証は非接触で認証できるため衛生的なこともメリットです。不特定多数の人が触れる認証機器に接触する必要がないため、感染症のリスクを低減できます。
また、指紋認証で問題となる手荒れや怪我の影響も受けません。「指先を怪我して絆創膏を巻いている」「工場の清潔区域で指先まで隠れる服装をしている」などの場合でも、ストレスフリーで認証が完了します。
メリット4. 導入しやすい
声紋認証は、特別なセンサーやカメラなどを必要としないため、比較的容易に導入できることも多きメリットです。既存の設備を活用できる場合が多く、導入コストを抑えられるでしょう。とくにコールセンターでは、既存の電話回線を利用して声紋認証システムを構築できるため導入コストを抑えられます。
メリット5. 場所を選ばず認証できる
声紋認証は、声を出せる環境であれば場所を選ばずに認証ができることもメリットです。オフィスだけでなく、外出先や自宅など、さまざまな場所で利用可能です。
声紋認証の3つのデメリット
声紋認証は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、声紋認証をより効果的に活用できるでしょう。
- 周囲の騒音や音声品質の影響を受けやすい
- 体調の影響を受けやすい
- 生成AIや音声合成により突破されるリスクがある
デメリット1. 周囲の騒音や音声品質の影響を受けやすい
声紋認証は音声データに基づいて認証を行うため、周囲に騒音があったり音声の品質が低かったりすると、認証精度が低下することもあるのはデメリットです。雑音が多い場所や、マイクの性能が低い場合などに影響が出やすいです。
この問題への対策としては、次のようなものが挙げられます。
- 静かな環境で認証を行う
- 高品質のマイクを使用する
- ノイズキャンセリング機能を利用する など
- 声紋認証システム側でノイズ除去処理を行えるサービスを利用する
デメリット2. 体調の影響を受けやすい
声帯の状態は、体調によって変化することがあります。風邪や声の出しすぎで声が枯れている場合などに声紋が変化し、認証に失敗することもあるでしょう。
この問題への対策としては、次のようなものが挙げられます。
- 複数の音声データを登録しておく
- 声紋認証以外の認証方法も用意しておく など
また、声紋認証システム側で多少の声の変化を許容するような設定を行うことで、体調による影響も軽減できます。しかし、過度に許容範囲を広げるとセキュリティレベルの低下につながるため、適切なバランスが重要です。
デメリット3. 生成AIや音声合成により突破されるリスクがある
近年、生成AIや音声合成技術が急速に発展しており、人間の声を模倣することが比較的容易になってきています。これらの技術を悪用することで、声紋認証を突破されるリスクが懸念されています。
この問題への対策としては、最新のAI技術に対抗できる技術を導入することが重要です。たとえば、音声の周波数だけでなく発声のタイミングや息遣いを判別する機能など、より複雑な要素を分析する技術を導入することでAIによる模倣を検知しやすくなるでしょう。
また、ほかの認証方法と組み合わせる多要素認証を導入することも有効です。たとえば声紋認証に加えて、パスワード認証や顔認証などを組み合わせることで、セキュリティレベルを大幅に向上させられます。

声紋認証のセキュリティを高める方法
声紋認証のセキュリティを高める方法として、とくに厳重なセキュリティが求められる場面では声紋認証単独での運用ではなく、ほかの認証方法と組み合わせることでより強固なセキュリティ体制を構築すると良いでしょう。
声紋認証は高いセキュリティ性と利便性を兼ね備えた認証技術です。しかし、音声の偽造リスクや体調による認証精度の変動などの課題も存在するため、声紋認証のみでのセキュリティ体制には限界があります。
その際には、指紋認証や顔認証といったほかの生体認証、パスワード認証やワンタイムパスワード認証と組み合わせる多要素認証と組み合わせましょう。そうすれば、万が一に声紋認証が突破された場合でも、二重・三重の防御壁を設けられます。不正アクセスを阻止して本人確認の精度を飛躍的に高められます。
ただし、複数の認証方法を組み合わせることで、利便性は低くなるでしょう。認証プロセスが煩雑になり、ユーザーの負担が大きくなってしまいます。そのため、セキュリティレベルと利便性のバランスを考慮し、適切な認証方法を選ばなければなりません。
たとえば、日常的なログインでは声紋認証のみを使用し、重要な取引や機密情報へのアクセス時のみ多要素認証を適用するなど、状況に応じて使い分けることが望ましいです。

声紋認証が活用されるシーン
声紋認証は、その利便性とセキュリティ性の高さからさまざまな分野で活用されています。とくに主要な活用シーンを4つを取り上げ、具体的な活用方法と声紋認証が適している理由について解説します。
- コールセンター
- 金融機関
- スマートデバイス
- 入退室管理
コールセンター
コールセンターでは、顧客からの問い合わせ時の本人確認に声紋認証が活用されています。電話口で数秒話すだけで本人確認が完了するため、オペレーターの負担を軽減し、顧客にとってもスムーズな対応が可能です。
電話回線を利用して認証を行えるため、特別な機器を導入する必要はありません。導入コストを抑えられる点が、コールセンターに声紋認証が適している大きな理由です。顧客にとっても電話口で話すだけで認証が完了するためストレスなく利用できます。
金融機関
金融機関では、オンラインバンキングやATMでの本人確認に声紋認証が活用されています。パスワードや暗証番号の代わりに声を用いることで、セキュリティを強化して不正アクセスを防止可能です。
高いセキュリティレベルが求められる金融機関において、声紋認証は有効な手段です。声という個人の身体的な特徴を用いるため、パスワードに比べて不正利用のリスクを低減できます。
スマートデバイス
スマートフォンやスマートスピーカーなどのスマートデバイスでは、ロック解除やアプリの起動、音声アシスタントの操作などに声紋認証が活用されています。ハンズフリーで操作できるため利便性が高く、日常生活に溶け込みやすい認証方法です。
スマートデバイスは常に持ち歩くものであり、手軽に利用できる認証方法が求められます。声紋認証により声を発するだけで認証が完了するため、操作が簡単でユーザーにストレスを与えません。
入退室管理
企業やマンションなどの入退室管理システムにも声紋認証が活用されています。鍵やカードを持ち歩く必要がなく、ハンズフリーで入退室できるため、利便性とセキュリティの両立が可能です。
セキュリティレベルの向上と利便性の両立が求められる入退室管理において、声紋認証は有効です。鍵やカードの紛失リスクがなく、なりすましによる不正侵入も防止できます。とくに、機密情報を取り扱う部屋や厳重な管理が必要な場所での導入に適しています。

声紋認証は生体認証の中でも利便性が高い
声紋認証は、指紋認証や顔認証といったほかの生体認証と比べて、非接触で認証できる点が大きな特徴です。特別な機器を必要としない、導入のしやすさも魅力といえます。声を発するだけで認証が完了するため、操作が簡単で、ユーザーにストレスを与えることもありません。
これらの特徴から、声紋認証は生体認証の中でも利便性が高いといえるでしょう。たとえばコールセンターでの本人確認は、電話回線を利用して認証を行えるため、特別な機器の導入が不要です。また、スマートデバイスのロック解除やアプリの起動など、ハンズフリーでの操作が求められる場面でも、声紋認証は非常に有効です。
声紋認証はさまざまなシーンで活用でき、私たちの生活をより便利で安全なものにしてくれるでしょう。