レコメンドエンジンの仕組みとは?導入のメリットや注意点・サービス紹介

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レコメンドエンジンとは
レコメンドエンジンとは、ユーザーの行動履歴や属性情報をもとに、関連する商品やコンテンツを表示するシステムです。そもそも英語のrecommendには「おすすめする」といった意味があります。
レコメンドエンジンの例としては、ECサイトがわかりやすいでしょう。たとえば、ユーザーがECプラットフォームで商品を検索していたとします。いくつか商品を見ていくと、やがて「あなたにイチオシの商品はこちら」「保存した商品に関連する商品」といった表示がされます。これがレコメンドエンジンです。
レコメンドエンジンの活用シーン
レコメンドエンジンの活用シーンとして、次のものがあげられます。
- 企業独自のECサイト
- 大手ECプラットフォーム
- ニュースサイト
- 動画ストリーミングサービス
- 人材マッチングサービス
- 不動産物件紹介サービス
代表例としてあげられるのが「EC」です。企業が独自に運用するECサイトや、Amazonや楽天市場といった大手ECプラットフォームでもレコメンドエンジンが利用されています。
ほかにも、関連記事が表示されるニュースサイト、興味関心とマッチする映画やドラマが表示される動画ストリーミングサービスなど幅広いです。人材マッチングサービスや不動産物件紹介サービスにも活用されています。
レコメンドエンジンの5つの仕組み
レコメンドエンジンを導入することで、ユーザーに「おすすめ商品」を表示できます。しかしながら、レコメンドエンジンの中にも複数のアルゴリズムがあり、それぞれを使い分けることが重要です。代表的な5つの仕組みを紹介します。
- 協調フィルタリング
- コンテンツベースフィルタリング
- パーソナライズドレコメンド
- ルールベースレコメンド
- ハイブリッドレコメンド
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、Webサイトにおけるユーザーの「閲覧」や「購入履歴」のデータを取得し、それをもとに推奨商品を表示させる仕組みです。対象となるユーザーだけでなく、ほかのユーザーの行動履歴も参照されます。
レコメンドエンジンの中でも代表的な仕組みであり、協調フィルタリングの中でも2種類に分かれます。
アイテムベースレコメンド
ユーザーの行動履歴をもとに、閲覧または購入された商品同士の類似度を割り出します。たとえば、「商品Aを買った人は商品Bを購入する傾向にある」といったデータがある場合、商品Aの購入者に商品Bを紹介します。
ユーザーベースレコメンド
ユーザーの行動履歴をベースに、ほかのユーザーとの類似度を割り出します。たとえば、顧客A(対象者)と顧客Bの類似度が高いとして、顧客Bが買ったものを顧客Aに紹介するのが、ユーザーベースレコメンドの仕組みです。
コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングとは、「商品の属性」にフォーカスし、属性の似た商品を紹介する仕組みです。あらかじめ商品をグループに分けておき、特定の行動を取ったユーザーに対して、グループ内の商品を紹介します。
たとえば、ユーザーが「メーカーAのパソコン」を閲覧したとします。それに対して、あらかじめグループ化した「メーカーAの別のパソコン」や「メーカーBのパソコン」を提案するのが特徴です。
パーソナライズドレコメンド
パーソナライズドレコメンドは、個々のユーザーの行動履歴や嗜好データをもとに、個別に最適化されたアイテムを提示する手法です。協調フィルタリングやコンテンツベースフィルタリングを組み合わせて利用することが一般的です。
「あなたにおすすめの商品」と表示されるように、より対象者の好みに合った商品を紹介可能です。
ルールベースレコメンド
ルールベースレコメンドとは、Webサイトの運営側が決めたルールに従っておすすめ商品を表示させる仕組みです。ルールは、ユーザーの流入元や累積スコアなどによって決められます。
たとえば、バレンタインの広告経由で流入したユーザーに対して、バレンタインの商品やコンテンツを紹介するといったケースです。ルールベースレコメンドは、キャンペーンや期間限定商品の販売などでよく使われます。
ハイブリッドレコメンド
ハイブリッドレコメンドとは、複数の仕組みを用いた仕組みです。たとえば、協調フィルタリングとルールベースレコメンドを組み合わせるといった方法で、互いの弱みをカバーし、より精度の高いレコメンドを実現します。
レコメンドエンジンの導入方法
自社サイトにレコメンドエンジンを実装する方法として、「ASP型」または「オープンソース型」の2つがあります。それぞれの特徴は次のとおりです。
ASP型
ASP型とは、ベンダー(販売事業者)が用意したサーバーやシステムをクラウド経由で利用する方法です。一般的に「クラウドサービス」と呼ばれるものはASP型であり、インターネット環境があれば、パソコンやスマートフォンから簡単に操作できます。ベンダーが利用環境を用意してくれるため、専門的な知識やスキルがなくても利用可能です。
オープンソース型
オープンソース型とは、無償で公開されている「ソースコード」を用いてサービスを利用する方法です。レコメンドエンジン自体のシステムは用意されていますが、サーバーの構築やシステムの運用管理については、自前で行う必要があります。ASP型よりもカスタマイズ性が高いため、専門的な知識やスキルをもつ人材がいる企業におすすめです。
レコメンドエンジンを導入するメリット
Webサイトにレコメンドエンジンを導入することには、次のようなメリットがあります。
- ユーザーの購買率が高まりやすい
- 顧客単価の向上が期待できる
- 対面接客のような「対応のブレ」が生じない
- Webサイトに長く滞在してもらえる
ユーザーの購買率が高まりやすい
レコメンドエンジンでは、ユーザーのニーズに合わせた「おすすめ商品」を提案するため、購買率が高まりやすいです。本人に合った商品はもちろん、ほかの類似ユーザーが購入した商品や、属性の似た商品など、アプローチは多岐にわたります。多面的なアプローチによって、ユーザーの「衝動買い」を促進可能です。
顧客単価の向上が期待できる
レコメンドエンジンの採用によって「クロスセル」を狙えます。クロスセルとは、ユーザーの購入予定だったメイン商品に加えて、関連商品も購入してもらう手法です。
たとえば、ノートパソコンが購入予定であれば、同時に「液晶画面の保護フィルム」も提案します。関連商品が追加で購入される、つまり顧客単価も向上します。顧客単価が上がれば、客数が増えなくても売上を維持しやすくなるでしょう。
また、顧客単価の向上は、顧客がサービス利用期間中に使ってくれる合計額を示す「LTV(ライフタイムバリュー)」の向上にも直結します。
対面接客のような「対応のブレ」が生じない
実店舗の接客で起こりがちな、「対応のブレ」が生じないのもレコメンドエンジンの大きなメリットです。スタッフによる対面接客では、顧客の反応を見ながらニーズを推測し、最適な商品を提案する必要があります。
顧客のニーズに応えられなかったり、スタッフによってサービスのレベルにブレが生じたりするケースも少なくありません。その点レコメンドエンジンは、客観的にユーザーの行動を分析し、最適な提案をしてくれます。
Webサイトに長く滞在してもらえる
Webサイトへの滞在時間が長くなるのも大きなメリットです。レコメンドエンジンの導入によって、ユーザーの画面には「おすすめ商品」や「関連商品」が表示されるようになります。
ユーザーの目線に立つと、「自分が興味のある商品」が次々と出てくるのは楽しいものです。実店舗でいうウィンドウショッピングをする感覚で利用できるため、Webサイトにも長く滞在してもらいやすくなります。滞在時間が長くなれば、それだけ購買率も高まりやすいです。
レコメンドエンジンを導入する際の注意点
ただ単にレコメンドエンジンを導入するだけでは、失敗に終わってしまう可能性が高いです。導入する際は次のことに注意しましょう。
- 精度を高めるにはデータの蓄積が必要
- 商品数が少ないと効果が出にくい
- コストや労力がかかる
精度を高めるにはデータの蓄積が必要
ユーザーに合ったおすすめ商品を紹介するためには、データの蓄積が必要です。具体的には、キーワードを入力した「検索履歴」や、商品ページをクリックした「閲覧履歴」、実際に購入した「購買履歴」などがあげられます。これらのデータが少なければレコメンドの精度も高まりません。
また、ツールを導入してからデータが蓄積されるまでの期間内も、レコメンドの精度は高まりにくいです。ツールを導入する際は、いかにデータを早く蓄積するか考える必要があります。
商品数が少ないと効果が出にくい
Webサイトの商品数(またはコンテンツ数)少ない場合も、レコメンドエンジンの効果が出にくくなります。そもそもサイト全体の商品数が少なければ、提案できる商品も限られてしまうためです。レコメンドエンジンの効果を出すためも、可能な範囲で類似商品や関連商品を用意しておきましょう。
コストや労力がかかる
一般的にレコメンドエンジンの導入では、ASP型またはオープンソース型のサービスを利用します。
ASP型はベンダーが利用環境を用意してくれるため、利用者は簡単な操作で設定可能です。しかしながら、初期費用や月額費用といったコストが発生します。オープンソース型の場合は、自社でサーバーを用意するためコストは抑えられるものの、管理や運用の労力がかかります。
いずれにしても、レコメンドエンジンを導入・運用するにはコストや労力がかかるため、費用対効果を検討しつつ、自社に合ったツールを選ぶことが大切です。
レコメンドエンジンのおすすめツール5選
続いて、レコメンドエンジンのおすすめツールを5つ紹介します。
アイジェント・レコメンダー - シルバーエッグ・テクノロジー株式会社
- 複数のAI技術を組み合わせることで高精度のレコメンドを実現
- ユーザーの行動をリアルタイムで分析できる
- 成果報酬型を採用しているため低リスクでの運用が可能
アイジェント・レコメンダーは、複数のAI技術を組み合わせることで、高精度のレコメンドを実現できるツールです。AIがユーザーの行動をリアルタイムで解析することで、「今おすすめすべき商品・情報」を届けられます。
サポート体制が充実しているのも、同サービスの魅力です。レコメンド設定をはじめABテスト、キャンペーンの実施支援など多岐にわたります。専任のサポートチームが導入から運用までを支援してくれるため、初めての企業でも安心して利用可能です。
料金体系では、レコメンド経由での売上に応じて費用がかかる「成果報酬型」を採用しています。売上が低い場合はコストも下がるため、低リスクでの運用が可能です。
- 1,700サイト以上※の導入実績をもつレコメンドエンジン支援ツール
- AIが文字列の意味をより正確に理解する「テキストレコメンド」を実装
- 画像レコメンドやパーソナライズドレコメンドも可能
さぶみっと!レコメンドは、株式会社イー・エージェンシーが運営するレコメンドエンジンです。1,700サイト以上※が利用しており、コスメからベビー用品、教材、ドラッグストアなど多種多様な業界での導入実績をもちます。
ただ単にテキストをマッチさせるだけでなく、AIが文字列の意味まで理解する「テキストレコメンド」の機能が搭載されています。ほかにも、画像レコメンドやパーソナライズレコメンドなど、ユーザーのニーズに最適化させたおすすめ商品を提示できる機能が豊富です。
オプションとして「API連携機能」も提供しており、各種アプリケーションやMAツールとレコメンドデータを連携できます。
※出典:イー・エージェンシー「導入数No.1レコメンドエンジン『さぶみっと!レコメンド』」(2024年12月10日閲覧)
- 独自開発AIを用いることでリピート率向上やクロスセル促進を図れる
- 売れ筋でない商品を伸ばす「ロングテールレコメンド」に強みをもつ
- 料金形態は「従量課金型」と「サブスクリプション型」から選べる
Logreco(ログレコ)は、独自開発AIを用いることでリピート率向上やクロスセル促進を実現できるツールです。あえて売れ筋ではない商品をレコメンドすることで、長期的なリターンを狙う「ロングテールレコメンド」に強みをもちます。
「協調フィルタリング」「ルールベースレコメンド」「コンテンツベースフィルタリング」の組み合わせによって、高精度のレコメンドを実現可能です。
同ツールは、ECサイトをはじめ、情報系サイトや社内システムなど幅広いシーンに対応しています。商材の種類も問わないため、ニッチな業界でWebサイトを運営する企業にもおすすめです。料金形態は、利用状況に応じた「従量課金型」と、サイト規模によって設定される「サブスクリプション型」から選べます。
Rtoaster - 株式会社ブレインパッド
- 「プライベートDMP機能」と「レコメンドエンジン」の2軸でサービスを提供
- シチュエーションやタイミングに合わせた提案もできる
- 海外からのアクセスも判別ができるためグローバル企業にもおすすめ
Rtoaster(アールトースター)は、顧客一人ひとりに合った商品やコンテンツを提案できる自動接客ツールです。同ツールでは、蓄積されたデータを一元管理できる「プライベートDMP機能」と、ユーザーの趣味や嗜好に合わせて最適な提案をする「レコメンドエンジン」の2つをベースとしています。シチュエーションやタイミングに合わせた提案も可能です。
また、成果の高いクリエイティブを表示するための「ABテスト」や、質の高いセグメントやターゲティングのできる「行動スコアリング」も行えます。国内のみならず、海外からのアクセスも判別できるため、グローバル展開する企業にもおすすめです。
NaviPlusレコメンド
- 協調フィルタリングやアイテムベースなど幅広いレコメンド機能を搭載
- パーソナライズかつ最新のニーズに合わせた提案ができる
- Webサイト内だけでなく「メール」でのレコメンドにも対応している
NaviPlusレコメンドは、ナビプラス株式会社が運営する高機能レコメンドサービスです。協調フィルタリングやアイテムベース、ユーザーベースなど幅広いレコメンド機能に対応しています。ユーザーの行動履歴をリアルタイムで分析できるため、パーソナライズかつ最新のニーズに合わせた提案が可能です。
Webサイト内だけでなく「メール」でのレコメンドにも対応しています。Webサイト離脱者に対して、おすすめ商品や関連情報についてのメールを自動で送信可能です。また、導入や運用の支援、改善提案、稼働監視などサポート体制も充実しています。
レコメンドエンジンの仕組みを理解して購買率や顧客単価アップにつなげよう
レコメンドエンジンには複数の仕組みが存在し、閲覧履歴や購入履歴、アクセス流入元など、さまざまな行動データに基づいておすすめ商品が表示されます。どの仕組みを利用するかは、企業の目的や方針しだいです。複数を組み合わせることで、それぞれの仕組みの弱みをカバーする「ハイブリッドレコメンド」の選択肢もあります。
ただし、レコメンドエンジンの導入にはツールが必要なので、かかるコストや労力を想定したうえで、自社に合ったものを選びましょう。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
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