特権ID管理とは?目的・リスク・情報漏えいの対策ポイント
大規模なシステムを停止したり起動したりする際には、通常のIDを使うことはほぼありません。この場合に多くの企業で使われているのが特権IDです。便利な方法ではありますが、しっかり管理しなければ、だれでもシステムダウンを行えてしまう状況になる可能性もあるので注意しなければいけません。
そこでBOXILでは、特権IDのリスクと管理方法を徹底解説したうえで、おすすめのサービスを紹介します。
目次を閉じる
- 特権IDとは
- 一般的なIDとの違い
- 非常に強い権限をもつ
- 特権IDのリスク
- 機密情報・個人情報流出などの情報漏えい
- システムダウン・破壊
- 利用者の特定が困難
- 特権IDの情報漏えい対策
- 特権ID管理ソリューションを活用する
- 特権IDの利用申請・承認のフローを明確にする
- ユーザー認証、操作画面の録画機能などのアクセスログの利用
- ワンタイムパスワードを利用する
- 申請された操作に応じた権限の付与
- 特権ID管理に有効なワークフロー
- 特権ID管理システムのメリット
- セキュリティリスクの軽減
- 内部不正防止
- 外部監査に対応できる
- 特権ID管理システムの選び方
- IDごとに操作内容の記録ができるか
- カスタマイズ性に優れている
- おすすめの特権ID管理システム
- CyberArk Privileged Access Manager - 株式会社ディアイティ
- iDoperation - NTTテクノクロス株式会社
- 特権IDを最低限のリスクで活用する!
- BOXILとは
特権IDとは
特権IDとは、システム管理において高いレベルの権限を付与されたID(アカウント)のことです。
特権IDを使えば、設定の変更から必要なアプリのインストール、修正パッチの適用など、さまざまな保守運用に必要な作業を行えます。一方で、システムに対してあらゆる権限をもっているため、管理を怠ると不正を許してしまう可能性があるので、慎重な扱いが求められます。
特権ID管理ツールをお探しの方は、ぜひ次の記事も参照ください。
一般的なIDとの違い
特権IDには、一般的なIDとは異なる点が2つ存在します。
1つのシステムに1つのID
標準的なIDでは、1人に1つのIDが与えられています。システムを使って各々の仕事をするために、障害にならない程度の権限のみが与えられているわけです。
それに対して、特権IDは1つのシステムに1つのIDしか存在しないのが普通です。複数人で作業を行うことが前提の場合には2つ以上のこともありますが、基本的に1つのIDのみが特権をもっています。
ただし、システム管理者が複数いる場合は1つの特権IDを使いまわすことも多いため、それが原因でシステムに不正に侵入される問題も起こっているのが現状です。特権IDは徹底的に管理する必要があります。
非常に強い権限をもつ
一般的なIDは、中枢システムの停止や変更などは権限として与えられていません。誰もがシステムを変更できる状態は非常に危険だからです。
一方、特権IDはシステムの仕様変更ができるほど強い権限をもっているので、悪用されるとシステムに甚大な被害を被る可能性があります。IDは種類にかかわらず慎重に管理しなければなりませんが、特権IDに関しては情報漏えいのリスクが高いため、けっして杜撰(ずさん)に管理してはいけません。
特権IDのリスク
特権IDは強力な権限をもっているため、もし悪用されてしまうと重大な障害・損害をもたらす可能性があります。具体的には、次のような甚大な損害を企業にもたらすリスクを考えなければいけません。
- 企業機密・個人情報流出などの情報漏えい
- システムダウン・破壊
- 利用者の特定が困難
それぞれのリスクについて説明します。
機密情報・個人情報流出などの情報漏えい
特権IDを悪用すれば、顧客情報や機密情報を容易に盗み出せます。
とくに近年は情報漏えいに対して社会の厳しい目が向けられる傾向にあるので、損害賠償の問題に発展するだけでなく、企業ブランドの著しい低下につながってしまいます。
情報漏えい対策についてさらに知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
システムダウン・破壊
特権IDは本来、システムのメンテナンスやアップデートなどに利用されるものなので、システムの稼働を停止したり、場合によっては破壊したりも可能です。
部外者に悪用されるケースはもちろん、管理者の制御ミスによって一時的にせよシステムダウンが起こった場合、現場の混乱やユーザーからのクレームは避けられないでしょう。
利用者の特定が困難
一般的なIDでは、1人に1つのIDが付与されているので、不正利用が起こった場合に個人を特定するのはそこまで難しくありません。もちろん「なりすまし」のケースもありますが、どのIDが利用されたかが判明すれば、相手を絞り込めます。
一方特権IDの場合は1つのIDを共有しているので、不正利用が起きた場合に個人の特定が難しいケースもあるのでとくに注意が必要です。
特権IDの情報漏えい対策
特権IDのリスクを対策する方法は次のとおりです。
- 特権ID管理ソリューションを活用する
- 特権IDの利用申請・承認のフローを明確にする
- ユーザー認証、操作画面の録画機能などのアクセスログを利用する
- ワンタイムパスワードを利用する
- 申請された操作に応じた権限を付与する
- 特権ID管理に有効なワークフローを構成する
それぞれのリスク対策方法について説明します。
特権IDのリスクを踏まえたうえで、導入する際のポイントを解説していきます。
特権ID管理ソリューションを活用する
もっとも手っ取り早いのは専用のソリューションを導入し、活用することでしょう。特権ID管理ソリューションとは、IDの利用制限や権限の割り当て、システムの利用状況のチェックや利用されているアプリケーションの分析を行える管理ツールです。
社内のIDに関する問題点を洗い出したうえで、サービスプロバイダーに相談すれば自社に合ったサービスの導入ができます。
特権IDの利用申請・承認のフローを明確にする
特権IDが悪用されてしまう最大の要因は、社内のシステム周りの煩雑なワークフローにあります。
どういう流れでシステムを運用し、責任者は誰なのか、各メンバーの権限はどこまでかを明確にしなければいけません。とくにパスワードの利用申請や承認の流れを明確化していないと、気づかないうちに悪用されてしまうリスクが高まります。
ユーザー認証、操作画面の録画機能などのアクセスログの利用
特権IDの悪用がしづらくなるように、ユーザー認証や操作画面の録画機能をつけるのも有効です。万が一、悪用が起きた場合に、すぐ個人を特定できるようにしておくわけです。
ワンタイムパスワードを利用する
頻繁に「パスワードを変更するのが面倒」といった理由で、特権IDに関するパスワードを長期間同じものにしておくのは避けましょう。
推測されやすいパスワードも専用の解析ツールで見破られてしまうリスクがあります。特権IDが悪用されたときのリスクを考えれば、いわゆるワンタイムパスワードを利用するのは当然と考えましょう。
ワンタイムパスワードについて、詳しくは次の記事で解説しています。参考にしてください。
申請された操作に応じた権限の付与
特権IDを利用する前に、本来の利用目的を明確にしておき、操作目的に応じた権限を付与することも大事です。
闇雲に権限を付与してしまうと、何か問題が起こった際に、誰によるものかが判別しづらくなります。また、利用後に事前申請された操作目的と、実際の操作を突き合わせてチェックすることも重要です。
特権ID管理に有効なワークフロー
一例ですが、特権ID管理をするうえで有効なワークフローは下図のような形になります。参考にしてください。
特権ID管理システムのメリット
適切に特権IDを管理するためには、特権ID管理システムを導入するのが有効です。システムを活用することで、次のようなメリットが得られます。
- セキュリティリスクの軽減
- 内部不正防止
- 外部監査に対応できる
セキュリティリスクの軽減
特権IDシステムの導入により、セキュリティリスクを軽減できます。
特権IDは管理者で共用されることが多くあります。ただし、1つの特権IDを共用で利用すると誰が操作したかがわからないため、内部不正が行われても特定や追跡が困難です。また、長期間同じパスワードを変更せずに使用すると、パスワードが漏えいし内部・外部から不正使用されるリスクが高まります。
システムを導入すれば、このようなリスクの軽減が可能です。特権ID管理システムには、アクセスログの記録機能のほか、パスワードの管理機能や定期再発行機能などが搭載されています。そのため、不正利用を防止でき、万一不正が発生した際にも調査や原因の特定がしやすくなるでしょう。
内部不正防止
特権ID管理システムを導入すれば、ワークフローを構築して申請・承認ベースで権限の付与が可能なため、内部不正使用の防止につながります。
申請・承認機能を使ってIDの付与を限定的に行うことで、外部だけでなく内部による不正操作の防止が可能です。
特権IDの悪用や不正利用は外部からのものだけではなく、内部からのアクセスによるものもあります。しかし、IDを利用する際に利用者・日時・目的を明確にして利用申請を行い承認が必要な仕組みを作れば、承認ベースのIDの付与や利用が可能になります。そのため、内部不正による情報漏えいリスクを大幅に低減できるでしょう。
外部監査に対応できる
特権管理IDシステムの導入は、外部監査への対応にも有効です。
特権IDは強力な権限があり、IDがあればデータの改変や改ざんが容易に行えてしまうため、特権IDの管理状況は外部監査でもチェックが入りやすくなります。そのため、利用申請・承認、IDの払い出し・アクセスログの記録など、特権ID管理におけるプロセスを適切に行うことが重要です。
特権管理システムに搭載されている、ワークフロー・ID管理・アクセス制御・ログ管理などの機能を活用することで、管理業務の工数を削減し効率よく対応できるようになるでしょう。
特権ID管理システムの選び方
IDごとに操作内容の記録ができるか
機密情報を特権IDで管理する場合は、IDごとに操作内容の記録が可能なシステムを選びましょう。
もし不審な操作があった場合、ログの解析を行います。このとき、IDごとにログが保存されるタイプのシステムであれば、解析がしやすくなります。
カスタマイズ性に優れている
くわえて、IDの設定をカスタマイズしやすいシステムであれば、ベターです。貸し出す特権IDに有効期限や操作内容の制限をもたせられられるかといった、詳細な管理ができるか確認しておきましょう。
おすすめの特権ID管理システム
BOXILおすすめの特権ID管理システムを紹介します。
CyberArk Privileged Access Manager - 株式会社ディアイティ
- エンタープライズの導入実績が豊富
- 豊富な機能をワンストップで提供
- NW機器やデータベース、クラウドも一元管理
CyberArk Privileged Access Managerは、ID管理システムだけでなく、特権アカウントに強力な保護も施すID管理システムです。サイバー攻撃にも、内部からの攻撃にも有効なので、CyberArk PASだけでさまざまな事態に対処できます。
特権アカウントのパスワード自動変更や利用者ごとのアクセス制御をはじめ、多くの機能を搭載している点が特長的です。
iDoperation - NTTテクノクロス株式会社
- 特権ID管理に求められるすべての機能を搭載
- 監査への対応力と実績
- 管理にかかわる多くの作業を自動化
iDoperation(アイディーオペレーション)は、「特権IDを」「誰が」「使うのか」を適正に管理し、特権ID管理にかかわる課題を解決するID管理システムです。5つの基本機能(ID管理・ワークフロー・アクセス制御・アクセスログ管理・操作ログ管理)を、1つのパッケージで提供します。
顧客が効率的に監査対応を実現するための材料として、豊富な監査レポートや監査人向け説明マニュアルを用意していることも特徴です。アクセスログと申請書の突き合わせ点検といった監査対応作業や、定期的なアカウント管理作業を自動化することで、管理工数削減が期待できます。
次の記事ではおすすめ特権ID管理システムの料金や機能、評判・口コミを比較しています。サービスを比較検討したい方は、ぜひ参考にしてくてださい。
特権IDを最低限のリスクで活用する!
特権IDをうまく利用すればシステム周りの業務効率化を図れます。しかし利用にあたっては、さまざまなリスクを考慮する必要があり、管理の方法を徹底しなければなりません。安全に管理するためにも、ぜひ特権ID管理ソリューション導入を検討してみましょう。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
BOXIL会員(無料)になると次の特典が受け取れます。
- BOXIL Magazineの会員限定記事が読み放題!
- 「SaaS業界レポート」や「選び方ガイド」がダウンロードできる!
- 約800種類のビジネステンプレートが自由に使える!
BOXIL SaaSでは、SaaSやクラウドサービスの口コミを募集しています。あなたの体験が、サービス品質向上や、これから導入検討する企業の参考情報として役立ちます。
BOXIL SaaSへ掲載しませんか?
- リード獲得に強い法人向けSaaS比較・検索サイトNo.1※
- リードの従量課金で、安定的に新規顧客との接点を提供
- 累計1,200社以上の掲載実績があり、初めての比較サイト掲載でも安心
※ 日本マーケティングリサーチ機構調べ、調査概要:2021年5月期 ブランドのWEB比較印象調査