付け焼き刃は危険? コロナ禍にHACCP導入 苦境に立つ飲食業界で必要なDXとは
長引くコロナ禍で、飲食業界はかつてないダメージを受けています。そんな中、6月には「HACCP(ハサップ:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略)」という新しい衛生管理が義務化され、さらに負担は増えています。
より効率的な経営が求められる飲食業界で、DXはどう進めていくべきなのでしょうか。多店舗ビジネスにおけるスタッフの教育、店鋪運営・管理などの動画型マネジメントシステムを提供するClipLine株式会社の齋藤誉執行役員に、飲食業界で求められるDXやSaaSの概況について聞きました。
6月にHACCPが義務化
苦境にあえぐ飲食業界ですが、6月には製造や販売などに携わるすべての食品等事業者に「HACCP(ハサップ:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略)」に沿った衛生管理が義務化されました。
農林水産省によると、HACCPとは原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因分析をした上で、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録する工程管理システムのこと。このたび食品衛生法が15年ぶりに改正され、より厳格な基づく衛生管理が義務化されました。
食品衛生に詳しく、国際 HACCP 同盟リードインストラクターの片桐史人さんによるとHACCPとは、「ハザード=危害要因、アナリシス=分析、クリティカル=必須、コントロール=管理、ポイント=点」の要約です。
「食べたら病気や怪我の元となるものについて、何がどこから入りどのように増えるのかをよく考え、口に入る前に必ず、取り除くか害のないレベルにまで減らす。そのための調理や加工工程、条件を決めることです」(片桐さん)
コロナ対策でHACCP導入が難しい飲食業界
食品を扱う業種において、これらは当然のこと思われがちですが、特に飲食店ではこのHACCPを完全導入できていない現場も少なくないそう。その理由は人手不足や管理体制ができていないこと、また人材育成の余裕がないことなどです。
またHACCPに基づく食品管理は知識習得のみならず、継続的な現場チェックや指導なども必要です。こうした状況から実行リソースのための費用や時間の確保が難しいため、小規模店ほどHACCP導入の遅れが見られるそうです。
サービス業は、HACCP導入に限らず、DX化が急速に求められている業種とも言えます。しかし、外部環境の変化や今回のような法改正などの影響によって、スムーズにDXを推進できていない現場も少なくありません。
その背景について、齋藤さんは「外食チェーンや飲食業界は、社会状況や市場の変化に応じてビジネスモデルを転換することが通例化しているから」と話します。今のコロナ禍でも、テイクアウトやデリバリーに舵を切ったお店が目立ちました。しかし、そのビジネスモデルの変換に対するシステム導入やデジタル化は追いついていないケースが多いそうです。
そもそもPCやWi-Fiがないお店も
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