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アベノミクスとは?新旧「3本の矢」からわかる課題、経済効果や失敗の原因

最終更新日:(記事の情報は現在から1613日前のものです)
アベノミクスとは、第2次安倍内閣が掲げた経済政策であり、「デフレからの脱却」と「富の拡大」を実現するために3本の矢を政策として掲げています。2012年から始まったアベノミクスは、経済成長を実現していますが失敗したと感じている方はいるようです。本記事では、アベノミクスの3本の矢や成果、失敗したのかについて紹介します。

アベノミクスとは

アベノミクスとは、第2次安倍内閣が掲げた経済政策のことです。安倍晋三首相の「アベ」と経済学の「エコノミクス」の2つの言葉を合わせて作られた造語です。

安倍政権が目指す、デフレからの脱却富の拡大を実現を掲げています。そのための経済政策として、アベノミクス「3本の矢」を発表しています。

アベノミクスはいつから始まった?

アベノミクスは、2012年12月の第2次安倍政権発足から始まりました。安倍政権発足後に行われたアベノミクスの影響で、景気は緩やかに上昇しています。

アベノミクスの目標

アベノミクスは、2段階に分けて行われています。第1段階のアベノミクスでは、デフレ脱却と景気浮揚を図り、日本経済の長期的な成長力を高めることを目標としていました。

現在のアベノミクスは、第2段階に移っています。新アベノミクスは一億総活躍社会を目標に掲げ、2020 年を目処にに名目 GDP600兆円の実現と、合計特殊出生率を 1.8に引き上げ、介護離職者を0にすることを目標にしていました。

アベノミクスの理想は、デフレ対策の効果があり円高修正が達成されることから始まります。そこから株価の上昇、輸出産業の利益増加から雇用拡大・所得増加、消費が増え、物価が上昇しインフレ率2%の達成となり、内需産業の利益増加から本格的な景気回復を見込んでいます。

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アベノミクスの「旧3本の矢」

第1段階のアベノミクスでは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」から構成されていました。

第1の矢:大胆な金融政策

この政策は市場にお金を投入することで、デフレを脱却しお金の流れを活性化させる金融緩和です。デフレの原因は、個人の消費活動の低下によるものだと考えました。そこで、国民がお金を手にできれば、消費活動の活発化につながります。

消費活動が活発により国としての税収が増え、結果的に税金を使って公共事業に投資できます。この繰り返しによって景気回復を狙った大胆な金融政策です。

アベノミクスによる金融政策

財政政策としては、補正予算が目玉になっています。
補正予算とは当初予算成立後に発生した事由によって、本予算の内容を変更するように組まれた予算のことです。

また、アベノミクスの大きな柱である金融政策は、3段階に分かれています。

1段階目は、インフレ・ターゲットの採用であり消費者物価上昇率2%を目指しました。日銀法の改正も視野に入れ2%の物価目標を掲げるように働きかけています。

2段階目は、2013年から行われた黒田新日銀総裁の下での異次元緩和です。年率2%のインフレ目標を達成するために開始されました。

3段階目は、マイナス金利政策を行い、金融機関が企業への貸し出しや投資に資金を回すように促しました。

第2の矢:機動的な財政政策

財政政策は、政府が中心となって経済を変えていくというものです。
公共事業を増やし、それを民間の建設会社に依頼することで、建設会社が儲かる仕組みになっています。

これにより、建設会社で勤める方の給料が上がり、雇用が多く生まれることで消費の拡大が見込め景気が良くなります。この公共事業は東日本大震災の復興支援や防災対策を行い、国土強じん化が行われています。

第3の矢:民間投資を喚起する成長戦略

この政策は民間企業の活動をもっと自由にし、日本経済を成長させるものです。規制により新規参入が困難な市場に対し、規制緩和を行うことで新規参入の企業を増やします。これにより企業間で競争が起こり、より良いサービスや商品が作られ、世界に通用する企業に成長することが狙いです。

これは結果的に雇用を生み、失業率を下げることにもつながるためアベノミクスの「旧3本の矢」の中で一番重要とされていました。

旧3本の矢の課題

「旧3本の矢」の課題は、大きく分けて次の2つがあります。

国民の購買欲の低下

インフレが進んだとしても労働者の賃金が上がらなければ、国民の購買力は低下してしまう可能性があります。制作により企業の利益が上がっても、社員に給料として還元されなければ、物価が上昇するだけになり購買欲が低下してしまいます。

そのため、国民の賃金増加が課題となり、これを解決することで購買意欲の上昇が見込めます。

民間企業を圧迫する可能性

公共事業を作り、民間企業の仕事を増やすことで、人材不足や資材不足といった問題が起こります。

突然、民間企業に仕事を振ることで人材や資材を新しく用意する必要が出るため、経費が多くかかる可能性があります。その結果、企業の業績は上がらず民間企業を圧迫してしまいます。

アベノミクスの「新3本の矢」

第2段階におけるアベノミクスでは、旧3本の矢から新3本の矢に変更し、さらなる経済成長の実現に向けて政策に取り組んでいます。

第1の矢:希望を生み出す強い経済

これは、第1段階の「旧3本の矢」を束ねる形で、経済をより良くするために、引き続き金融政策や規制緩和に取り組んでいくものです。具体的には、2020年を目処にGDPを600兆円にすることを目標に掲げていました。

それに加え「新3本の矢」では都市部と地方での格差の問題を解消するために、地方活性化の政策があります。

第2の矢:夢を紡ぐ子育て支援

これから日本は、少子高齢化が続きます。少子高齢化の現在において、子どもたちは将来の日本を背負っていく宝です。そこで、子どもたちを育てる環境を国が支援するのが「夢を紡ぐ子育て支援」となります。

これは、女性の出産前と出産後の2つのフェーズで分けられています。

出産前には婚活や不妊治療の支援をし、出産後には子どもを預けられる保育所を充実させることで、女性の働きやすい環境を作ろうという内容です。

また、合計特殊出生率を1.8に引き上げることを目標としています。

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第3の矢:安心につながる社会保障

これは、今後も増えていく高齢者に向けての政策です。

日本では、介護士の人材不足や介護施設の不足が深刻な問題となっています。介護に関連する問題を、国として支援するのが「安心につながる社会保障」です。

介護に加え、高齢者の働ける環境を整備することも視野に入れており、高齢になっても安心して生活ができるような環境や仕組みをつくることが目的の政策です。介護離職者を0にすることも目標として掲げています。

アベノミクスを実現させるための法案

安倍総理は、成長戦略の実行に向けた法案をいくつも成立させています。観光に関する法案、働き方改革に関する法案、エネルギー使用に関する法案といった多くのものが成立しています。

詳細を知りたい方は、首相官邸のホームページをご覧ください。

新3本の矢の課題

新3本の矢の課題は、大きく分けて次の3つがあります。

まだ旧3本の矢が実現できていない

そもそも旧3本の矢として掲げた課題が克服されていない状態で、新3本の矢を掲げています。そのため、旧3本の矢の問題点はどうするのか、といった懸念が出ています。

具体的な政策があいまい

旧3本の矢では、デフレ脱却に向けた3つ政策を打ち出していました。

しかし、新3本の矢では3つの政策の関連性がはっきりとしておらず、結果的にどのような社会を実現するのかということが理解しにくい状態になっています。

実現性の低い目標数値

GDP600兆円、出生率1.8、介護の離職率0%という数値は、これまでの流れから推測するに実現性が引くという見方が強くなっています。そのため、これらが実現できるという計画を明確に説明する必要があります。

アベノミクスによる成果

2012年12月から行われてきたアベノミクスですが、どれくらいの経済効果をあげたのでしょうか。具体的な成果を紹介します。

名目GDPは66兆円増加

2012年の10-12月期の名目GDPは約493.0兆円でした。それに比べて2019年7-9月期の名目GDPは約559.2兆円と、66兆円も増加しています。

企業収益や国・地方の税収も過去最高となり、アベノミクスによる経済効果はあったといえるでしょう。

出典:内閣府大臣官房政府広報室ホームページ

労働人口は350万人増加

就業者数は2012年の段階で約6,271万人でした。アベノミクスの実施後、6年連続で労働人口は増加しています。2020年の段階では、約6,628万人になります。労働人口はアベノミクス前と比較し、約350万人増えています。

正社員の有効求人倍率も2012年の0.50倍から、2020年では1.13倍となり働き口が増えていることがわかります。完全失業率も2012年には4.3%でしたが、2020年では2.6%となっています。

出典:内閣府大臣官房政府広報室ホームページ

株価の上昇

第二次安倍政権が進めた異次元金融緩和は円安をもたらし、輸出業者が好調な世界経済の流れに乗ったことで、企業収益は拡大し株価は上昇しました。

リーマン・ショック後の2009年3月にはバブル後最安値の7,056円でしたが、2020年では平均株価は2万2千円台となっています。(2020年6月22日調べ)

出典:ストックウェザー

アベノミクスは失敗したのか?

アベノミクスは経済効果をもたらし、アベノミクス以前と比較しても成果を挙げているといえます。

しかし、「アベノミクスは失敗している」という声も大きく上がっているのはなぜでしょうか。

経済成長率が2%を達成していない

アベノミクスは毎年2%の経済成長率を目指していました。

しかし、2012年から開始されたアベノミクスでは、2019年までの7年間における平均経済成長率は0.9%と極めて緩やかな伸びにとどまっており、目標の半分以下となっているようです。

また、GDPの規模でも掲げていた目標には達成していません。確かに経済成長はしていますが、当初の目標は達成していないため、アベノミクスを失敗だと感じている方がいるのかもしれません。

実質賃金が上がっていない

アベノミクスでは、デフレにより経済成長が止まっていると考えています。

しかし、多くの方は暮らしがよくならない状態が改善されることを望んでいるようです。そのため、経済政策によりデフレからの脱却を図っても、労働条件が悪く給与が低いままの場合があります。

国民にとっては、生活がどれだけ豊かになるのかということを期待していただけに、アベノミクスは失敗に終わったと感じているようです。

新型コロナウイルスの影響も

2020年、世界に猛威を振るった新型コロナウイルスは、日本の経済にも大きな影響を与えています。新型コロナウイルスは生産、観光、消費への打撃となっており、2期連続のマイナス成長となることが見込まれています。

新型コロナウイルスの被害が大きかった2020年3月には、株価が1万6千円台にまで下がりました。2020年6月現在は徐々に回復し、2万2千円台となっています。

アベノミクスはどのように評価されているのか

アベノミクスを評価するには、デフレ脱却のことが問われるのは間違いないです。また、持続的な成長力の確保や財政再建も考える要素として必要になります。

デフレ脱却に関しては、大胆な金融政策と大規模な財政政策により実現できている。2013年以降、デフレではない状態が続いており評価されています。

しかし、持続的な成長力や財政再建に関しては必ずしも成功とはいえない状態です。政府は、基礎的財政収支という財政指標を2020年度に赤字から黒字に転換させることを目標としていましたが、2025年に先送りにしています。成果がある一方で、課題も多く残っているのではないでしょうか。

アベノミクスのQ&A

アベノミクスではデフレ脱却のための政策から始まり、企業や個人を支援するという動きが強くなっています。まだまだ課題も多く、発展途上ではありますが、アベノミクスにより経済活動が促進されれば、経済は発展していく可能性を秘めているため、今後の政策に期待ができます。

アベノミクスに関するQ&Aを確認し、理解を深めましょう。

アベノミクスとは?

アベノミクスとは、第2次安倍内閣が掲げた経済政策であり2012年の12月から始まりました。

安倍政権が目指す「デフレからの脱却」と「富の拡大」を実現するための経済政策がアベノミクス「3本の矢」と言われています。

アベノミクスの3本の矢とは?

アベノミクスの新3本の矢は、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障です。

これは、一億総活躍社会を目標に掲げ、2020年を目処にに名目 GDP600兆円の実現と、合計特殊出生率を1.8に引き上げ、介護離職者を0にすることを目標にしています。

アベノミクスの金融政策とは?

1段階目は、インフレ・ターゲットの採用であり消費者物価上昇率2%を目指しています。
2段階目は、2013年から行われた黒田新日銀総裁の下での異次元緩和です。
3段階目は、マイナス金利政策で金融機関が企業への貸し出しや投資に資金を回すように促しました。

日銀が行っている異次元緩和とは、資金供給量を2年間で2倍に拡大するという内容です。日銀の黒田総裁が「量的にみても質的にみても、これまでとはまったく次元の違う金融緩和を行う」と会見で発表したことから「異次元緩和」と呼ばれています。

アベノミクスによる経済効果は?

2012年と比較すると名目GDPは66兆円増加し、労働人口は380万人増加しています。株価も上昇しているため、経済効果はあったといえるでしょう。

アベノミクスは失敗したの?

アベノミクスは、当初掲げていた経済成長率やGDPを達成できていないため、失敗したと考える方は多いようです。また、経済成長のためには個人消費が必要となりますが、個人の生活が豊かになっていないため実現できていません。

しかし、2012年に比べ経済成長を遂げているので、一概に失敗したとはいえないでしょう。今後の政策に期待しましょう。

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