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外国人技能実習制度とは?概要と主な論点や実習生における課題・問題点

最終更新日:(記事の情報は現在から2314日前のものです)
外国人技能実習制度に関する目的や期間などの基本的な説明から、受け入れ方式、受け入れ人数などを解説。外国人労働者の待遇に関する問題をはじめとした、同制度をめぐるさまざまな論点と実態について解説していきます。

近年、外国人技能実習制度が注目されていますが、現場では多くの外国人労働者が労働基準関係法令に違反している環境で働いているなど、多くの問題点や課題を抱えています。

今回は、さまざまな議論が交わされることの多い外国人技能実習制度について、制度の概要から現状の問題点にいたるまで、詳しく解説していきます。

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度とは、外国人の労働者を一定期間日本国内で技能実習生として雇用し、さまざまな分野の技能を修得してもらおうとする制度のことをいいます。

特に発展途上国の経済面・技術面の発展を担う人材を育成するために制定されたものであると同時に、日本国内で人手不足となりつつある産業を支えるために、外国人の労働者に働いてもらうという側面もあります。

外国人技能実習制度の概要

2016年11月、「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が公布され、2017年11月に施行される運びとなりました。

これまで外国人の日本国内での労働については、いわゆる「入管法」やそれに関する省令を根拠として実施されてきましたが、技能実習法やその関連法令が制定されるにあたり、外国人の労働に関する多くの部分が技能実習法令のなかで規定されるようになりました。

新しい外国人技能実習制度は、開発途上地域などへの技能や知識の拡充を図り、その経済発展を担う人材育成に協力することを目的としています。

具体的な技能実習に関しては、技能実習計画の認定および監理団体の許可制度を設け、これらに関する事務を行う外国人技能実習機構を設けるなどして、適正な技能実習を実施するとされています。

それに加えて、特に優良な監理団体や技能実習の実施者に対しては、実習期間の延長が許されたり、受け入れ可能な外国人労働者枠が拡大されたりと徐々に制度が整えられています。

技能実習の区分と在留資格について

企業単独型と団体監理型では、それぞれ技能実習の区分と在留資格が異なり、主に入国後1年目の技能などを習得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の習得技能をさらに習熟させるための活動(第2号技能実習)、そして4・5年目の技能をさらに熟達する活動(第3号技能実習)の3つに分けられます。

実習生は日本に入国すると、まず日本語の教育や実習生自身が法的保護を受けるために必要となる講義を受けることになります。その後、受け入れ先の機関に雇用され、現場で技能を修得するための活動を行います。

その後技能の修得が一定の水準に達すると、上述の第2号技能実習の在留資格への変更が許可され、最長3年間の実習が可能となります。

さらに新制度のもとで新たに新設された技能実習3号の在留資格を得ると、優良性が認められる監理団体や実習実施機関に限って、最長5年間まで技能実習を認められることになります。

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外国人技能実習制度の目的と期間

本来、外国人技能実習制度は1960年代に行われていた海外の現地法人における社員教育制度が評価されたことにより、これを発展させるかたちで1990年代に制度化されたことが発端となっています。

制度の目的は、上述のように、あくまでも発展途上地域の経済発展を担う人材育成に寄与することであり、実施国の労働力の需給調整の手段として行われてはならないという趣旨の定めがあります(技能実習法第3条第2項)。

本制度のもと、外国人の技能実習生は、日本で企業や個人事業主などの実習実施者と雇用関係を結び、出身国において習得が困難とされる知識や技能などの習得を図ります。

期間は最長で5年間で、技能実習計画に基づいて確実に実施されなければなりません。

技能実習生の受け入れ方式

具体的な技能実習生の受入れ方式には、企業単独型団体監理型の2種類があります。

企業単独型

実習実施者たる日本の企業や個人事業主が、海外の現地法人や合弁企業、取引先企業のスタッフを受け入れるかたちで技能実習を行う方式のことです。

団体監理型

商工会や事業共同組合といった非営利の監理団体が技能実習生を受け入れ、その傘下にある企業などの実習実施者のもとで技能実習を行う方式のことです。

企業が独自に実習生を受け入れる企業単独型とは違い、あくまでも監理団体が受け入れ主体となるわけです。

外国人技能実習制度の受け入れ人数

企業単独型と団体監理型、それぞれの受け入れ人数は以下のようになっています。

企業単独型

企業単独型は、実習区分ごとに以下の人数枠が決まっています。なお、優良基準適合者の場合は、それぞれの区分の人数枠が若干多くなります。

実習区分 技能実習生の人数枠
第1号(1年間) 常勤職員総数の1/20
第2号(2年間) 常勤職員総数の1/10
優良基準適合者 第1号(1年間):常勤職員総数の1/10、第2号(2年間):常勤職員総数の1/5、第3号(2年間):常勤職員総数の3/10

団体監理型

団体監理型の人数枠は、以下のようになります。

第1号(1年間):基本人数枠

受入企業の常勤職員数 技能実習生の人数枠
301人以上 常勤職員総数の1/20
201人~300人 15人
101人~200人 10人
51人~100人 6人
41人~50人 5人
31人~40人 4人
30人以下 3人

第2号(2年間)

第2号(2年間)区分になると、基本人数(第1号)枠の2倍の人数枠を設けることが可能になります。

受入企業の常勤職員数 技能実習生の人数枠
301人以上 常勤職員総数の1/10 
201人~300人 30人
101人~200人 20人
51人~100人 12人
41人~50人 10人
31人~40人 8人
3人以下 6人

優良基準適合者

優良基準適合者の場合は、以下のとおりになります。

実習区分 技能実習生の人数枠
第1号(1年間) 基本人数枠の2倍
第2号(2年間) 基本人数枠の4倍
第3号(2年間) 基本人数枠の6倍

外国人技能実習制度の実態

このように、現在は政府主導のもと、企業や各種非営利団体が中心となって積極的に外国人技能実習生の受け入れが行われているわけですが、その実態はどうなのでしょうか?

日本政策金融公庫の調査

日本政策金融公庫の総合研究所が2016年に調査したところによると、派遣社員などを含め外国人を雇用している企業割合は13.3%であり、業種別に見ると、飲食店や宿泊業、製造業の割合が多く、それぞれ25.5%と24.3%となっています。

従業員規模が大きいほど外国人を雇用している企業の割合が高くなり、国別でみると中国・ベトナム・フィリピンの順で多くなっています。技能実習が在留資格をもつ外国人の全体に占める割合は31.1%でもっとも多く、次いで永住資格者や日本人の配偶者をもつ人となっています。

主に中小企業が外国人を雇用する理由

そして調査の結果、最近は大企業ばかりではなく、中小企業でも技能実習生をはじめとした外国人労働者を雇用するケースが増えていることがわかっています。

その主な理由としては、日本人スタッフだけでは人手が足りないケースや、日本人の採用ができない(採用希望者がいない)といった、単純な人手不足を理由とする企業が約38%を占めています。

ただし、外国人を正社員として雇用している企業の場合、言語能力など外国人に特有の能力を必要だったり、純粋に能力評価をして採用したら外国人だったたりするという理由が多くを占めているようです。

中小企業が人手不足に陥っている背景

しかし、主に中小企業が単純作業を目的として外国人を雇う理由の多くは、企業自身の人手不足が要因であることは事実であり、その背景にはここ数年の日本経済全体に関わる原因があります。

長引くデフレと企業の人員削減

日本は約20年にもわたるデフレの影響で、これまで慢性的な需要不足に陥っていました。企業からの製品やサービスの供給に対して消費者側の需要が低迷しており、そのため企業は人員を削減し、企業規模を縮小してきたのです。

ですが近年は、アベノミクスなどの影響で景気が回復しはじめており、多くの企業が積極的に人を雇うようになってきました。これまで無職だった人も働きはじめるなどして、失業率も改善のきざしを見せるようになったのです。

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景気の回復によって人手不足が顕在化

アベノミクスによる急激な高まりをみせる需要に対して、今度は製造業や建設業などで人手不足が顕在化しはじめました。特にこれまでも慢性的に人手不足だった介護分野やサービス業などでは、ますます人的リソース不足によるさまざまな弊害が出はじめたのです。

そこで、多くの企業はこれまで日本人スタッフが担ってきた作業を外国人労働者に補ってもらうように方針を転換し、その結果、飲食店や工場における単純労働などで、多くの技能実習生が雇用されはじめています。

外国人技能実習制度の問題点

このように、政府による外国人技能実習制度の拡大と、多くの日本企業が抱える人手不足問題があいまって、現在多くの技能実習生が日本企業で働いています。

しかし現在、こういった外国人の雇用をめぐり、彼らに対する賃金の不払いや違法な時間外労働といった問題や外国人労働者が関わる事件や事故の増加といった問題が顕在化しはじめています。

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外国人技能実習生は不当に扱われている?

外国人技能実習生の待遇に関しては、主に「低賃金」であることと「劣悪な労働環境」といった点から批判されることが多くなっています。

外国人を不当に低賃金で雇っている?

上述の日本政策金融公庫の調査によると、正社員として雇われた外国人の6割以上が月収で22万円超を得ているのに対して、技能実習生のほとんど全員が月収18万円以下で働いているといいます。

さらに技能実習生のいない企業が外国人労働者に対して提示する月給と、技能実習生のいる企業が提示している月給では、前者の方が高額である割合が高いことが明らかになっています。

これは時給分布をみても同じであり、企業のなかには技能実習の名目で外国人を不当に安い賃金で雇用しているのではないかという批判があります。

さらに最近では、外国人労働者への賃金の不払いが問題となる企業が出始めるなど、日本人を採用することのできない中小企業が外国人を不当に低賃金で使っているという悪いイメージがもたれる原因となっています。

技能実習生の労働環境

また外国人技能実習制度は、外国人実習生の労働環境が整っていないという面からも批判されています。

厚生労働省の2015年の調査によると、実習実施機関約5,000のうち、約7割以上で労働基準関係法令上の違反が認められたといいます。

たとえば、大阪府では外国人に介護施設での過酷な労働を強制していたことが問題となったり、安全の確認がされていない機械の操作をさせたことによって、実習生が死亡する事故が発生したりするなど、深刻な事件や事故も増えています。

このように、技能実習生に対して、受け入れ側の勝手な都合で過酷な労働環境を強制するケースが多いことから、同制度を「現代の奴隷制度」と批判する人も少なくないのです。

外国人労働者が関わる事件・事故の現状

外国人技能実習生自身が関わる事件や事故も増加の一途を辿っています。

警察庁によると、2014年に摘発された外国人技能実習生は全国で961人であり、2年前の約3倍にものぼっており、さらに年を追うごとに右肩上がりに増加しているといいます。

内容別にみると、実習期間を超えてからも日本国内に滞在し続ける不法残留や、実習として認められた仕事以外のことをする資格外活動が多く、次いで万引き・空き巣といった窃盗行為となっています。

つまり、外国人技能実習生が起こす事件のほとんどが金銭的問題に端を発するものといえます。

事件や事故が頻発する理由

外国人技能実習生関連の事件・事故が頻発するもっとも大きな原因は、実習生自身が当初考えていたよりも「稼げない」からです。
これは、技能実習生に対して不当な賃金設定をしている企業に問題があるケースが多いですが、雇用側と実習生側の認識の違いという面もあります。

たとえば、受け入れる側の企業が労働法令を遵守しようとすると、実習生に基準となる労働時間以上の残業を強いることはできません。
そのため、実習生によっては「稼ぎたくても稼げない」という状況が発生することになります。

その結果、実習生はより高い収入を求めて資格外活動をしてしまったり、場合によっては犯罪に手を染めてしまったりというケースも少なくないのです。

事件や事故の予防のために

このように、外国人実習生の事件や事故を巡っては、一概に企業側の体質だけが原因とはいえない部分もあります。

しかし、ほとんどの場合、企業側の不当な賃金での雇用が原因となっているのが現状なので、受け入れ企業は外国人を雇用すれば低コストで済むという認識を改めていく必要があるでしょう。

それに加えて、快適に働ける職場環境を整えることも重要となります。劣悪な環境での作業は実習生の心身を蝕んでしまうので、定期的に環境の見直しを行い、彼らの悩みを聞いてあげたり、相談にのってあげたりする組織文化を醸成していく必要があるでしょう。

外国人技能実習制度のを巡るさまざまなトピック

最後に、外国人技能実習制度をめぐるさまざまなトピックについて、代表的なものを挙げておきます。

外国人の人権に関する問題   

上述のように、同制度に関しては不当に安い賃金や劣悪な環境での労働強制に対して、外国人の人権に関する深刻な問題として批判の対象となっています。

JITCOによると、実習生の行方不明者は年間3,000人にもなると報告されており、彼らの給与体系や労働環境の改善が強く求められているのが現状です。

このような状況を改善するため、実習生の保護を目的に、各管理団体や実習実施機関を指導・監督する外国人技能実習機構も設けられ、さらに実習生の相談に乗るための労働相談窓口の設置が検討されるなど、各方面から実習生の労働環境改善への取り組みがはじまっています。

日本人の雇用に関わる問題

外国人労働者が積極採用される一方で、外国人に職を奪われてしまう日本人が増えるのではないかという懸念も指摘されています。

しかし現在のところ、技能実習生を受け入れている企業・組織は慢性的に人手不足に悩むところがほとんどであり、日本人の雇用環境も改善していますから、すぐにこういった問題が顕在化してくる可能性は低いでしょう。

将来的には、優秀な外国人が積極採用される一方で、一部の日本人が職を奪われてしまう可能性もゼロではないので、慎重に考えていく必要があります。

外国人犯罪に関わる問題

また、外国人技能実習生の増加に伴って、ますます外国人犯罪が増えるのではないかという懸念もあります。

事実、日本における外国人犯罪数は年々増加しているので、今後多くの技能実習生の受け入れとともに、犯罪数もさらに増えてしまうのではないかと不安になっている日本人は多くいます。

ただ、特に技能実習生の場合は、それまでの低賃金で劣悪な環境に堪えかねて職場を辞し、そのまま犯罪行為に手を染めてしまうケースが多く報告されています。

したがって、そもそもの原因となっている職場環境の改善を図っていくことが、結果的に犯罪の抑止になる可能性が高いといえます。
少なくとも、外国人労働者から不当に搾取するような労働環境は即座に是正されるべきでしょう。

外国人技能実習制度の実態や問題点について理解し、多角的な視点から評価を行う

外国人技能実習制度の概要から、現状の課題や問題点に関して、できるだけ詳しく解説してきました。

日本全体の労働環境は、今後景気が回復していくにつれて徐々に改善される方向に向かう可能性が高いですが、特に外国人労働者をめぐるさまざまな問題は、さらに複雑化していくことが予想されます。

日本人にとってもけっして無関係な問題ではないので、今現在、どういった議論がされているのかをしっかりとチェックしておきましょう。

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