顔認証システムとは?仕組みや注目される理由・メリット・活用シーン

目次を閉じる
- 顔認証システムとは
- 顔認証システムの仕組み
- 顔認識との違い
- 顔認証システムが注目される理由
- セキュリティ対策の必要性が増したため
- 顔認証の技術・精度が向上したため
- 顔認証システムの5つのメリット
- メリット1. セキュリティレベルが高い
- メリット2. ID・パスワード忘れの心配がない
- メリット3. 非接触・手がふさがっていても認証できる
- メリット4. 専用の認証端末が必要ない
- メリット5. 不正を抑止できる
- 顔認証システムの3つの注意点
- 注意点1. システムごとの認証精度に差がある
- 注意点2. 環境に認証精度が左右される
- 注意点3. 個人情報への配慮が必要
- 顔認証システムの活用シーン
- 入退室管理
- なりすまし防止
- 万引き防止
- 来訪者の探知と担当者への通知
- デバイスのロック解除
- キャッシュレス決済
- 顔認証は導入しやすく高セキュリティな生体認証システム
顔認証システムとは
顔認証システムは、画像や動画に写った顔の情報をもとに個人を識別する技術です。具体的には、顔の目や鼻、口などの位置や形状、顔全体の輪郭といった特徴点を抽出し、あらかじめ登録された顔画像データと照合することで個人を特定します。近年、技術の進歩により認証精度が飛躍的に向上し、さまざまな分野で活用が進んでいます。
顔認証システムの仕組み
システムごとに仕組みは異なりますが、一般的に顔認証システムは大きく分けて顔検出・特徴抽出・照合の3つのステップで構成されています。
- 顔検出:撮影された画像や動画から顔の部分を検出
- 特徴抽出:検出された顔画像から、目・鼻・口などの位置や形状、顔全体の輪郭といった特徴点を抽出(この特徴は数値データとして保存)
- 照合:抽出された特徴点データと、あらかじめデータベースに登録されている顔画像データの特徴点を比較し、一致度を算出。一致度が一定の閾値を超えた場合に本人と認証。
顔認識との違い
顔認証と顔認識は混同されがちですが、厳密には意味が異なります。顔認識は、画像や動画に顔が写っていることを認識する技術です。一方で、顔認証は認識された顔が誰の顔かを識別する技術です。つまり、顔認識は顔認証の一部であり、顔認証を行うためにはまず顔認識が必要となります。
顔認識とは、たとえば写真に写っている人物の顔に四角い枠を表示するような機能です。それに対して顔認証は、スマートフォンのロック解除や入退室管理などに利用され、個人を特定する目的で使用されます。
顔認証システムが注目される理由
顔認証システムは近年、さまざまな分野で注目を集めています。その背景には、社会情勢の変化や技術革新など、いくつかの要因が絡み合っています。
- セキュリティ対策の必要性が増したため
- 顔認証の技術・精度が向上したため
顔認証システムが注目される主な2つの理由を詳しく解説します。
セキュリティ対策の必要性が増したため
近年では情報漏えいや不正アクセス、テロなどの事件が多発しており、企業や公共機関においてセキュリティ対策の強化が急務となっています。
従来のID・パスワード認証は、紛失や盗難、漏えいのリスクがあるため十分なセキュリティ対策とはいえなくなってきました。そこで、生体情報を用いた認証技術、とくに顔認証が注目されるようになりました。
顔認証は、個人の顔という唯一無二の情報を用いるため、不正利用のリスクを大幅に低減できます。また、非接触で認証できるため衛生的であるという利点も、感染症対策の観点から評価されています。
顔認証の技術・精度が向上したため
かつての顔認証システムには、認証精度が低いだけではなく環境光の影響を受けやすいなどの課題がありました。しかし近年のAI技術、とくにディープラーニングの発展により、顔認証の精度は飛躍的に向上しました。これにより、さまざまな環境下でも安定した認証が可能となり、実用性が高まりました。
近年では、マスクを着用した状態や暗い場所でも認証できるシステムが登場しています。また、処理速度も向上し、スムーズな認証が可能になった普及を後押ししています。このように、技術革新が顔認証システムの信頼性を高め、社会的なニーズに応える形で注目を集めているといえるでしょう。
顔認証システムの5つのメリット
顔認証システムは、従来の認証方法と比較して多くの利点を持ち、さまざまな分野で注目されています。
- セキュリティレベルが高い
- ID・パスワード忘れの心配がない
- 非接触・手がふさがっていても認証できる
- 専用の認証端末が必要ない
- 不正を抑止できる
メリット1. セキュリティレベルが高い
顔認証は、個人の顔という唯一無二の情報に基づいて認証を行うため、従来のID・パスワード認証に比べてセキュリティレベルが格段に高くなることがメリットです。
パスワードのように他人に知られたり、カードのように紛失・盗難されたりするリスクもありません。また、生体情報を用いるため、なりすましも困難です。
メリット2. ID・パスワード忘れの心配がない
従来はIDやパスワードを記憶しておく必要があり、忘れてしまうと認証ができなくなってしまいます。また、定期的なパスワード変更も必要となり、ユーザーにとって負担となっていました。
しかし、顔認証ではIDやパスワードを記憶する必要がなく、これらの煩わしさから解放される点も大きなメリットです。パスワードを忘れてサービスを利用できなくなるといったトラブルを回避できるため、ユーザーエクスペリエンスの向上にもつながります。
メリット3. 非接触・手がふさがっていても認証できる
顔認証は、カメラに顔を向けるだけで認証が完了するため、カードや鍵などの物理的な媒体に触れる必要がありません。そのため、手がふさがっている状態でもスムーズな認証が可能です。
また、非接触であることは、衛生面でも大きなメリットとなります。とくに、不特定多数の人が利用する場所や衛生管理が重要な場所では、感染症対策としても有効です。たとえば、オフィスや商業施設の入退室管理、病院や食品工場などでの利用が考えられます。
メリット4. 専用の認証端末が必要ない
顔認証システムは既存のWebカメラやスマートフォン、タブレットなどのデバイスを使って導入できる場合が多く、高価な専用端末を新たに購入する必要はありません。導入コストを抑えられるメリットがあり、これは中小企業や個人事業主など、初期投資を抑えたい場合にとくに大きなメリットとなります。
また、既存のシステムに組み込みやすいという利点もあります。たとえば、オフィスの入退室管理システムや勤怠管理システムなどに容易に組み込めます。

メリット5. 不正を抑止できる
顔認証システムは、いつ・誰が・どこにいたのかというログデータを記録できます。万が一、不正行為が発生した場合でも、記録されたデータに基づいて迅速な対応が可能です。また、顔認証システムが導入されていること自体が、不正行為の抑止力となります。
顔認証システムの3つの注意点
顔認証システムは多くのメリットがある一方で、導入や運用にあたっては注意すべき点もいくつか存在します。
注意点1. システムごとの認証精度に差がある
顔認証システムは、各メーカーや製品によって認証精度に差があります。高精度なシステムでは、マスク着用時や経年変化による顔の変化、照明環境の変化などにも対応できますが、そうでないシステムでは認証エラーが発生しやすくなります。
導入を検討する際には、事前にテストを行なって自社の利用環境に適した精度を持つシステムを選びましょう。とくに、マスク着用が必須な現場の場合は、マスク着用時の認証精度を確認することは必須です。
認証速度も重要です。認証に時間がかかると、ユーザーのストレスにつながる可能性があります。
注意点2. 環境に認証精度が左右される
顔認証システムは、設置環境によって認証精度が左右される場合があります。
たとえば、逆光の環境では顔が暗く写ってしまい、認証精度が低下するかもしれません。また、暗すぎる場所や明るすぎる場所も同様です。屋外で使用する場合は、天候の影響も考慮しなければなりません。
そのため、導入前には設置場所の環境を十分に調査し、必要に応じて照明の調整や設置場所の変更などを行いましょう。また、システムによっては水滴や埃などに弱い場合もあるため、設置環境に応じて適切なシステムを選択する必要があります。
注意点3. 個人情報への配慮が必要
顔認証システムは、個人の顔画像という個人情報を取り扱うため、プライバシーへの配慮が不可欠です。顔画像の取得・保管・利用にあたっては、個人情報保護法をはじめとする関連法令を遵守する必要があります。
具体的には、次のような規定を定めておくといいでしょう。
- 利用目的を明確にして本人に通知または公表すること
- 適切な安全管理措置を講じること
- 目的外利用や第三者への提供を行わないこと など
また、顔画像データは暗号化して保存する、アクセス権限を適切に管理するなどの対策も重要です。顔認証システムの導入にあたっては、プライバシーポリシーを策定し、従業員への教育を徹底するなど、適切な運用体制を構築しなければなりません。
顔認証システムの活用シーン
顔認証システムは、その利便性とセキュリティの高さから、さまざまな分野で活用されています。代表的な活用シーンをいくつか紹介します。
入退室管理
顔認証システムはオフィスや工場、マンションなどの入退室管理に活用されています。鍵やカードが不要で、スムーズな入退室が可能です。また、部外者の侵入を防ぐ効果も期待できます。

なりすまし防止
顔認証システムはイベント会場や試験会場などで、本人確認のために活用されています。チケットの不正転売や替え玉受験などを防止できます。

万引き防止
店舗に設置されたカメラと顔認証システムを連携し、過去に万引きを起こした人物や怪しい人物を検知することで、万引きの抑止・発見が期待できます。
来訪者の探知と担当者への通知
オフィスや商業施設などで、来訪者を自動的に検知し、担当者に通知するシステムにも顔認証技術は活用されています。受付業務の効率化はもちろん、顧客満足度の向上にもつながります。

デバイスのロック解除
スマートフォンやPCなどのデバイスのロック解除に活用されています。パスワード入力の手間を省き、スムーズな利用を可能にします。
キャッシュレス決済
店舗での支払いに顔認証を活用することで、手ぶらで決済が可能になります。レジの混雑緩和にもつながります。

顔認証は導入しやすく高セキュリティな生体認証システム
顔認証システムは、利便性とセキュリティの高さから近年注目を集めています。社会全体のセキュリティ意識の高まりとAI技術の進化が背景にあり、従来のID・パスワード認証に比べて紛失・盗難・漏えいリスクを低減できます。
入退室管理ではスムーズな出入りと高いセキュリティを両立し、イベントや試験では厳格な本人確認による不正防止が可能です。店舗での万引き抑止やキャッシュレス決済など、活用場所も広がっています。
このように、顔認証システムはより安全で便利な社会を実現する、導入しやすく高セキュリティな生体認証システムといえるでしょう。