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3年連続「働きがいのある会社」に選出されたマネーフォワード 急拡大の中で目指す“自律成長型カルチャー”の組織作りとは

最終更新日:(記事の情報は現在から41日前のものです)
マネーフォワードグループ執行役員CHO 石原千亜希(いしはら ちあき)氏がBOXIL EXPOに登壇。3年連続で「働きがいのある会社」に選出されたマネーフォワードにおいて、どのような組織作りを進めているのかを話します。

マネーフォワードグループは、Great Place to Work® Institute Japanが発表した日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100において、
従業員1,000名以上の企業を対象とする大規模部門で、3年連続で10位以内に選出されました。

同社は上場した2017年から2023年までの間で売上高・社員数ともに10倍以上に拡大している、今最も勢いのある企業のうちの一社。

規模が拡大していく中で、一人ひとりの社員が成長意欲や貢献実感を高く持ち続けられるようにするのは企業として非常に難しいことですが、
マネーフォワード社員の働きがいは一体どのように醸成されているのでしょうか?

それはCHO(最高人事責任者)が推進する「自律成長型カルチャーの組織作り」に答えがありました。

※本記事は、マネーフォワードグループ執行役員 CHOの石原 千亜希(いしはら ちあき)氏が「BOXIL EXPO 人事・総務展 2024 秋」にて講演した内容をまとめています。

講演者: 石原 千亜希(いしはら ちあき)
株式会社マネーフォワードグループ執行役員 CHO
2012年に有限責任監査法人トーマツに入所し、2015年に会計士登録。2016年に当社に入社し、IPO準備等に携わる。上場後は経営企画部長・IR責任者として、海外公募増資、東証一部への市場変更、サステナビリティプロジェクトの立ち上げ等に従事。2021年に人事に主務を移し、同年よりPeople Forward本部 本部長として人事制度改定プロジェクト等を主導。2023年、CHOに就任。

マネーフォワードが大切にするTalent Forwardの概念

自律成長型カルチャーを作るための重要な概念としてマネーフォワードが掲げているのが“Talent Forward(タレントフォワード)”です。

マネーフォワードのMissionは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」。
Talent ForwardはそのMissionの実現や経営戦略を支えるための人事戦略の概念です。

Talent Forwardはさらに5つにブレイクダウンされます。

①安心して働ける環境・文化を創る

物理的な環境や制度だけではなく、様々なバックグラウンドや価値観をもつメンバー同士が<互いの違いを理解しながら、自分の意見を自由に言えるような環境を目指す。

②MVVC(Mission, Vision, Values, Culture)に共感する優秀で多様な人材を世界中から採用する

新たなアイデアや価値創造のためには、多様な視点と経験を持つメンバーが集うことが重要であると考える。優秀なだけではなく、より会社の価値観に共感してくれる仲間を集める。

③個人のポテンシャルを最大化できる仕組みを創る

メンバーの継続的な成長やチャレンジの後押しをするために独自の人事制度を整備。また、人事サーベイ結果から個々に合わせた支援を実施する。

④メンバー一人ひとりが自律的に成長する

一人ひとりが自分の成長にオーナーシップを持ち、役割に関係なくリーダーシップを発揮。

⑤個人の成長を組織成長に繋げる

メンバーの継続的な成長やチャレンジを組織の成長に繋げることで、経営戦略の達成や持続的な企業価値の向上を目指す。


今回のメインテーマとなっている自律成長型カルチャーを特に象徴しているのが、④の「メンバー一人ひとりが自律的に成長する」です。

④が他の4つと異なるポイントは主語が社員になっていること。
そもそも自律性は一人ひとりが既に持っているもので、会社が個人の成長を促すのではなく、自分が自分を成長させることが大事だというメッセージになっています。

③の「個人のポテンシャルを最大化できる仕組みを創る」については、より具体的な組織作りの手法として次項で紹介します。

“自律成長型カルチャーの組織”を作る実践的な手法

Talent Forwardの③、「個人のポテンシャルを最大化できる仕組みを創る」に基づき、
マネーフォワードではさまざまな人事施策を実践しています。

個人の成長に影響を与える3つの要素を7:2:1の比率で表した「ロミンガーの法則」はご存知でしょうか?

個人の成長に与える影響は「経験」が70%と最も比重が高く、次いで「フィードバック」が20%、「研修」が10%となっています。

マネーフォワードでは「経験」「フィードバック」「研修」のそれぞれに対して
「チャレンジを後押しする仕組み」「成長を促進するフィードバック」「リーダーシップ研修の充実」を制度として拡充させることで、個々が継続的に成長し長期的に活躍できる環境づくりを目指しています。

①「経験」の取り組み:チャレンジを後押しする仕組み

7:2:1のグラフの割合を見ると、社員が自らのチャレンジによって成功や失敗も含めて良い「経験」を積むことがまず成長には欠かせないことが分かります。

社員のチャレンジを後押しして経験を豊かにするために、マネーフォワードでは以下の施策を実施しています。

【Onnを使ったオンボーディング】
マネーフォワードでは「Onn(オン)」という外部ツールを使ってオンボーディングをしています。
新しく入社した社員に毎週アンケートを取り、入社前の期待とのギャップがないかをタイムリーに把握します。

成長意欲が高い優秀な人でも、やはり新しい環境では初めにつまずいてしまう場合もあります。そのため、早く現場に馴染んで良いアウトプットを出すためには入社後すぐのフォローがとても重要です。

ツールを活用するメリットはリアルタイムで状況が分かること。3ヶ月の試用期間が経過してから、初めて「入社したら思っていたのと違った」という声を聞くのでは対応が遅くなってしまいます。
面談、メール、チャットでは本人からマメに情報をキャッチするのが難しいため、ツールでの実施はおすすめです。

【独自の人事制度 MFグロースシステム】
マネーフォワードでは、「MFグロースシステム」という独自の人事制度を設計しています。職種と組織ごとにグレードを7段階で設定し、職種やキャリア志向(マネジメント・スペシャリスト)に応じたグレードの要件を全社公開することで評価基準とキャリアステップを明確にしています。

報酬は採用市場での水準を踏まえて定期的に改定。
2022/11期は給与水準の向上やハイパフォーマー向け賞与の導入、2024/11期は更に給与レンジと全体昇給率の上方改定を実施しました。

ユーザーの期待を超えるサービスを提供するために目標を少し高く設定し、それをチームで達成することで給与が上がり個人でも成長が実感できる制度になっています。

【MFチャレンジシステム】
MFチャレンジシステムとは手挙げ制の異動制度で、実施期間には100件ほどのポジションが公開されます。また、手挙げする前に上司に相談する必要はありません。
マネーフォワードでは特に新卒メンバーには3〜5年単位での大胆な異動・役割変更を推奨していて、本人のWill(今後やりたいことやキャリア志向)も尊重しながら、時には環境を変えることで個々の成長を後押しします。

②「フィードバック」の取り組み:成長を促進するフィードバック

マネーフォワードグループの社員はチームワークが良く、お互いを尊重する文化が根づいています。一方で優しいからこそ厳しいことを伝えるのが苦手だという社員もいます。
ですが、伝えるべきことは伝える必要があり、建設的なフィードバックは受け取る側の成長を促すためにも重要です。

そこで取り入れたのが上長との毎月の1on1。
ただ実施するだけでは意味がないので、上長と部下それぞれに毎月の振り返りとして以下の項目を記録してもらっています。

  • 今月の目標
  • 達成した点・課題点
  • 今月の自己評価
  • 上長からのGOOD
  • 上長からのMORE(こうすればもっと良くなるというアドバイス)

毎月振り返っておくことで、評価の時期になって自己評価と上長の評価の認識に大きなズレが生じることを防ぎます。また、定期的に良いフィードバックがもらえることで、部下の自己肯定感の醸成にもつながります。

③「研修」の取り組み:リーダーシップ研修の充実

マネーフォワードでは多くの研修を実施していますが、近年特に力を入れているのがLFP(リーダーシップフォワードプログラム)。
既にマネジメント職に就いていたりこれからリーダーになっていく人に向けた研修で、募集人数を大幅に超える応募があるほど人気のプログラムです。

外部講師を招いて実施する画一的な内容ではなく、マネーフォワードの経営陣がプログラム作成に関わり、経営メンバー自身らが実際にどのようなリーダーシップを発揮してきたのかを参加者に提示します。
そこから参加者は「自分らしいリーダーシップとは何か」「チームから求められるリーダー像はどのようなものか」を模索するきっかけになるのです。

このようにTalent Forwardの概念や7:2:1の法則に則った取り組みの実践が実を結び、
冒頭の通り、マネーフォワードは「働きがいのある会社」に3年連続で選出されました。

その中でも、ランキングの選出にあたり特に高い評価を得たのは
「経営・管理者層は適切に採用している」「仕事に行くことが楽しみである」「経営・管理者層は失敗を許容している」の3項目。

社員が自ら仕事を楽しみ、チャレンジすることが称賛される「自律成長型カルチャー」の風土がまさに反映された結果といえるかもしれません。

一人ひとりの社員と向き合い自律成長をサポートする体制や組織カルチャーが、マネーフォワードの急拡大を支える大きな柱となっているのではないでしょうか。

会社のMission, Visionに繋がる人事戦略を

この記事で紹介した施策は、マネーフォワードが目指すべき姿や価値観(Mission, Visionなど)に基づいて実施している人事戦略であり、あくまで一例です。

目指すべき姿は会社によって異なるため、必要な戦略もそれに応じたものを自分たちで考えていかなければなりません。

2023年から企業に義務付けられた人的資本の情報開示により、
「何の情報を開示するか」「開示する情報を社内でどのように集めていくか」という議論をしている企業も多いのではないでしょうか?

しかし本質的に重要なのは、目指すべき会社の姿と現実を理解して、そのためには何を変えるべきなのか、どのような施策や制度が必要であるかを考えることです。

目指すべき姿や、その過程としての取り組みを社内外に発信することで徐々に風土やカルチャーを醸成していく。

そのカルチャーが徐々に理解されていくと、一人ひとりの社員の行動もそれに伴って変わっていき、会社が目指すべき姿に近付いていく。
そのようなサイクルを生むことが重要だと石原さんは話します。

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