世界で出張消失、半数近くが「今後も回数減」- オンライン商談に勝機
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どうなる?これからの出張
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は猛威を振るい続け、日本でも感染者が増えています。国によっては、再びロックダウンとなった都市も現れました。
「Go To トラベル」のような感染拡大を防ぎつつ経済活動を回復させる支援策が展開されているものの、人の移動は今も制約が多い状況です。旅行業界を取り巻く環境は厳しく、ホテルの経営破綻や航空会社の撤退など、暗いニュースが流れてきます。
一方、世界中でワクチンの開発が急ピッチで進められていて、実用化が近づいているという明るいニュースもあります。ただ、誰もが安心して移動できるようになるのは、まだ先の話です。
気軽に旅行や出張ができなくりましたが、人々の移動に対する欲求は高まっているでしょうか。出張に対する考えは、COVID-19で変化したでしょうか。グローバル調査から世界各国の動向をみていきます。
半数近くが「出張回数減る」と回答
まず、オリバー・ワイマンが欧米各国と中国、オーストラリアで9月終わりから10月にかけて実施した、旅行を再び行うかどうかの意識調査「Anticipatig the Travel Recovery」から、出張に関する部分をみてみましょう。
COVID-19パンデミック以前から出張をしていた人に、出張回数が今後どうなると思うか質問したところ、43%が減ると回答しました。5月に行われた調査で減ると考えていた人の割合は27%で、16ポイント増えています。これに対し、出張回数は変わらないという回答は46%、増えるという回答は11%ありました。
減ると回答した人の挙げた根拠は、「健康/安全面の心配」(34%)、「パンデミックによる自粛中、ビデオ会議/リモートワークが役立った」(31%)、「出張コストを減らせる」(13%)が上位に並びました。とりわけ後者の2点は、COVID-19が落ち着いてからも変わらないと推測され、出張を伴うビジネスのあり方そのものが変わったといえそうです。
反対に、増えると答えた人は、「関係性を高め直す必要がある」(27%)、「経済活動が回復すると予想している」(17%)、「ビデオ会議だと仕事が進めにくい」(17%)という理由を述べています。
60%以上が今後半年「宿泊伴う出張ゼロ」
別のデータも確認します。米国のホテル業界団体、アメリカン・ホテル・アンド・ロッジング・アソシエイション(AHLA)の調査によると、出張に対する需要は多くありません。
企業などに勤務している人のうち、今後6カ月以内に出張する可能性があるとの回答は19%でした。そして、62%は宿泊をともなう出張の予定がまったくないそうです。
また、回答者全員のうち、3月以降に宿泊をともなう出張の経験者は8%にとどまっています。
日本は感染症への不安根強い
続いて、日本も対象に入っているコンカーの調査レポートをみてみましょう。
「年に3回以上出張に行く」という世界各国の人に「次に出張に行くとしたらどのような感情になりますか?」と尋ねたところ、全体の平均では「心配だ」との回答が39%でもっとも多く、「楽しみだ」の32%を上回りました。ただし、「不安を感じる」という回答も30%あります。
日本に限ると、「心配だ」(41%)と「不安を感じる」(38%)が上位となり、世界平均より出張に前向きでない人が多い結果でした。「楽しみだ」との回答は、17%しかありません。
また、「出張が再開した際、一番不安に感じることは何ですか?」という質問には、「自分が体調不良になること」(60%)、「家族にうつしてしまうこと」(56%)、「周囲の人が感染しているかどうか分からないこと」(47%)という回答が多く、COVID-19感染に対する不安感が強く表れました。
コロナ禍で大半が商談オンライン化
対面を避けるため、Web会議ツールなどを活用したオンライン商談が普及しました。ただし、エン・ジャパンの調査によると効率化やコスト削減を挙げる企業も多く、ビジネススタイルそのものが変化していることが伺えます。
オンライン商談の導入率は?
エン・ジャパンは、COVID-19パンデミックで人の移動が難しくなったことを受け、「オンライン商談」の実態調査を行いました。
それによると、オンライン商談を導入している企業の割合は全体の43%です。導入率は業種によって大きく異なり、「広告・出版・マスコミ関連」(88%)、「IT・情報処理・インターネット関連」(83%)が高く、「サービス関連」(42%)、「不動産・建設関連」(39%)、「流通・小売関連」(32%)、「その他業種」(25%)が平均を下回りました。
未導入の企業は、「そもそも業態として商談機会が少ない」(40%)、「対面でないと商材・サービスの案内が難しいため」(29%)、「機材・通信環境が整っていないため」(22%)という理由を挙げました。オンライン商談は、業務の形態とICT環境が導入のネックになっています。
オンライン商談を導入した時期は、やはり「2020年3月以降(新型コロナウイルス流行後)」が圧倒的に多い結果となりました。
もっとも多かった導入理由は、「新型コロナウイルス感染拡大を受けて」(77%)です。「遠隔地との商談を効率化するため」(58%)、「移動・出張等のコスト削減のため」(49%)、「顧客対応をスピーディーに行っていくため」(29%)、「営業人員の業務効率化を図るため」(21%)など、商談スタイルが変化しつつあります。
コミュニケーションの難しさが課題
導入済みの企業は、オンライン商談のメリットとして「新型コロナウイルス感染拡大に対応できる」(70%)、「移動・出張等のコスト削減ができる」(68%)という項目を挙げました。
導入していない企業の挙げた理由は、「通信トラブルのおそれ」(40%)というICT環境問題がもっとも多いものの、「コミュニケーションの難易度」(39%)と「商談相手との関係構築」(39%)がほぼ同じ割合あり、オンラインコミュニケーションの難しさが心配されています。
オンライン商談に特化したツールも人気
ビデオ会議やオンライン商談は普及し始めたばかりで、慣れていないためコミュニケーションが難しいのかもしれません。また、現行のツールやサービスはまだ汎用的な段階で、今後それぞれの業界や業務により適したものが次々登場するはずです。そうなれば、現在は導入を見送っている環境でも、違和感なくオンライン化できるでしょう。
COVID-19のようなパンデミック、自然災害など不測の事態に備えるため、BCP(事業継続計画)の観点からも、出張や商談のオンライン化は真剣に考えるべきテーマです。
事実、オンライン商談に対する注目度は高まっていて、今後さらに広がりを見せると予想されています。汎用のWeb会議ツールを流用するだけではなく、オンライン商談に特化したツールの導入を検討してはどうでしょうか。