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コロナでアプリ市場急拡大、2〜3年分を1年で - 国内ダウンロード1位はZoomと思いきや?

最終更新日:(記事の情報は現在から1412日前のものです)
COVID-19対策でステイホームが推奨され、結果的にスマートフォン用アプリ関連の売上高が過去最高を記録するなど、世界的に市場拡大しました。特に、ソーシャル、動画ストリーミング、フードデリバリー、ファイナンスといった分野が好調です。消費者は今後もスマートフォンを多用するので、アプリからの利便性をいかに高められるかが事業展開の鍵になります。

スマホアプリの売上高が急増

2020年は、良くも悪くも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに翻弄された1年でした。3密回避やステイホームといったCOVID-19対策で日常生活が変化し、テレワークや在宅勤務、オンライン会議の普及で働き方も大きく変わっています。その影響を受け、企業や学校ではデジタル化やオンライン化が急速に進み始めたようです。

さらに、消費や企業で行われるさまざまな活動がモバイル化しています。センサータワーが実施したスマートフォン用アプリの調査レポートによると、有料アプリ購入やアプリ内課金、サブスクリプション契約を合わせた総売上高が、全世界で1,110億ドル弱(約11兆5,396億円)の過去最高を記録しました。前年の852億ドル(約8兆8,574億円)に比べ30.2%もの増加です。

出典:センサータワー / Global Consumer Spending in Mobile Apps Reached a Record 111 Billion dollars in 2020,Up 30% from 2019

ゲームアプリに関係する売上高が多い状況はこれまでどおりなのですが、ビジネス、教育、エンターテインメントといったジャンルの成長が大きい1年だったそうです。

在宅勤務やオンライン授業でスマートフォンを活用する場面が増え、仕事や学習に役立つアプリへの依存が高まったのでしょう。さらに、外出せず自宅で快適に過ごそうとした人たちの消費意欲が、ゲームや映画、音楽などのアプリへ向かったようです。

2〜3年分の成長を1年で達成

スマートフォン用アプリに対する需要の増加は、ほかのデータでも裏付けられました。アプリ市場に関するデータプラットフォーム「App Annie Intelligence」を運営しているアップアニーの公表した「モバイル市場年鑑 2021」からは、コロナ禍で拡大したアプリ市場のより詳しい状況が読み取れます。

世界支出額は1,430億ドル、前年比+20%

アップアニーの調査によると、2020年のアプリに関する世界支出額は前年比20%増の1,430億ドル(約14兆8,677億円)です。

以前の予測では、これだけ成長するのに2年から3年かかるとされていたそうですが、COVID-19の影響なのか1年で達成してしまいました。また、新規ダウンロード回数は前年比7%増で過去最高の2,180億回を記録しています。

アプリを利用する時間も長くなっています。Androidアプリのみのデータですが、世界的パンデミック期における1人当たりの平均日次モバイル利用時間は4.2時間以上で、前年同期間から2割増えました。米国では、2020年上半期に1人当たり平均で1日に4時間アプリを使っていたのに対し、同様のテレビ視聴時間は3.7時間にとどまり、初めてモバイルがテレビを超えました。

こうしたデータから、アップアニーは「世界的に消費者の物理的欲求、購買行動がオンラインの場に移行」し、2020年が「モバイルへのタッチポイントが加速した一年」だったとしています。

アプリの平均消費時間 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

日本のダウンロード回数1位は?

日本の状況はどうでしょうか。支出額は約200億ドル(約2兆794億円)、ダウンロード回数は約26億回という規模です。そして、1人当たりの平均日次モバイル利用時間は3.7時間で、やはり2019年の3.3時間から増えています。

ゲーム以外で月間アクティブユーザー数(MAU)の多いアプリは、「LINE」「Twitter」「Instagram」というコミュニケーションに日常利用されるものが上位です。さらに、「Amazon」「楽天市場」「PayPay」「メルカリ」のような、通販やオークション、QRコード決済のアプリも台頭しています。アップアニーは、「消費行動のあり方自体が非接触化、オンライン化している」ことから、こうした傾向が今後も続くと予想しました。

スマホアプリランキング2020 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

興味深いデータは、ダウンロード回数ランキングです。2020年に日本でもっとも多くダウンロードされた非ゲームアプリは、厚生労働省が配信した「COCOA - 新型コロナウイルス接触確認アプリ」でした。利用者が急増したZoom(ZOOM Cloud Meetings)を上回る伸びは驚異的です。

そのほかには、動画関連の「Amazonプライム・ビデオ」「TikTok」、フードデリバリーの「Uber Eats」といったアプリがトップ10に入りました。

2020年スマホアプリダウンロードランキング 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

成長著しい4つのカテゴリ

アップアニーは、アプリのカテゴリ別でも分析をしています。なかでも成長著しいカテゴリとして、ソーシャル分野(SNS)、動画ストリーミング、フード&ドリンク(デリバリー)、ファイナンス(トレーディングアプリ)の4つを紹介します。

ソーシャルではTikTokがトップ

ソーシャル分野ではTikTokが目立ちます。調査対象16カ国中9カ国でMAU成長率1位を獲得しました。

1人当たりの月次消費時間が米国で65%増、英国で80%増となど、ほぼすべての調査対象アプリを上回る成長速度だったそうです。特に、ロシアでは前年比325%増という驚異的な伸びを記録しました。このペースが続くと、TikTokのアクティブユーザー数が2021年には12億人に達します。

日本では、TikTokの月次消費時間が11.4時間でSNSアプリでもっとも長く、Twitter(9.7時間)とLINE(8.9時間)を抜いて1位に躍り出ました。成長率も群を抜いています。

SNSの平均月間消費時間 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

動画ストリーミングが人気

モバイルデバイスからの動画ストリーミング利用時間が前年比40%以上伸び、2020年第3四半期に2,400億時間超のピークを迎えました。アップアニーは「消費者はテレビよりも、どこからでも視聴開始可能なモバイルを選択」したと分析しています。

動画ストリーミングアプリの消費時間 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

主要動画ストリーミングのアプリ別では、中国以外すべての国で1人当たり平均月間消費時間のトップとなった「YouTube」の強さが圧倒的です。もっとも長い韓国の利用時間は約38時間ありました。ちなみに、日本は21.4時間です。

動画ストリーミングアプリのユーザーあたり消費時間 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

ただし、ここでもTikTokが躍進しており、アップアニーは「動画ストリーミング戦争に参戦」と表現しました。

主要な動画ストリーミングアプリのユーザーがTikTokを使うようになっていて、TikTokとの重複利用が増えているのです。日本の場合、2019年第4四半期に「Abema」ユーザーの31%がTikTokを重複利用していました。その割合が、2020年第4四半期には38%まで上昇しています。

フードデリバリーの利用も増加

利用が伸びたカテゴリといえば、フード&ドリンク分野を抜かせません。

フードデリバリー用アプリやファストフード店舗アプリの週次セッション数が、2020年3月ころから世界的に上昇しました。2020年第2四半期の週次セッション数をみると、米国が前年比60%増、ロシアが同105%増、インドネシアが同80%増、アルゼンチンが同65%増、英国が同70%増といった具合です。

フードドリンクアプリセッション時間 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

日本では、フードデリバリーの「Uber Eats」が総セッション数の成長率トップです。

自宅で過ごす時間が増えたせいか2位に「COOKPAD」、4位に「クラシル」といったレシピアプリが入り、テイクアウト需要の高まりから「くら寿司 公式アプリ」が5位になりました。

モバイルから株式市場へ参加

もう1つ成長したカテゴリは、ファイナンス分野です。

ファイナンス関連アプリの消費時間は、2020年に世界平均で前年比45%増えました。モバイルから株式市場へ参加する割合は55%増加し、スマートフォンを使って日常的にトレーディングをするユーザーが多くなったのです。

特に消費時間の成長率が高かったのは、株取引アプリ「Robinhood」が人気の米国で、前年比135%増。これに、韓国(同120%増)、カナダ(同115%増)、メキシコ(同115%増)が続きます。日本は、世界平均をやや下回る同45%増でした。

トレーディングアプリの消費時間成長率 出典:アップアニー / モバイル市場年鑑 2021

今後もスマホアプリの躍進は続く

緊急事態宣言が延長され、店舗の営業時間短縮、イベントの開催制限、外出や移動の自粛など、ステイホーム主体の生活をまだしばらく行うことになります。

つまり、スマートフォン用アプリを躍進させた状況は2020年と変わりません。消費者は今後もスマートフォンを多用して、アプリを仕事や勉強に使い、映画や音楽のようなエンターテインメント、フードデリバリーのような楽しみもアプリ経由でアクセスするでしょう。

アプリからの利便性をいかに高められるかが今後の事業展開で鍵になります。

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