「カインズ」の小売業DXはなぜ成功したのか プロ経営者が描くデジタル戦略2つの肝【BOXIL EXPO】
本記事は、2021年9月に開催したオンライン展示会「BOXIL EXPO 第2回 財務・経理・総務・法務展」の基調講演「業界売上トップ『カインズ』の敏腕経営者が導く企業改革 - 持続的な成長を実現する要諦は -」をまとめたものです。
【登壇者プロフィール】
高家 正行 氏 株式会社カインズ代表取締役社長 CEO
1963年、東京都生まれ。1985年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社三井銀行(現:株式会社三井住友銀行)に入行。1999年にA.T.カーニー株式会社に入社。2004年に株式会社ミスミ(現:株式会社ミスミグループ本社)に入社し、2008年に同社代表取締役社長に就任、2013年まで務める。2016年に株式会社カインズの取締役に就任。取締役副社長を経て、2019年に代表取締役社長、2021年から現職。
辻 庸介 氏 株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEO
1976年大阪府生まれ。2001年に京都大学農学部を卒業後、ソニー株式会社に入社。2004年にマネックス証券株式会社に参画。2011年ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。2012年に株式会社マネーフォワードを設立し、2017年9月、東京証券取引所マザーズ市場に上場(2021年6月に東証一部へ市場変更)。2018年2月 「第4回日本ベンチャー大賞」にて審査委員会特別賞受賞。新経済連盟 幹事、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム エグゼクティブ・コミッティー、経済同友会 第1期ノミネートメンバー。
右肩上がりのホームセンター「カインズ」
1989年に創業したカインズは、ホームセンターとして消費者の生活を支える大手企業だ。多くのユーザーに認知され、利用されているカインズ。売り上げは創業以来ほぼ右肩上がりに伸びている。
そんなカインズが改革への大きな一歩を踏み出し、高家氏を代表取締役に迎えたのが2019年のこと。高家氏は、自身が代表となった2019年を「第三創業期」と位置づけ、企業変革に乗り出した。
カインズの快進撃は業界を超えて大きな話題となり、多くの経営者の興味・関心を引いている。業績は好調だったにもかかわらず、なぜ変化を求めたのか。そしてどのようにして会社に変容をもたらしたのか、また持続的成長を促すために何が必要なのか。高家氏が打ち出した戦略とその実際に、マネーフォワードの辻CEOが切り込んだ。
売上好調でも改革に着手
辻氏:はじめにカインズの現状について紹介していただいてもよろしいでしょうか。
高家氏:カインズは、流通グループの「ベイシアグループ」に所属している企業です。意外と知られていないのですが、同じグループにはワークマンがあります。実はワークマンとカインズはきょうだい会社なのです。グループ内にはスーパーやコンビニフランチャイジーもあります。
グループ全体の売上は約1兆円で、そのうちの半分弱をカインズが占めています。創業以来、一時売上が停滞した時期があったものの、ほぼ右肩上がりに売上を伸ばしており、直近では前年比110%の4,845億円を計上しました。
一方、市場全体をみると、ホームセンターの先行きはけっして明るいとはいえないのが現状です。
ホームセンター市場は頭打ち
高家氏:ホームセンター市場は、2005年の約4兆円をピークに15年ほど停滞しています。2020年はコロナ特需で一時的に伸びていますが、今後もそれが続くとは限りません。
市場が停滞している一方で、ホームセンターの店舗数は全国で増加傾向にあります。頭打ちの市場のなかで、増えないパイを奪い合っている状態なのです。
辻氏:市場全体が停滞している状態で持続的に成長するのは、大変難しいでしょう。
高家氏:そのようななかでも、カインズはオリジナル商品をドライバーに成功を収めていました。今では、国内外のデザイン賞を連続して数多く受賞するほど高い商品開発力を有しているんですね。
ただ、これだけで10年後、20年後も成長し続けるのは難しいです。そこで着手したのが、デジタルを切り口とした企業改革でした。
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