「ラインバランシング」とは?生産ラインの最適化・計算方法
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ラインバランシングとは
ラインバランシングとは、工場の生産ラインにおける作業ステーションに偏りが出ないように均等化する方法のことです。作業工程に偏りが出ると、負荷のかかる工程がボトルネックとなり、業務効率が悪くなります。
各作業ステーションのデータを分析し、均等なバランスに整えることでラインバランス効率が改善され、製造数の増加につながります。
ラインバランス効率の計算・分析方法
ラインバランス効率の計算や分析方法は次のとおりです。
- 必要な数値の準備方法
- ピッチタイムと目標サイクルタイムの計算手順
- ピッチダイアグラムの作成手順
- 問題点の発見と改善方法
それぞれ解説します。
必要な数値の準備方法
ラインバランス効率の計算に必要な数値は次の3つです。
- ライン稼働時間
- 必要生産数
- 良品率
ライン稼働時間は就業時間から稼働していない時間を引いた時間で求められます。必要生産数は需要を予測し、予定する生産数をそのまま採用します。また、良品率は、「良品数 ÷ 完成品数 × 100」で求められます。ここでの、「良品数」は基準を満たした製品数を、「完成品数」は生産した全体の製品数を指します。
職場でこのような数値を記録し、測定が完了したら次の手順に移行します。
ピッチタイムと目標サイクルタイムの計算手順
ピッチタイムとは、作業が開始して製品が完成し、ラインから送り出されるまでの時間間隔のことであり、ライン全体の生産リズムを示します。計測時には、通常、平均の生産間隔や標準的な時間をピッチタイムとして用います。ピッチタイムの計算式は次のとおりです。
ピッチタイム=1日の稼働時間÷1日の生産必要数
目標サイクルタイムとは、設定した生産量を時間内に達成するために必要な生産間隔のことです。生産が目標サイクルタイム以上に遅くなると、目標の生産数量を達成できなくなります。目標サイクルタイムは次の計算式で求められます。
目標サイクルタイム=(就業時間-不稼動時間)÷(必要生産数量÷良品率)
ピッチダイアグラムの作成手順
ピッチダイアグラムとは、ラインバランスの分析で使用されるグラフのことで、作業要員の削減とピッチタイムの短縮を目的としています。計算した目標サイクルタイムを一目でわかるように図に描画します。
縦軸に作業時間、縦軸に作業ステーションを棒グラフとして確認できるように並べましょう。次にピッチタイムと目標サイクルタイムを時間軸に記載すると完成です。
このように棒グラフで可視化することで、ラインバランスの分析が一目でできるようになります。
問題点の発見と改善方法
ピッチダイアグラムを作成することで、どの工程がボトルネックなのかが可視化されます。可視化された結果をもとに改善方法を模索します。
たとえば、工程2がボトルネックであった場合、人員を増やす、他の工程に一部業務を回すといった施策の提案が可能です。
このように、ボトルネックの原因を発見、可視化することで改善方法が提案しやすくなります。注意点は一か所のボトルネックを解消したら別のボトルネックが発生する可能性があることです。したがって、業務を効率化するために細かく分析することが重要です。
ラインバランシングの重要な目的
ラインバランシングを行う目的には生産性向上のための取り組みと労務費削減のための戦略があります。それぞれどのような取り組みなのか解説します。
生産性向上のための取り組み
ラインバランシングを行い、ラインバランスを均等化することで生産性の向上につながります。たとえば、必要のない業務の削減や、負荷のかかっている業務を別工程に組み込むことなどが挙げられます。
また、レイアウトの変更がボトルネックである場合は、レイアウトを変更することで荷物の運搬がスムーズになり、時間の創出が可能です。時間を創出できれば、他の業務を行ったり新商品の開発へ充てられます。
労務費削減のための戦略
ラインバランシングには労務費削減の目的があります。業務を効率化することで時間を削減できれば、空いた時間を利用して他の工程の作業を助けたり新しい業務を担当できたりします。また、人件費の削減につなげることも可能です。
さらに、運搬回数や検査回数の削減にもつながります。運搬回数や検査回数を減らすことでコストの削減にもつながるため、浮いたコストを設備投資や新規事業の立ち上げ、外注費といった他の目的に活用できるでしょう。
ラインバランシングのメリット
ラインバランシングのメリットは次のとおりです。
- リードタイムの短縮効果
- 生産性と品質の向上につながる
- 労務費率の削減と働き方改革の推進
それぞれ解説します。
リードタイムの短縮効果
ラインバランシングを行うことで、リードタイムの短縮効果が得られます。リードタイムが短くなることで過剰な在庫をかかえたり在庫管理のコスト増加を防いだりが可能です。また、作業効率がよくなるため、時間的コストの削減もできます。
さらに、需要変動に対して対応しやすくなるのもメリットです。生産性のない業務を削減し、手の空いた業務員を他の業務に割り当てることで、生産性の向上が期待できます。
リードタイムが短縮することで、素早く顧客に製品を提供できるようになるため、顧客満足度の向上につながる点もメリットです。
生産性と品質の向上につながる
ラインバランシングは行うことで、効率的な生産が可能になるため、少ない時間で今までよりも大きな付加価値を与えられるようになります。
たとえば、効率の悪い設備を撤去し、空いたスペースの有効活用が可能です。また、空いたスペースを導線として利用すればスムーズな荷物の運搬につながるでしょう。
また、生産性が向上し、時間を創出できれば新しい技術を習得する時間に当てたり商品開発の時間に当てたりできます。既存の商品であれば品質チェックのために時間を多く割けるようになるため、品質の向上ができるでしょう。
労務費率の削減と働き方改革の推進
ラインバランシングを行い、業務を効率化することで、労務費率の削減ができたり働き方改革の推進ができたりするようになります。
たとえば、業務の効率化によって今までよりも時間を短縮できれば少ない人員で業務を回せるようになり、人員の削減が可能です。削減した人員は他の業務や工程に時間を回せるようになり、人的リソースの有効活用ができます。
また、労働時間の短縮が可能になれば長時間の残業が必要なくなります。したがって、従業員のワークライフバランスを整えられ、働き方改革の推進につながるでしょう。
バランス効率を改善する具体的な方法
バランス効率を改善するには作業者を適切に配置すること、作業プロセスの最適化をすることの2つです。それぞれ詳しい方法を解説するとともに、効果についても解説します。
作業者の適切な配置方法
作業者の適切な配置をすることでバランス効率は改善されます。具体的には作成したピッチダイアグラムを参考に作業時間と人員を確認します。
作用時間と人員を確認することで効率の悪い工程が判明するため、人員のバランスを整えるといいでしょう。人員を再配置する際は特殊技能を持つ熟練者を配置するのが効果的です。熟練者を配置することで、人数を変えずに作業効率を上げられます。
また、人数を増やすのも効果的です。ボトルネックの工程を分割し、人数を割くことで作業時間を短縮でき、バランス効率が改善されます。
このように、人員を再配置することでボトルネックが解消され、作業時間も短縮できます。
作業プロセスの最適化手法
作業プロセスを最適化することでもバランス効率は改善されます。具体的な手法は次のとおりです。
- ボトルネック工程の一部を他の工程に分配する
- 工程の一部をなくす
- 質の高い設備を導入する
たとえばA、Bという工程があり、Bがボトルネック工程だった場合、AとBの工程を分配してA、B、Cの3つに分けて再配置します。このような手法を取ることで特定の工程にかかっていた負荷の分散が可能です。
または、質の高い設備を導入することで業務効率を改善できます。
生産性向上には生産管理システムの導入がおすすめ
生産性を向上させるための効果的な方法のひとつが生産管理システムを導入することです。生産管理システムを導入することで、生産にかかわるさまざまな業務を一元管理できます。
生産管理システムを導入するメリットは次のとおりです。
- コスト削減
- リードタイムの短縮
- データの可視化
- 俗人化の解消
生産管理システムは受注から納品まで生産にかかわるすべての業務をカバーしてくれます。各工程の情報を一元管理することで、ボトルネック工程の把握や改善が迅速になります。
生産性を向上したい場合は生産管理システムの導入がおすすめです。
ラインバランシング最適な生産管理を実現する
生産ラインを最適化し、業務効率を高めるにはラインバランシングが重要です。ラインバランシングが不足して作業に偏りが生じると、ボトルネックが発生し、業務効率が低下します。
ラインバランシングを実施することで、リードタイム短縮、生産性と品質の向上、労務費削減、働き方改革の推進といった効果が期待できます。作業者の適切な配置や作業プロセスの最適化により、生産性が向上し、業務効率が改善します。
また、生産管理システムを活用することで工程の可視化が進み、ラインバランシングの実施が可能になります。生産計画や人員配置の一元管理も実現します。
システムを選ぶ際には、各システムを比較し、気になるものの資料をダウンロードして、自社に適したものを検討しましょう。