棚卸差異とは?原因と対策、発生による悪影響

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棚卸差異とは
棚卸差異とは、実際に商品を数えて把握した在庫数(実在庫)と、帳簿に記載されている在庫数(帳簿在庫)との間に生じる差のことです。
この差異が発生する原因は、商品の入出庫や保管、棚卸作業におけるミス、在庫管理システムへの入力ミスなど、さまざまです。
棚卸差異には、実在庫が帳簿在庫よりも多い棚卸差益と、実在庫が帳簿在庫よりも少ない棚卸差損の2種類があります。
棚卸差益とは
棚卸差益は、一見すると在庫が増えているようで、企業にとって良いことのように思えるかもしれません。しかし、実際には帳簿上の在庫よりも多くの商品が倉庫に存在している状態であり、これは在庫管理が適切に行われていないことを示しています。
棚卸差益が発生している状態では、本来必要のない在庫を抱えているため、保管コストや機会損失が発生するでしょう。在庫の劣化や陳腐化のリスクも高まります。
棚卸差損とは
棚卸差損は、帳簿上では存在するはずの在庫が実際には不足している状態です。これは、盗難や紛失、破損などが発生している可能性を示唆しており、企業にとって大きな損失となるでしょう。
棚卸差損が発生すると、顧客からの注文に対応できない、生産計画に支障をきたすなど、業務効率の低下を招きかねません。また、原因究明のための調査や再発防止策の実施など、余分なコストや時間を費やすことにもなります。
棚卸差異が発生する原因
棚卸差異が発生する原因は、大きく分けて次の5つに分類できます。
入庫時のミス
入荷した商品の数量や品目を誤って検収してしまう、納品書と実際の入荷数が一致しないなど、入庫時のミスは棚卸差異の原因となります。特に、大量の商品を入荷する際には、ミスが発生しやすいため注意が必要です。
出庫時のミス
出荷する商品の数量や品目を誤ってしまう、ピッキングミス、梱包ミスなど、出庫時にもミスは発生します。出荷指示書と異なる商品を出荷してしまう、数量を間違えて出荷してしまうなど、さまざまなミスが考えられます。
保管時のミス
保管場所の誤り、商品の紛失や破損、盗難など、保管中のミスも棚卸差異の原因です。倉庫内が整理整頓されていない、保管場所が明確に定められていないなど、在庫管理がずさんな場合、保管中のミスが発生しやすくなります。
また、温度や湿度管理が適切に行われていないと、商品の劣化や変質を招き、棚卸差異につながる可能性があります。
棚卸作業時のミス
棚卸作業は人手で行うため、ミスの可能性をゼロにできません。商品の数え間違い、計量ミス、記録ミスなど、さまざまなミスが考えられます。
また、棚卸作業に不慣れな担当者が作業を行う場合、ミス発生のリスクは高まるでしょう。棚卸作業の時間が限られている場合、正確性を欠いてしまう可能性もあります。
在庫管理システムの入力ミス
在庫管理システムに情報を入力する際、数量や品目を誤って入力してしまう、入力漏れが発生してしまうなど、人為的なミスは避けられません。
また、システムの操作方法がわかりづらい、システムエラーが発生してしまうなど、システム側の問題によって入力ミスが発生する可能性もあります。
棚卸差異が及ぼす悪影響
棚卸差異は、企業の経営にさまざまな悪影響を及ぼします。具体的には、財務面、業務効率面、顧客満足度面など、多岐にわたる影響が考えられます。
財務面への影響
棚卸差異は、企業の財務面に大きな影響を及ぼします。棚卸差損が発生した場合、帳簿上よりも実際の在庫が少ない状態となるため、損失として計上され、利益が減少します。これは、キャッシュフローの悪化や資金繰りの悪化につながりかねません。
棚卸差益が発生した場合でも、実際には在庫管理が適切に行われていない状態であり、過剰な在庫を抱えている可能性があります。これは保管コストの増加や、在庫の陳腐化による損失につながりかねません。
棚卸差異は、決算書の信頼性を低下させる可能性もあります。棚卸差異が発生すると、決算書に記載されている在庫資産の金額が正確ではなくなり、企業の財務状況を正しく反映できなくなるでしょう。
業務効率面への影響
棚卸差異は、業務効率の低下にもつながります。棚卸差異が発生した場合、その原因を究明するための調査や、不足分の補充、過剰分の処理など、余計な作業が発生します。これは、従業員の負担を増やし、本来の業務に支障をきたしかねません。
棚卸差損が発生した場合、必要な部品や材料が不足し、生産計画の遅延や機械の稼働率低下を招く可能性もあります。
棚卸差異の発生は、在庫管理システムの見直しや棚卸作業の改善など、業務プロセスの改善を余儀なくされる場合があり、時間とコストのロスにつながります。
顧客満足度への影響
棚卸差異は、顧客満足度の低下にもつながります。棚卸差損が発生した場合、顧客からの注文に対応できず、納期の遅れや商品の欠品が発生するかもしれません。これは、顧客の不満や不信感を招き、顧客離れにつながる恐れがあります。
棚卸差異の発生は、企業の信頼性低下にもつながります。企業は顧客に対して、常に正確な在庫情報を提供し、安定した商品供給を行う責任があります。棚卸差異が発生すると、この責任を果たせなくなり、企業の信頼性を損ないかねません。
棚卸差異の対策
棚卸差異を最小限に抑え、正確な在庫管理を実現するためには、日々の業務における対策と、システムを活用した対策を組み合わせることが重要です。具体的には、次のような対策が考えられます。
業務のルール化
棚卸差異を減らすためにはまず、入庫、出庫、保管、棚卸といった各業務プロセスにおけるルールを明確化し、標準化しましょう。具体的には、作業手順書を作成し、それぞれの作業における手順、注意点、責任者などを明確に定めます。
また、各業務の責任者・担当者を明確化することで、責任の所在を明確にし、ミスが発生した場合の原因究明が容易になるでしょう。
定期的なチェック体制を構築することで、ルールが遵守されているか、ミスが発生していないかを継続的に確認し、早期に問題を発見できるようになります。
棚卸の自動化
棚卸作業を自動化することで、人為的なミスを大幅に削減し、棚卸差異の発生を抑制できます。棚卸の自動化には、バーコードリーダーやRFIDタグなどの技術が活用されます。
バーコードリーダーは、商品に貼付されたバーコードを読み取ることで、商品情報や数量を自動的に認識できるツールです。RFIDタグは電波を用いて商品情報を非接触で読み取るため、より効率的な棚卸作業が可能です。
これらのツールを在庫管理システムと連携させることで、棚卸作業の効率化だけでなく、リアルタイムな在庫状況の把握にも役立ちます。
在庫管理システムの導入
在庫管理システムを導入することで、棚卸差異の発生を抑制し、在庫管理業務を効率化できます。在庫管理システムは、商品の入庫、出庫、在庫状況などを一元管理し、リアルタイムな在庫状況を把握できるツールです。
発注、入荷、出荷といった業務を自動化することで、人的ミスの防止や業務効率の向上が可能です。また、在庫管理システムは、過去の販売データや需要予測などを分析し、在庫の最適化を支援する機能も備えています。
これにより、過剰な在庫を抱えるリスクを減らし、在庫切れを防げます。
アウトソーシングの活用
棚卸業務を専門業者にアウトソーシングすることで、棚卸差異の発生リスクを低減できます。専門業者は、豊富な経験とノウハウを持つため、正確かつ効率的な棚卸作業が可能です。
また、自社で棚卸作業を行う場合に比べて、人件費や教育コストを削減できるでしょう。アウトソーシングによって自社の従業員はコア業務に集中でき、業務効率の向上が期待できます。
棚卸差異対策の鍵は、日々の業務とシステム活用にあり
棚卸差異は、企業の財務状況、業務効率、顧客満足度など、さまざまな面に悪影響を及ぼす可能性があります。棚卸差損は直接的な損失や機会損失につながり、棚卸差益は過剰な在庫や管理コストの増加を招きます。
いずれの場合も、企業の経営に悪影響を及ぼすことは間違いありません。
棚卸差異を最小限に抑えるためには、日々の業務における正確な在庫管理と、在庫管理システムの活用が重要です。
業務のルール化、棚卸の自動化、在庫管理システムの導入、アウトソーシングの活用など、さまざまな対策を講じることで、棚卸差異の発生を抑制し、正確な在庫管理を実現できます。
