年末調整とは?わかりやすく解説 - 対象条件・期間など確認必須
年末が近づくと、どこからともなく耳にする「年末調整」。書類を書いて総務に提出すると計算にもとづいてお金が戻ってくる仕組みです。
そもそも、皆さんは「年末調整」の意味を理解していますか?この記事では、意外と知らない「年末調整」についてわかりやすく解説します。年末調整済みの人でも確定申告が必要な場合もあるので、具体的なケースについても紹介します。
年末調整を効率化してほしいと感じている方は、担当者に給与計算システムへの置き換えをお願いするとよいでしょう。紙やExcelでのやりとりからオンライン対応へ置き換えられます。
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年末調整とは
年末調整とは、毎月の給料から所得税として引かれている分を、年末にまとめて調整することです。1年間の所得合計に応じて、所得税も変わるため所得が確定する年末に過不足分の精算が行われます。
年末調整には、各個人の生活事情に応じた所得税の控除が受けられるので、控除の対象を証明するための書類を会社に提出します。年末調整時には下記2種類の書類提出が必要です。
(1)「令和2年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
(2)「令和元年分 給与所得者保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」
※提出する年が令和元年の場合、(1)の申告書は次の年の令和2年度分を申告し、(2)については同年度分を提出します。つまり令和元年度分の(1)の申告書は前年度、平成31年度の年末調整の時期に提出します。
年末調整は所得税を確定し、徴収しすぎた税金を返還する
給与明細を見ると「源泉徴収」といって天引きされています。これは、給与に応じて毎月一定の所得税を、を会社があらかじめ納税してくれているのです。
しかし、実際の所得税の計算は、従業員一人ひとりの状況に合わせて計算方法が異なります。そのため、会社による源泉徴収はあくまで概算に過ぎません。多くの従業員は「税金を払いすぎている」状態にあります。
そこで「年末調整」を行い、個々の納税額を確定させ、払いすぎていた税金を返金する手続きが取られています。
年末調整の対象者
まず、原則として在籍中の社員全員が年末調整の対象となります。
年末調整の対象にならない人は、次のどちらかに該当する場合に限られます。
- 年間の給与総額が2000万円を超える人
- 2か所以上から給与を受けていて、扶養控除等(異動)申告書を提出していない人
「確定申告する予定なので年末調整は必要ありません」と申し出てくる社員がいても、上記に当てはまらない場合は、会社で年末調整を行う義務があるため注意しましょう。
また、退職する社員であっても12月に支給する給与がある場合は、原則的に年末調整の対象となります。
年末調整をしていないことが発覚すると、年末調整の再実施や修正申告などの業務が発生するので、必ず対象者全員の年末調整を行いましょう。
産育休中の年末調整はどうする?
産休や育休などで長期のお休みに入っている社員も年末調整は必要です。収入が0円であれば、0円記載で申告の必要があります。この場合、所得税の課税対象にならないので生命保険料のような控除証明書を提出してもらう必要はありません。
注意したいのは、収入が若干ある場合です。控除証明書の提出を求めるボーダーラインについて正しい認識をもっておきましょう。
所得税は、給与収入が103万円を超えるか否かが課税・非課税の境目です。しかし、住民税は所得税と控除額の算出が異なるので98万円を超えるか否かが課税・非課税の境目になります。そのため、給与収入が98万円を超える場合には控除証明書を提出してもらうとよいでしょう。
なお、産育休中の社員に関わらず、1年の途中に入社し年収が低い社員も考え方は同様です。
「年末」に行う理由
所得税は、毎年1/1から12/31までの所得額を基本にして計算します。そのため、年末にようやく所得が確定できるようになるのです。
所得から「控除」されるもの
一般的なサラリーマンの場合、年末調整のときは次の控除が適用されます。会社から関連書類の提出を求められたら、すぐに対応してください。
家族状況に関する控除
下記については、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入することで、年末調整を行います。
- 配偶者控除(年間所得が48万円以下の配偶者がいる場合)
- 配偶者特別控除(年間所得が48万円〜123万円未満の配偶者がいる場合)
- 扶養控除(子ども、両親など、扶養している家族がいる場合)
- 障害者控除(本人、配偶者、扶養親族が障害者の場合)
保険料に関する控除
給与で天引きされている社会保険料以外に支払った保険料がある場合、それも控除の対象です。
下記については、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」に記入することで、年末調整を行います。保険会社や役所から送付されている「控除証明書」も添付して提出します。
- 生命保険料
- 地震保険料
- 社会保険料(天引き以外で、追納を行った保険料がある場合や、家族が国民健康保険に加入していて、それを支払った場合)
- 小規模共済(役員で、個人で加入している場合)
- 確定拠出年金(個人で加入している場合)
住宅ローンに関する控除
住宅ローン2年目以降の場合は、金融機関・税務署から郵送されてきた控除書類も提出します。1年目は自身で確定申告をする必要があります。2年目以降は年末調整にて対応可能です。
基本的には「控除」として所得額からマイナスするため、納めすぎていた税金が返ってきます(これを「還付」といいます)。
しかし、計算違いにより、源泉徴収額が少なく追加の納税がある可能性もあるでしょう。このような場合は、給与から天引きで支払われます。
※万一、控除漏れが合った場合は、年末調整後にもう一度自身で確定申告することで、追加で還付を受けられます。
年末調整済みでも確定申告が必要な場合
サラリーマンは、年末調整があるため個人で確定申告をする必要はありません。しかし、下記に該当する人は、年末調整されていたとしても確定申告をしなければなりません。
(確定申告は、翌年の2/15〜3/15に税務署で行います。郵送のような他の対応も可能)
多くの医療費がかかった人
1/1〜12/31の期間で、自分、本人、配偶者のためにかかった医療費から保険金で賄われた部分を引いた額が「10万円」を超えた場合、超えた額の控除を受けられます。また平成29年1月からは、ドラックストアで医薬品を購入した場合や予防接種・健康診査を行った場合、12,000円を超える部分(88,000円を限度)の控除を受けられるので、頭に入れておきましょう。
寄付金を支払った人
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄付をした場合、2,000円を超える部分の控除が受けられます。また、「ふるさと納税」についても寄付金控除の対象ですが、源泉徴収をされている人の場合は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を使うことで、確定申告は不要です。
住宅ローン1年目の人
住宅ローン1年目の場合は、個人で確定申告が必要です。
2年目以降は、年末調整で対応できます。
災害や盗難にあった人
災害や、盗難によって資産の損害を受けた場合は、一定の所得控除を受けられます。これを「雑損控除」と言います。損失が大きい場合は、翌年以降に繰越も可能です。該当する場合は、税務署に相談されてみてください。
その他の所得がある場合
不動産収入や、副業での事業所得がある場合は、年末調整されていても確定申告を行いましょう。収入額に応じて追加で納税が必要になる場合があります。
年末調整の際に押さえておくべき用語
年末調整を正しく理解するために、次の用語を覚えておきましょう。
(1)特定扶養親族
この点も、平成30年の申告書から様式が少し変わったので、社員からの問い合わせが増えたり、チェック漏れが起こりやすかったりするかもしれません。
特定扶養親族とは、控除対象扶養家族の中で、年末時点で19歳以上23歳未満の家族を指します。すでに社会に出て自己の収入で生計を維持している場合は対象になりません。
一般的には、大学・専門学校・短大などに進学した子どもが対象として考えられますが、学生であってもアルバイトやインターンの収入が年103万円を超える場合は、扶養親族に該当しませんので注意してください。
(2)寡婦、特別の寡婦
寡婦の定義については、知っておくと心強いでしょう。
まず、夫と死別あるいは離別してひとりでお子さんを養っている女性社員は寡婦に該当します。中でも年間の給与収入が6,888,889円以下の女性社員は、特別の寡婦に該当します。
ここでさらに覚えておいてほしいのが、シングルマザー以外にも寡婦の対象になる方はいることです。一般的なイメージとして、子どもがいる人のみが受けられるとイメージされがちですが、そうではありません。
考えられる状況は2つです。
・1 夫と死別していて年間の給与収入が6,888,889円以下の女性社員 → 寡婦
・2 夫と死別あるいは離別して父母のような扶養親族があり、給与収入が6,888,889円以下の女性社員 → 特別の寡婦
シングルファーザーの社員がいる場合は寡夫の要件も別に存在するので、要件に該当するかよく確認してみてください。
年末調整のスケジュール
年末調整は、企業によっても異なりますが、10月下旬から11月頃にスタートし、1月下旬までかけて行うのが一般的です。
まずは申告書を配布し、従業員に必要事項に記入してもらったうえで、「保険料控除証明書」といった年末調整に必要な証明書類を添付してもらい回収します。書類の回収は11月下旬ごろからはじまることが多いです。控除証明書は、10月ごろから自宅に届きはじめるのが一般的のため、あらかじめ書類の提出を周知して、書類をなくさないように保管してもらうようにしましょう。
書類の回収後は、記入内容をチェックし年末調整の計算手続きに入ります。書類のチェックには時間がかかる場合もあるため、年末調整をスムーズに進めるために提出の期日を守るようしっかり周知しておきましょう。
年末調整をしなかった場合
年末調整は、所得税法で定められた雇用主の義務となります。
そのため、年末調整を行わず従業員から正しい税額を徴収しなかった場合は、所得税法の違反と見なされ、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」といった罰則があります。
年末調整をしない場合でも、「年末調整で必要な申告書を提出しない」といった従業員側の理由によるものあれば、罰則はありません。しかし、年末調整を行わない場合は、従業員が自身で税額計算を行い確定申告する必要があり、手間がかかります。そのため、期限内に必要書類を提出してもらうよう働きかけるようにしましょう。
年末調整を理解して払いすぎた税金を取り戻そう
「確定申告は難しそう」と思われるかもしれませんが、税務署に行けば相談に乗ってもらえますし確定申告書作成ソフトを使えば、簡単に対応できるので、安心してください。
次の記事では低コストで導入できるクラウド型の給与計算ソフトを比較、紹介しているのでぜひ御覧ください。
年末調整の基本的な計算方法
年末調整の基本的な計算方法は以上のとおりです。源泉徴収された金額は給与明細に書かれているので心配する必要はありません。
問題になるのは、実際の控除を含めた税額の算出方法についてです。所得に対する控除は「総収入」「配偶者の有無」「扶養家族の有無」「保険料」「住宅ローン」などで変わってきます。
つまり、一人ひとりの事情に応じてまったく違う金額になるのです。年末調整がなければ正しい所得税を把握できないでしょう。また、上記の計算の結果「差引額」がマイナスなら超過となり還付金が戻ります。「差引額」がプラスなら不足額となり支払いが必要です。
課税対象となる所得金額の計算
年末調整で実質的に算出しなければいけない金額は「年調年税額」です。これは課税対象となる所得金額である「課税給与所得金額」を基本に算出します。
「給与所得控除」は給与の額に合わせて引かれる金額であり、これは「給与所得控除後の金額の算出表」に書いてあるのでそれを見るだけです。所得控除は「扶養控除」「配偶者控除」「保険料控除」などを合わせた控除額で、これは給与から引く形で控除が入ります。控除の要件に当てはまるかどうかを考えるだけなので、さほど難しくない計算です。
年調年税額・源泉徴収、比較する税額
最終的に算出するべき「年調年税額」の計算です。こう見ると少しややこしいかもしれません。
とはいえ、「税率」と「課税給与所得に対する控除」は課税給与所得によって決まる数字で、これも計算の際には表があるためとくに意識する必要はないでしょう。
「税額控除」は「住宅ローン控除」のように、ここまでに算出した税額から直接引く形の控除となります。復興特別所得税は2.1%を最終的に所得税に乗せる、東日本大震災に合わせて作られた所得税です。これで必要な金額が出たので、最初の計算に当てはめてみましょう。差引額が計算できます。
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また、マイナンバーと年末調整に関してや確定申告に関する記事も紹介しているのでそちらもぜひ参照ください。
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