監視制御システム(SCADA)とは?進化する重要インフラの現場
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監視制御システム(SCADA)とは
生産現場でのFA(Factory Automation)や、設備のプロセス・オートメーション、電気、ガス、石油などの重要インフラの供給現場を中心に、現代では生産・供給工程のほとんどが機械化され、自動化されるようになっています。
その工程で、ポンプ、ゲート、バルブなどの設備が正しく動作しているか、水位や水温、ゲートやバルブ開度などの計測データを収集し、監視・制御を行うのが監視制御システムであり、「SCADA(スキャダ)」と呼ばれています。
SCADAの役割
実際に水位や水温などを計測して制御するのは、センサーにつながれた遠方監視制御装置(RTU)であり、ゲートやバルブ開度の調節を行うのは、アクチュエーターにつながれたプログラマブルロジックコントローラー(PLC)です。
SCADAはこれらを監視し、必要に応じて設定を変更するなどを行うことにより、設備全体を管理する役割を担っているのです。
このためSCADAは、各機器と通信/ネットワークを結ぶことを前提に、コンピューターとソフトウェアで構築されるのが基本になります。
分散制御システム(DCS)とは
汎用のコンピューターやソフトウェアを活用し、コスト面で有利なSCADAが登場する以前は、設備の監視・制御に分散制御システム(DCS)が主に使われていました。
信頼性や安定性が重視される設備監視・制御を行うため、コストのかかる専用のハードウェアで構成されることが多いDCSですが、設備の監視・制御によって管理を行うという意味ではSCADAと同様のものだといえるでしょう。
SCADAとDCSの違い
それではコスト面以外で、SCADAとDCSにはどのような違いがあるのでしょうか。
SCADAが設備全体のプロセス管理と制御を集中的に行うのに対し、DCSや設備を構成する機器ごとに設置され、ネットワークを構成することによって管理と制御を行うことにあります。
つまり、一括管理を行うSCADAに対し、お互いがお互いを監視しつつ管理を行うDCSということもできるでしょう。
監視制御システム(SCADA)の構成
上述したように、SCADAは「コンピューターとリモートI/Oユニットを組み合わせ、データ収集を行うシステム」が本来の意味であり、それ単体ではアクチュエーターを制御する機能を持ちません。
このため、複数の機器を組み合わせてシステム構築をする必要がありますが、コンピューターやネットワークの進化により、近年では以下の要素すべてを含め、SCADAとされることが多くなっているようです。
SCADA
複数センサーからの設備情報を収集・記録し、処理することによって、設定された値に応じた制御を行う、ハードウェア/ソフトウェアで構成されるコンピューターシステムです。
ログデータを記録してレポートとして出力するため、データベースに接続される場合が多くなっていますが、簡易的なシステムの場合、コンピューターのHDDにログデータを記録、必要に応じてCSV形式で出力することも可能です。
近年では、柔軟性の高い汎用コンピューターを、LinuxやWindowsなどの汎用OSで活用することが多くなっています。
HMI
HMI(Human Machine Interface)は、SCADAによって処理されたデータをグラフィカルに表示し、オペレーターが監視したり制御したりできるようにするユーザーインターフェースであり、設備に応じたカスタマイズが施されるのが通常です。
中央監視室などに設置されるほか、設備内の各所で稼働状況が確認できるよう複数設置されたり、インターネットを介して外部から確認できるようにしたりすることも可能です。
また、設定値を超えた不正データが確認された場合、警報機などにシグナルを送って注意を促すという役割も担っています。
遠方監視制御装置(RTU)
遠方監視制御装置であるRTU(Remote Terminal Unit)は、ゲートやバルブなど、実際の設備装置に接続され、センサーから得た信号をデジタル変換してSCADAやPLCに送ります。
それとは反対に、SCADAからのデジタル信号をアナログの電気信号に変換してアクチュエーターを動作させる場合もあり、単体で使用されることもあります。
プログラマブルロジックコントローラー(PLC)
Programmable Logic Controllerの略称であるPLCは、製造や産業の現場で繰り返し動作となる、シーケンス制御を行うことを専用としたマイクロコンピューターです。
動作としてはRTU同様、計測されたデータをデジタル変換し、設定値に応じてアクチュエーターを制御することになりますが、近年ではSCADAと組み合わせてシステム構築されることが多くなっています。
通信基盤
SCADAを構成するためには、上述した機器同士をネットワークで接続する必要があります。
DCSが主流であった時代では、各機器同士の接続とネットワークにはシリアル伝送が使用され、プロトコルも専用のものである場合がほとんどでした。
しかし、ネットワーク技術の進化した現在では、汎用性が高く高速なEthernetネットワークが活用されるようになり、遠隔地と接続する際、セキュリティ面を考慮した専用線やVPNが使用されることが多くなっています。
SCADA構築のパッケージソフト「SpecView」
生産現場や設備を監視・制御するSCADAでは、汎用のコンピューターやOSが活用され、コスト面を考慮した運用が目指されているといえますが、その根幹をなすソフトウェアも専用開発のものだけでなく、パッケージ版でも提供されています。
SpecViewはそうしたパッケージのひとつであり、Windowsで動作する柔軟性の高さから、Hneywellなどのアメリカ大手製造業も採用しているソフトウェアです。
その内容を簡単に紹介してみましょう。
通信とネットワーク
上述したように、SCADAでは各機器間で通信を行うためにネットワークを構築する必要があります。
SpecViewの場合、接続された機器にコマンドを送り、帰ってきたコマンドに応じて自動検出で接続が確立できるよう、製品のプロファイルがあらかじめ保存されています。
これにはシリアル機器やEthernet機器を含む、多彩なものが用意されており、複雑な設定をすることなくネットワーク構築を行うことが可能です。
データ収集
各機器間でのネットワークが確立されると、下位デバイスであるRTUやPLCなどによって取得されたデータを収集することができるようになり、これをタグとして保存可能です。
取得されたタグが設定値を超えると、上位デバイスであるアラームなどに送られ、警報として活用できます。
グラフィック画面
取得したタグを元に、それぞれの設備の様子をわかりやすく表示するよう、アニメーションを利用したグラフィック画面を作成することができます。
さらにパラメーターの変更などの入力を受け付け、タグを変更することによって、RTUやPLCなどの下位デバイスへの信号書込みを指示することができるようになります。
アラーム
上位デバイスであるアラームへ、どのような値で信号を送るかを設定できます。
グラフィック画面上にアラームを表示させ、その履歴を表示、保存させるようにしていくのが一般的でしょう。
ロギング
タグの保存は通常のデータベースを利用することも、コンピューターのHDDを利用することも可能です。
こうしたタグの保存を目的に、SCADAからログデータを出力することをロギングといい、CSVなどのテキストデータで出力することができます。
レポート
ログデータを日報、月報、年報などの形式で集計し、レポート画面表示を行う機能です。
これを元にした帳票作成や分析が手軽に行えます。
SCADAの運用とアップグレード例
生産現場や重要インフラ設備で利用されることがほとんどであるSCADAですが、システムが問題なく動作している間はアップグレードやリプレースが検討されることは少なく、むしろダウンタイムによる損失が重要視されることが多くなっています。
このため一旦稼働をはじめたSCADAは、十数年から20年以上使用されることも珍しくありません。
しかし、時代の要求にともなったアップグレードやリプレースは必須事項でもあり、そのタイミングや方法は難しいものだということができるでしょう。
以下に、こうした重要インフラでのSCADAアップグレード例を紹介します。
ニュージーランド ハミルトン市の給水システム
ニュージーランド最長の河川であるワイカト川を水源とし、すべての住民への給水を行っているハミルトン市では、1,000キロメートルの配管を利用する巨大な水処理プラント、および廃水処理プラントを稼働させていました。
しかし、近年になって人口が増加し、総人口が15万人を超えたことから、従来のSCADAでは充分なパフォーマンスが得られなくなったことに加え、コンプライアンスを満たすことも難しくなってきました。
このため、Rockwell Automationが提供するFactoryTalkシリーズへのアップグレードを決定、最新のSCADAが導入されることになったのです。
これによって、CSVによるスプレッドシート管理とデータ保存が自動化されるようになり、10年間の運用データ保持というコンプライアンスを満たしつつ、タブレットやスマートフォンでのシステム管理ができるようになりました。
進化・統合の進む監視制御システム(SCADA)
デジタルトランスフォーメーションが進む現代では、一般的な企業だけでなく、重要インフラを提供する組織にも効率化と生産性の向上が求められます。
それを象徴しているのが、産業用制御システムの一部である、SCADAの進化ともいえるでしょう。
それは従来から活用されてきたDCSやPLCにも同様のことがいえ、こうした監視制御システムは、お互いが進化しつつネットワーク化され、機能が統合されていく方向にあります。
私たちの生活に密接に関わる、重要インフラを支えるSCADAの進化は、今後も注視しなければならないことだといえるでしょう。
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