第3のプラットフォームとは?ICTを支える情報基盤の現状と展望
第3のプラットフォームとは
第3のプラットフォームとは、アメリカの調査会社IDCが提唱している概念で、情報通信技術(ICT)を支える新しい情報基盤のことをいいます。
詳しくは後述しますが、第3のプラットフォームは、その情報基盤として「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」「クラウド」の4要素があるといわれています。これらの領域で優位に立つことは、今後ITベンダーとして生き残るために必要であるとされています。
この第3のプラットフォームについて、要素から今後の動向にいたるまで詳しく解説していきます。
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- 第3のプラットフォームとは
- 第3のプラットフォーム登場まで
- 第3のプラットフォームの現状
- 第3のプラットフォームの4要素
- クラウド
- ビッグデータ
- モバイル
- ソーシャル
- 第3のプラットフォームの市場規模
- 昨年(2017年)の市場規模
- 今後の市場規模を予測
- 第3のプラットフォームとイノベーションアクセラレーター
- IoT(Internet of Things)
- 認知システム(Cognitive Systems)
- パーベイシブロボティクス(Pervasive Robotics)
- 3Dプリンティング(3D Printing)
- ナチュラルインターフェース(Natural Interfaces)
- 次世代セキュリティソリューション
- もたらす影響を知り、今後の動向を注視
- BOXILとは
第3のプラットフォーム登場まで
「第3のプラットフォーム」というからには、その概念が登場するまでに「第1のプラットフォーム」と「第2のプラットフォーム」もありました。前者はメインフレームのことであり、後者はクライアント/サーバーシステムのことを指します。
第1のプラットフォーム(メインフレーム)
メインフレームとは主に大企業を支える基幹業務に使用される大型コンピュータであり、汎用コンピュータやホストコンピュータと呼ばれます。
1951年に世界初の商用コンピュータであるUNIVACIが開発され、その後1964年にIBMのSystem/360が登場しました。これらにより、メインフレームの概念が確立されました。それまでの計算機中心の運営から、コンピュータを用いたスピーディーで効率的な運営へと変化していきました。
この時代のユーザー規模は百万人程度であり、そのほとんどが大企業でした。ソフトウェアも事業運営を効率化させるツールとして位置づけられており、企業向けに設計されていました。
第2のプラットフォーム(クライアント/サーバ)
その後、1980年代あたりからクライアント/サーバの時代に入ってきます。クライアントサーバシステムとは、コンピュータをサーバとクライアントの2つに役割分担させて運用する仕組みを指します。
より詳しく言えば、共有データを置いておくサーバと、サーバに接続されている複数のクライアントがその中身になります。クライアントがサーバに「○○のデータを送って欲しい」という要求を送信し、サーバがそれに応答する形で処理が行われます。
この時代になるとITがビジネスの基盤となり、ユーザー数は億人規模になってきます。企業向けのコンピュータ製品がコンパクト化され、個人向けに提供され始めたのもこの時代です。
第3のプラットフォームへ(クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャル)
そして2000年代に入ると、それまでのコンピュータネットワーク基盤のうえに「クラウド」「ビッグデータ」「モバイル」「ソーシャル」という柱となる技術が台頭しはじめました。第3のプラットフォームと呼ばれる概念はここから登場していきます。
こういった情報基盤を利用するユーザー数は数十億人規模になり、コンピュータシステム上で動作するアプリは100万種類以上になりました。開発される製品も、これまでは企業向けの製品を個人向けにコンパクト化していたものが、逆に個人向けに設計された製品がその有用性を認められて企業向けに拡張されるケースが多くなっています。
第3のプラットフォームの現状
IDC Japanの調査によると、現在、第3のプラットフォームに関する市場は安定した成長期に入っていると言います。昨年(2017年)の支出額ベースの市場規模は約13兆2,000億円ほどであり、前年比成長率は6.1%を実現しています。
企業のIT部門は、第3のプラットフォームを最適化して、環境に適応するよう迫られています。
第3のプラットフォームの4要素
上述のように、第3のプラットフォームはクラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルの4つの要素で構成されています。それぞれの要素について以下で詳しくみていきましょう。
クラウド
「クラウド」は、コンピュータに関連するサービスや各種ソフトウェアの機能をネットワーク経由で利用する仕組みのことです。
主な特徴としては、ネットワークがあれば利用できる点や、利用したいときに利用したい分だけ使うことができる点、そして場所を問わずさまざまなデバイスからアクセスできる点などが挙げられます。
これらは「IaaS」「PaaS」「SaaS」と呼ばれているもので、分類としては以下のようになります。
SaaS(Software as a Service)
これまでソフトウェアとして提供されていたものを、インターネット経由で利用できるようにしたサービスの総称です。共有することで、さまざまなユーザーがコンピュータとネット回線さえあれば利用できます。有名なところでは「Google Apps」や「Dropbox」などが挙げられます。
PaaS(Platform as a Service)
プラットフォームの機能をサービスとして提供する形態です。プラットフォームとはソフトウェアを動作させるための土台として機能する部分のことを指し、ユーザーはプラットフォームそのものをサービスとして提供してもらうことで、比較的低コストで自社サービスの開発を行うことができます。
代表的なものとして「Google App Engine」や「Microsoft Azure」があります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
各々のコンピュータシステムとそれらをつなぐネットワークの稼動に必要な(仮想)サーバなどのインフラをサービスとして提供する形態です。
いわゆる「ホスティングサービス」と実質的に変わりはありませんが、利用するサーバのスペックやOSをサービスとして選択できる点に違いがあります。「Google Compute Engine」や「Amazon Elastic Compute Cloud」などが有名です。
以下の記事では、クラウドやIaaS、PaaS、SaaSについて紹介しています。より詳しく調べたい方はぜひ合わせてご利用ください。
ビッグデータ
「ビッグデータ」とは、文字どおり膨大な量のデータのことであり、統計分析を行う際に用いられます。文書ファイルのテキストデータや画像データ、音声・動画データ、GPS情報データなど、あらゆるものがビッグデータです。
ここ数年IT企業を中心に、多くの企業がビッグデータの活用を視野に入れており、さまざまな方法で収集・分析がされるようになっています。
その膨大なデータは2020年には約44兆ギガバイトに至るといわれています。高い精度で素早くかつ正確に大量のデータを分析、新しい価値のデータとして生成することが、生き残るために必要とされています。
BI(ビジネスインテリジェンス)やMA(マーケティングオートメーション)はビッグデータを活用したシステムの一部です。
モバイル
「モバイル」は、持ち歩ける小型のコンピューター(デバイス)を指します。生活になじみのあるスマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどもモバイル機器に含まれます。
特にスマートフォンは世界的に普及しており、個人所有できるポピュラーなモバイル端末として認知されています。この分野では、多くの企業がさまざまなアプリを開発し、リアルタイムに送受信できる環境を作り上げているのは、いまさら説明するまでもないでしょう。
ソーシャル
「ソーシャル」は、いわゆるSNSに代表されるような、ユーザー同士をインターネットでつなげるサービスを指します。FacebookやTwitter、Instagramなどが有名ですが、最近ではいわゆるチャットツールなどもコミュニケーション機能が充実しており、ソーシャルサービス的側面をもつようになっています。
特に企業においては、こういったソーシャルサービスを利用して顧客やビジネスパートナーとのつながりを強化したり、企業内の意思決定や問題解決の迅速化を支えるツールとして活用したりすることが多くなっています。
上述のように、これらはもともと個人向けに設計されたサービスが企業向けに拡張されるようになったケースといえるでしょう。
第3のプラットフォームの市場規模
ここで第3のプラットフォームの市場規模について、簡単に解説しておきましょう。
昨年(2017年)の市場規模
すでに述べたように、昨年(2017年)の国内、第3のプラットフォーム関連市場の規模は、約13兆2,000億円となっており、前年比成長率も約6%と高い成長率を誇る市場となっています。特に従業員規模が1,000人以上の大企業が関連市場への投資をけん引しており、このトレンドは今後も続くと考えられます。
ただし、クラウド分野やソーシャル技術関連分野においては、一部の中小零才企業でも積極的に導入が進んでいるようです。
両分野はその性質上、比較的低コストで導入・運用の可能なサービスが多く存在します。資本力のない企業でもコストパフォーマンスのよい投資ができ、これが導入の大きな理由になっているのでしょう。
今後の市場規模を予測
第3のプラットフォームはすでに情報通信技術(ICT)市場の3割以上を占めており、成長率も2013年から今年(2018年)までで、平均4.3%と安定した成長となっています。そして2020年には、ICT市場全体の4割を超えるとの予測もあります。
特にIT技術の活用を模索する企業では、第3のプラットフォームを中心としたIT技術の活用が望まれています。これらの技術はイノベーションアクセラレーター(革新を加速させる技術)と呼ばれ、企業変革の礎として期待されています。
第3のプラットフォームとイノベーションアクセラレーター
第3のプラットフォームは、イノベーションアクセラレーターにより、あらゆる企業にとってのビジネスプラットフォームになりつつあるといわれています。
IDC Japanの報告によると、特に以下の技術は革新を加速させる可能性が高いとして注目されています。
IoT(Internet of Things)
IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」と呼ばれ、これまでサーバやプリンタなどのパソコン関連機器が接続されていたインターネットに、それ以外のさまざま「モノ」を接続することをいいます。
IoTに関しては、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひこちらをご覧ください。
認知システム(Cognitive Systems)
いわゆる「コグニティブ・コンピューティング」のことであり、ある対象についてコンピュータが自ら学習し、考え、答えを導き出すシステムのことを指します。
「AI(人工知能)」とは目的上の違いがあるといわれています。認知システムは、収集した大量のデータを瞬時に処理したり、自ら立てた仮説のもとで推論や予測をしたりして、意思決定を支援するために導入されるケースがほとんどです。この分野でもっとも有名なシステムとして、IBMが独自に開発したWatson(ワトソン)があります。
パーベイシブロボティクス(Pervasive Robotics)
上述のIoT(Internet of Things)の流れとともに、ロボットを私たちの生活に活かす試みも進化し続けています。現在、ロボット業界の流れは「第三の波」と呼ばれる段階に至っており、ロボットを高度なデバイスとして位置づけ、その関連技術を利用したさまざまなソリューションが出始めています。
たとえば、自動車の自動運転技術やドローン技術、あるいは医療用ナノロボットなどが有名でしょう。詳しいロボット関連技術については、以下の記事を参考にしてください。
3Dプリンティング(3D Printing)
3Dプリンティングとは、3Dプリンターを使用してデジタルファイル(設計図)から直接立体物(オブジェクト)を形成する技術全般をいいます。
3Dプリンター自体は業務用装置として1990年代から存在しましたが、近年はあらゆるものが実体化できるといわれるまで進化しており、その分野は食糧や衣料、果ては生体臓器に至るまであらゆるものが対象となるといわれています。
ナチュラルインターフェース(Natural Interfaces)
NUI(Natural User Interface)と呼ばれる分野で、コンピュータのユーザーインターフェース(UI)のうち、私たちにとってより直感的で自然な動作によって操作可能な仕組みのことをいいます。
近年はNUIを実現したデバイスが増え続けています。iPhoneのタッチスクリーンをはじめ、手や足などの身体の動きに反応する仕組みや、音声アシスタントに代表される音声操作などが登場してきています。
次世代セキュリティソリューション
第3のプラットフォームが急速に成長するにつれて、それに見合ったセキュリティソリューションの開発、定着が求められるようになってきました。
特に近年はサイバーテロが世界的に問題となっています。企業は攻撃対策の面や、法令順守の面からも、より強固で柔軟なセキュリティの構築が急務となっています。
もたらす影響を知り、今後の動向を注視
第3のプラットフォームについて、全体の規模や今後の市場規模予測、そして4つの要素の解説から関連技術にいたるまで、できるだけ詳しく解説してきました。このままいけば、市場規模は2021年に15兆3,000億円を超えると予測されていした。IT業界はもちろん、すべての産業に強い影響をもたらすようになるはずです。
特にIoT技術に関しては、日本の労働人口不足もあいまって、さまざまな企業で重要視されるようになるでしょう。今後こういった分野に関わることが予想される人は、ぜひ第3のプラットフォームとその関連技術について、自分なりに知識を深めると良いでしょう。
BOXILとは
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