SaaS管理ツールとは?導入のメリットと選び方、おすすめツールを比較

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SaaS管理ツールとは
SaaS管理ツールとは、社内で利用されているSaaSの利用状況やコストを可視化し、一元管理できるサービスのことです。アカウントの権限管理や発行・棚卸しができるサービスもあり、誰がどのくらい何のSaaSを利用しているかわからない状況を解決できる機能を搭載しています。
SaaS管理ツールが必要とされる背景
SaaS管理ツールの登場した背景には、近年のSaaS導入の活性化が挙げられます。
社内で利用するSaaSが増えると、管理が困難になります。部門や部署別で個別にSaaSを導入することもあるでしょう。そうしたシャドーIT的なSaaSは、IT部門が利用状況を把握できず、利用されていないアカウントの放置やサポートや更新がされていないことによって大きなリスクにつながりかねません。
多数あるSaaS用アカウントのどれが実際に使われているかの判断も、簡単ではありません。重複して獲得された無駄なアカウントが存在していたり、退職者のアカウントが放置されていたりする可能性もあります。ひとたび使い始めた大量のSaaSについて、後から全体像を掌握することは困難です。
そこで、SaaS管理ツールやSaaS管理プラットフォーム(SaaS Management Platform:SMP)と呼ばれる管理ツールが登場しました。登場の背景にあるSaaS導入の現状と課題を詳しく解説します。
リモートワークでSaaS導入が増加した
テレワーク/在宅勤務では、働く場所が自由になる一方、作業するすべての場所にICT環境を整備しなければなりません。仕事で使うアプリをノートPCにインストールして持ち歩くことは可能ですが、アプリのバージョン管理などに手間がかかってしまいます。
そのため、どこからでも同じアプリが利用可能になる、SaaSを導入する事例が増えました。
1社平均88種類のSaaSを利用
クラウド型ユーザー認証サービス(IDaaS)のオクタによると※1、企業の大きさや業界を問わず各企業が利用するSaaSの数は増えていて、2020年時点で1社平均88種類のSaaSを使っていたそうです。特に技術分野の企業では、2017年に平均99種類だったSaaSの数が、2020年には平均155種類まで増加しています。
出典:オクタ / Okta Businesses at Work 2021
当然、SaaS市場も拡大中です。カナリスの調査レポート※2では、2021年第1四半期における世界クラウドインフラサービス支出額は418億ドル(約4兆6,055億円)と、前年同期比35%増でした。
出典:カナリス / Global cloud services market Q1 2021
※1 オクタ"Businesses at Work 2021"
※2 カナリス"Global cloud services market Q1 2021"
サービスも多種多様に
SaaSの利便性が理解されて企業の導入が増え、市場も拡大していることから、次々と新しいSaaSが市場投入されています。
この状況は、BOXIL Magazineを運営しているスマートキャンプの「SaaS業界レポート2021(2021年12月発行)」でも確認可能です。同レポートのSaaSカオスマップに掲載されているSaaSの数は884あり、2017年の396種類から右肩上がりで増えてきました。
出典:スマートキャンプ / SaaS業界レポート2021

国内のSaaS市場も好調で、富士キメラ総研は2020年度の市場規模を前年度比23.7%増の1兆332億円と予測しました。さらに、2024年度には1兆6,054億円まで増えるとみています※3。
※3 富士キメラ総研『2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編』まとまる(2021/7/7発表 第21065号)
SaaSのアカウント管理が重荷になった
SaaSの利用メリットは大きいものの、利用経験の浅い企業にとっては一筋縄でいかないこともあるようです。設定ミスなどが大きなリスクになることがあり、管理の担当者不足を訴える企業も存在します。
そうしたSaaSが1つだけならまだしも、今や導入されるSaaSは増える一方です。管理の負担は見過ごせない状況になりました。
SaaSは“無秩序に”増えている
SaaS関連サービス事業のZluriによる世界各地の企業を対象とした調査※4では、各企業のIT責任者クラスは81%がSaaS導入の増加を認識していました。一方で、戦略的にSaaS由来の問題を対策しているとの回答は、17%にとどまります。
無秩序に増えるSaaSに関する問題としては、「セキュリティ」を挙げる声が75%ともっとも多く、「コンプライアンス」(58%)、「コスト」(57%)、「シャドーIT」(57%)という意見も目立ちます。また、現在利用しているSaaSに対して、動作状況の管理が不十分だと考えてる回答者は34%いました。
※4 Zluri"83% of IT leaders don't have a solid strategy in place to manage their SaaS"
日本でも管理が悩み
同様の悩みを訴える声は、日本でも増えています。SaaS関連サービスを提供するメタップスの調査※5によると、社内で利用されているSaaSをすべて把握、管理できている企業は48%と半数を切りました。
出典:メタップス / 「SaaS爆発」時代の裏に潜む課題を徹底調査
さらに、無駄なコストや不正アクセスの発生につながる退職者用アカウントの削除漏れは、32%が「ある」または「わからない」と回答しました。SaaSが十分に管理されていない、危険な状態にある企業は少なくないようです。
※5 メタップス「『SaaS爆発』時代の裏に潜む課題を徹底調査」, 2021/2/24
SaaS管理ツールを導入するメリット
SaaS導入が増加している現在、管理の煩雑化による課題が出てきていることを解説しました。SaaS管理ツールを導入することで、運用コストの削減やセキュリティの維持など、ログイン先を統一できることでさまざまなメリットを得られます。
SaaS管理ツールを導入することによって得られる2つの大きなメリットを説明します。
サービスの運用コストを削減できる
営業部門や経理部門など、部署・部門ごとに違ったSaaSを導入・運用しているのは珍しくありません。各所でバラバラに運用しているSaaSを一元管理することで、全体の運用コストを削減できるようになります。
部門ごとに独自の判断でサービスを導入するケースが頻発すると、本来必要のないサービスまで導入してしまう可能性があります。
SaaS管理ツールを導入し、各所が本当に必要としているサービスを厳選して導入・管理できるようにすれば、結果的にかなりのコスト削減になるでしょう。
組織のセキュリティを高められる
各部署で独自にSaaSの運用体制を敷いている場合、操作ミスや設定ミス、アカウントの放置、アップデートのタイミングなどでセキュリティリスクが生じる可能性があります。
そこで、SaaS管理ツールによって一か所でSaaSを一元管理するようにすれば、統一した使用ルールのもとで厳格に運用できるようになるでしょう。結果的に、組織全体のセキュリティレベルが向上させられます。アカウント管理やアクセス制限管理を徹底すれば、情報漏えいのリスクを低減できます。
SaaS管理ツールの選び方
SaaS管理ツールを選び方のポイントを解説します。SaaS管理ツールを選ぶ際には、対応しているSaaSの種類(サービス数)には最低限注目しておきましょう。自社で利用しているSaaSに対応していない場合、導入しても管理ができずコストが無駄になります。
さらに、次の3点を導入前に確認することが必要です。
どの程度の効率化が可能か
SaaS管理ツールは、社内で利用している各SaaSの運用コストを削減する目的で、導入する企業が多いはずです。まずは必要な機能が網羅されているかをチェックし、どの程度の効率化が実現できるかを判断しましょう。
SaaS管理ツールでは、各種SaaSの使用率をレポート化して判断できるものが多いので、部署ごとや個人ごとなど、どのような区分で管理したいのかを決めておきましょう。SaaSへの不要な支出を減らすためにも、管理側が利用状況を一目で判断できるツールがおすすめです。不要なツールの契約を解除したり、新しいSaaSに乗り換えたりするのに役立ちます。
管理画面のわかりやすさ
管理画面がわかりやすく、アクセスしやすいツールかどうかも重要です。SaaS管理ツールは管理者だけでなく、一般社員も利用するため誰でも使いやすい画面構成で操作性に優れている必要があるでしょう。
特に近年は、SaaS管理ツールのダッシュボード上で全SaaSを管理・運用できるシステムも登場しはじめています。そうなると、管理画面が複雑になりがちなので、できるだけ直感的に運用しやすい画面構成でなければいけません。
セキュリティに問題はないか
アクセス制限やアカウント管理、利用状況の確認機能など、セキュリティに関する機能が充実しているかも、重要な選定ポイントとなります。
さまざまなSaaSを一元管理する性質上、管理ツール自体がセキュリティに優れていなければ、逆に統合管理することでセキュリティリスクが生じてしまう可能性があります。
- 二要素認証
- IP制限
- アカウントロック
- セキュリティルール設定
など、導入するツールが具体的にどういったセキュリティ機能を備えているかチェックし、自社の運用体制を鑑みて、セキュリティ上の問題が生じないか確認することが大事です。
おすすめのSaaS管理ツールを比較
それでは、おすすめのSaaS管理ツールを紹介します。上記の選択ポイントを意識しながら、自社に合ったツールかどうかを判断してください。2021年には国産SaaS管理サービスが次々登場しており、言語を気にせず利用できるでしょう。
気になるツールがあれば、積極的に資料請求や問い合わせをしてみてください。
Freshservice - OrangeOne株式会社
- 世界で20,000社以上※の導入実績
- SaaSアカウントの各種手配依頼を数クリックで完結
- 独自のオンボーディングサポートを提供
Freshserviceは、SaaS管理機能のほか、問い合わせ対応やチャットボット機能も搭載されているサービスデスクツールです。社内ポータルにより、問い合わせやSaaS、アカウント申請などを一元管理できます。
自動検知したSaaSの利用状況をもとに、使用されていないSaaSを把握できるので、棚卸業務にも役立ちます。SaaSに紐づくIDや料金、バージョンなども管理可能で、SaaSアカウントの一括発行も可能です。ワークショップや個別相談会など無料のオンボーディングサポートを利用できます。
※ボクシル掲載資料参照(2023年2月閲覧)
メタップスクラウド - 株式会社メタップス
- 連携できるSaaS数100以上※
- アカウントをダッシュボード上で管理
- Windows、Mac、iOS、Androidなどのマルチプラットフォームに対応
メタップスクラウドは、SaaSの利用状況、コスト分析、セキュリティの一元管理をサポートしてくれるSaaSマネジメントツールです。会社、組織、従業員単位でSaaSを管理し、利用状況の可視化やコスト分析などが可能です。
1つのIDとパスワードで複数のSaaSにログインできる機能(シングルサインオン)を搭載し、アカウントを一括管理できます。利用しているSaaSの契約情報や利用率などを可視化でき、コスト削減を支援してくれます。
※メタップスクラウド公式サイトより(2022年6月時点)
マネーフォワード Admina - マネーフォワードi株式会社
- 退職者のアカウントもしっかり棚卸し
- リスクのあるアカウントも素早く通知
- シャドーITを素早く検知・防止
マネーフォワード Adminaは、アカウントアグリゲーション機能で各種SaaSと連携し、SaaS導入からID発行、利用状況確認、ID削除が容易に行えます。退職者のIDを自動検出も可能で、不要IDの削除忘れも防げます。
社内で利用されているSaaSが不明な企業や、誰がどのようなSaaSを使っているわからない場合におすすめで、アカウントの一覧化やログインステータス、支払い情報の管理によって、厳格なSaaS利用管理を実現できます。いわゆる「シャドーIT」の利用アカウントを簡単に検知でき、管理側が把握していないSaaSを社員が利用してしまうことによるセキュリティリスクの発生を防止できます。
デクセコ - 株式会社オロ
- 連携サービスのアカウント情報を自動同期
- ブラウザ拡張機能のインストールで利用状況やシャドーITを可視化
- パソコンやスマートフォンなどのITデバイス管理に対応
デクセコは、2,000以上のSaaSに対応※し、契約情報や利用状況、アカウント情報などを一元管理できるツールです。連携する会計システムから契約情報を自動で検出登録したり、支払実績やアンケートによって利用中のSaaS情報を収集したりできます。
ブラウザ拡張機能をインストールしてもらうことで、SaaSの利用状況をユーザーや利用頻度などの軸で確認でき、シャドーITも把握可能です。似たツールや機能の被りを確認できる利用分布図や、管理に関するタスクの管理機能を搭載しています。
※デクセコ公式サイトより(2023年1月閲覧)
- 40以上※のアプリと連携し管理をサポート
- ITデバイスの調達からキッティング、保管まで対応可能
- アラート機能でアカウント削除漏れを防止
ジョーシスは、ITデバイスとSaaSの管理業務を自動化するサービスです。従業員、デバイス、アプリを紐付け管理できるので、用途にあわせた軸で利用状況を可視化できます。連携サービスのアカウントの発行と削除を一括実施でき、同時にロールやプランなどの権限設定も可能です。
※ジョーシス公式サイトより(2022年3月時点)
YESODディレクトリサービス - 株式会社イエソド
- 過去や未来の権限状態も管理可能
- WebAPIによるデータ出力
- 簡易的なワークフローに対応
YESOD ディレクトリサービスは、時間軸を考慮してメンテンナンスできるID管理ツールです。過去の権限設定を確認したり未来に変更される権限を調整したりでき、運用しやすいのが特徴。WebAPIやCSVによって、従業員情報を出し入れできるためデータの登録もスムーズです。YESOD アカウント棚卸と組み合わせることで、SaaS管理ツールとして広い分野での活用を見込めるでしょう。
ITboard - アイティクラウド株式会社
- 全社・組織別・製品別でSaaS利用状況を可視化
- SAML認証でSaaSを簡単登録
- 契約期間管理によるコストの削減も
ITboardは、ソフトバンクグループのアイティクラウドが提供しているSaaS管理ツールです。社内で使用しているSaaSをすべて一元管理でき、利用状況はもちろん、利用料金をダッシュボードで確認できます。
さらに、各SaaSの利用率や未利用アカウントの発見が可能で、サービスの過剰購入や重複利用を防いでSaaS運用コストの削減に寄与します。各SaaSの契約更新が近づいてきた際にアラートをしてくれるので、利用していない契約数を見直し、無駄なSaaSの導入や惰性でのサービス利用による無駄を防げることも特徴です。
- アカウントの発行や削除にかかる作業時間を85%※削減
- 従業員データベースと同期し人事発令起点のアクションを自動化
- 自動棚卸し機能でシャドーアカウントを検出
Bundleは、アカウント管理を自動化できるSaaS自動管理ツールです。人事データとSaaS情報を同期することで、統合従業員データベースを作成できます。マスタとなるサービス上で従業員情報を更新するだけで、アカウント発行や削除などを自動実行してくれます。
部署異動に伴う利用SaaSの変更や、タイマーによる予約実行に対応可能です。従業員データベースとSaaSアカウントを名寄せし、使われていないアカウントを検出できる、自動棚卸し機能を搭載しています。
※ボクシル掲載資料参照(2022年6月時点)
「BOXIL SaaS AWARD Spring 2023」の受賞サービス
「BOXIL SaaS AWARD(ボクシル サース アワード)」は、SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」が毎年3月4日を「SaaSの日(サースの日)」と定め、優れたSaaSを審査、選考、表彰するイベントです。
今回の「BOXIL SaaS AWARD Spring 2023」は、2022年1月1日から2022年12月31日までの1年間で新たに投稿された口コミ約14,000件を審査対象としており、計265サービスに、ユーザーから支持されるサービスの証としてバッジを付与しました。
柔軟な働き方へ対応するために
2020年以降、生活のさまざまな場面で人々の行動が変化せざるを得ないことが増えました。直接対面して会う機会を減らす必要が生じたため、教育の現場ではオンライン授業が行われるようになり、職場でもリモートワークを活用した在宅勤務やインターネット経由のウェブ会議が多用されています。
リモートワークが広まった影響で、無駄な通勤や移動をする必要がなく、場所を問わず働けることのメリットを実感する人が増えました。トヨタ自動車のように、働き方の柔軟性をさらに高め、全国どこからでも在宅勤務できる制度を導入する企業も現れています。
柔軟な働き方へ対応するためにはSaaS導入が欠かせません。いまや業界・業種にかかわらず、すべての企業が何らかのSaaSを利用しているといっても過言ではないでしょう。
導入しているSaaS、これから導入するSaaS、必要な管理機能といった条件に合ったサービスを選び、利用効率向上やコスト削減を図りましょう。不正利用や無駄なサービスの導入を防いで、最適なSaaS利用環境を構築できるはずです。


