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「DXの思考法」西山氏、KADOKAWA各務氏が語る、競争力を高めるDXの実践とは/後編【BOXIL EXPO】

最終更新日:(記事の情報は現在から1049日前のものです)
元通産官僚で東京大学未来ビジョン研究センター客員教授である西山氏と、KADOKAWAのDXを推進するために戦略的に設立されたKADOKAWA Connected代表取締役社長・各務氏が、企業でDXが進まない理由、DXを進めるためのステップを各々の経験から語り合いました。後編では、KADOKAWAでの各務さんの経験と、組織をDX体質に変える視点を紹介します。

本記事は、2021年9月に開催したオンライン展示会「BOXIL EXPO 第2回 財務・経理・総務・法務展」の基調講演「その変革はデジタル時代を生き残れるか 競争力を高める真のDXへの手引き」をまとめたものです。

【登壇者プロフィール】
西山圭太氏 東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授
1963年、東京都生まれ。 1985年、東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。 1992年、オックスフォード大学哲学・政治学・経済学コース修了。株式会社産業革新機構専務執行役員、東京電力経営財務調査タスクフォース事務局長、経済産業省大臣官房審議官(経済産業政策局担当)、東京電力ホールディングス株式会社取締役、経済産業省商務情報政策局長などを歴任。日本の経済・産業システムの第一線で活躍したのち、2020年夏に退官。現在、株式会社経営共創基盤シニア・エグゼクティブ・フェローを兼務。 著書に「DXの思考法」(文藝春秋)。

各務茂雄氏 株式会社KADOKAWA Connected 代表取締役社長
KADOKAWAの戦略子会社として設立されたKADOKAWA Connected社長。情報経営イノベーション専門職大学准教授。 Microsoft Corporationにてモビリティ&クラウド技術部部長、アマゾン ウェブ サービス ジャパンでProfessional Service 本部長を経た後、 2017年 1月にドワンゴ入社、 ICTサービス本部本部長などを歴任。 18年 6月、カドカワ(現 KADOKAWA)のグループ CIOに着任。 KADOKAWA、ドワンゴを含むグループ全体の IT戦略を担当。19年 4月より現職。KADOKAWAグループで運営するサービスのインフラ開発・運用や ICTコンサルティング、働き方改革支援を手がけ、その実績を活かしたデジタルトランスフォーメーション(DX)アドバイザリーサービスも提供。

前編はこちら】

アナログとデジタルについて

各務氏:ここであらためてアナログとデジタルのそれぞれの特徴や強みを説明するために、縦軸にアナログ・デジタル、横軸にコスト重視VS質/スピード重視でマトリックスにしました。

まず、左上の「コストを重視したアナログ」は衰退するビジネスかなと思います。次に、左下の「コストを重視したデジタル」は、ボリュームビジネス、テックタッチで大衆向けの領域になります。右上の「アナログで質とスピードを重視」はどちらかというと個別対応のビジネス。右下の「デジタルで質・スピードを重視」は、ある程度個別対応で、テックタッチにヒューマンタッチをプラスするものと定義しました。

わかりやすくするために、このマトリックスを車の運転で考えてみましょう。
皆さんは、車で移動を考えたとき、「ハンドルから手を離してスマートフォンも操作できる、最新技術の自動運転搭載車」か、「ボディーガードや秘書にもなる、ベテランのお抱え運転手による運転」のどちらかを選択するならば、どうしますか。そしてその理由は何でしょうか。

まず、「最新技術の自動運転機能」と、「お抱えのベテラン運転手」の事例をマトリクス図に当てはめると右側になります。

「自動運転×リアルでのおもてなし」という価値

各務氏:一方で、左上のアナログでコストがかかるのが、紙の地図や野生の勘による運転で、あまり選択されない方法になっていますよね。現在、一般的には、低コスト×デジタルのツールであるカーナビ、あるいはスマートフォンのMAP機能という方法がとられています。

反対に、アナログで品質とハイスピードを重視する場合は、お抱え運転手とスマートフォンやオンライン予約の組み合わせでしょう。これは、人による運転にデジタル技術が運転の品質を支えるようなものですね。デジタルに品質やスピードをプラスする場合は、自動運転にリアル店舗でのおもてなしなどが考えられるでしょう。このように、車で快適に移動する手段を考えてみても、デジタルとアナログに分けられます。

さらに、これを自社のビジネスに当てはめて考えてみると、自分たちのビジネスがどこにあたるのかがわかるのではないでしょうか。私はビジネスにおいても、右下の、「自動運転×リアルのおもてなし」がいいと考えています。なお、右上のビジネスは、高度な技術を持った人材の確保や育成などが成功の鍵となるため、ビジネスをスケールさせるにはハードルが高くなり、人口減少のマクロトレンドを考えると、これからの時代では少し厳しいのではないでしょうか。

一方で、アナログの力も軽視していけないと思います。なぜならば、DX時代であっても、緊急時の場合は人間が持つ野生の勘が価値を発揮するからです。もし行きたい場所のデータを誰も持っていない場合は、カーナビが意味をなさないので野生の勘が役立ちます。アナログな手段ですが、野生の感覚、人間ならではひらめきも必要だと考えています。

多くの企業でDXが進まない理由

各務氏:DX施策においては、自社の強みをどれだけ知っているのかが、重要なポイントとなります。仮に、「うちの会社は人間によるリアルなホスピタリティならどこにも負けない」という会社であれば、デジタル化するよりもアナログを極める方がいいですよね。一方で、「データドリブンで戦略的に営業を行える」のが強みだとしたら、デジタル化を進めた方がいいのは明らかです。

そして自社の強みを理解したら、強みを生かすためのデジタルに徹底的に投資をすることが大切なのですが、ここができていない会社が多いのではないでしょうか。

なぜできないのかといえば、事業の縦軸と、部門を横断する横串組織の接点管理ができていないからだと考えられます。

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