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現場DXの要は「バーティカルSaaS」? ノンデスクワーカーの現状は

最終更新日:(記事の情報は現在から1051日前のものです)
SaaSの普及でデスク業務はデジタル化が進んでいます。一方で、現場での作業が求められる「ノンデスクワーカー」「フロントラインワーカー」らの業務は、諸外国から遅れをとっています。現状をまとめました。

現場のDXが置き去りに?

企業の業務を根本からデジタル化するデジタルトランスフォーメーション(DX)は、労働生産性の向上やワークライフバランスの改善につながるとして、以前から期待されていました。実際の導入度はまだ不十分なものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策でリモートワークによる在宅勤務やクラウドサービス利用が急速に進み、必要性を再認識したり、効果の一端を実感したりした人は多いでしょう。

ただし、単純なデジタル化やオンライン化の恩恵をすぐに受けられるのは、デスクワーク中心の人に限られます。生活を支える仕事に就いているエッセンシャルワーカー、対面の顧客対応や工場などでの現場作業が求められるノンデスクワーカーといった人々には、違ったタイプのDXが適しているはずです。

そうした点に配慮しないDXは、現場の人たちを置き去りにしかねません。

現場のデジタル化をめぐる日本の現状

現場のデジタル化は、どの程度進んでいるでしょうか。ノンデスクワーカーに関するカミナシの調査レポート(※1)で確認します。

※1 カミナシ『【調査】工場や店舗などの現場で働くノンデスクワーカーの6割以上が職場をアナログだと感じている?!』,https://kaminashi.jp/news/pr_20210831

6割以上でデジタル化進まず

この調査は、1日6時間以上デスクワーク以外の業務に従事している正社員ノンデスクワーカーを対象に行われました。

勤務先のデジタル化がどの程度進んでいるか尋ねたところ、「まったく進んでいない」が38.2%、「(取り組み始めているが)まだ自分の業務まで浸透していない」が27.8%と、6割以上の職場でデジタル化が進んでいません。

一方、19%は「自分の業務も変化を感じている」、15%は「自分の業務も完全に変化している」を選び、デジタル化された現場も増えつつあるようです。

勤務先のデジタル化進捗度グラフ 出典:カミナシ / 【調査】工場や店舗などの現場で働くノンデスクワーカーの6割以上が職場をアナログだと感じている?!

いまだに残る紙の処理

デジタル化が進めば、当然ペーパーレスになるはずです。ところが、この調査では54.4%の人が「毎日」紙を使った作業をしている、と回答しました。さらに、「週に2~3回」は16.0%、「週に1回」は9.4%など、なかなか紙をなくせずにいます。

ちなみに、「ほとんどない」という回答は15.4%でした。

紙作業の発生頻度グラフ 出典:カミナシ / 【調査】工場や店舗などの現場で働くノンデスクワーカーの6割以上が職場をアナログだと感じている?!

ペーパーレス化されていない職場では、どんな目的で紙を使っているのでしょう。

具体的に挙げられたものは、「シフト表」(44.0%)、「日報・報告書」(42.6%)、「勤怠関係の申請」(36.2%)、「契約書」(35.6%)、「業務マニュアル」(34.6%)など多岐にわたります。ほかの回答項目も含め、いずれも毎日のように使われるものなので、こうした紙を排除しない限り、ペーパーレス化は困難です。

出典:カミナシ / 【調査】工場や店舗などの現場で働くノンデスクワーカーの6割以上が職場をアナログだと感じている?!

デジタル化を妨げるのは……

上で挙げられた「契約書」など文書は、自社だけで完結しないのでペーパーレス化は一筋縄で行きません。しかし、それ以外のシフト表や報告書、マニュアル、記事録などなら、PCやタブレット、スマートフォンが安価に利用可能な今では、すぐにでも対応できそうです。

そこで、職場のデジタル化を希望する人にデジタル化できない理由を聞いたところ、「デジタル化を推進する人がいない」(36.5%)、「デジタル化にかける費用がない」(31.1%)、「デジタル化といっても、何から手を付けていいか分からない」(29.7%)という意見が目立ちます。

つまり、デジタル化に対する抵抗や根本的な障害が、デジタル化やペーパーレス化を妨げているわけではありません。予算不足や推進者不足問題さえ解決可能なら、コンサルタントなどの力を借りるなどしてペーパーレス化に着手できそうです。

デジタル化を進める妨げと思われることグラフ 出典:カミナシ / 【調査】工場や店舗などの現場で働くノンデスクワーカーの6割以上が職場をアナログだと感じている?!

世界各国のフロントラインワーカーは

続いて、マイクロソフトが8カ国(日本、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、インド、メキシコ、英国、米国)で実施した調査(※2)を紹介します。マイクロソフトは、リモートワークで対応できず現場作業が必要な人をフロントラインワーカーと呼び、そうした人々が働く職場について調べました。

※2 マイクロソフト『テクノロジが切り開く、フロントラインワーカーの新しい未来』,https://news.microsoft.com/ja-jp/features/220113-technology-unlocks-a-new-future-for-frontline/

多くがテクノロジーに期待

マイクロソフトによると、フロントラインワーカーの多くは各種テクノロジーを楽観視しているそうです。具体的には、ITによる自動化やAI導入で自分の仕事が時代遅れになると心配する人はいますが、63%はテクノロジーによってもたらされる雇用機会を期待していました。

テクノロジーがストレスを軽減してくれる、と考える人も大勢います。何が職場のストレス軽減に役立つか質問したところ、64%が「給与の増加」、50%が「有給休暇」を挙げ、これに続く46%が「仕事を容易にする適切なテクノロジツール」を選んだのです。

マイクロソフト調査、テクノロジーに期待すること 出典:マイクロソフト / テクノロジが切り開く、フロントラインワーカーの新しい未来

日本は特に遅れ気味、教育も不十分

このようにテクノロジーに期待を寄せているフロントラインワーカーですが、現状には必ずしも満足していません。というのも、「仕事を効率的に行うための適切なテクノロジを与えられていない」と考える人が少なからず存在するのです。

特に日本は、そう考えるフロントワーカーが60%おり、次に多いブラジルの34%と比べても差が目立ちます。

適切なテクノロジを与えられていない、と考える人の割合
インド 21%
オーストラリア 22%
メキシコ 25%
アメリカ 28%
イギリス 32%
ドイツ 32%
ブラジル 34%
日本 60%

また、テクノロジーを導入してDXの段階まで進めるには、適切な教育を施すとスムーズです。それにもかかわらず、いきなりツールを使わせられるフロントラインワーカーが55%もいました。

ここでも日本は後れを取っていて、66%が「デジタルツール、テクノロジ、ソリューションを公式なトレーニングや研修なしに即座に学ばなければならなかった」としています。ただし、もっとも低いドイツでも48%が教育してもらっていないとのことなので、不十分な教育体制は世界共通の課題といえます。

教育を受けていない、と答えた人の割合
インド 56%
オーストラリア 51%
メキシコ 49%
アメリカ 52%
イギリス 54%
ドイツ 48%
ブラジル 60%
日本 66%

出典:マイクロソフト / テクノロジが切り開く、フロントラインワーカーの新しい未来

デジタル化の好機ではある

マイクロソフトは、「(デジタルネイティブ世代やスマートフォンネイティブ世代は)仕事での経験と仕事外での経験が一致することを期待しているわけですが、そのギャップはまだ埋まっていません」と指摘しました。つまり、PCやモバイルデバイス、クラウドサービスなどのICTを普段から使いこなしてきた若者は、デジタル化が遅れている職場環境に驚き、失望しているのでしょう。

ICTに馴染み、その利便性を肌で知っている人が増えた今こそ、ノンデスクワーカーやフロントラインワーカーの活躍する場を一気にデジタル化する好機です。マイクロソフトも、「パンデミックが触媒となり、インフォメーションワーカーのDXが急速に進んだように、フロントラインワーカーも同じような変曲点にある」としています。

現場DXにはバーティカルSaaSを

とはいえ、現場で必要とされるICTの機能は、業界や現場の状況によって大きく異なります。たとえば、単にクラウドストレージを使えるようにすれば効率化できる、というものではありません。

そこで業界特化型のSaaSを検討してみましょう。オンラインストレージなど汎用的な機能が提供される「ホリゾンタルSaaS」に対し「バーティカルSaaS」と呼ばれ、各業界の業務内容に特化した機能が提供されます。業界向けクラウドや業種別クラウド、インダストリークラウドなどとも呼ばれます。

例えば倉庫の在庫管理では、商品のバーコードをスマートフォンで読み込むとデータベースに連携されるSaaSがあります。スマートフォンなので、ICTになじみが薄い人でも使いやすいといったメリットがあります。

現場が求めるテクノロジーを導入してこそ、デジタル化が成功し、最終的に全社的なDXへ発展するでしょう。その際にも、OJTでは対応できない新しいノウハウを広める必要があるため、体系的な人材育成プログラムやリスキリングのような考え方が重要です。

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