アクセス制御とは?セキュリティ対策に必須の知識
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アクセス制御とは
アクセス制御(アクセスコントロール)とは、コンピューターやネットワーク内のリソースへのアクセスを管理し、不正な利用やデータ漏えいを防ぐための仕組みです。どのユーザーがどのリソースにアクセスできるのか、どのような操作を許可するのかを詳細に定めます。
アクセス制御は、情報セキュリティの重要な要素の一つであり、組織のデータ保護やコンプライアンスの実現に寄与します。
IAMとは
IAMとは、「Identity and Access Management」の略称で、ユーザーIDとアクセス権の管理を行うための仕組みです。
IAMを適切に導入することで、アクセス制御の精度が向上し、クラウド環境やリモートワークにおけるセキュリティリスクを最小限に抑制可能です。IAMは、すべてのアクセスを信頼しないという考え方にもとづく、「ゼロトラストセキュリティ」の実現において重要な役割を果たします。
こちらの記事にもアクセス制御に関する追加情報が記載されているので、あわせて参考にしてください。

アクセス制御の目的
アクセス制御の目的とは何なのか、わかりやすく解説します。
データ保護
アクセス制御は、機密情報や個人データを不正アクセスや漏えいから守ります。情報が漏えいした場合、企業の信用が大きく損なわれるだけでなく、法的責任や罰金が科される可能性もあります。そのため、漏えいリスクの軽減は、現代の組織にとって最優先事項の一つです。
セキュリティリスクの軽減
アクセス制御を活用して不正なアクセスや内部犯行を防止することで、組織全体のセキュリティを向上できます。これにより、予期しない損害や運用停止のリスクを軽減し、企業の信頼性を向上させます。顧客や取引先との信頼関係を維持するうえで、セキュリティの強化は不可欠な要素です。
また、セキュリティリスクが軽減されることで、従業員に対する安心感を提供し、業務効率の向上にもつながります。従業員が安全な環境で作業を行えることで、業務に集中しやすくなり、潜在的なリスクへの不安を軽減可能です。
コンプライアンスの遵守
アクセス制御によって規制や法的要件に従い、セキュリティを確保することでコンプライアンスを実現可能です。企業はコンプライアンスを遵守することで、法的リスクを回避し、ブランド価値を高められます。顧客や取引先からの信頼を得るための重要な要素でもあります。
また、コンプライアンス対応は単なる法的義務の範囲を超え、企業の持続可能性や競争力に直接的な影響を与えるものです。規制違反による罰金や訴訟リスクを回避するだけでなく、規制要件に先行する対策を講じることで、市場での優位性の確立も可能です。
アクセス制御の3つの機能
アクセス制御における3つの基本機能について解説します。
認証
認証は、アクセスを要求するユーザーの身元を確認するプロセスです。これには、パスワード、生体認証(指紋認証や顔認識など)や、多要素認証(MFA)などの技術が使用されます。認証は、セキュリティの第一関門として機能し、適切な手法を選択することが重要です。
多要素認証は、パスワードだけでは不十分な場合に、効果的な追加のセキュリティ層を提供することにより、認証プロセスの堅牢性を向上させます。
指紋認証や顔認証などの生体認証については、ぜひこちらを参照ください。

認可
認可は、認証済みのユーザーがどのリソースにアクセスするか、またはどの操作を実行するかを決定するプロセスです。これにより、必要最小限の権限を付与する原則(最小特権の原則)が実現します。
認可プロセスは、組織のセキュリティポリシーと密接に関連し、業務の効率を保ちながら安全性を確保します。その中で、アクセス制御リスト(ACL:Access Control List)は、認可を実現する重要なツールです。
ACLでは、各リソースに対するアクセス権をユーザーやグループごとに管理し、許可される操作(読み取り/書き込み/実行)を明確に定義します。たとえば、特定のファイルを読み取り専用に設定し、他の操作を制限することで、セキュリティリスクを減らすことが達成可能です。
適切に運用されたACLは、システムのセキュリティを向上させ、過剰な権限の付与を防ぎます。ただし、リソースが増えると管理が難しくなるため、定期的な見直しが必要です。
監査
監査は、アクセス活動を記録し、後から確認可能な形で保存するプロセスです。監査ログを活用することで、不正アクセスの検出や問題の解決が容易になります。
さらに、監査プロセスはコンプライアンス要件を満たすためにも重要です。適切な監査体制を整えることで、組織は規制当局や顧客からの信頼を得られます。
アクセス制御方式の4つの種類
アクセス制御方式の4つの種類は、次のとおりです。
- 任意アクセス制御
- 強制アクセス制御
- ロールベースアクセス制御
- 属性ベースアクセス制御
それぞれの方式について詳しく解説します。
任意アクセス制御
任意アクセス制御(DAC:Discretionary Access Control)は、システム内のリソースに対するアクセス権限を、そのリソースの所有者が自由に設定・管理できる方式です。ファイルやディレクトリの所有者が、他のユーザーに対して、読み取り/書き込み/実行などの権限を付与または制限する制御が可能で、WindowsやLinuxなどの多くのオペレーティングシステム(OS)でも採用されています。
任意アクセス制御は、ユーザー自身が自分のリソースに対するアクセス制御を行えるため、柔軟性が高いのが特徴です。一方、各ユーザーの設定に依存するため、組織全体で統一的なセキュリティポリシーを維持するのが難しくなる可能性があります。また、誤った権限設定により、意図しないユーザーにアクセスを許可してしまうリスクも存在します。
強制アクセス制御
強制アクセス制御(MAC:Mandatory Access Control)は、システム管理者がすべてのアクセス権を一元的に管理する制御方式です。システムの所有者であってもアクセス権を変更できないため、極めて厳格なセキュリティ環境で採用されている方式です。この方式では、セキュリティレベルや分類が設定され、リソースごとにアクセス可能なユーザーが明確に定義されます。
強制アクセス制御は、任意アクセス制御方式に比べセキュリティがより強固になり、高いセキュリティが求められる政府機関や医療機関でよく使用されます。一方で、柔軟性に欠けるため、一般的な商業用途には不向きな場合が多いです。
ロールベースアクセス制御
ロールベースアクセス制御(RBAC:Role Based Access Control)では、ユーザーの役割(ロール)にもとづいてアクセス権を付与します。この方式は、企業のポリシーを反映しやすく、大規模な環境での運用に適しています。
たとえば、システム管理者・営業担当者・顧客サポートスタッフといった役割ごとに適切な権限を設定することで、効率的なアクセス管理が可能です。ロールベースアクセス制御のメリットとして、個々のユーザーではなく、ロールに対してアクセス権を設定するため、管理の負担が軽減されることが挙げられます。
属性ベースアクセス制御
属性ベースアクセス制御(ABAC:Attribute Based Access Control)は、ユーザーやリソースに関連する属性を条件としてアクセスを制御します。時間帯や位置情報などリアルタイムの状況に応じてアクセス制御を適用できます。
属性ベースアクセス制御は、クラウド環境や複雑なセキュリティ要件に対応する場合にとくに効果的です。動的に制御するアクセス制御が可能であり、従来の方式に比べてより多様な条件を組み合わせられるので、ゼロトラストセキュリティを実現するうえで重要な役割を果たします。
アクセス制御の注意点
アクセス制御を実行していくうえで、注意すべきポイントについて解説します。
権限の適正化
適切な権限の管理は、組織全体のセキュリティ体制を支える基盤です。アクセス制御においては、すべてのユーザーに必要最小限の権限(最小特権)を付与することが原則です。過剰な権限を付与することは、セキュリティリスクを高めるだけでなく、内部不正や偶発的な情報漏えいの原因となります。
定期的なレビュー
アクセス権限は一度設定した後も定期的に見直す必要があります。業務内容の変化や役職の変更に応じて権限を調整し、不要なアクセス権を削除することで、セキュリティリスクを最小限に抑制可能です。
たとえば、プロジェクトが終了した後でも不要なアクセス権限が残っている場合、それが不正使用のリスクとなる可能性があります。このようなリスクを防ぐために、アクセス権限の適切な管理と定期的な見直しは欠かせません。
多要素認証の活用
システムへのアクセスに多要素認証(MFA)を導入することで、不正アクセスのリスクをさらに低減できます。多要素認証は、単一の認証方法に比べてセキュリティの信頼性が格段に高まることから、多くの組織で採用が進んでいます。
最新の多要素認証技術では、生体認証(指紋認証や顔認証など)を利用することも一般的です。生体認証は利便性が高いだけでなく、セキュリティレベルをより強化できます。多要素認証の導入は、クラウド環境やリモートアクセスを利用する企業にとって、とくに有効な手段といえるでしょう。
監査ログの管理
アクセス活動を記録し、異常な動きを早期に検出できる体制を整えることが重要です。問題が発生した場合の原因追跡が容易になり、長期的な分析にも役立ちます。過去のログを精査することで、セキュリティ上のぜい弱性や潜在的な問題を事前に把握し、必要な対策を迅速に実施可能です。
監査ログは法的なエビデンスとしても重要な役割を果たします。不正アクセスが発生した場合や規制当局からの監査が行われる際、詳細なログデータが信頼性の高い情報源となります。このように、監査ログの適切な管理は、セキュリティのみならず、コンプライアンスや業務の信頼性を向上させるために欠かせない要素です。
ユーザー教育
従業員やユーザーに対して、アクセス制御の重要性や正しい利用方法について教育することは、組織全体のセキュリティを向上させるために不可欠です。多くのセキュリティインシデントは、人的エラーや意図しない操作によるものが多いため、適切な教育を通じてこれらのリスクを最小限に抑制できます。
教育内容には、アクセス制御ポリシーの理解、適切な認証情報の管理、フィッシング攻撃の兆候を見分ける方法などが含まれます。また、定期的なトレーニングや最新の脅威に関する情報の共有も重要です。
アクセス制御でセキュリティを強固に!
アクセス制御は、情報セキュリティの要であり、企業資産を守るための基盤となる仕組みです。アクセス制御には、4つの種類の制御方式があり、企業はそれぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、最適な方式を採用することが必要です。
アクセス制御は、外部の脅威や内部のリスクに対して柔軟に対処できる、ゼロトラストセキュリティを実現するうえで重要な役割を果たし、企業の信頼性や競争力を高めるための戦略の一部であるといえます。
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