労務リスクの回避法は?労務管理の事例から考える企業のなすべき対策とは
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- 労務リスクとは
- 労務リスクの現状
- 人事労務トラブルの増加傾向
- 人事労務トラブルによる損失
- 労務リスクの種類
- 長時間労働
- 残業代・給料未払い
- 労働災害
- 労働契約
- 解雇・リストラ
- ハラスメント
- メンタルヘルス
- 情報漏えい
- 人事・労務管理のトラブル事例
- 事例1 いじめ・嫌がらせにかかる助言・指導
- 事例2 自己都合退職にかかる助言・指導
- 労務リスクを回避する方法
- 人事総務が行うべきこと
- 管理者が行うべきこと
- 相談窓口の設置
- 発生したら早期対応・解決
- 雇用慣行賠償責任保険を導入する
- 関連したシステムを導入する
- おすすめ労務管理システム
- 注目の労務管理システム・サービス資料まとめ
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労務リスクとは
労務リスクとは、ハラスメント・不当解雇・残業代未払いなど、従業員が労働を行ううえで発生するリスクのことをいいます。労働リスクが高まると、企業のイメージ悪化はもちろん、損害賠償請求をはじめとした訴訟問題が起きる可能性もあります。
労務リスクを低下させるためには、コンプライアンスが重要であり、労働基準法に則って管理しなくてはなりません。
しかし多くの人が集まる組織では、コンプライアンス違反の完全な排除は難しいといえます。2000年代以降、さまざまな理由で労務リスクが社会的に表面化するようになったことから、「労務リスクマネジメント」の概念が定着するようになりました。
そこで本記事では、労務リスク回避のために企業がすべきこと、トラブルの予防と早期対応・解決の方法を解説します。
労務リスクの現状
労務リスクが社会的に表面化していることは前述しました。労務リスクの現状は次のとおりです。
- 人事労務トラブルの増加傾向
- 人事労務トラブルによる損失
人事労務トラブルの増加傾向
労務リスク問題としては、人事労務トラブルが増加傾向にあります。人事労務の例としては、社内での嫌がらせ・自己都合退職・解雇などが挙げられるでしょう。
長く続いた不況の影響で抑えられた賃金や、長時間労働の要因になるサービス残業が横行しており、それに反するように個人の価値観が多様化していることも考えられます。
また、就業規則と現実の間に大きな剥離が生じているケースも多く、このような差異が大きくなるほどトラブルが起こりやすくなるといえるでしょう。
人事労務トラブルによる損失
こうした人事労務トラブルの発生は企業に次のような大きな損失をもたらし、解決のためのコストが生じます。
トラブル解決のためのコスト発生も大きな損失ですが、何よりもブランドの悪化による信頼の失墜は簡単に回復できるものではありません。モチベーション低下による労働生産性低下と相まって、負のスパイラルに陥ることも考えられます。
労務リスクの種類
具体的に人事労務トラブルにつながりかねない労務リスクには、主に労働時間や給与、待遇などが挙げられます。主なリスクは次のとおりです。
- 長時間労働
- 残業代・給料未払い
- 労働災害
- 労働契約
- 解雇・リストラ
- ハラスメント
- メンタルヘルス
- 情報漏えい
長時間労働
まず挙げられる労務リスクは長時間労働です。長時間の労働は従業員の心身に大きな負担がかかり、最悪の場合過労死や過労自殺に至る危険性もあります。これらを報道される、もしくは遺族からの損害賠償請求といった問題に発展すれば、企業イメージは大きく下がるでしょう。
またこういったケースに至らずとも、長時間労働は結果的に業務効率や生産性を下げるともいわれています。そのため、こういった問題を未然に防止・改善するためにも、長時間労働対策を実施する必要があります。
残業代・給料未払い
2022年の不払い是正によって支払われた残業代は、約79億円5,000万円※と試算されており、長時間労働は是正されていないことが伺えます。
これにはサービス残業が多く含まれていると考えられますが、いずれも労働基準法やいわゆる36協定などによって明確に制限されており、超過分は残業代として支払う必要があります。
近年ではこうした事実が明るみに出る事例が増加しており、企業イメージ悪化につながる大きな労務リスクといえるでしょう。
※出典:厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」(2024年7月23日閲覧)
労働災害
社内で十分安全管理ができていなければ、通勤・仕事中に起こった事故によるけがや、病気といった労働災害が発生する危険もあります。労働災害が発生すると企業は大切な労働力を失ううえ、保険金や補償金の支払いも必要になります。
またこれらが明るみに出れば、会社は社会的な信用を下げるでしょう。会社としてはマイナスにしかならないため、従業員が安全に業務できるよう環境を整える必要があります。
労働契約
労働契約は、労働契約法や労働基準法で定められたルールを順守する必要があり、これができていないとトラブルにつながる可能性があります。従業員と企業で認識に違いが生まれて退職につながったり、賞与や退職金を必要よりも多く支払ったりするケースも考えられます。
また、もし本人が希望しなければ、簡単には解雇できない点にも注意が必要です。
解雇・リストラ
変化の激しい市場経済の中では、解雇やリストラ自体が人事労務トラブルに発展する可能性の大きい労務リスクであり、場合によっては訴訟に発展することもあります。
正当な理由なしに解雇やリストラを断行しないことはもちろんですが、コンプライアンス遵守のうえで適切な判断を下す必要があります。
ハラスメント
ハラスメントに関しては行為者の意図に関係なく、行為を受けた側が苦痛を感じる、もしくは不快になったといった主観が重視されるため、微妙な問題ともいえます。しかし、これが表面化した場合の企業イメージ悪化は避けられず、大きな労務リスクであると考えられます。
ハラスメント防止のためには「ハラスメントは存在してはいけない」と基本姿勢を打ち出し、従業員への周知徹底と就業規則への明文化を行うことが有効です。
ハラスメントの中でもとくに企業内で問題となるパワーハラスメント(パワハラ)は、少し注意したつもりでも、意図した意味でない言葉でとらえられトラブルに発展する場合もあります。
次の記事では、パワハラになりかねない注意すべき発言を紹介しているため、参考にしてください。
メンタルヘルス
長時間労働やハラスメントなどストレス要因を放置した場合、メンタルヘルスに不調をきたす可能性が大きくなります。
これによる企業損失は、1,000人規模の企業であれば数千万〜1億円にものぼるデータもあり、従業員のメンタルヘルスケアを充分に行うことが求められます。
メンタルヘルスに関する詳しい内容は次の記事で解説しているため、あわせて参考にしてください。
情報漏えい
報道では機密情報漏えいや個人情報流出などが、大きな不祥事として報じられています。
端末の置き忘れといった、過失を原因とするケースが大部分ですが、中には故意に漏えいされるケースも存在し、企業イメージの悪化につながる労務リスクであるといえます。
人事・労務管理のトラブル事例
厚生労働省が取りまとめた「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は124万8,368件で、15年連続で100万件を超え、高止まりが続いています。
このうち、「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」は約19万件です。また民事上の個別労働紛争相談件数は約27.2万件で、内訳は「いじめ・嫌がらせ」が最多です。
具体的に労働局長による助言、指導が行われた案件として、次のような事例があります。
事例1 いじめ・嫌がらせにかかる助言・指導
<事案の概要>
申出人は、派遣労働者として勤務しているが、派遣先の上司から「ふざけてんじゃねえぞ」や「お前はこの地域の恥だ」などの人格を否定するような暴言を日常的に受けた。派遣元は派遣先の仕事を多く請け負っているため、今後の契約のことを考えて嫌がらせをやめるよう派遣先に働きかけてくれない。今後も働き続けたいと考えているため、職場環境の改善を求めたいとして、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
派遣先の事業主に対し、上司の行為はパワーハラスメントの提言で示されている類型(精神的な攻撃)に該当する可能性があり、会社の責任が問われる可能性があることから、パワーハラスメントの有無について調査し必要な対応を行うことについて助言した。
助言に基づき、派遣先の事業主が調査を実施したところ、実際に上司による激しい言動があったことが判明したため指導が行われ、上司は今後申出人の人格を否定するような言動は行わないと反省し、パワーハラスメントはなくなった。また、派遣先事業場において、再発防止に向けた取組を行うと回答があった。
※出典:厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2024年7月23日閲覧)
事例2 自己都合退職にかかる助言・指導
<事案の概要>
申出人は、正社員として勤務していたが、体調を崩し、有給休暇を取得した上で退職するため、会社の就業規則にしたがって、上司に退職の意思を伝えたが、「代わりの人がいないので無理です」と言われ、受け入れてもらえなかった。退職の意思は強かったので退職日の1か月前に退職届を提出したが、受け取ってもらえなかった。希望の退職日に退職できるよう話合いを行いたいとして、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
事業主に対して、申出人は会社の規程に基づき退職の意思表示を行った上で退職届を提出していること、過度の引き留めは適当ではないこと、解約の申し入れから2週間を経過することによって雇用は終了するという民法第627条第1項等について説明し、法令等に沿った解決に向けて申出人と話し合うよう助言した。
助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、有給休暇を取得した上で、申出人の希望通りの退職日とすることとなった。
※出典:厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2024年7月23日閲覧)
労務リスクを回避する方法
労務リスクを回避し、被害を最小限に抑える方法について説明します。
人事総務が行うべきこと
上述したリスク要因の多くは、就業規則と現実との剥離、理解・周知不足に起因するものです。
これを踏まえ、人事や総務部門で行うべきことは次のとおりです。
- 労働法、労働基準法の正しい理解
- 就業規則の見直し、メンテナンス実施
- 管理者を中心とした人事労務トラブル対策の教育
- 人事担当者の研修参加や資格取得
労働法や労働基準法は時代とともに細かく改正されているため、これを正しく理解したうえでこまめに就業規則を見直し、全従業員へ周知徹底する必要があります。
くわえて管理者を中心とした対策教育を行っていき、リスクを最小限にしていきましょう。人事総務担当者に関しては、研修への参加や関連した資格取得などを行えば、どのように見直しやメンタルヘルス対策を行えばいいかわかるようになるため、おすすめです。
管理者が行うべきこと
人事総務が規則の整備を行い、対策教育を徹底しても、現場を取りまとめるのは管理者です。
つまり管理者には、周知徹底された就業規則やリスク回避を実行させていく役目があります。そのため次の内容を行いましょう。
- 部下を中心にした職場の観察
- 部下とのコミュニケーション
多くの人事労務トラブルには予兆があり、これを未然に防ぐためには正しい知識をもって職場の環境を観察し、部下とコミュニケーションを取りながら、モチベーションを上げることが求められます。
相談窓口の設置
ハラスメントやメンタルヘルスの問題は個人情報にも関わるものであり、センシティブな一面をもっています。
従業員が上司や人事部に直接相談をもちかけることは難しいため、企業は独立、もしくはそれに近い形で相談窓口を設置するのが有効な手段です。労務管理担当者に求められる役割の一つです。
発生したら早期対応・解決
人事労務トラブルにつながる労務リスクは、未然に防止するのが重要です。しかし、さまざまな対策を施しても発生してしまう可能性は否定できません。
実際に人事労務トラブルが発生した場合の鉄則は、当事者に対する事実関係の把握を迅速に行い、事態を悪化させないうちに解決することです。
また、トラブルに関連した処分を下す際は、社内的に納得感のある厳正なものとすべきです。しかるべき外部機関とも、連携できる体制を構築するとよいでしょう。
こうした対応の多くは、労務管理の業務に含まれます。労務管理については、次の記事で詳しく紹介しています。
雇用慣行賠償責任保険を導入する
雇用慣行賠償責任保険とは、不当解雇やセクハラ・パワハラなどが原因で企業側が訴えられ、従業員から損害賠償責任を追及された際に、かかった費用や紛争経費を補償してくれる保険です。パワハラ保険やセクハラ保険と呼ばれることもあります。
当然こういった訴訟は起こらないのが一番です。しかし万が一起こった場合に備えて保険に加入すれば、企業側の負担を軽減できるでしょう。幅広い訴訟内容や業界・業種に対応していますが、業種や規模によっても料金が変わるため、しっかり比較検討を行うことが大切です。
関連したシステムを導入する
労務リスクに関連したシステムの導入も、業務の自動化やサポートが受けられるため労務リスクの回避に役立ちます。たとえば勤怠管理システムであれば、過重労働を早い段階で察知してアラート通知を出せたり、残りの残業可能時間を算出したりといった機能があり、長時間労働の防止に役立ちます。
またストレスチェックシステムであれば、メンタルヘルスが不調な従業員をいち早く発見し、原因の分析も行えるため、早い段階で問題の芽を摘めるでしょう。人的リソースが不足している場合は、こういったシステムの導入もおすすめです。
おすすめ労務管理システム
労務リスクにいち早く気づくために、勤怠管理やメンタルヘルス対策にシステムを導入する企業も増えています。近年はクラウド型システムも増加し、導入しやすくなりました。
前述したように勤怠管理やそれにもとづく給与計算・支給が適切に行われていれば、過重労働や残業代の未払いに気づけて対処できます。またデータを活用すれば、企業全体の働く環境を見直すことにもつながるでしょう。リスク軽減、ひいては生産性向上への寄与も期待できます。
次からはおすすめの労務管理システムを紹介します。
注目の労務管理システム・サービス資料まとめ
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