ゲーミフィケーションとは?意味と事例 - ビジネスに役立つ取り組みの概要
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ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションとは、人が楽しんでプレイできる遊びや競争といったゲーム的な要素や考え方をゲーム以外の分野に応用し、顧客やユーザーとの関係構築に利用しようとする取り組みのことをいいます。
近年はゲームという独特の発想やエンターテイメント性でプレイヤーを活性化させ、顧客に製品の正しい使い方を理解してもらったり、ロイヤルティを高めるために活用したりする企業が増えています。
このゲーミフィケーションについて、その由来や企業への導入事例を紹介していきます。
ゲーミフィケーションの由来
ゲーミフィケーションは、本来私たちの日常生活におけるさまざまな場面や要素をゲーム形式にしてみるという意味の「Gamefy(=ゲーム化)」という単語から派生したものだといわれています。
はじめは海外を中心に使われはじめ、2011年にアメリカの調査会社ガートナー(Gartner, Inc)がデジタル・エコノミーにおけるトレンドを明らかにした「テクノロジーハイプサイクル」に取り上げたことをきっかけに、多くのメディアが注目するようになりました。今では日本でも導入する企業が増えています。
ガートナーによる調査と提言
ガートナーは、IT分野の調査や助言を行う企業で、数々の大手企業や政府機関を顧客にもち、日本にもガートナージャパンとして進出しています。
同社は2012年にゲーミフィケーションに関するプレスリリースを発表しており、そのなかで「2014年までにGlobal 2000企業の70%以上が、ゲーム化されたアプリケーションを少なくとも1つは導入している」との見解を発表しています。
ゲーミフィケーションが注目されている要因
ガートナー社のアナリストは、ゲーミフィケーションが注目されている大きな要因としてメディアで積極的に取り上げられていることや目新しいことを挙げており、これからの5年間で重要なトレンドになると予測していました。
日本ではアメリカの企業で実践されているゲーミフィケーションの影響を受け、自社で独自の取り組みをはじめるケースが増えています。たとえば求人や新人研修、スタッフの仕事のパフォーマンス向上のために社内に導入したり、顧客のロイヤルティを高めたり、マーケティングやリードナーチャリングの目的で活用するケースも多いようです。
ゲーミフィケーションの定義
同社ではゲーミフィケーションを「ゲームのメカニズムを非ゲーム的な分野に応用することで、ユーザーのモチベーションを高めたり、行動に影響を及ぼしたりする幅広いトレンド」と定義しているようです。
顧客であるユーザーにゲーム的な要素を提示して報酬やチャンスを与え、それにチャレンジしてもらうことで単調な作業をエンターテイメント性のある活動に変えたり、製品のチュートリアルを積極的にやってもらったりするといった目的があります。
多くのメディアが「奇抜で新しい発想」といった取り上げ方をしていますが、ゲーミフィケーションはけっして新しい発想というわけではなく、顧客のロイヤルティやマーケティング活動においては、これまでも多くの企業が何らかのかたちで取り入れてきた仕組みが用いられています。
ゲーミフィケーションのトレンドとメリット
ゲーミフィケーションはすでにさまざまな業界で導入され、その効果を発揮しているようです。その世界市場は2012年の2億4,200万ドルから2016年には28億ドルへと成長しています。
この傾向は現在も続いており、今後も企業活動に何らかの形でゲーム的な要素を採用する企業が増えていくと予想されます。
ゲーミフィケーションの市場トレンド
これまでも、特に顧客サービスの一環としてゲームの要素を取り入れる企業はたくさんありました。
それがゲーミフィケーションの概念が登場し、さまざまな導入事例が紹介されるについて、多くの企業が対外的な要素だけではなく、自社の抱えるさまざまな課題を解決するためのツールとして捉えなおすケースが増えています。
生産性の高い仕事をしてもらうために導入する企業が増えている
たとえば、企業で働くスタッフが本当に自社の利益に貢献する仕事に従事している時間は、実は勤務時間の30から40%にも満たないという調査結果があります。金額ベースでみると、特に大手企業では年間30兆円が無駄になるそうです。
多くの企業ではこのコストを何とか削減し、スタッフに生産性の高い仕事をさせるためにはどうすればよいか試行錯誤を重ねてきました。
そこで近年は、このゲーミフィケーションの概念を業務に導入し、新しい技術やスキルを素早く身に着けてもらったり、ゲーム的な要素のもとでスタッフ同士の健全な競争を促し、仕事の生産性を上げていく試みがなされるようになったりしています。
ゲーミフィケーションのメリット
「ゲーム」によって人に行動を起こしやすくさせる
ゲーミフィケーションを導入するメリットとしては、まず人に興味を持たせ続け、それに関わらせ続けたり行動を起こさせたりできることが挙げられます。
ゲームという純粋な楽しみから、競争の要素や達成感が得られるといった、人が熱心に取り組める要素が多く、そこに作用するように設計することにより、ユーザーの興味や関心をひきつけ、継続的にモチベーションやロイヤルティを高めます。
組織・チームとして目標の達成がしやすくなる
また、リアルタイムにフィードバックを得られるため、あらかじめ設定した目標にどの程度近づいているかを可視化でき、実際に目標を達成したときの報酬と組み合わせることで段階的に目標の達成ができるようになる点が挙げられます。
ユーザー同士が互いに協力・競争しながら目標を達成する仕組みがゲームには含まれているので、ゲーミフィケーションをさまざまな活動に取り入れることにより、それまでの上意下達の手法よりも効率的に組織のパフォーマンスを向上させられるでしょう。
ゲーマータイプの分類
ここでゲーミフィケーションを取り入れるうえで有効な手法として知られる「バートルテスト」について紹介しておきます。
バートルテストとは、イギリスの著作家でありゲーム研究者でもあるリチャード・バートルが提唱している「ゲーマー」のタイプを分類する方法であり、これらのタイプを満足させられるような仕組みを作ることでゲーミフィケーションが成功しやすくなるとされており、次の4つの分類があります。
アチーバー(Achiever)
アチーバー(Achiever)は、ゲーム内でのクエストを達成することに満足感を得るタイプの人々です。一定の条件を満たすと得られる称号を収集することに喜びを感じたり、難しい問題や難敵に挑戦したりすることで満足します。自らが主体的にゲームに関わってくれる人々といえるでしょう。
エクスプローラー(Explorer)
Explore(探索)の名のとおり、ゲーム内で探索したり、新しい仕掛けや隠れた要素を発見したりすることで満足感を得る人々をいいます。このタイプは好奇心が強いため、単調な作業の繰り返しが苦手です。常に何らかの新しい要素をゲームに加えることがこのタイプの人々を惹きつけるポイントとなるでしょう。
ソーシャライザー(Socializer)
ソーシャライザー(Socializer)は、他のプレイヤーと積極的に関わることを好む人々です。他のプレイヤーから頼りにされたり、交流しながら何かに挑戦したりすることで満足感を得るタイプといえるでしょう。ゲーム内で積極的にチャットを行う、掲示板にたくさん書き込むといった行動をとるケースが多いです。
キラー(Killer)
キラー(Killer)は、仲間で何かを達成するというよりも、自分が何らかの分野で上の立場に立つことによって満足感を感じるタイプです。たとえば、他のプレイヤーよりも高いレベル、高度なスキルをもっていることを見せつけるような人々です。それがはっきりとわかるように可視化されることにより、強い満足感を得ます。
それぞれのキャラクターを満足させるには?
たんに「ゲームが好き」という人々のなかにもこのようなタイプがあり、これらを理解してゲームの設計をすることによって、多くのプレイヤーにとって長期的に楽しめるコンテンツを作り上げられます。
同じゲームであっても楽しむポイントは人それぞれですから、ゲーミフィケーションをする際には、主な対象と目的がどういうものかをよく考え、主要なプレイヤーが満足できるような要素を取り入れることが重要となります。
ゲーム以外でもさまざまな応用が可能なタイプ分類
また、バートルテストにおける4つのプレイヤータイプは、ゲーム外でも当てはまることが多々あります。たとえばスタッフの志向の把握や、顧客のタイプ分類にも使える指標として知られています。
今現在展開しようとしているマーケティング施策や社内教育制度などが、それぞれのタイプに対してどういう効果を与えるのかをという視点で考えられれば、その成果をより高められるようになるでしょう。
自社の施策にゲームの要素を取り入れる際には、ぜひこのタイプ分類を活用してみてください。
ゲーミフィケーションを実現するためのポイント
次に、ゲーミフィケーションを実現するために重要なポイントについて解説します。
(1)目的・課題を明確にする
ゲーミフィケーションを有効に活用するためには、まず目的や課題を明確にしておかなければいけません。目的や課題がなく曖昧なままでは、その成果をフィードバックできなくなりますし、そもそも何のためにやっているのかが、わからなくなってしまうでしょう。
まずは目的を明らかにし、それを達成するためにどのようにゲーム要素を取り入れ、具体的な下位目標を設定するかを考えるようにしましょう。特に目標の達成に関しては具体的に数値で達成の可否が判断できるようにしておかなくてはなりません。
(2)現状の可視化による把握
なるべく現状を可視化して客観的に把握することも重要となります。特に達成すべき課題と現状とのギャップを数値で可視化できれば、今の状況を客観的に把握でき、クリアすべき課題が明確になります。また、可視化することによって、適切なフィードバックを得られるようになります。
(3)ストーリー性をもたせる
単純にゲーム要素を取り入れるだけでは、ユーザーに楽しんでもらえるものにはなりにくく、強いエンゲージメントを構築できません。そもそも「ゲームとはどういうもので、どういう構成をしているか」を全体的な視点で観察し、そこにストーリー性を感じられるものにする必要があるでしょう。
メンバーと協力して難題を乗り越え、これまでなかった試みによって新しい価値を生み出すといった「一貫したストーリー」をユーザーに認識させることにより、徐々にステップアップしていく満足感を与えられるようになります。細かいコンテンツを考える際には、上述のゲーマータイプの分類が役に立つでしょう。
(4)即時にフィードバックする
チーム内で他のメンバーからの承認や称賛を含むフィードバックを得られる仕組みにすることも重要です。ゲーム内のアクションに対する適切なタイミングでのフィードバックは、そのメンバーをやる気にさせ、長期的なモチベーションを維持するための原動力となるでしょう。ゲームに取り組みながら自己効力感を高められる仕組みにより、多くのプレイヤーが積極的に他のメンバーに協力しようとする環境がつくられます。
(5)達成感と報酬を与える
ゲーム内でのミッションを達成したり、ゴールしたりすることにより、報酬がもらえるシステムにした方がよいでしょう。報酬は金銭に限らず、日ごろの業務に関するモノや心的なものでも構いません。
達成感や達成に付随する魅力的な報酬は人のモチベーションを高め、より高みを目指そうとする人間心理を刺激することで、ゲーム要素をさらに活性化できるようになります。
(6)ソーシャルとの連携をとる
近年はゲームプレイに関するさまざまな情報がSNSで頻繁にやり取りされています。ソーシャルゲームでも、提供会社以外の人が主体的に攻略サイトを立ち上げたり、独自の攻略情報をブログで積極的に発信したりしています。
そういった流れは一般的なゲームに限らず、企業が取り入れるゲーミフィケーションでも活かせられるでしょう。たとえば企業同士で成績を競い合ったり、ランキング形式にしたりすることでライバル意識を高揚させたりすることで、スタッフ同士の積極的な情報交換を促せます。
ゲーミフィケーションの事例
最後に、企業におけるゲーミフィケーションの活用事例について簡単に紹介しておきましょう。
日本コカ・コーラの事例:「ハピクエ」
日本コカ・コーラでは2011年から全国の自動販売機を利用した「ハピクエ」というプロモーションサービスを開始しました。これは全国にある各々の自販機に貼られたQRコードを利用して「ハピクエ」サイトにアクセスし、自販機とコミュニケーションをとれるというものです。
いわば自販機の擬人化ともいえる奇抜な試みとして注目され、特定のグループに属する自販機と継続してコミュニケーションをとることで特典が得られ、特別なバッジが付与されるといったサービスによってリピート率を高めることに成功しています。
NIKEの事例:「Nike+ Running」
世界的なスポーツ用品メーカーとして知られるNIKE(ナイキ)の提供している「Nike+」もゲーミフィケーションの例として知られています。ユーザーは「Nike+」に登録することで運動する時間やカロリー削減目標などを設定でき、日ごろの成果を世界中の人々と比較し、友人同士でシェアできます。
専用のアプリ(Nike+ Running)によってリアルタイムに走行距離や消費カロリーを計測でき、自分専用のトレーナーとして具体的なトレーニングの指導もしてくれます。こういった無料サービスに付随して同社のセンサー付きシューズやリストバンドなどの売れ行きが好調なようです。
くら寿司の事例:「ビッくらポン!」
大手回転寿司チェーンのくら寿司では食べ終わった皿を5皿ためるとできるガチャガチャ「ビッくらポン!」を導入しています。「あたり」が出ればユニークな景品やおもちゃがもらえるため、特に家族連れのお客に人気を博しています。
もう少しでゲームにチャレンジできるというお客さんが追加で注文することが多くなり、安定した売り上げアップに役立っています。また、店舗全体の活性化や雰囲気の向上にも寄与し、ゲーミフィケーションの成功例と言えるでしょう。
ロレアルの事例:「REVEAL by L’OREAL」
世界最大の化粧品会社ロレアルグループでは、2010年にオンラインゲームの要素を強めた「REVEAL by L’OREAL」という新卒向けのサイトをオープンし注目を集めました。
これは応募学生がロレアルへの入社疑似体験ができるというもので、学生達は同社の架空の社員となることで、新商品開発などの重要な仕事をゲーム的な感覚で体験できます。実際の現場で力を発揮できる人材を早期に発掘することが狙いです。
学習サービス: 「Progate」
オンラインプログラミング学習サービスの開発・企画・運営を行うProgateでは、初心者が楽しみながらプログラミングを学習できる環境を整えています。
たとえば、ブラウザ上でゲームを楽しむ感覚で高度なプログラミングスキルを獲得できるように課題のプログラミングをクリアすることでレベルが上がります。まさにゲーム感覚でプログラミングスキルを高めていけるサービスだといえます。
ゲーミフィケーションのメリットを理解し、自社プロジェクトに取り入れる
近年、多くの企業で注目されているゲーミフィケーションについて、基本的な考え方や導入のポイント、実際の導入事例を解説してきました。
ゲームの要素は工夫次第でさまざまな分野に取り入れられ、具体的な導入プロセスも多くの事例から学べます。企業にとっては対外的にも体内的にも活用できる概念ですから、ぜひ自社の具体的な業務に取り入れてみてください。
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