接触確認アプリ「COCOA」、動作の仕組みは? プライバシーは?新型コロナ
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新型コロナ「接触確認アプリ」配布スタート
厚生労働省が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止策の1つとして、スマートフォン用の「新型コロナウイルス接触確認アプリ」を6月19日にリリースした。
このアプリを使うと、COVID-19陽性者と濃厚接触した可能性があるかどうか自分で確かめられる。可能性が高ければ用心のため外出を控え、さらに感染の疑われる症状があれば医療機関を受診するといった対応がとれる。うまく利用すれば、ほかの人に感染させる危険性を下げられるだろう。
今回は、個人情報を守りつつ接触情報を伝えようとするこのアプリの仕組みを解説する。
1m以内、15分以上の接触を通知
厚労省の新型コロナウイルス接触確認アプリは、スマートフォンのBluetooth通信機能を利用し、インストールされたスマートフォン同士が近づいたかどうかチェックしている。COVID-19陽性者と濃厚接触した可能性があるなら、そのことをアプリ利用者に通知し、注意を呼びかける。
アプリの使い方
アプリの接触確認機能は、今使っているスマートフォンで自動開始されるわけでないことに注意しよう。各自がiOS(iPhone)用またはAndroid用のアプリをスマートフォンにインストールし、Bluetooth通信機能を有効にすることで、初めて接触確認が始まる。
アプリの機能しているスマートフォン同士を1m程度の距離に近づけたまま15分以上経過したら、濃厚接触とされる。この段階では、これらスマートフォンの持ち主が陽性者かどうかに関係なく、単に接触したとの情報が各スマートフォン内に記録される。
陽性者は自ら申告する仕組み
COVID-19と疑われる症状を自覚した人は、医療機関でPCR検査などを受けることになるだろう。検査の結果が陰性だった場合は、何もする必要はない。
アプリ利用者で陽性と診断された人は、「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」に自分の電話番号とメールアドレスを登録し、管理用の「処理番号」を発行してもらう。そして、厚労省の「通知サーバー」へ陽性者となったことをアプリ利用者が自ら登録する。検査機関や医療機関などから登録されることはない。
通知サーバーへの陽性確定登録は、アプリに処理番号を入力して行う。これを受け、通知サーバーはHER-SYSに対し、登録操作が行われたとして処理番号で照会をかけてHER-SYSからの結果を得る。
こうしてあるアプリ利用者を陽性者と確認した通知サーバーは、その利用者と接触したかどうか調べるための情報をほかの利用者のアプリへ配信する。
陽性者と接触したか調べる
通知サーバーから配信される情報には、陽性となったアプリ利用者の位置情報は入っていない。あくまでも、ほかのアプリ利用者のスマートフォンと接触した際に交換した「接触符号」などが含まれるだけだ。
配信された情報をアプリが受け取ると、この情報から陽性者の接触符号を生成し、一致する接触符号が自アプリ内に保存されているかどうか調べる。一致するものがあれば、そのアプリ利用者は陽性者と1m以内の距離で15分以上接触していた、と判断できる。ただし、接触した日付が表示されるだけで、時刻や場所、接触した陽性者の身元は分からない。
また、アプリは接触の有無確認を勝手に実行しない。アプリ利用者が、アプリ内の「陽性者との接触を確認する」ボタンをタップすると、判断処理が起動される仕組みである。つまり、アプリ利用者自身が確認作業を行わない限り、接触の有無は知らされない。アプリから接触の事実がポップアップ通知されたりはしない。
もし接触が確認されたら?
陽性者との接触が確認されたアプリ利用者は、症状の有無をアプリに入力する。症状がなければ、2週間以内に接触のあった家族や友人、職場の人などに感染者または感染が疑われる人の有無が鍵になる。そうした人に心当たりがないのなら、濃厚接触の可能性は低い。念のため、潜伏期間とされる14日間の体調変化に注意していればよい。
症状があったり、濃厚接触の可能性が高かったりするアプリ利用者には、帰国者・接触者外来センターなどで速やかに受診するよう案内される。センターに電話をかけるボタンもアプリに用意されている。
プライバシーは侵害されないのか
この種のアプリをスマートフォンにインストールすると、いつどこへ行き、誰と会ったかといったプライバシーが政府に侵害されそうで心配だ。しかし、厚労省は「行政機関や第三者が接触の記録や個人の情報を利用し、収集することはありません」などとしている。
個人を特定できない
厚労省の説明によると、このアプリは電話番号や位置情報といった情報を記録しないので、インストールして使っている個人を特定できないという。また、ほかのアプリ利用者との接触情報はスマートフォン内だけに保存され、14日経過すれば自動的に消去される。もちろん、誰と接触したか、という情報も記録されない。
それでも不安なら、アプリをアンインストールするとよい。アンインストールにより、保存した接触情報がスマートフォンから削除されるそうだ。
誰と誰が接触したかも分からない
陽性者とほかのアプリ利用者が接触したかどうかの判断は、通知サーバーからアプリに配信される情報を使い、アプリ内で行われる。通知サーバー側には、陽性者と誰が接触したかを知るすべがない。もちろん、陽性者が誰なのかも分からない。
通知サーバーに保存されるデータは、陽性者の暗号化情報だけだ。しかも、このデータは、接触通知の判断に使われる情報を配信した後で削除される。
ソースコードは検証可能
アプリはオープンソースプロジェクト「Covid-19 Radar」で開発が進められており、ソースコードが公開されている。したがって、記録されたりサーバーに送られたりする情報の内容は、ソースコードを読めば検証可能だ。厚労省の説明した通りの動きをするかどうか、誰でも確かめられる。
従業員が接触したら企業はどう対応?
企業としては、従業員のなかから症状のある人や感染の疑われる人、陽性者と接触した可能性のある人が出たらどうするべきだろう。そのような場合、厚労省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」が参考になる。
まず、熱や咳がある人には休むよう呼びかけてほしいとのことだ。テレワークや時差通勤の実施に役立つ情報や、各種支援策の情報もQ&Aページで手に入る。雇用調整助成金や休業手当に関する解説は、目を通しておいた方がよい。
このアプリを使えば、陽性者と接触した可能性を知ることができ、外出を控えたり、適切な検査を受けたりして、感染拡大を防止できるかもしれない。社内で感染の疑われる状況が発生した場合も、従業員などに対して早め早めの対応が可能になる。アプリをインストールする人が多ければ多いほど感染拡大を防ぐ効果が強まるので、上手に活用していきたい。
在宅勤務が続くとコミュニケーションが減り、体調不良も検知しづらくなる。Web会議システムやビジネスチャットを活用して風通しのよい雰囲気をつくりつつ、アンケートツールで定期的に状況を吸い上げるなどして、従業員をフォローする仕組みも必要だ。
接触確認アプリダウンロードURL
iPhone用、Android用アプリともに、公式ストアからダウンロードできる。
なお、公開日6月19日から1か月間は「プレビュー版」で、デザイン、機能改善のためアップデートが入る。ストアを通じて最新版へアップデートするよう、厚生労働省は案内している。アプリを削除し再ダウンロードすると、接触履歴データが削除されるとのこと。
参考)厚生労働省「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)COVID-19 Contact-Confirming Application」