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生産性低下はICT投資不足から? 国際調査で日本は最下位 - ウィズコロナ時代の在宅勤務

最終更新日:(記事の情報は現在から1574日前のものです)
在宅勤務での生産性がオフィスより低いと考える人の割合が、諸外国では13%だったのに対し、日本は40%と大きな差があります。テレワーク環境を構築するためのICT投資額も日本は最低レベル。ウィズコロナ時代、リモートワーカーを取り入れて企業の成長を促すには、ICT環境整備にもっと注力する必要がありそうです。

在宅勤務は“定番”に

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策として、多くの企業がテレワーク(リモートワーク)による在宅勤務を実施しました。なかには、勤務スタイルをオフィス中心から在宅中心へ見直したところもあります。

COVID-19拡大は今も続いていて、感染を防ぐには在宅勤務が避けられない状況です。在宅勤務中の作業効率を上げ、生産性を高める方策を考えることが大切でしょう。そのための手段として、作業者のICT環境を整備する必要がありそうです。

国際調査でみる、在宅勤務の生産性

COVID-19パンデミック対策で在宅勤務を経験した人々は、どんな意見を持っているでしょう。経験者の考えを知れば、生産性向上につながるヒントが得られるかもしれません。

そこで、2020年5月に世界10カ国(日本、米国、ブラジル、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、中国、インド)で実施された、レノボ・グループの在宅勤務に関する意識調査「Technology and the Evolving World of Work」をみていきます。

在宅勤務の方が生産性高い「63%」

過去3カ月間に日々の働き方が変わったかどうか尋ねたところ、72%が変化したと回答しています。全面的な在宅勤務や、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせるハイブリッド勤務に移行した人が多いようです。

年代別では、Z世代(この調査では18歳から24歳)が75%、ミレニアル世代(同25歳から42歳)が76%、中年(同43歳から55歳)が67%、56歳以上が65%となり、若年層ほど変化を経験していました。

在宅勤務では、仕事に集中できていたのでしょうか。調査対象の10カ国平均で63%の人が、生産性は在宅勤務の方がオフィス勤務より高い、と答えました。そう回答した人の割合は、国別だとインドが83%でもっとも高く、以下ブラジルの69%、米国の66%と続きます。

生産性が高いと考える人の多い影響か、全体の52%が、今後ソーシャルディスタンスを確保する必要はなくなっても在宅勤務の頻度がCOVID-19以前に比べ増える、と回答しました。

自宅の環境整備に平均273ドル支出

自宅でオフィスより効率よく作業するには、ある程度以上の性能を備えたPCや通信回線が必要です。性能が不十分だったり、そもそもPCや通信回線がなかったりした人は、ICT環境を整備するところから始めなければなりません。

レノボの調査によると、COVID-19拡大防止策として在宅勤務する際、70%人がスムーズにテレワークできる環境を整えるために新たな機器を購入するなどしたそうです。全体の平均支出額は273ドル(約2万9,208円)で、国別の平均支出額はドイツが381ドル(約4万763円)で最多。続いて、米国が348ドル(約3万7,233円)、イタリアが340ドル(約3万6,397円)、英国が339ドル(約3万6,290円)でした。

機器購入などの支出をした人のうち、勤務先企業に全額負担してもらったのは61%。残る39%は、一部負担してもらったか、全額を自己負担したとのことです。また、全体の79%は、在宅勤務に必要なICT環境を自分で設定しなければならなかった、と答えています。

椅子や外付けディスプレイも重要

在宅勤務で生産性は向上する一方、体調不良を訴える人も多く発生しました。具体的には、71%が頭痛や肩こり、首や背中の痛み、睡眠障害、眼精疲労を新たに発症もしくは悪化させた、としています。

在宅勤務に必要な器材は、ICT機器に限られません。体に負担のない姿勢で作業できるよう、椅子とテーブルが重要です。ノートPCに外付けディスプレイを接続すると、作業効率が上がり、疲れにくくなります。休憩も必要です。ときどき立ってストレッチしたり、コーヒーブレイクを設けたりするのもよいでしょう。

日本は生産性もICT投資も最低レベル

レノボ・ジャパンは、この調査レポートをベースにして、日本で行われた在宅勤務の特徴や課題を整理して発表しています。

ICT投資は10カ国中最低

2月から5月にかけて在宅勤務へのシフトが進んだとの回答が、日本では43%にとどまりました。これは10カ国中最低の割合です。さらに、40%の人が在宅勤務の生産性はオフィス勤務より低いとし、10カ国平均の13%と大きな差があります。

レノボ・ジャパン調査結果グラフ 出典:レノボ・ジャパン / Withコロナ時代、在宅勤務の拡大にテクノロジーが貢献

日本で在宅勤務の生産性が上がらない要因として、67%の人が勤務先企業の不十分な対ICT投資を挙げています。在宅勤務の開始時に機器購入費用を全額負担してもらえた人は31%で、10カ国平均の半分ほどとなり、10カ国中最低でした。

なお、勤務先からの補助がなく自己負担を強いられるせいか、支出額は132ドル(約1万4,131円)しかありません。これも10カ国中最低です。

レノボ・ジャパン調査、コロナ禍でのICT機器拠出額グラフ 出典:レノボ・ジャパン / Withコロナ時代、在宅勤務の拡大にテクノロジーが貢献

ツール活用も不十分

そのほかに指摘された生産性の上がらない理由には、「家庭生活と業務の線引きが難しく集中できない」(31%)、「新テクノロジー導入時のトレーニング不足」(20%)が挙げられました。在宅勤務の環境に対しては、「データ流失の懸念」(61%)を指摘する声もあり、セキュリティに関する不安も大きいようです。

テレワークのセキュリティ対策に必要なツールは?

そして、同僚とのコミュニケーションが在宅勤務で難しくなったと考える人が、51%いました。それにもかかわらず、ビデオ会議を活用している人は53%、メッセージングアプリを活用している人は44%と高くありません。

コミュニケーション課題を解決するには?

何よりもまずICT環境へ投資を

調査対象となった10カ国のなかで、日本は在宅勤務の環境が特に整っていないように感じます。ただし、程度の差はあれ、どの国でも在宅勤務で使うICT環境の整備、セキュリティ確保、同僚とのコミュニケーション、ワークライフ・バランスの維持が課題のようです。

したがって、日本に限らず在宅勤務を普及させ、その生産性を高めるには、何よりもまずICT環境への投資、セキュリティの確保、各種ICTツールを使いこなすためのトレーニングが必要でしょう。そうした問題の多くは、適切なテクノロジーを導入することで解決できるはずです。

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