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リモートでも全社員のコンディションを把握できるSaaSとは? サイバーエージェント流人事術

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2020年度の決算で過去最高売上高を記録したサイバーエージェント。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全社でリモートワークを推進することとなり、現在はオフィスへの出社と併用した勤務体系をとっている。同社の人事データ統括室で責任者を務める堤 雄一郎氏に、コロナ禍でのSaaS活用やシステム選定・運用プロセスについて聞いた。

「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンのもと、メディア、広告、ゲーム、そしてテレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA(アベマ)」などの多様な事業展開を行う株式会社サイバーエージェント。

2019年には、複数拠点に分散していたオフィスを渋谷区宇田川町の「Abema Towers(アベマタワーズ)」および渋谷駅直結の「渋谷スクランブルスクエア」の2拠点へ統合、移転した。

その翌年、新型コロナウイルス感染拡大防止のため一時全社リモートワークを推進することとなったが、2020年度の通期決算において連結売上高は過去最高の4,785億円を記録し、強固な経営体質を示した。

2020年末を迎えようとする現在は、リモートワークとオフィスへの出勤を併用した勤務体系をとっている。同社で人事データ統括室の責任者を務める堤 雄一郎氏に、コロナ禍でのSaaS活用やシステム選定・運用プロセスなどについて聞いた。

株式会社サイバーエージェント 人事データ統括室 室長 堤 雄一郎氏 サイバーエージェント流、リモート時代の人事術とは?

インタビューイー
株式会社サイバーエージェント 人事データ統括室 室長 堤 雄一郎氏
全社人事機能を持つ人事管轄に所属。人事関連のシステム開発や導入による業務のスマート化、人事データ整備活用などを行う人事データ統括室の責任者を務める。

新しい日常での働き方を模索

新型コロナウイルス感染拡大のため、サイバーエージェントでは2020年3月に全従業員が一斉にリモートワークを行う勤務体制となり、緊急事態宣言が明けた5月末まで続いた。

現在は特定の曜日(月曜と木曜)をリモートワークの日とする「リモデイ」を運用しながら、社会の状況に合わせて全社でのフルリモートを随時実行できる体制を整えている。

長期化するリモート、発生した懸念

チャットやビデオ会議などのツールなどは以前から利用していたため、フルリモートへの移行は日々の業務に大きな影響を与えることはなかった。しかし、社員間のコミュニケーションに関する懸念が新たに生じたという。

堤氏は「弊社では社員間のコミュニケーションを重視しています。懇親会の費用を負担したり、部活動をしたりと、社員同士の交流が積極的に行われる文化があり、これらがチームワークの基礎となっているのです。

しかし、リモートワークではこのような活動が抑制されますので、『社員間の関係性貯金の減少』が懸念されるようになりました」と述べる。

オフィスに出社していれば、仕事の話だけでなく、ちょっとした雑談もある。仕事帰りに食事に行くこともあるだろう。しかし、リモートワーク環境では仕事の話ばかりに終始し、社員同士の関係性が弱まってしまいがちだ。

また、個人の生産性だけに着目してしまうと、成果主義や個人主義が進み、サイバーエージェントの強みのひとつである組織のチームワークや熱量、一体感が損なわれる恐れがあるというのだ。

働き方のアイデアを発信・共有

そこで同社では2020年4月に、新しい働き方を定義するべく「次世代ワーク推進室」を設立した。担当役員である専務執行役員の石田裕子氏を中心に、各事業部から選ばれたメンバーによる全社を横断した組織で、堤氏もその一員だ。

定期的にミーティングを行い、従来のコミュニケーション重視のカルチャーを保ちつつ、新しい日常のなかで生産性を向上するための策を議論している。

「次世代ワーク推進室」について説明する堤氏 「次世代ワーク推進室」について説明する堤氏

「各事業部が独自に実施している組織の活性化対策を共有しています。たとえば、多人数のビデオ会議ツールでは、途中に少人数のグループワークを入れて、また全体が集まって議論するというような使い方ができるものもあります。

コロナ以前はあまり使っていなかった機能でも、リモート環境下でさまざまな使い方が試され、会議の進行が洗練されています。次世代ワーク推進室は、こうした活用方法を全社に共有しています」(堤氏)

ほかにも、ビデオ会議ツールを使ったオリジナルワイドショーの配信やチャットツールによるリレー式の自己紹介など、各事業部で取り組んでいる社員間で相互理解を高めるためのさまざまなアイデアを紹介しているという。

リモートで役立ったSaaSは「GEPPO」

コロナ禍において役立ったSaaSについて堤氏に聞くと、従業員コンディション発見ツールの「GEPPO(ゲッポウ)」を挙げた。

GEPPOはサイバーエージェントが独自に開発したツールで、その後サイバーエージェントとリクルートの合弁会社であるヒューマンキャピタルテクノロジーがSaaS版の「Geppo」として外販している。毎月3問程度の簡単な質問に回答することで、個人と組織の課題を可視化するツールだ。

社員全員のコンディションをチェック

GEPPOでは、従業員が設問に対して5段階の天気のアイコンを選ぶことで回答し、その都度自由にコメントも投稿できる。

サイバーエージェントでは、GEPPOを利用して毎月初めにアンケートを行っており、社員のコンディションやキャリア志向、趣味や興味分野、課題などを集めている。それらの情報を把握・蓄積することで、適材適所や抜擢人事に加え、離職防止などに役立てているのだ。

「GEPPO」の設問画面のイメージ 「GEPPO」の設問画面イメージ(画像提供:サイバーエージェント)

質問は、個人のパフォーマンス、チームのパフォーマンス、そして、その時の状況に応じた設問の3つ。たとえば、フルリモート勤務になった時期なら、そのことについて尋ねる。自由にコメントする欄があるものの、アイコンを選ぶだけなら30秒くらいで回答が終わるので、ほぼ全員の回答が集まるという。

「コロナ以前からGEPPOを活用していますので、リモートワーク環境においても変わりなくコンディションの把握ができています。

コロナという未曾有の事態に不安を感じていた社員もいました。顔を合わせられない環境の中で全社員の声をリアルタイムに集められたのは、すでにGEPPOが社員の中でも定着していたからです。改めてGEPPOを運用しておいてよかったと思っています」(堤氏)

GEPPOで従業員と経営陣との距離を縮める

GEPPOへの回答はすべて実名にて行われる。従業員の本音を捉えることを重視しているため、回答内容を直属の上司が見ることはない。結果を見られるのは、キャリアエージェントと呼ばれる社内のヘッドハンターチームと役員のみだ。

GEPPO導入の背景には、組織拡大による、経営層と社員との距離感の解消があった。同社には以前から役員と社員の距離が近いという特徴があるが、従業員が増えるに従ってその関係維持が難しくなっていったという。そこで社員の本音を経営陣が把握できるツールとしてGeppoの運用が始まったのだ。

「集まったデータはキャリアエージェントがまとめ、毎週開催される役員会に提出されます。フリーコメントは毎月1,000件くらい届き、それらにはすべてキャリアエージェントが返答しています。気になる人とは面談をすることもあります。

また、キャリアエージェントは事業部からの要請や個人の希望にあわせて社内の抜擢人事を行っており、年間およそ200名の人事異動支援をしています」(堤氏)

社内ヘッドハンター「キャリアエージェント」の概要 社内ヘッドハンター「キャリアエージェント」の概要(画像提供:サイバーエージェント)

従業員からの回答によって、個人の状態だけでなく、チームの状態も確認できるのがGEPPOの良い面だ。たとえば、マネジメント層が「うちのチームの状態はすごくいい」と思っているが、GEPPOの結果ではそうなっていない場合もある。

このように、従業員の本音からわかる組織の状態をキャリアエージェントたちが即座に捉え、従業員やマネジメント層それぞれにアプローチし、強い組織作りに役立てているのだ。

SaaS選びは、安全性・機敏性を重視

サイバーエージェントでは、GEPPO以外にもさまざまなツールを活用しているが、その導入のパターンを堤氏に聞くと、大きく2つの流れがあるという。

そのうちの1つが、システム部門による全社にまたがった導入と、事業部単位での導入だ。今回は、堤氏の所属する人事データ統括室におけるシステム導入プロセスについて聞いた。

導入の速さからSaaSを優先して検討

人事データ統括室は、主に人事向けのシステム導入を担当しており、さまざまな人事業務の課題に対して、1.現状維持、2.業務フローのみ改善、3.SaaSの導入、4.SaaS活用による半内製開発、5.フルスクラッチでの内製開発など、どんなアプローチが最適かを協議して決定する。

「導入の速さや保守工数の低さなどから、内製よりもSaaSで課題解決ができないかを優先的に検討します。その際、セキュリティや緊急度、ユーザーの範囲、コストなどを多面的に検討します。

メンバーからSaaS導入の要望が来たら、ほかの選択肢も吟味しながら、複数のサービスの資料を集めて機能やコストを比較します。その後サービス提供社から話を聞き、トライアルを経て採用を決定したら、役員の決裁をあおぐというプロセスです」(堤氏)

関係者のコミットが早期運用の鍵

人事データ統括室によって最近導入されたSaaSの1つに、健康診断管理システムがある。従業員の個人情報や健康情報といった機微な情報は、取り扱いを厳しくしなければならない。こうしたツールはセキュリティ要件を最上位概念とするため、慎重に吟味された。

一方で導入スピードも重視しており、あまりクリティカルな情報を取り扱わず、コストも低いものなら即決もあるという。

ツールを導入したあとは、従業員が速やかに運用できるようになることも重要だ。新しいSaaSを従業員が使いこなせるようになる秘訣は、早い段階から関係者を巻き込むことだと堤氏は述べた。

「課題があってのツール導入ですので、課題の当事者と密にコミュニケーションをして、選定段階から関わってもらえば高い導入効果を得られます。

選定に関わっていないユーザーに対しては、導入説明時のマニュアルやスライドを工夫します。わかりやすい内容にするため、デザインチームに制作を依頼するなど、社内資料であってもクリエイティブにこだわります」(堤氏)

データを活用し人と組織を成長させる人事へ

SaaS導入プロセスや今後の展望について語る堤氏 SaaS導入プロセスや今後の展望について語る堤氏

10月からサイバーエージェントは新しい期に入った。人事部門が掲げた新しいビジョンは「日本で一番データに強い人事を創る」だ。

同社の人事部門はカルチャー形成や運用面に強みを持っているが、データ整備や分析活用に関してはさらなる伸びしろがあると感じているという。直近ではペーパーレスやはんこレス、オペレーション改善などを徹底して行なっていたという。

最後に今後の取り組みについて堤氏に質問すると、次のようにコメントした。

「現在、人事に関する適切な数値やデータをすぐに取り出して分析できる新しいダッシュボード環境の構築を進めています。

人材に関するデータを一元管理し、採用や人事の判断をデータに基づいた科学的なものにすることで、より精度の高い適材適所の実現や組織成果を高めていきたいですね。

もちろん、環境だけでなく、それを活用し、分析できる人材の育成も重要です。事業を理解したうえで、データを的確に扱える人員を育成する社内検定も用意したいと思っています」

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