ABC分析とは?在庫管理におけるメリットや手順、注意点

目次を閉じる
ABC分析とは
ABC分析とは、商品や顧客を重要度に応じてA、B、Cの3つのグループに分類し、それぞれに適切な戦略を立てるための分析手法です。
在庫管理や顧客分析などに用いられ、限られたリソースを効率的に活用することで、最大の効果を得ることを目的としています。この分析によって、どの商品に注力すべきか、どの顧客を優良顧客として育成すべきかなど、経営戦略における重要な判断材料を得られます。
近年のビジネス環境は、顧客のニーズの多様化、商品のライフサイクルの短縮化、競争の激化など、企業にとって非常に厳しい状況です。このような状況下では、限られた経営資源を効率的に活用し、最大の成果を上げる必要があります。
ABC分析は、まさにそうした課題を解決するための有効な手段として、多くの企業で導入が進んでいます。
ABC分析と関連が深いパレートの法則
パレートの法則は80:20の法則とも呼ばれ、全体の結果の80%は、全体の要素の20%によって生み出されているという経験則です。これは、19世紀のイタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが提唱しました。
この法則は経済活動をはじめ、さまざまな現象に当てはまることが知られています。たとえば企業の売上の80%は、上位20%の商品が生み出している、といったケースです。
ABC分析は、このパレートの法則を応用した分析手法であり、商品や顧客を重要度に応じて分類することで、経営資源の効率的な配分を可能にします。
ABC分析を用いることで、企業は、限られたリソースを重点的に投入すべき重要度の高い商品や顧客を明確にできるでしょう。これにより、在庫管理の効率化、マーケティング戦略の最適化、顧客満足度の向上など、さまざまな効果が期待できます。
ABC分析のメリット
ABC分析を導入することで、在庫管理の最適化、マーケティング戦略の強化、顧客との良好な関係構築など、さまざまなメリットを得られます。それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
在庫管理の最適化
ABC分析を用いることで、在庫管理を最適化し、保管コストの削減や在庫切れの防止につながります。Aランクの商品は、売上への貢献度が高いため、在庫を十分に確保することが重要です。
Bランク商品は、AランクとCランクの中間に位置するため、需要の変動に合わせて在庫量を調整します。Cランク商品は売上への貢献度が低いため、在庫量を最小限に抑えることで、保管コストを削減できます。
この結果、倉庫のスペースを有効活用できるようになり、在庫管理にかかる業務の効率化も可能です。さらに、適切な在庫管理は、機会損失の削減にもつながります。
必要なときに必要な商品を必要な量だけ供給することで、在庫管理のコストを抑えつつ、顧客満足度を高められます。
マーケティングの強化
ABC分析は、マーケティング戦略の強化にも役立ちます。Aランク商品は売れ筋商品であるため、積極的にプロモーションを行うことで、売上をさらに伸ばせるでしょう。
Bランク商品はAランク商品ほどではないものの、一定の需要が見込まれるため、販売戦略を工夫することで、Aランク商品へのステップアップを促進します。
Cランク商品は売上への貢献度が低いため、販売戦略の見直しや、場合によっては販売を中止するといった判断も必要です。
これにより、マーケティング費用を効果的に活用できるようになり、投資対効果(ROI)の向上につながります。さらに、市場のトレンドを把握し、顧客のニーズに合わせた商品開発や販売戦略を立案することで、競争力を強化していけます。
顧客の育成やフォローの強化
ABC分析は、顧客の育成やフォロー体制の強化にも活用できます。顧客を購買金額や購入頻度などに応じてランク分けすることで、それぞれに最適なアプローチが可能です。
Aランク顧客は優良顧客であるため、特別なサービスや特典を提供することで、顧客ロイヤルティを高められます。Bランク顧客はAランク顧客になる可能性を秘めているため、積極的なコミュニケーションを図り、関係性を深めていくことが重要です。
Cランク顧客は購入頻度が低い顧客であるため、ニーズを把握し適切な商品やサービスを提案することで、購買意欲を高めることが必要です。
これにより、顧客満足度を高め、長期的な関係を構築していけます。顧客ロイヤリティの向上は、リピート購入の増加や口コミによる新規顧客獲得など、企業の収益拡大に大きく貢献します。
ABC分析の手順
ABC分析を行うには、いくつかの手順を踏む必要があります。具体的な手順を把握し、正しく分析を進めることで、より効果的な結果を得られます。
売上データの収集と並び替え
まずは、分析対象となる期間の売上データを収集します。過去の販売実績やPOSデータなどを活用し、商品ごとの売上金額を正確に把握しましょう。
データ収集後は、売上金額の高い順に商品を並べ替えます。Excelをはじめとする表計算ソフトを利用すると、効率的に作業を進められます。
この作業により、どの商品が売上に大きく貢献しているのか、全体像を把握できます。後の分析作業をスムーズに行うためにも、正確なデータ収集と並べ替えが重要です。
商品ごとの売上構成比の算出
次に、各商品の売上構成比を計算します。売上構成比とは、各商品の売上が、全体の売上高に占める割合のことです。
計算式は、「(商品の売上高) ÷ (全体の売上高) × 100」です。
この計算をすべての商品に対して行い、それぞれの売上構成比を算出しましょう。
売上構成比を算出することで、各商品が売上全体にどの程度貢献しているのかを数値で把握できます。この数値は、後のグループ分けの際に重要な指標となります。
累積構成比の算出
商品ごとの売上構成比を算出したら、次は累積構成比を計算します。累積構成比とは、売上構成比を上位の商品から順に足し合わせていった値のことです。
たとえば、売上構成比が上位3つの商品がそれぞれ20%、15%、10%だった場合、累積構成比は順に20%、35%(20%+15%)、45%(20%+15%+10%)です。
累積構成比を算出することで、上位の商品が全体の売上高にどの程度貢献しているのかを把握できます。ABC分析では、この累積構成比を基準に商品のグループ分けをします。
商品のグループ分け
最後に、累積構成比に基づいて商品をA、B、Cの3つのグループに分けます。一般的には、累積構成比が70%程度までの商品をAランク、70%~95%程度までの商品をBランク、残りの商品をCランクとします。
ただし、この基準はあくまでも目安であり、業界や企業の特性によって調整が必要です。
商品をグループ分けすることで、それぞれの重要度を明確化し、適切な在庫管理やマーケティング戦略を立てられます。ABC分析の目的は、このグループ分けによって、経営資源を効率的に活用することです。
ABC分析の注意点
ABC分析は、在庫管理やマーケティング戦略において非常に有効な手法ですが、いくつかの注意点があります。これらの注意点を理解することで、より正確で効果的な分析を行えます。
一過性の商品や季節商品を考慮する
ABC分析を行う際は、一過性のブームや季節要因によって売上が変動する商品に注意が必要です。たとえば、ある時期に話題になった商品は、一時的に売上Aランクになるかもしれませんが、ブームが去ればCランクになる可能性もあります。
季節商品は、特定の時期にのみ売上が集中するため、年間を通して分析を行う場合は注意が必要です。
これらの商品を通常の商品と同じように分析してしまうと、在庫管理やマーケティング戦略において誤った判断を下してしまう可能性があります。そのため、分析を行う際は、過去の売上データや市場トレンドなどを考慮し、商品の特性を正しく理解しなければなりません。
見せ筋商品を考慮する
見せ筋商品とは、顧客を集客するための特価商品や目玉商品のことです。これらの商品は、利益率が低くても、集客効果によってほかの商品の売上増加に貢献することが期待されます。
しかし、ABC分析では売上金額のみで判断するため、見せ筋商品はCランクに分類されるかもしれません。
見せ筋商品をCランクと判断して、販売を中止したり、プロモーションを縮小したりしてしまうと、集客効果が低下し全体の売上減少につながる可能性があります。そのため、ABC分析の結果をそのまま適用するのではなく、見せ筋商品の役割を考慮しなければなりません。
他ランクの販促に貢献するCランクを考慮する
Cランク商品は、売上への貢献度が低い商品ですが、ほかのランクの商品の販売促進に貢献している場合があります。たとえば、高価なAランク商品とあわせて購入されることが多いCランク商品や、Aランク商品のオプションとして販売されているCランク商品などがあります。
このようなCランク商品の取り扱いを安易にやめてしまうと、Aランク商品の売上にも影響を与えるかもしれません。ほかの商品の販売促進に貢献している商品は、重要な役割を担っていることを認識しておく必要があります。
ECではロングテールの法則を考慮する
売り場面積の制限がないECサイトでは、実店舗と比べて、多様な商品を取り扱えます。そのため、売上構成比が低い商品でも数多くの商品を販売することで、全体の売上を大きく伸ばせるかもしれません。これをロングテールの法則といいます。
ABC分析では、売上構成比の低い商品はCランクに分類されますが、ECサイトではCランク商品にも販売機会を与えることを意識しましょう。ロングテールの法則を意識し、ニッチな需要にも対応することで、売上増加につながる可能性があります。
ABC分析で在庫や売り場を最適化しよう
ABC分析を活用することで、在庫管理の効率化、マーケティング戦略の最適化、顧客満足度の向上など、さまざまな効果が期待できます。ぜひ、今回の内容を参考に、ABC分析を導入し、自社のビジネスに役立ててください。
ABC分析を効果的に活用するためには、在庫管理システムの導入も検討しましょう。在庫管理システムは、在庫状況の把握、発注業務の効率化、在庫管理コストの削減などに役立ちます。システム化によって、より精度の高い分析と効率的な在庫管理を実現できるでしょう。