在庫管理における棚卸とは?目的や方法・方式、注意点、効率化に役立つツール

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棚卸とは
棚卸とは、企業が保有している在庫の実数を定期的に確認し、帳簿上の在庫数と照合する作業のことです。この作業は、在庫の過不足や差異を把握し、適切な在庫管理を行うために欠かせません。
棚卸によって、企業は在庫状況を正確に把握できるようになり、経営の効率化や利益向上につなげられます。
棚卸の3つの目的
棚卸の目的は、大きく分けて3つあります。棚卸を実施することで、日々の業務で発生する在庫のズレを把握し、適切な在庫数を維持できます。
目的1. 正確な在庫管理
棚卸を実施することで、倉庫や店舗にある在庫の実数と、帳簿上の在庫数を照合できます。この作業を通して、在庫の過不足や、盗難、破損といった問題点の把握が可能です。
棚卸を行わないと、実際には在庫がないにもかかわらず、帳簿上は在庫があると認識してしまうケースが発生します。このような在庫情報のズレは、顧客からの注文に対応できない、注文を断らなければならないといった問題を引き起こし、企業の信頼を失墜させかねません。
棚卸によって正確な在庫数を把握することで、適切な発注や在庫管理を行い、顧客のニーズに迅速に対応できる体制の構築が可能になります。
目的2. 欠品の防止
棚卸は、欠品の防止にも大きく貢献します。正確な在庫数を把握することで、適切なタイミングで発注を行い、在庫切れのリスクを減らせます。
欠品が発生すると、顧客の注文に応えられなくなり、販売機会の損失につながります。また、顧客に迷惑をかけることで企業の信頼を損なう懸念もあります。
棚卸によって在庫状況を常に把握することで欠品を未然に防ぎ、安定した供給体制を維持できます。これは顧客満足度の維持に重要な役割を果たします。
目的3. 正確な利益計算
棚卸は、正確な利益計算にも不可欠です。棚卸によって期末の在庫金額を確定させることで、正確な売上原価を算出できます。売上原価は、利益計算において重要な要素であり、正確な原価を把握することで、適正な利益を算出できます。
棚卸を実施せずに在庫金額を曖昧なままにしておくと、売上原価が不正確になり、利益を過大または過小に評価してしまう可能性があります。結果として、経営判断を誤り、事業の成長を阻害する要因になりかねません。
棚卸を通して正確な利益を把握することは、健全な経営を行ううえで非常に重要です。
棚卸の2つの方法
棚卸を行う方法は、大きく分けて「一斉棚卸」と「循環棚卸」の2つです。
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、自社の規模や業種、在庫状況に合わせて適切な方法を選択しましょう。
方法1. 一斉棚卸
一斉棚卸とは、一定期間にすべての在庫を同時にカウントする棚卸方法です。一般的には、決算期や棚卸期など、年に1回または2回、業務を停止して実施されます。
一斉棚卸のメリットは、すべての在庫を一度に確認できるため、在庫状況を正確に把握できる点です。一方で、業務を停止する必要があるため、通常業務に支障をきたす可能性や人手不足に陥りやすいことがデメリットとして挙げられます。
方法2. 循環棚卸
循環棚卸とは、定期的に在庫を棚卸する方法です。棚卸担当者を決め、担当者が計画に基づき、エリアを分けて棚の在庫を数えます。
循環棚卸のメリットは、業務を停止せずに棚卸を行えるため、通常業務への影響が少ない点です。また、定期的に棚卸を行うため、在庫の精度が高く在庫管理の効率化につながります。しかし、一斉棚卸に比べて、棚卸に時間がかかります。
棚卸は、基本的に循環棚卸を行い、棚卸差異が大きい場合に一斉棚卸を行うことが多いです。
棚卸の4つの方式
棚卸には、いくつかの方式があります。それぞれの方式に特徴やメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合わせて適切な方式を選択しましょう。
方式1. リスト方式
リスト方式とは、棚卸を行う際に、あらかじめ用意したリストに棚卸の結果を記入していく方式です。リストには、品名、数量、保管場所などが記載されており、棚卸担当者はリストに従って在庫を確認し、数量を記入していきます。
リスト方式のメリットは、棚卸作業を効率的に進められる点です。ただし、リストの作成に手間がかかります。また、リストに記載されていない在庫品を見落としてしまう懸念もあります。
方式2. タグ方式
タグ方式とは、棚卸を行う際に、在庫品にタグを付けていく方式です。タグには、品名、数量、棚卸日時などが記載されており、棚卸担当者は在庫品にタグを付けていきます。すべての在庫品にタグを付け終わったら、タグを集計して在庫数を計算します。
タグ方式のメリットは、棚卸作業のミスを減らせる点です。ただし、タグの準備に手間がかかります。また、タグを紛失してしまう可能性もあり、注意が必要です。
方式3. 実地棚卸
実地棚卸とは、実際に在庫品を目で見て確認し、数量を数える方式です。実地棚卸は最も正確な棚卸方法ですが、時間と手間がかかるというデメリットがあります。特に、在庫量が多い場合は、棚卸作業に多くの時間を要するため、人材の確保が課題となります。
方式4. 帳簿棚卸
帳簿棚卸とは、在庫を出し入れするたびに在庫管理表に記入し、帳簿上の在庫数をもとに棚卸を行う方式です。
帳簿棚卸のメリットは、実地棚卸に比べて時間と手間がかからない点です。ただし、実際に商品をチェックしないため、品質チェックができないというデメリットがあります。また、帳簿に記載された在庫数と実際の在庫数が異なる場合があるため、棚卸差異が発生する懸念もあります。
棚卸実施時の3つの注意点
棚卸をスムーズかつ正確に行うためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。注意点を守らずに棚卸を行うと、正確な在庫数を把握できないだけでなく、業務に支障をきたす恐れもあります。
注意点1. 業務に支障が出ない計画を立てる
棚卸は、通常業務に加えて行う作業となるため、事前に綿密な計画を立てましょう。棚卸を行う期間、時間帯、担当者などを明確に定め、業務に支障が出ないようにスケジュールを調整します。
特に一斉棚卸を行う場合は業務を停止する必要があるため、顧客や取引先への影響を最小限に抑えるよう、事前に連絡することが大切です。計画を怠ると、通常業務に遅れが生じたり、顧客に迷惑をかけてしまう可能性があります。
注意点2. 棚卸業務のルールや手順を統一する
棚卸を行う際は、担当者間でルールや手順を統一しましょう。棚卸の基準や方法、計数方法などを明確に定め、全員が同じ方法で棚卸を行うようにすることで、棚卸結果の精度を高められます。
たとえば、破損や汚損がある商品をどのように扱うか、在庫の単位をどのようにするかなどを事前に決めておきましょう。ルールや手順が統一されていないと、担当者によって棚卸結果にバラつきが生じ、正確な在庫数を把握できません。
注意点3. 棚卸表は7年間保管する
棚卸の結果を記録した棚卸表は、法律で7年間の保管が義務付けられています。棚卸表には、棚卸日時、担当者、在庫品名、数量などを記載し、正確な情報を記録しておきましょう。
棚卸表は、税務調査や会計監査などで必要となる可能性があるため、適切に保管しておかなければなりません。保管期間を過ぎた棚卸表は、適切な方法で廃棄するようにしましょう。
※参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」(2024年12月10日閲覧)
棚卸の効率化に役立つ3つのツール
棚卸は、正確な在庫数を把握するために重要な作業ですが、時間と手間がかかるという課題もあります。しかし、近年では、棚卸作業を効率化するさまざまなツールが登場しています。
バーコード、QRコード
バーコードとQRコードは、商品情報を読み取るためのコードです。バーコードは線の太さや間隔によって情報を表現するのに対し、QRコードは縦横の2方向に情報を持つため、バーコードよりも多くの情報を格納できます。
棚卸の際に、これらのコードを読み取ることで、商品情報や数量を簡単に記録できます。バーコードリーダーやスマートフォンでコードを読み取るだけで、在庫情報を自動的に読み取り、データ化できるため、人為的なミスを減らし、作業時間を大幅に短縮できます。
RFIDタグ
RFIDタグは、電波を用いて情報を非接触で読み書きできるICタグです。RFIDタグを商品に取り付けておくことで、リーダーにかざすだけで、複数のタグ情報を一括で読み取れるようになります。
棚卸作業においてRFIDタグを利用すれば、在庫情報を瞬時に把握でき、大幅な時間短縮につながります。
在庫管理システム
在庫管理システムは、在庫状況をリアルタイムで把握し、管理するためのシステムです。棚卸機能を搭載した在庫管理システムでは、棚卸作業の効率化はもちろんのこと、入庫、出庫、在庫移動などの情報を一元管理できます。
在庫管理システムを導入することで、棚卸作業の効率化だけでなく、在庫管理業務全体の効率化、そして正確性の向上も可能です。また、在庫状況をリアルタイムで把握できるため、欠品や過剰在庫の防止にも役立ちます。
棚卸と在庫管理システムで、正確な在庫管理と利益計算を
棚卸は、在庫の現状を把握し、正確な在庫管理を行うために非常に重要な業務です。棚卸を通して正確な在庫情報を把握することで、欠品の防止、過剰在庫の削減、適正な利益計算など、さまざまなメリットを得られます。
棚卸作業を効率化し、より正確な在庫管理を実現するためには、在庫管理システムの活用が有効です。在庫管理システムは、棚卸作業の効率化だけでなく、日々の在庫管理業務の負担軽減にも貢献します。ぜひ、在庫管理システムを導入し、正確な在庫管理と利益計算を実現しましょう。
こちらの記事ではおすすめの在庫管理システムを紹介しています。在庫管理システムに興味がある方、より正確な在庫管理を目指す方は、ぜひお読みください。
