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ALMツールとは?エンジニアが開発に集中できる世界を実現するmobingi ALM-モビンギ株式会社

最終更新日:(記事の情報は現在から2704日前のものです)
「SaaS業界レポート2016-2017」のインタビュー(全15本)の第4弾としてモビンギ株式会社のmobingi ALMについて迫りました。 【SaaSレポートインタビュー第4弾】

張卓(Wayland Zhang)
創業者 兼 CEO
中国・瀋陽生まれ。18歳からカナダに在住し、ストリーミング動画サービスの立ち上げ(大学在学中の2004年)、中国のSNS向け広告プラットフォームサービスの立ち上げ(2009年売却)、ゲームエンジンサービスの立ち上げ(2013年売却)を経て、2015年にモビンギ株式会社を設立。エンジニア起業家としてエンジニアがハッピーになるサービスの開発・提供に取り組んでいる

アプリケーションライフサイクルの自動化の価値

―――――貴社は2015年1月に法人化され、主なサービスとして「mobingi ALM(Application Lifecycle Management)」を提供されています。これはどのようなサービスでしょうか?

まずサービス名にも含まれているALMとは、アプリケーションの設計、開発、運用、監視、拡張といった一連のライフサイクルを管理することを意味していて、弊社ではこのアプリケーションライフサイクルの管理・自動化プラットフォームとして「mobingi ALM」を提供しています。


【出所】モビンギ提供

―――――アプリケーションライフサイクルの管理・自動化プラットフォームとして、具体的にどのような価値を提供しているのでしょうか?

AWSをはじめとしたパブリッククラウドのデプロイメント、環境セットアップが簡単に行えるようになります。これまでは仮想マシン、OS、イメージ、ソフトウェアセットアップ、ネットワーク、Load Balancing、セキュリティグループ、IP、といったインフラ設定には2~3日を要するような場合も多かったのですが、「mobingi ALM」では全自動化しており、数回のクリックで設定が可能です。

そのため、貴重なエンジニアの工数を大幅に削減することができますし、特にクラウドサービスは進化のスピードが求められる市場ですので、時間を削減できることにも大きな価値があると思います。

―――――貴社のサービスの特徴としてオートスケーリング機能もあげられていましたが、こちらは具体的にどのような機能でしょうか?

ユーザーの環境作成時にロードバランサ―を事前に作成しますので、あとはスケールさせるサーバー数の上限や下限などのスケールポリシーを設定するだけで稼働状況に応じて自動でスケールさせることが可能です。

オンプレミス時代には事前にどの程度の規模のサーバーを用意すべきか見当をつけることは難しかったのですが、クラウド化によって拡張性が実現したことでこのような課題は解消されました。ですが、このクラウドの拡張性を享受するためには継続的に設定の見直しを行うことが必要になりますので、「mobingi ALM」ではこの見直しを自動化しています。

Spot Optimizerによってサーバーコストを90%削減

―――――貴社サービスを利用すればサーバーコストを90%削減可能と聞きましたが、このコスト削減はどのように実現しているのでしょうか?

AWSのスポットインスタンスを活用したコスト削減機能「Spot Optimizer」によって実現しています。スポットインスタンスとはAWSサーバー上に存在するものの使用されていないインスタンス(AWSの仮想サーバー)を入札形式で利用できるサービスで、通常よりも低価格でサーバーを利用することができますので、このスポットインスタンスを活用してサーバーコストを抑えることを可能にします。

なお、スポットインスタンスではインスタンスが中断される可能性がありますので、通常はアプリケーションのテストやデータ分析などアプリケーションを実行する時間に柔軟性がある場合やアプリケーションを中断しても問題がない場合に活用される選択肢です。

ですが、「mobinigi ALM」ではスポットインスタンスが停止される2分前にAWSから通知を受け取り、停止までの2分以内に自動でスポットインスタンスを適正価格で再入札して全てのリソースを複製しますので、アプリケーションをダウンタイムなしで稼働させ続けることが可能です。そのため、本番環境としてもご利用いただけるようになります。

なお、スポットインスタンスの割合も簡単に設定できますので、通常のインスタンスとスポットインスタンスを組み合わせて利用することが可能です。万が一の中断リスクにも備えることができますので、安心してスポットインスタンスをご利用いただけるのではないでしょうか。


【出所】モビンギ提供

―――――スポットインスタンスでサーバーの利用コストを大幅に削減できる点は大きな魅力ですね。コスト削減という意味では、AWSの支払代行も行っていると伺いましたが、こちらはどのようなサービスでしょうか?

「mobinigi ALM」とは別のサービスになりますが、弊社ではAWS利用料金の支払代行サービスも提供しています。この支払代行サービスを利用すれば月額のAWS利用額に対して誰でも3〜5%の割引を受けることができます。従来の支払代行のようにルートアカウントを渡す必要もありませんので、わずか10分程度でサービスの手続きも完了します。

UIの最適化やマルチクラウド対応を通じたUXの最大化

―――――クラウドやサーバーの管理・自動化ツールとしてはAnsible、Chef、Dockerなどがありますが、既存のツールとの違いはどのような点にあるのでしょうか?

既存のツールはすべて優秀なエンジニアを対象としていますが、弊社の「Mobinigi ALM」は事業部や開発チーム・プロジェクトのリーダーなどスキルレベルがそれほど高くない方々にもご利用いただけるようなツールになっています。

現状、クラウドには画面がなく、Windows以前のMS-DOSのように文字でコマンドを打ち込んでいる状況で、我々としてはクラウドにとってのWindowsデスクトップのようなものを提供したいという思いでサービス開発を進めています。

―――――面倒な初期設定やスケールの自動化やコスト削減といったメリットは、企業の規模を問わずニーズがありそうですね。

そうですね、特に運用に特化したエンジニアを確保することが難しい中小企業の皆さまに価値を感じていただけています。今後はAWSや富士通さんのK5だけでなくMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platformなどマルチクラウド対応を進めて、ユーザーさんがどのクラウドを利用するか意識せずに料金、容量、速度、パフォーマンスなどの条件に合わせて最適にクラウド活用できるような世界を目指していきますので、大企業の皆さまにもより価値を感じていただけるようになると思っています。


【出所】モビンギ提供

―――――IaaSに関するマルチクラウド化のお話があがりましたが、ユーザーにとって複数のIaaSを使い分けることの価値はどのような点にあるのでしょうか?

利用料金の最適化はやはり1つの価値だと思います。IaaSは利用料金の変動が多いので、容量や速度といった条件にあわせながら最適な価格のIaaSを選択していくことはとても重要です。また、1種類のIaaSにロックインされたくないというユーザーさんも多いので、こういったニーズにも応えていくことができると思います。

また、こういったIaaSの選択をご支援するようなサービスはIaaSのプロバイダーでは提供できないサービスで、私たちだからこそ提供できるサービスだと考えています。このように私たちならではの価値を世の中に提供していきたいですね。

API連携、「mobingi Wave」、「moCloud.io」の提供を通じたエンジニアサポートの充実化

―――――SaaS業界においてはAPI連携がトレンドになっていますが、「mobingi ALM」ではどのようなAPI連携をしているのでしょうか?

クラウドのアプリケーションライフサイクルに関わる部分でAPI連携は進めています。例えばコードのデプロイの部分ではGitHubと連携をしていて、GitHubアカウントからプライベート、あるいはパブリックのリポジトリを選択して、指定したリポジトリにプッシュする度にコードがすべてのサーバーインスタンスに反映されます。

また、監視の部分ではDatadog、Mackerel、NewRelicなどのサードパーティー製の監視サービスと連携していて、アドオンを利用可能に設定すればすべてのサーバー情報が反映されるようになっています。

―――――2017年1月16日に既存の投資家であるDraper Nexusさん、アーキタイプベンチャーズさんから2.5億円の資金調達をされました。今回調達した資金はどのように投資していくのでしょうか?

「mobingi ALM」の開発・運用体制の強化と2017年夏にリリース予定の「mobingi Wave」の開発に投資していく予定です。

―――――新たにサービスをリリースされるんですね。「mobingi Wave」とはどのようなサービスでしょうか?

「mobingi ALM」が開発段階の管理・自動化を中心にしているのに対して、「mobingi Wave」は運用段階の管理・自動化を中心としたサービスになります。「mobingi Wave」を活用することで、ネットワークやデータベース、ストレージなどのリソースの管理やコスト最適化に向けたレコメンドを受けることができるようになります。

―――――開発段階を中心にサポートする「mobingi ALM」、運用段階を中心にサポートする「mobingi Wave」によって開発から運用までより丁寧なサポートが可能になりますね。もう一つ、既存のサービスとしてPaaSの「moCloud.io」を提供されていますが、こちらはどのようなサービスでしょうか?

弊社はもともとPaaSの「moCloud.io」からスタートしていて、こちらは「mobingi ALM」の機能も備える開発環境です。ポータブルPaaSというコンセプトも掲げていて、アプリケーション実行のために必要なサービスハブなどは一切なく、共用、あるいは専用環境にホスティングするためのコードが手元にあれば1クリックでmoCloud.ioに移行することが可能で、大変手軽にご利用いただけるPaaSになっています。


【出所】モビンギ提供

エンジニアが本来集中すべき開発に注力できる世界へ

―――――張さんは中国出身ですが、今後も日本を中心に展開していくのでしょうか?

もともとゲームエンジンのスタートアップ企業を起業していて、2013年に日本の企業へ売却した際に日本におけるクラウド自動化のニーズに気づいたことがきっかけでスタートしました。一方で、中国では日本に比べて2~3年はクラウド活用が遅れていますので、まずは日本を中心に展開していきたいと思っています。将来的には中国にも展開したいですね。

―――――日本を中心に展開していくとのことですが、最後に「モビンギ」の提供を通じて実現したい世界観について教えてください。

我々はエンジニアがハッピーになるサービスを目指しています。現在、IT業界はエンジニア不足と言われていて、また現在普及しているクラウドサービスのプラットフォームは複雑ですので使いこなせるようになるまでに膨大な時間と労力を伴います。

私ももともとエンジニアとして苦労しましたので、「モビンギ」によって設定や運用を自動化することで、このようなエンジニアの負担を取り除き、本来集中すべき開発に注力できる世界を実現したいと思っています。

SaaS業界レポート著者の視点

オンプレミスからクラウドに移行したことで、IT活用はサブスクリプションモデルへと転換しました。つまり、オンプレミスではITシステムを「購入」し、自社で管理・運用を行うイニシャルコスト型であったのに対して、クラウドではベンダーが管理・運用しているITシステムをインターネット経由で利用料を支払ってサービスとして「利用」するランニングコスト型へと転換したということです。

このコストモデルの転換に伴い、オンプレミスでは生まれづらかったコストパフォーマンスのモニタリング・最適化ニーズが生まれました。クラウドでは利用料の変化、利用規模の変化、利用頻度の変化によってコストパフォーマンスが刻一刻と変化するようになったからです。

2017年1月に2億5,000万円の資金調達を行ったモビンギは、このコストパフォーマンスの変化に着目した「mobingi ALM」をメインサービスとして提供しています。こちらはアマゾンウェブサービスのスポットインスタンス、つまり利用料の変化に着目してコスト削減を実現するサービスです。

マルチクラウドがより進展していくとコストパフォーマンスのモニタリング・最適化需要はより高まっていくと想定されます。欧米では既に多くのサービスが登場していますので、日本においても今後増えていくことが期待される領域です。

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著者紹介:阿部 慎平 (あべしんぺい)新卒でデロイトトーマツコンサルティングに入社後、大手企業の事業ポートフォリオ戦略、成長戦略、新規事業戦略、海外事業戦略、ベンチャー企業買収戦略など戦略プロジェクトに従事。 より主体的に事業に取り組みたいという思いから2017年3月にスマートキャンプに参画。現在はSaaS業界レポートや事業企画・営業、新規事業立ち上げを推進。
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