人的資本経営の取り組み事例7選!具体的な方法とともに解説
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人的資本経営とは
人的資本経営とは、従業員を単なるコストではなく重要な経営資源として捉える経営手法です。この考え方は、企業の持続的な成長や競争力の強化に不可欠な要素として注目を集めています。
人的資本経営では、従業員の能力開発に重点を置き、長期的視点での人材投資や多様性の推進などを行います。また、従業員エンゲージメントの向上や、データを駆使した人材マネジメントを行うのが特徴です。
従業員のスキルアップや健康管理、ワークライフバランスの改善に積極的に取り組むため、生産性向上や革新的なアイデアの創出、顧客満足度の向上などの効果が期待できます。
ESG投資の観点からも重要性を増しており、企業価値評価の重要な指標となるでしょう。
人的資本経営の実践における重要な視点・要素
人的資本経営の実現に向けた検討会での報告書「人材版伊藤レポート2.0」では、企業が経営戦略と連動した人材的戦略実践のためのアイデアが提案されています。
人的資本経営を実践する場合に重要とされる視点や要素として「3P」と「5Fモデル」が紹介されています。それぞれ詳しく解説します。
3P
人的資本経営を実践する場合に重要になるのが、3つの視点(Perspectives)です。
企業価値向上に向けた人材戦略を効果的に進めるための視点として提唱されており、具体的には次の3つの視点が必要とされています。
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is-To beギャップの定量把握
- 企業文化への定着
経営戦略と人材戦略の連動は、企業価値向上のための基本です。たとえば、企業が海外市場への進出を目指す場合、戦略に対応するために語学力や国際的なビジネススキルをもつ人材の確保・育成が必要です。結果、戦略の実行力が高まり、企業全体のパフォーマンスが向上します。
As is-To beギャップの定量把握とは、現状(As is)と理想(To be)の間に存在するギャップを定量的に把握することです。このギャップの分析により、具体的な改善点や必要なリソースが明確になるほか、効果的な人材戦略を策定する基盤が整います。とくに、数値データに基づく分析は、客観的な判断を可能にし、戦略の精度を高めます。
また、新しい戦略や施策が企業文化にどの程度定着しているかを評価することも重要です。企業文化の変革はすぐには成し得ないため、継続的なモニタリングとフィードバックが求められます。この評価によって、戦略が実際に組織全体に浸透し、従業員の行動や意識に変化をもたらすことが確認できます。
これらの視点の採用により、実践的な経営手法として人的資本経営が機能し、企業は持続的な成長と競争力の強化を実現できるでしょう。
5Fモデル
人的資本経営を成功させるためには、5つの要素(Factors)を戦略に組み込むことも重要です。5Fモデルは、企業が共通して取り入れるべき要素として提唱されており、具体的には次の5つの要素を指します。
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
人的資本経営では、企業内のどこにどのようなスキルや職種の人材がいるのかを把握するための動的な人材ポートフォリオの作成・管理が重要です。
また、従業員の経験や価値観、専門性の多様性を尊重して組織に取り込むことも欠かせません。これにより、企業の創造性と革新性を促進できるほか、多様なバックグラウンドをもつ人材が集まることで、異なる視点からのアイデアが生まれやすくなります。
さらに、急速に変化するビジネス環境に対応するには、従業員が新しいスキルを習得し続けなければなりません。企業はリスキル(再教育)や学び直しの機会を提供することで、従業員の能力開発を支援できます。
従業員がやりがいを感じ、主体的に業務に取り組む環境を整えることも重要です。エンゲージメントの高い従業員が多ければ、生産性が向上し、企業の目標達成に貢献しやすくなります。
そして、テレワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方の導入により、従業員のワーク・ライフ・バランスを支援と、満足度・生産性の向上が可能です。
これらの要素を統合することで、企業は所有する人的資本を最大限に活用した持続的成長を期待できます。
人的資本経営の取り組み例
人的資本経営に取り組むケースの例を5つ紹介します。
- 人材ポートフォリオの作成
- 経営ビジョンに基づく人材育成
- 従業員エンゲージメントの向上
- 柔軟な働き方の導入
- 多様な人材の雇用・登用
人材ポートフォリオの作成
人的資本経営の取り組みの1つが、人材ポートフォリオです。これは、企業の人的資本の可視化と、戦略的な人材配置のために重要なツールです。
作成手順として、自社の経営戦略を明確にしてから必要な人材タイプを定義し、現状の人材構成を分析して、理想と現実のギャップを特定します。
具体的な方法の1つが、スキルマトリックスの作成です。部門ごとに必要なスキルをリストアップし、各従業員のスキルレベルを評価します。これにより、スキルの過不足を視覚的に把握でき、効果的な人材配置や育成計画の立案ができます。
経営ビジョンに基づく人材育成
人的資本経営の取り組みの1つが、経営ビジョンと連動した人材育成です。企業の将来像を明確に定義し、それを実現するために必要な人材像の設定を行います。
具体的な方法の1つが、ビジョン達成に必要なコンピテンシーを特定し、それにもとづいた研修プログラムの導入です。なお、コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを発揮する人物に共有する行動特性のことを指します。
たとえば、グローバル展開を目指す企業なら、語学力や異文化理解力を強化するプログラムの導入を検討します。また、定期的なキャリア面談によって、それぞれの従業員の成長目標と企業ビジョンの整合性を確認することも効果的です。
従業員エンゲージメントの向上
人的資本経営の取り組みの一例として、従業員エンゲージメントの向上が挙げられます。エンゲージメントが高い従業員は、自発的な貢献意欲を持ち、企業価値の向上に寄与します。エンゲージメント向上によって、生産性の向上や離職率の低下も期待できます。
具体的な方法の一例が、定期的なエンゲージメント調査の実施です。匿名性を確保しつつ、職場環境や業務内容、キャリア展望などについて従業員の声を収集することで、企業や組織の改善点を把握でき、職場環境を改善できます。
また、経営陣と従業員の対話の場を設けたり、従業員の成果を適切に評価できる制度を導入したりすることで、エンゲージメント向上を図れます。
柔軟な働き方の導入
柔軟な働き方の導入も、人的資本経営の取り組みの1つです。従業員のワーク・ライフ・バランスの改善や多様な人材が活躍できる環境の整備によって、企業の生産性向上や競争力強化が期待できます。
具体的な方法として、フレックスタイム制やリモートワークの導入が挙げられます。たとえば、コアタイムを設定しつつ、始業・終業時間を従業員が選択できるようにしたり、在宅勤務やサテライトオフィスの利用を可能にして、通勤時間の削減や集中できる環境を整備したりします。
さらに、ジョブシェアリングや短時間勤務制度の導入により、育児や介護との両立をサポートするのも効果的です。
多様な人材の雇用・登用
多様な人材の雇用・登用も、人的資本経営の取り組みです。イノベーションの創出や市場ニーズへの適応力向上につながる重要な施策であり、異なる背景や経験をもつ人材が協働すれば、新たな価値創造が期待できます。
具体的な方法の1つが、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進部門の設置です。この部門をメインに、性別や年齢、国籍、障がいの有無に関わらず、多様な人材を積極的に採用・登用する施策を展開します。
たとえば、女性管理職比率の向上を目指したメンタリングプログラムを実施したり、外国人材の採用促進のためにグローバル採用枠を設定したりすることが考えられます。
人的資本経営の実践企業事例7選
「人材版伊藤レポート2.0」で人的資本経営の実践例として挙げられた企業を紹介します。
※出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集」(2024年7月29日閲覧)
荏原製作所
荏原製作所では、長期ビジョンでの重要な課題として、人材の活躍促進を掲げており、グローバルでの持続的成長を実現するための基盤整備、競争・挑戦する企業風土への変革に対するKPIや過去の成果を開示しています。
また、海外における事業戦略の実現に向けて、事業上でのグローバルキーポジションへの後継者計画を整えており、海外拠点に所属する秀でた人材を早期抜擢・育成しているのも特徴です。
さらに、競争力の強化や関連団体との相互貢献を志して、社外からそれぞれの専門家を招くといった取り組みを行っています。
オムロン
オムロンでは、TOGA(The OMRON Global Awards)を通じて、従業員の企業理念の実践事例をシェアして理念の浸透を図っています。
また、グローバルリーダー育成のために、約200のグローバルコアポジションを設定して、人材の発掘、配置、育成を行っているほか、海外事業におけるポジションに配置する人材の現地化比率アップを目指し、迅速な意思決定を目指しています。
さらに、従業員エンゲージメントを向上させるために、持続できるエンゲージメント指標(SEI)を活用し、経営課題の把握に努めているのが特徴です。
ほかにも、人事情報システムの整備により、社員の能力、経験、志向を可視化して、社員の成長実感と適材適所の配置の両立を目指しています。
花王
花王では、人的資本経営の取り組みとして、従業員活力の最大化に尽力しています。
所属する従業員を会社が所有する最大の資産と捉え、従業員の可能性を引き出すことを目指して、全社員の挑戦と連携推進、専門性の高い人材育成、柔軟な働き方の環境整備を重視しています。
また、経営と現場が一丸となった人材開発体制を構築しており、経営陣のトップを委員長に据えた「人財企画委員会」を毎月定期的に開催して、人材開発に関する課題や施策を議論しています。
さらに、グローバルで共通の仕組みの導入を推進しており、挑戦重視の方針への転換とともにOKRを導入しています。
ほかにも、人事部やD&I推進部、現場がD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)視点での人財開発を推進しているほか、「Diversity推進計画」を実行し、障がいのある社員や女性社員の活躍推進に取り組んでいるのも特徴です。
サイバーエージェント
サイバーエージェントでは、事業領域の継続的な拡大に合わせて、数年ごとの周期で事業に求められるスキルを特定。自社以外の人材の活用や勉強会形式で行われるリスキルを実施し、組織的な能力向上を図っています。
また、若手の育成と登用のための施策として、成長事業分野の社長ポジションに若手社員を登用しているほか、次世代抜擢枠として選出された若手社員による役員会議の参加によって、経営に関与する機会を提供しているのが特徴です。
さらに、全社的な経営課題の討議として、役員と社員が一緒に経営課題への方策を検討する「あした会議」の実施や、すべての従業員のエンゲージメント状況を月ごとに把握したうえでの定量的な分析、社内転職制度による異動促進などにより、エンゲージメントの向上を図っています。
双日
双日では、経営戦略と連動した人的資本経営実現のため、人材KPIの活用による人事戦略や施策を可視化しています。
経営会議・取締役会における人材KPIの進捗状況の定期報告を、役員報酬の評価に活かしているほか、2030年代に女性社員比率50%を目指し、各世代層のパイプライン形成とキャリア意識醸成の取り組みを行っています。
また、社員意識調査を通じて「挑戦を促す」「成長を実感できる」環境の現状を定量化し、施策検討に活用。さらに、「双日プロフェッショナルシェア株式会社」を設立し、35歳以上の社員がさまざまなキャリアパスで力を発揮できるようサポートしています。
ほかにも、独立・起業支援制度の導入や、退職後の双日OBやOGと現役社員のネットワークを形成してビジネス領域の拡大を促進するなど、独自の取り組みを行っています。
SOMPOホールディングス
SOMPOホールディングスでは、社員一人ひとりが自身の人生の目的や使命を表現した「MYパーパス」を策定することを促進。「会社の中の自分」から「自分の中の会社、仕事」といった意識改革を推進しながら、トップの発信や現場の取り組み、浸透の測定を通じて、パーパスの浸透を図っています。
また、ジョブ型人事制度の導入により、社員がみずからキャリアを選択できるほか、「MYパーパス1on1」を通じて、上司と部下が定期的に対話して自律的な働き方を促しています。
人材育成の取り組みとしては、上司にコーチング技術を習得させ、部下の自律的な成長をサポート。デジタル人材としてすべての社員を3区分に分け、計画的な人材ポートフォリオを構築しています。
さらに「ミッション・ドリブン」「プロフェッショナリズム」「ダイバーシティ&インクルージョン」の3つのコアバリューを共有する人材集団の実現を目指しています。
日立製作所
日立製作所では、事業変革のためにグローバルで共通した人材マネジメント基盤を整え、経営におけるリーダーやDX人材の育成に取り組んでいます。
2011年以降に、社会イノベーション事業に経営資源を集中し、グローバル共通の人材マネジメント基盤を整えたほか、人材データベースを整備してリーダー開発や評価、教育に関する共通基盤を確立。
2017年からは「Future50」プログラムに取り組み、ハイパフォーマーのうち、50名を選んで重点的な育成を実施。社長による1on1やタフアサインメントを通じて、リーダー候補の成長機会を提供しています。
また、デジタル事業戦略に基づき、DX人材の育成目標を設定。2020年度末までに約35,000人のデジタル人材を育成して、データサイエンティストの育成目標も前倒しで達成したほか、「日立アカデミー」でのDX研修を整備し、全社員のデジタルリテラシーを向上させています。
人的資本経営の実践に役立つタレントマネジメントシステム
人的資本経営は今後の企業経営に欠かせない重要な要素です。人的資本経営には、定量・定性データを用いたタレントマネジメントが欠かせません。
従業員情報の把握や一元管理、人材ポートフォリオの作成を効率的かつ効果的に行うためには、タレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。
基本情報やスキル、能力、経歴、保有資格、キャリアの目標、人事評価といった、従業員に関するさまざまなデータを収集・蓄積できるため、人材データベースとして活用できるほか、人的資本経営に役立ちます。
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