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デジタルファーストとは?メリットや事例、推進時のポイント

最終更新日:(記事の情報は現在から20日前のものです)
デジタルファーストとは、デジタル技術を優先的に採り入れて業務を遂行する考え方です。デジタル技術を最大限に活用することで業務効率化やコスト削減といったメリットが生まれます。本記事では、デジタルファーストの特徴やメリット・デメリットを解説します。

デジタルファーストとは

ビジネスシーンにおけるデジタルファーストとは、業務にデジタル技術を積極的に採り入れることです。ペーパーレス化やデータドリブン経営、ビジネスプロセスのデジタル化などのさまざまな取り組み方があります。

デジタルファーストとよく似た概念にクラウドファーストがあります。クラウドファーストとは、デジタル技術のなかでもクラウドサービスを積極的に活用する考え方です。そのため、デジタルファーストの大きな枠組みのなかにクラウドファーストが含まれています。

デジタルファーストが注目されている背景

デジタルファーストは本来、出版業界で使用する用語です。新聞や雑誌、書籍などの紙の印刷物をデジタルデータとして発行するという意味があります。それが現在では、2019年にデジタルファースト法が制定されたことで、ビジネスシーンでもデジタルファーストが注目を集めるようになりました。

デジタルファーストを推進するメリット

デジタルファーストを推進するメリットは次のとおりです。

  • 業務効率化や生産性向上につながる
  • ペーパーレス化によるコスト削減が可能
  • 書類の保管スペースの活用範囲が広がる
  • 多様な働き方に対応しやすい

業務効率化や生産性向上につながる

一つ目のメリットとしては、業務効率化や生産性向上があげられます。

業務にデジタル技術を採り入れることは、さまざまなITツールを活用するのと同義です。ITツールには、ビジネスチャットWeb会議システム文書管理システムなどの種類があり、情報共有をスムーズに行えるものも少なくありません。

また、データ入力の手間を削減したり、書類作成から印刷、発送までのプロセスを簡略化したりと、さまざまな形でITツールを活用できます。紙で情報を管理するよりも効率的に業務を進められるのが利点です。効率化によって余った時間をコア業務に割くことで、生産性向上にも効果を発揮します。

ペーパーレス化によるコスト削減が可能

デジタルファーストによってペーパーレス化が進めば、コスト削減につながることもメリットです。

紙からデジタルへと移行すると紙での業務から脱却でき、ペーパーレスで仕事を進められます。すると、印刷や発送などの作業が不要になるので、紙の購入費や印刷代、印紙代、発送費、管理費用などを削減できます。

また、最近ではクラウドサービスの台頭により、完全なサーバーレス環境での業務遂行が可能です。印刷や発送に関するコストだけでなく、ITインフラの構築費や開発費を最小限に抑えられるのもメリットだといえるでしょう。

書類の保管スペースの活用範囲が広がる

ペーパーレス化が進めば、書類を保管するスペースに空きが生まれます。この空きスペースはさまざまな形で活用が可能です。

たとえば、従業員の働きやすさを向上するためにリフレッシュルームや個人用ロッカー、フリーアドレス席などを設けるのも良いでしょう。オフィスを縮小して賃料を含む固定費の削減をするのも一案です。

活用方法が多彩なだけあり、明確な目的を設定する必要があります。まずはオフィス内の課題に目を向けたうえで、業務効率化や従業員満足度の向上など課題を解消できる目的を設定することが大切です。

多様な働き方に対応しやすい

デジタルファーストの最後のメリットは、多様な働き方に対応しやすい点です。とくにクラウドファーストで施策を進める場合にメリットが発生しやすくなります。

クラウドサービスでは、IDやパスワードがあればいつでもどこでもシステムにログインできます。そのため、専用線やVPN(仮想プライベートネットワーク)を導入する必要なく、社外からでも必要な情報にアクセスが可能です。

たとえば、テレワーク制度を導入する際はオフィスと物理的に距離が離れているため、いかにスムーズな情報共有の仕組みを整えるかが鍵を握ります。クラウドサービスを利用すると、インターネット環境さえあれば誰とでもコミュニケーションを取れるほか、クラウド上のシステムで従来どおりの業務を行えます。

デジタルファーストを推進するデメリット

デジタルファーストを推進するデメリットは次のとおりです。

  • 新たなセキュリティリスクが生じやすい
  • 高額なシステム導入費や開発費がかかる可能性がある
  • 運用ルールの策定や社員教育などの環境整備に時間がかかる

新たなセキュリティリスクが生じやすい

デジタルファーストの一つ目のデメリットは、新たなセキュリティリスクが発生する点です。

デジタル上のデータは、常時インターネットに接続した状態で保管されているケースも珍しくありません。そのため、サイバー攻撃の標的になる可能性があります。また、メール内の添付ファイルを開いた結果、端末がウイルスに感染することも考えられるでしょう。サイバー攻撃やウイルス感染を発端として、データの窃取や改ざんに発展する恐れもあります。

そのため、デジタルファーストを推進する際は、上記のようなリスクを念頭に万全のセキュリティ対策を講じることが大切です。業務システムやクラウドサービスを導入する場合には二段階認証やログ監視、アクセス制御などのセキュリティ機能を必ず活用しましょう。

高額なシステム導入費や開発費がかかる可能性がある

二つ目のデメリットとしては、システムの導入費や開発費が高額になりやすいことがあげられます。とくに基幹システム顧客管理システムなどの大規模なシステムの場合、導入費用だけで数百万円から数千万円の予算が必要なケースもあります。

導入費や開発費を抑えるには、クラウドサービスからスタートするのがおすすめです。クラウドサービスの多くはサブスクリプションモデルを採用しており、1か月や1年といった単位で課金します。初期費用が無料に設定されていることも珍しくありません。

どの程度の予算が必要か正確に把握するためにも、デジタルファーストの施策を展開する前に課題の特定と要件定義を行い、必要なITツールを洗い出すと良いでしょう。

運用ルールの策定や社員教育などの環境整備に時間がかかる

デジタルファーストでは、ITツールを積極的に活用する以上、運用ルールの策定や社員教育、マニュアル整備などの環境構築が必須です。そのため、導入するITツールの種類が多いほど環境整備に時間や手間がかかります。

とはいえ、環境整備を怠るとITツールが組織内に浸透せず、誰にも利用されないといった事態に陥る恐れがあります。ITツールの形骸化を避けるためにも、事前準備にしっかりと時間をかけることが大切です。

デジタルファーストを実現するためのポイント

一概にデジタルファーストといっても、デジタル技術やITツールにはさまざまな種類があるため、事前に準備すべきことが数多く存在します。デジタルファーストを実現するためにも、あらかじめ次のポイントを押さえることが重要です。

盤石なセキュリティ基盤を構築する

さまざまなデジタルデータを扱うデジタルファーストだからこそ、盤石なセキュリティ基盤を構築する必要があります。万が一、顧客や従業員の個人情報といった機密情報が漏えいすると、信用失墜や損害賠償などの大きな問題に発展しかねません。

セキュリティレベルを向上させるには、まずサイバー攻撃やマルウェア感染などのあらゆる脅威を想定し、独自のセキュリティポリシーを策定しましょう。そのうえで、VPNやUTM(統合脅威管理)などのセキュリティ機器を整備したり、セキュリティの重要性を研修などで周知したりなどの対策を立てます。また、ITツールを選定する際は、ベンダーのセキュリティ体制や安全性を検証することも大切です。

情報基盤の統一化を図る

情報基盤の統一化も、デジタルファーストを実現するための欠かせない要素です。

実際に施策を展開する際は、紙の文書をデータ化するといった簡単な作業からスタートすることも多いでしょう。ただし、たんにデータを蓄積するだけで情報が整理されていない状態では、必要なデータにアクセスしにくくなります。また、販売管理システムや在庫管理システムなど、データを管理するシステム同士の連携が取れていないと組織内の情報共有を阻害しかねません。

そのため、データの保管方法や保管場所、システムの連携方法などを明らかにし、社内全体で情報を共有できる仕組みを構築することが大切です。やみくもに必要なシステムを導入すると、後から導入したシステムとの互換性が低いことも考えられるため、中長期的な視点で計画を立てましょう。

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スモールスタートを意識する

デジタルファーストでは、さまざまなITツールを活用する機会があるため、スモールスタートを意識することが重要です。最初から数多くのITツールを導入すると、組織内の混乱や従業員の負担増加を招く恐れがあります。

ITツールを導入する際は、課題に対する重要度と緊急度の2つの視点から可否を検討するのが基本です。重要度が高く、なおかつ緊急度も高い課題は最優先で処理する必要があります。最初は狭い範囲でITツールを活用すると、成功や失敗の体験を次に活かせるため、よりスムーズに組織全体へと波及できます。

デジタルファーストの推進事例

デジタルファーストでは、さまざまな取り組みが想定されるため、どのような施策を行うべきか事例をもとにイメージをつかむと良いでしょう。デジタルファーストの推進事例を二つ紹介します。

三菱ケミカルグループ株式会社

三菱ケミカルグループ株式会社は、ケミカルや産業ガス、医薬品などを扱う総合化学企業です。事業戦略や採用戦略にデジタルファーストの視点を採り入れ、さまざまな施策を展開しています。

たとえば、R&Dの分野では機械学習(AIがみずから学習してデータの法則性を見つける技術)の仕組みを採用し、データ活用アプリケーションを開発しました。データサイエンティストのノウハウや知見をAIが学習することで新たなアイデアや付加価値を発見できます。ほかにも、プラントのリモート運転を実現するためオペレーションデータの連携基盤を構築したのも特徴的です。

※出典:三菱ケミカルグループ「三菱ケミカルグループ KAITEKI REPORT 2023」(2024年11月29日閲覧)

株式会社ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGUなどのブランドを展開するアパレル小売企業です。さまざまなデジタル戦略を実施している同社ですが、近年はデータを活用した接客に積極的に取り組んでいます。

具体的には、オフラインとオンラインのデータを統合し、購買履歴や閲覧履歴を接客に活かしています。閲覧した商品の種類だけでなく分単位の閲覧時刻まで把握しているのがポイントです。そのため、店員からすると消費者一人ひとりに合わせたセット商品の提案や、販売時期の検討が可能になります。

※出典:株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア「DCSオンライン」(2024年11月29日閲覧)

デジタルファーストを実現して企業競争力を高めよう

デジタルファーストの考え方を導入することで、業務効率化やコスト削減、働き方改革の推進など、さまざまなメリットが生まれます。意思決定のスピードアップにもつながるため、企業競争力の向上が可能です。

デジタルファーストの推進に伴い、さまざまなITツールを活用する機会が発生します。最初から数多くのITツールを導入すると、混乱を招く可能性があるため、目的を明確にしたうえで、適切なITツールを導入する必要があります。今回紹介したメリットやデメリット、運用時のポイントなどを参考に、デジタルファーストの導入を検討してみてください。

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