インフラモニタリングとは?インフラの老朽化とモニタリング技術について解説
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インフラモニタリングとは
インフラモニタリングとは、「構造物、建造物の状態の変化を客観的かつ継続的に把握するための技術」の総称です。
日本国内の主な道路や橋梁は高度成長期に建造されました。建築後30年以上が経過し、インフラの老朽化が進んでいますが、老朽化によるリスクの管理の必要性が叫ばれています。
近年はドローンやIoTなどの新しい技術が出てきており、インフラ管理への応用も期待されています。
本記事では、インフラモニタリングの現状と新しい技術について紹介していきます。
インフラモニタリングはどうして必要?
日本をはじめとする先進国では1950年代から、新技術を利用した建造物・構造物への投資が進み、高速道路や鉄道網などの整備が進みました。
しかし、一定のインフラが整った後は、新設するよりもむしろ「それをどう維持・管理していくか」に焦点があてられるようになってきています。
特に複雑な建造物・構造物の経年変化に伴う老朽化への対応は、過去をさかのぼっても情報が少ないことも多いです。
そのため、日本を含む世界の先進国において大きな問題となっており、インフラモニタリングが必要となっています。
国内のインフラの現状
特に日本では、「スクラップ&ビルド」でどんどん新しいものを作っていた高度成長期はとうの昔に過ぎ去ってしまい、すでに人口と税収の減少が始まっています。
そのため、日本ではインフラを新設するよりも、いかに安定的に今あるインフラを長く使い続けていくかに視点が移っています。
インフラ老朽化に対する国や自治体の対応
それでは、老朽化の進む国内のインフラへの対応として、国や自治体はどのような対応を行っているのでしょうか。
ここでは、インフラの老朽化に対する国や自治体の対応について紹介していきます。
インフラ長寿命化基本計画
「インフラ長寿命化基本計画」は、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」で2013年11月に政府が決定したものです。
この「インフラ長寿命化基本計画」の目的は、国や地方自治体、民間企業などが管理する社会インフラを対象として、維持管理や更新に掛かるコストの削減や予算の平準化を図ることです。
それとともに、社会インフラの維持管理に関わるメンテナンス産業の競争力を確保するための方向性が示します。
国土強靭化基本計画とインフラメンテナンス
2014年6月には「国土強靭化基本計画」が閣議決定されました。
これは、国土強靱化基本法第10条に基づく計画で、国土強靱化に関わる他の計画などの指針となり、ぜい弱性評価結果を踏まえた施策分野ごと、およびプログラムごとの推進方針を定めるものです。
これにより、人命の保護や社会の機能維持、迅速な復旧復興などの「国土強靭化」に関する基本的な考え方や、施策分野ごとの推進方針が示されました。
この中で示されているインフラメンテナンスでは、単に危険個所を発見・補修するだけではなく、点検・診断・措置などの予防保全的な対応が求められています。
社会インフラのモニタリング技術活用推進検討委員会
社会インフラの維持管理に対する課題に対応するため、社会インフラの状態を効率的に把握できるような、各種センサーやITなどの新技術開発・導入が進んでいます。
これに対応するため、国土交通省は「社会インフラのモニタリング技術活用推進検討委員会」を設置しました。
ここでは、社会インフラに対するモニタリング技術に関して、産学官が連携しながら、現場実証を通じた有用性の評価・分析を行います。
そして、技術開発を推進するにあたり、学識経験者などから意見を収集を行っています。
インフラモニタリングの背景
近年、老朽化した社会インフラを延命化する技術について注目が集まってきています。
その対象となる構造物の種類や件数が多いことから、インフラごとに劣化状況を把握し、メンテナンスの優先順位をつける必要があります。
ここからはあらためて、「インフラモニタリング」が注目されるようになった背景についてみていきましょう。
マニュアル化された点検手法の問題点
まず、マニュアル化された点検手法では想定された劣化しか発見できない可能性が高いという問題点があります。想定された劣化とは、基準どおりに設計され適切に製作・施工された構造物が示す劣化の形態です。
たとえば、そもそも設計段階において欠陥があった場合には、想定しない劣化をきたすため、マニュアル化された点検では劣化や危険性の兆候を発見することは困難となってしまいます。
経験豊富な点検技術者の引退
これまでの点検作業を担ってきた経験豊富な点検技術者として期待されている人材が、いわゆる団塊の世代に重なっており、2010 年代以降、順次現場の第一線から去っているという状況にあります。
経験豊富な熟練技術者がもつ知識と経験をいかに若い世代に継承してゆくかという問題が積み残されている状況に置かれています。
インフラモニタリング技術とITインフラ
それでは、具体的にはどのようなインフラモニタリング技術の開発・導入が進んでいるのでしょうか。その技術の内容についてみていきましょう。
各種センサーデバイスの開発や導入
センサー技術の発達により、広範囲にわたる測定や低電力化、センサー自体の長寿命化や高精度化などが進み、さまざまな物理量を安定して計測できるようになってきています。
そこで、近年、これらの技術はインフラモニタリングに導入され始めています。
対象となる構造物に対して、ひずみゲージや変位計、加速度計などのセンサーを配置し、集中的に計測データを取得し、動的特性の把握や健全度評価を行っています。
IT業界のプレイヤーと協力
各種センサーデバイスを利用してインフラモニタリングを推進することにより、IT業界のプレイヤー(特にセンターネットワーク、IoT/M2M、クラウド、ビッグデータ、データ解析など)が、従来のモニタリング市場に参入することとなります。
技術者の経験や勘での診断ではなく、各種センサーから収集したデータを蓄積し、分析することによってインフラモニタリングを実現していくことから、IoTやビッグデータ、データ解析などの技術に精通したIT業界との連携が進んでいます。
ITインフラモニタリングの今後
さらに、今後はAIを利用したドローンやロボットのインフラモニタリングへの活用も視野に入ってきています。
つまり、各種の高機能センサーからデータを収集し、蓄積、加工、分析を行うことでインフラの状況を可視化し、高精度の診断と予測を行うことによって、統合的な管理を実現していく時代が到来しているのです。
今後の社会インフラ維持のためには
現在、私たちが生活するうえで利用している社会インフラの多くは、高度経済成長時代に作られたものが多く、特に地方では老朽化の問題が大きくなってきています。
社会としても総人口や労働力人口が減っている中で、いかに安定的に社会インフラを維持していくかが大きな課題となっています。
AIやセンサーデバイスを活用したIoTの技術開発の進展は、社会インフラの維持管理のためのモニタリングにも役立っています。
今後は蓄積したデータを読み取り、活用していくための人材が求められるようになってくるのではないでしょうか。
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