テレビVSネット、分岐点は30代? “テレビでテレビ番組を見ない”人も増加
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メディア消費の軸足はテレビからネットへ
消費者が自宅で余暇に楽しむメディアの種類は、以前に比べ豊富になりました。かつて新聞や雑誌、ラジオ、テレビ程度でしたが、今は多種多様なコンテンツを配信するインターネットが大きな位置を占めています。その結果、メディアの利用状況が様変わりしたようです。
20代以下の半数はテレビを見ない
NHK放送文化研究所の調査レポート「国民生活時間調査2020 生活の変化×メディア利用」によると、ある1日にテレビを見た人の割合は2020年時点で79%です。2015年の調査では85%あり、この5年で大きく減少しました。
平日にテレビを視聴したかどうかを年代別にみると、テレビ視聴の減少傾向がはっきり現れます。
年代 | 2020年 | 2015年 |
---|---|---|
10歳から15歳 | 56% | 78% |
16歳から19歳 | 47% | 71% |
20代 | 51% | 69% |
30代 | 63% | 75% |
40代 | 68% | 81% |
50代 | 83% | 90% |
60代 | 94% | 94% |
70歳以上 | 95% | 96% |
60代と70歳以上を除くすべての年代で、視聴した人の割合が大幅に下がりました。減少幅は若い年代ほど大きく、20代以下では約20ポイント少なくなっています。この年代は、1日にテレビを見る人は半数ほどしかいない、という状態です。
若い世代にとって、テレビはすでに日常的なメディアでないのかもしれません。
テレビVSネット、分岐点は30代?
テレビを見なくなった人たちは、空き時間をインターネットに費やしているようです。インターネットとテレビのそれぞれの利用率は、年代別だと以下のとおり30代を境目にして、若年層はインターネット優位、年配層はテレビ優位となりました。
年代 | インターネット | テレビ |
---|---|---|
10歳から15歳 | 60% | 56% |
16歳から19歳 | 80% | 47% |
20代 | 73% | 51% |
30代 | 62% | 63% |
40代 | 57% | 68% |
50代 | 49% | 83% |
60代 | 34% | 94% |
70歳以上 | 20% | 95% |
16歳から19歳はインターネットが80%なのに対し、60代や70歳以上はテレビが90%を超えていて、メディアの利用傾向は年代によって大きく変わることが分かります。
各メディアの平均利用時間を積み上げたデータをみると、若い世代はインターネットに、高齢者はテレビに接している時間が長いなど、年代ごとの利用パターンの違いがさらに明確化します。
“リアルタイム視聴”離れが鮮明
博報堂DYメディアパートナーズの「メディア定点調査2021」でも、テレビ離れの流れが読み取れます。
テレビへの依存度が低下
2021年の1月から2月にかけて実施した調査では、週平均の1日あたりメディア総接触時間は450.9分で、前年の411.7分に比べ39.2分も長くなりました。メディアに対する姿勢が変化しただけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックのため自宅で過ごす時間が増えたことも影響したはずです。
メディアの種類別では、「携帯電話/スマートフォン」 「タブレット端末」「パソコン」が増えたうえ、これらの合計が全体の55.2%を占めています。全体的に減少傾向だった「テレビ」は150.0時間で、前年より増えました。ただ、全体に対する割合は小さくなっていて、テレビへの依存度は低下しています。
このメディア総接触時間を年代別・性別でみると、NHK放送文化研究所の調査と同様の傾向になりました。つまり、若い層はインターネットを多用し、年配層はテレビを長く見る、という傾向です。
テレビはネット動画を見るためのデバイスに
博報堂DYメディアパートナーズの調査には、興味深いデータがあります。テレビを利用したという回答には、テレビ局の放送を見る以外の行動が含まれていました。というのも、現在のテレビは放送中のテレビ番組を見るだけでなく、録画した番組を再生するほか、インターネット経由で動画配信サービスを視聴することにも使うからです。
そこで、テレビの利用時間としてどうような行動を含めたか質問したところ、以下の結果が得られました。
利用内容 | 2021年 | 2020年 |
---|---|---|
テレビ番組をリアルタイムで見る | 87.6% | 84.3% |
録画したテレビ番組を見る | 72.5% | 73.0% |
見逃し視聴サービスでテレビ番組を見る | 15.3% | 11.3% |
有料動画を見る | 21.8% | 13.4% |
無料動画を見る | 22.6% | 19.0% |
インターネットテレビを見る | 4.7% | 5.0% |
SNSにあがっているテレビ番組を見る | 5.4% | 4.4% |
その他を見る | 1.6% | 2.9% |
上2つの「テレビ番組をリアルタイムで見る」「録画したテレビ番組を見る」以外は、いずれもインターネット経由の動画配信サービスを利用するものです。なかでも、NetflixやHulu、Amazonプライム、Amazonビデオ、dTV、DAZNなどを含む「有料動画を見る」と、YouTubeやニコニコ動画、Dailymotion、FC2動画、GYAO!を含む「無料動画を見る」は2割を超え、増加傾向にもあり、存在感が増しています。
このように、テレビはテレビ番組を見るためのデバイス、という考え方は過去のものになってきました。
オンライン動画ネイティブ世代が変えるメディア消費
広告メディアとしてテレビの注目度が高いことは、今も同じです。しかし、状況は変化しています。
テレビメディアの広告費が減少する一方で、インターネット広告費が増加しました。広告のオンラインシフトは確実に進んでいて、YouTubeやTikTok、Instagramといった動画広告が重要視されています。
COVID-19対策でオンライン自宅学習する機会が増え、GIGAスクール構想の影響もあり、子供たちが日常的にPCやタブレットなどのデバイスを使うようになりました。
アマゾンジャパンの「子どものデジタルデバイスの利用と子育てに関する調査」によると、保護者の意識が変化し、「(デジタルデバイスを)まったく使わせたくない」という人の割合は減っています。
また、「学校や習い事・塾で、デジタルデバイスを活用することが増えた」や「(デジタルデバイスを)小さいときから使いこなせるようにしたい」と考える保護者は多く、肯定的に受け止め、活用しようとする人が増えました。
小さなころからデジタルデバイスとインターネットに親しむ子供たちは、デジタルネイティブであるとともに、オンライン動画ネイティブ世代と呼べるでしょう。この世代が成長するにつれて消費者全体のテレビ離れにますます拍車がかかり、動画コンテンツを楽しむにしても、テレビ番組でなく、インターネット動画が当たり前になります。
動画マーケティングが重要なことは、今後も変わりません。ただし、対象者の年代や性別などが違えば、好まれるコンテンツも適したメディアも異なります。しかも、変化の思いの外スピードは速いのです。動画広告の重心はオンラインへ移りつつあるので、軸足に注意しましょう。