[PR]手作りのデジタルマーケティングからMAシステムへ | 日本能率協会に聞いた導入経緯と効果
一般社団法人 日本能率協会(以下、JMA)は、産業界や社会の課題を解決し、経営改革を推進する機関として1942年に設立された。現在、同協会は約1350社の企業・団体の会員を擁し、人材育成、展示会の主催、ISO審査・検証など多方面で事業を展開している。
JMAでは、従来よりダイレクトメールを中心としたマーケティング活動を行っていたが、2013年ごろからメール・マガジンとWebサイトを駆使したデジタルマーケティングに着手。そして、2015年4月にオラクルのMAシステム「Eloqua」の導入に踏み切ったという。
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ダイレクトメールによるワンステップのセールス・プロセス
JMAの事業の柱となっているのが、法人向けの教育事業だ。「企業向けの教育セミナーや、事例講演会の開催、資格試験や動画教材を販売するサービスを展開しています。また、お客さまの会社に講師を直接派遣し、社内教育を実施する訪問サービスも行っています」とJMAの飯泉明彦氏は説明する。
時はさかのぼって2012年、飯泉氏は教育事業部門において、ものづくり系企業の事例講演会を開催する業務を担当していた。この事業は、顧客と直接対面する「面直」での営業は基本的に行っておらず、ダイレクトメールによって、講演プログラムのパンフレットを郵送し、集客する方法が取られていた。
「当時、マーケティングと言えるようなプロセスは組織内にほとんどありませんでした。パンフレットを送付し、あとはお申し込みいただけるのを待つような状況です。私自身、このようなワンステップのセールス・プロセスに大きな課題があると感じていました」(飯泉氏)。
オンライン施策で売上げアップ!しかし手作りの限界に突き当たる
そんな状況下、飯泉氏は2013年に開催した事例講演会の集客・セールスにおいて新しい試みをスタートさせた。
「自分の手でWebサイトを制作。外部企業の関係者にインタビューを行い、それをコンテンツに落とし込んでWebサイトに掲載しました。また、社内の顧客リストをかき集め、月額1万円のメール配信システムを利用して案内メールを配信し始めました」(飯泉氏)。
ほかにも、ダウンロードコンテンツを用意し、コンバージョン後に配信リストに新規登録(追加)する、早期にセールスレターを送るといった施策も行ったそうだ。こうした手作りのリードジェネレーションやリードナーチャリング施策によって、一歩ずつ集客・セールスに結び付けていったわけである。
「結果的に1年間でその講演会に関する売上は40%ほど伸びました。そこで他のイベントやセミナーも同じ手法で運用してみることにしたのです。こちらもそれなりの結果が出ましたが、私を含む少人数で、すべての業務をこなすのは限界がありました。また、施策の結果を定量的な数値で測るのが難しいという課題も出てきました」と、飯泉氏は当時を振り返る。
一方で、誰の目にも明らかな結果が出たことで、デジタルマーケティングの重要性に経営層が目を向けはじめた。その結果、デジタルマーケティング施策の効率的な実施や、そのためのMAシステムの導入検討が始まったという。
導入支援会社とMAシステムの組み合わせで候補を検討
MAシステム導入の検討にあたり、飯泉氏はMAシステムとその導入支援会社の組み合わせの候補を8組挙げて、比較・検討を行ったという。
「MAシステムを選択する際には、『顧客の購買プロセスをどのように理解するか』に対する導入支援会社の考え方を最も重視しました。この考え方は、大きく2つに分かれます。『顧客に聞く』か『社内メンバーに聞く』かです。我々は、『顧客に直接聞く』という考え方を提示した導入支援会社を選ぶことにしていました。『社内のメンバーにヒアリングしても、顧客の購買プロセスやカスタマージャーニーを把握することは難しい』と、MAシステム導入前の試行錯誤で実感していたからです」と飯泉氏は振り返る。
その導入支援会社がパートナーとして取り扱っていたシステムがオラクルの「Eloqua」だった。
「機能面では、それまで制作してきた数十におよぶフォームや膨大なWebサイト・コンテンツを100%活かして引き継げることが重要でした。マルチドメイン対応、配信グループの制限がないこと、ワークフロー上の権限設定が詳細にできること、大量データを扱える強固なDBなども、小会にとっては選択のポイントになりました」(飯泉氏)。
「顧客理解にもとづいたマーケティング・セールス」というコンセプトを理解する導入支援会社と機能面での充足度を考慮して、2015年4月から「Eloqua」を導入することになった。
自動コンタクトは毎年2万件!面直のセールスリードは20倍に
「Eloqua」導入と同時に新たな課題が2つ浮上してきた。
ひとつは、「オンラインで受注にいたる商品だけでなく、面直の営業で受注する商品のためのマーケティングを展開してほしい」という要望があったこと。「デジタルマーケティングを活用したい」というチームが増加しはじめたことだ。
そのため、ふたつめの課題として、デジタルマーケティングの前提となるマーケティング・セールスの意識や基礎知識を迅速に広く浸透させる必要性に迫られた。
「商品の内容も事業形態も異なり、当然、販売プロセスもさまざまな事業部に対して、デジタルマーケティングの全体像を説明し、具体的にどうターゲットを設定し、データを集めて、コンテンツを作るべきなのか。キャンペーンを実行したら、振り返りの分析を行い、どう改善していくべきなのか。その考え方と具体的な方法を迅速に普及させるための方法を、試行錯誤しました。それ以前に私が行っていた、社内研修やチームごとの個別コンサルティングだけでは、追いつかなくなってきたのです」(飯泉氏)。
試行錯誤の結果、飯泉氏は組織内のデジタルマーケティングへのリテラシーを高め、実戦的に活用するための研修や指導の経験をもとに、動画教材「B2Bデジタルマーケティングセミナー」を制作。スキマ時間を使い、スマホで基礎知識が学習できるので、標準知識を共有したうえで、各メンバーがデジタルマーケティングに取り組めるようになった。
社外のデジタルマーケティングを推進する知り合いから、自分も観たいという要望を受けるようになったため、現在では、これからデジタルマーケティングに取り組もうという企業ユーザー、導入支援企業に向けて、動画教材「B2Bデジタルマーケティングセミナー」がJMAで販売されている。
結果的に、組織内でのデジタルマーケティングの理解は高まり、自然とMAシステムの重要性も浸透してきた。そして、いつしか組織内では「ナーチャリング」「セグメント」「Eloqua」といった言葉が自然に飛び交うようになっていったという。
こうした変化を肌で感じた飯泉氏は「導入前に多くのメンバーがデジタルマーケティングの意識と標準知識を学習し、共有していることは、スムーズな運用のための重要なポイントだと思います」とアドバイスしてくれた。
JMAに「Eloqua」が導入されてから約3年半が経ったが、具体的な数値として目に見える効果も表れている。たとえば、毎年2万件ずつ自動でコンタクトが増加し、自動配信キャンペーンで受注にいたる件数も増えてきた。
また、これまで懸案事項であった面直営業のためのセールスリードが20倍になった。このように断片的な成果がたくさん出ているそうだ。
デジタルマーケティングの完全な貢献度評価に関しては今後に期待
「Eloqua」の活用により、デジタルマーケティングにかかっていた手間が減り、ノウハウが蓄積されている。しかし一方で、デジタルマーケティングの完全な貢献度評価については、まだMAシステムのBIだけでは不十分な部分もあるという。
「インサイトのレポート/ダッシュボードは経営層向けのプレゼンでデモ映えします。一方、事業担当者あるいはマーケターとしては、柔軟に迅速にデータをドリルダウンしたいのでエクセルを使う場面も少なくありません」。
また、B2B活動では、購買意思決定に影響をあたえるオフラインプロセスも多いため、デジタル上の行動履歴だけでは、顧客の購買プロセスはわからない。推測して補う必要がある。これは、現行のどんなMAシステムを使ったとしても、まだ完全な検証は難しいのだ。
「推測しなければならないことも多いですが、デジタルマーケティングを駆使するメリットは年々強く感じています。そのため、現時点で『Eloqua』はマーケティングを行ううえで手放せない、必要不可欠なものになっています」(飯泉氏)。
最近ではMAシステムにもAI技術が積極的に導入されるようになってきた。デジタルマーケティングの完全な貢献度評価については、こういった新技術が解決してくれる日が遠からずやってくるかもしれない。
それまでJMAは、より幅広く「Eloqua」を使いこなすことで、適用範囲を広げていくことになりそうだ。