重要性高まる営業DX、「データ統合」が必要人材の分岐点
結局リモート?訪問?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックになって2年以上経過し、働き方が大きく変わりました。出社へ戻す企業が多く見られるとはいえ、リモートワークでの在宅勤務はなくなっておらず、ハイブリッド型をとる企業も少なくないでしょう。
マーケティングや営業活動のスタイルも、同じように変化しています。HubSpot Japanが企業の「日本の営業に関する意識・実態調査2022」(※1)にも、コロナ前とコロナ禍の違いが表れました。
※1 HubSpot Japan『日本の営業に関する意識・実態調査2022の結果をHubSpotが発表』,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000037724.html
訪問型の営業は好ましいのか?
企業で法人営業に携わる人を対象として、売り手側と買い手側のそれぞれに好ましい営業スタイルを尋ねたところ、以下の結果が得られました。
売り手が 好ましいと考えるスタイル |
2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|
訪問型営業 | 63.1% | 48.0% | 57.3% |
非訪問型営業 | 10.9% | 21.8% | 12.8% |
どちらでもよい | 26.0% | 30.2% | 29.9% |
買い手が 好ましいと考えるスタイル |
2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|
訪問型営業 | 53.7% | 35.0% | 40.4% |
非訪問型営業 | 21.0% | 38.5% | 21.2% |
どちらでもよい | 25.2% | 26.5% | 38.4% |
2020年はパンデミックになって企業活動が大きく制限された結果、非訪問型営業を好む声が売り手と買い手の双方で高まりました。それが2021年になって慣れたのか、コロナ前にほぼ戻っています。
ただし、買い手側は「どちらでもよい」の割合が2021年に増加。訪問されないことにメリットを感じているほか、自宅で仕事をしていると会いにくい、という理由もありそうです。
コロナ後は訪問の必要性が下がる?
今後コロナが収束したら、営業スタイルは元に戻るのでしょうか。「将来、世界的に新型コロナウイルスの感染が収束し、治療薬も開発されたら」という仮定のもと、好ましい営業スタイルを質問しました。
売り手が 好ましいと考えるスタイル |
回答率 |
---|---|
訪問型営業 | 58.2% |
リモート営業 | 12.2% |
どちらでもよい | 29.6% |
買い手が 好ましいと考えるスタイル |
回答率 |
---|---|
訪問型営業 | 38.3% |
リモート営業 | 20.4% |
どちらでもよい | 41.4% |
訪問型営業を好ましいと考えたのは、売り手が6割弱だったのに対し、買い手は4割弱と差が開きました。リモート営業を望んだ割合は、売り手が1割強、買い手が2割強で、やはり買い手はリモート営業を好む傾向が強いようです。
さらに、買い手の約4割が「どちらでもよい」と答え、訪問の必要性を感じていません。
マーケティングとデータマネジメント
オンライン商談ツールを活用すれば、訪問しなくても営業活動は可能です。通話ログなどのデータを取得できるメリットもあります。しかし、直接会う機会が減ると、オフィスの様子や雑談から得られる情報は少なくなるでしょう。そのため、営業現場だけでなくさまざまな顧客接点から得られるマーケティングデータを活用することの重要性が、以前にも増して高まります。
そこで、アンダーワークスの調査レポート「マーケティングデータ活用実態調査 2022年版」(※2)をみて、企業の取り組み方を確認しましょう。
※2 アンダーワークス『顧客データの統合・分析に取り組む企業は1.8倍増』,https://www.underworks.co.jp/dmj/2022/02/16/report_2022/
重要性は認識するも……
マーケティング成果向上に対するデータマネジメントの重要性は、55%が「非常に重要である」、31%が「重要である」と答え、大多数が認識していました。
ところが、マーケティングデータの活用や管理に取り組んでいるかどうかについては、前年から大きな進捗がみられません。積極的なデータマネジメント活用を図る企業と、そうでない企業の二極化が定着しています。
取り組み方 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|
取り組んでいる | 45% | 49% |
今後一年以内に 取り組む予定である |
25% | 18% |
未定・取り組む予定はない | 29% | 33% |
活用レベルは変化なし
取り組んでいるといっても、活用レベルの差はかなりあります。アンダーワークスは、「ステージ0:データなし(そもそもマーケティングデータを全く収集できていない)」から「ステージ6:先進活用(全データを統合、AIやIoTなど先進的な取り組みもしている)」までの7段階に分けて分析しました。
活用レベル | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|
ステージ0:データなし | 5.9% | 9.4% |
ステージ1:データ散在 | 23.9% | 15.5% |
ステージ2:部分連携 | 53.7% | 50.8% |
ステージ3:統合済み | 4.8% | 6.1% |
ステージ4:分析利用 | 7.0% | 12.6% |
ステージ5:施策活用 | 4.4% | 4.9% |
ステージ6:先進活用 | 0.4% | 0.6% |
2021年に比べ全体的に高いステージへの移動がみられるものの、「ステージ2:部分連携(部分的にデータを連携させているが、多くは統合管理されていない)」以下のレベルが多い状況です。前年同様、この壁を越えられない企業が多くあります。
デジタル化の進む顧客接点
コロナ禍で顧客接点が変化した結果、保有するマーケティングデータの種類も変わりました。保有しているマーケティングデータの種類を尋ねたところ、主な増えたものと減ったものが以下のとおりクッキリ分かれました。
保有が増えたデータ | 変化(ポイント) |
---|---|
Webサイトの行動ログデータ | +5.6 |
SNSでの接触・フォロワー等のデータ | +4.8 |
販売管理や契約管理などの基幹データ | +4.7 |
インターネット広告のデータ | +4.0 |
リアル店舗の顧客・販売データ | +3.8 |
保有が減ったデータ | 変化(ポイント) |
---|---|
Eメール登録者データや配信データ | -6.1 |
外部から購入する企業データ | -4.4 |
製品サービスの仕様やパフレットなどのデータ | -4.0 |
通販カタログの顧客・購買データ | -0.6 |
取引先・代理店と共有しているデータ | -0.5 |
「名刺データ」(2021年:48.5%、2022年:50.8%)のような例外はありますが、全体として紙からデジタルデータへのシフトが起きています。
データマネジメントの課題
対面での活動が難しいコロナ禍やコロナ後は、オンライン商談が欠かせせず、効果的なデータマネジメントが重要です。それなのに、活用レベルは前年と大差ありません。
やはり人材不足が最大の妨げ
アンダーワークスの調査で活用の妨げになっている課題を挙げてもらったところ、「様々なテクノロジーに対する専門知識や人材不足」(43.7%)が最多です。デジタル人材が足りないことは多くの場面で指摘されており、ここでも同じ問題がデータマネジメント推進の障害になっています。
課題をデータ活用レベル別でみるために、「ステージ2:部分連携」以下と「ステージ3:統合済み」以上を分けて集計したところ興味深い結果が得られました。
データ統合以上の段階に入った企業は、「組織間の連携や部門間調整」「取り込み結果の効果測定」「データ活用(レコメンドやセグメント作成・予測等)」「BIツール等でのデータ可視化」など、実際の活用で苦労しています。
一方の部分連携まででとまっている企業は、「戦略立案や中期的なロードマップの策定」「散在する様々なテクノロジー/データの現状把握」「取り組みへの予算確保」「統合するデータの欠如・少なさ」のように、どこから手を付けてどこへ進めばよいのか、という段階で悩んでいました。
営業DXも人材不足が問題
デジタル人材不足は、冒頭で取り上げた営業活動に関するHubSpot Japanの調査でも指摘されています。
営業組織でDXを推進する際の課題を尋ねたところ、「DXを担う人材の教育が難しい・人材の確保が難しい」(56%)、「DXを実現する上で、社員のデジタルリテラシーが不十分である」(48.5%)、「システムを入れても使われない、活用しきれない」(47.9%)、「DXの意義・重要性が社内で理解されていない」(45.7%)など、人材確保や人材教育に関する課題が浮かび上がりました。
リスキリングが解決の糸口に?
データマネジメントをスムーズに実行するためのツールとして、多種多様なデータマネジメントプラットフォーム(DMP)が存在します。こうしたツールを利用すれば、データの管理や分析、活用の負荷が軽減されます。
とはいえ、使いこなせる組織にならない限り、宝の持ち腐れです。データマネジメントを理解しているだけでなく、業務に精通した人材の存在が欠かせません。そのためには、現場で実際に働いている人を、将来のデータマネジメント人材としてリスキリングすることが近道です。