「リスキリング」は企業の姿勢次第? 企業の魅力づけにも
リスキリングを進めるには
ICTの進歩はとても早く、仕事で求められる技術や知識も日々変化しています。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するには、PCやSaaSを使いこなすだけでなく、業務をデジタル化に適した仕組みに変えなければなりません。
そこで、新しい時代に必要とされるスキルを習得し、知識や技術を教育し直す「リスキリング」の重要性が強く認識されるようになりました。2022年10月には政府が5年で1兆円の投資を表明し、ますます注目されています。
学習意欲は低いが、高める方法はある
企業で働く人のリスキリングに対する意識について、まずベネッセホールディングスの調査レポート(※1)をみてみましょう。
社会人になってからの学習経験と、今後1年以内の学習意欲について尋ねたところ、約4割が学習経験も学習意欲もない、という結果です。一方、学習の経験と意欲のある人は3割強、経験はないが意欲のある人は1割強でした。
学習経験、学習意欲 | 回答率 |
---|---|
社会人になって学習したことがなく、 これからも学びたいと思わない |
41.3% |
社会人になって学習したことがあり、 これからも学びたいと思う |
33.6% |
社会人になって学習したことはないが、 これから学びたいと思う |
13.5% |
社会人になって学習したことがあるが、 これからは学びたいと思わない |
11.5% |
ただし、学習意欲は高くなくても、条件が整えばリスキリングに取り組むようです。学習の経験と意欲がない、と答えた人に「学ぶのに必要なきっかけ」を質問したところ、「仕事で必要になる」(37.5%)、「職場から求められる」(22.2%)、「資格取得に必要になる」(19.5%)、「昇進やキャリアアップに」(11.1%)、「会社や自治体などから補助が受けられる」(9.1%)のような、企業の働きかけが効果的と考えられる回答が集まりました。
従業員のやる気を引き出し、能力を発揮してもらうには、企業の人材育成に対する姿勢がいかに大切かわかります。
※1 ベネッセホールディングス『―社会人の学び・リスキリング最新トレンド2022ー』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001055.000000120.html
リスキリング意識の高い層は?
エン・ジャパンが同社の運営する派遣情報サイト「エン派遣」で実施した調査(※2)では、少し違う結果が得られました。
仕事探しや仕事に取り組む際にリスキリングの必要性を感じたかどうか、という質問に対し、「ある」(58%)と「ときどきある」(33%)を合わせ、なんと約9割が必要性を実感していました。
リスキリングが必要と感じたこれらの人は、「新しい仕事に挑戦する時」(68%)、「スキル不足で応募できない仕事があった時」(58%)、「仕事が決まらない時」(34%)ときにそう思ったそうです。派遣という働き方を続けるには、常にスキルを増やし、高める必要があるからでしょうか。
リスキリングに取り組んだ経験は、以下のとおり37%が経験者で、21%が取り組みたいとしています。
リスキリング経験 | 回答率 |
---|---|
現在取り組んでいる | 12% |
過去に取り組んだ経験がある (今は取り組んでいない) |
25% |
これから取り組む予定がある (今までは取り組んでいない) |
21% |
経験も予定もない | 42% |
※2 エン・ジャパン『2,800人に聞く「リスキリング」調査』, https://www.atpress.ne.jp/news/323439
企業の働きかけが重要
もう1つ、対象者をミドル層(35歳以上の転職サイト「ミドルの転職」利用者)に絞ったエン・ジャパンの調査レポート(※3)を紹介しましょう。こちらからも、企業による働きかけの重要性が読み取れます。
まず、現在リスキリングに取り組んでいる人の割合は31%でした。年代による差はみられません。
リスキングに取り組んでいる人の始めた切っ掛けは、「仕事上必要だと感じ、自発的に始めた」が82%と大多数です。さらに「会社から命じられた」は4%、「上司・同僚に勧められた」は2%でした。
取り組む具体的な理由を挙げてもらったところ、「新しい仕事に挑戦するため」(56%)、「キャリアの市場価値を高めるため」(47%)、「将来の起業・副業・転職等のため」(42%)といった回答が上位に並びました。
やはり、仕事で必要なため始めた人が多い、という結果です。
また、現在リスキリングしていない人に取り組まない理由を質問したところ、「時間がない・忙しい」(38%)、「費用負担が重い」(27%)に続き、「学んでも会社が評価しない」(22%)、「会社が機会を用意してくれない」(19%)という結果でした。
ここでも、企業側の対応が強く影響しています。
※3 エン・ジャパン『ミドル1700人に聞く「リスキリング」実態調査』, https://corp.en-japan.com/newsrelease/2022/30662.html
リスキリングが企業の魅力になる時代
こうした調査レポートをみる限り、リスキリングに取り組む人は企業の方針次第で増やせそうです。
manebiの調査(※4)によると、リスキリングを積極的に行っている企業に対して、6割の人が「良いと思う」としました。そして、「働きたいと思う企業の特徴」という質問には、25.8%が「リスキリングに力を入れている企業」と答えています。
従業員の自主性に頼ってばかりでは、優秀なはずの人材を埋没させているかもしれません。企業も積極的に人材管理に向き合い、タレントマネジメントシステムを活用するなどして、社内でリスキリングが当たり前、という環境と雰囲気を作っていくべきでしょう。
※4 manebi『働きたい企業の特徴に「リスキリングに力を入れている企業」がランクイン!』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000100.000028888.html